新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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21話

「クッソあのダチョウ…四十分も走りやがって」

 

ようやく宿舎に帰ってこられた。単純計算で約四十五キロも走りやがった。ふざきんな!!!111。そこら辺は置いといて、辺りはもう真夜中、時計は九時ほど。今日はもう風呂入って寝るか。荷物を部屋に運んで中からパジャマを取って風呂へ行く。こんな時間だ、どうせ誰もいやしないだろう。というより誰もいない方が都合がいい。…ここか。いざテルマエへ。

 

「あーくそ、足痛いわ首痛いわもーやんなっちゃう」

 

愚痴をこぼしながら服を脱ぐ。手首足首背中に首をボキボキと鳴らしながら風呂場へ入る。すると湯気が全身を襲う。入ったばかりだと少しばかりムカつくが、すぐに慣れる。まずシャワーを浴びて汗を洗い流そう。公共の場におけるマナーだ。まずは全身濡らしてから頭をすっきりさせちゃおう。

 

「…貴様、ここで何をしている」

 

「え?」

 

聞き覚えのある声だ。だが悲しきかな、男の声じゃあない、女の声だ。そして樫本さんや桐生院さんの声でもない。…只悲しきかな、顔が出てこない。そして俺は女湯に侵入していることが確定してしまった。誰もいないと思ってたからタオルも何も持って来てねぇんだけど。…開き直るか。

 

「どちらさん?シャンプー流してからそっち向くからちょっと待ってて」

 

「そのまま疾く去れ。ここは貴様の居る所ではない」

 

「あっそう。でも移動するのもめんどくさいから諦めてくれ」

 

「下郎がッ!」

 

次の瞬間、冷水をぶっかけられる。

 

「つっめて!」

 

俺がアクションを起こす前に頭を鷲掴みにされて強引に振り向かせられる。

 

「よもや、余の顔を忘れたというまいな?」

 

目を開けるとそこにはどっかで見た金髪がいた。忘れねえよその面はよぉ。だがそんなことに構っていられないくらい俺は付かれているんだ。

 

「あぁお前か錯乱坊。分かったから放してくれ。体洗わないといけないんだからよ」

 

「貴様には礼儀どころか常識すらないと見える。これではゴルシの方がマシだな」

 

「あーはいはい適当言っててくれ別にいいじゃねぇかお前に実害がある訳じゃねぇし」

 

「実害はすでに出ているんですよ…貴方が入ってきた時から既に」

 

「げぇ!ジャーニー!お前も居やがったのか!」

 

声のした方を見ると…多分ジャーニーが…多分タオルを巻いて立っていた。ほんでもってよくよく見たら湯船の方にもそれなりに人がいるのが分かった。あー、案外人いたのね。

 

「事情の方は承知しています。素っ頓狂な事象だったので理解に時間が掛かりましたが、お疲れなのは分かっています。なので、今出ていけとは言いません、お体を洗ったらで構いませんので」

 

「ご丁寧にどうも。だがまぁそいつはできない相談だ」

 

「…何故ですか?」

 

おぉ怖い怖い、その声色。その理由を俺はどこからともなく取り出す。

 

「一杯やらないといけないんだよ」

 

おちょこと徳利。若干熱燗地味に仕上げてある。湯船につかりながら手酌でグイッと…。想像しただけでたまりませんなぁ。

 

「おめぇそれはやべぇだろ。女風呂で男が酒飲むって読んだだけでも地獄だぞ…」

 

「ゴルシもいたのか。安心しろ俺はコンタクトかメガネが無いとぼやけまくってほとんど見えねぇから」

 

そう、正直な所湯気と目の悪さで顔なんて認識できねぇ。そんなんだから女がいるという事実しか認識できないから何故かあまり興奮しない。普通だったらムッホムッホな展開なんだけどなぁ。おかず案件なんだけどなぁ。

 

「んじゃ、湯船にドボーンっと。…あ゛あ゛あ゛~~沁みるゥ~」

 

普段は烏の行水だが、こういうところに来ると妙に長く入ってしまうのはなんでかな。そして手酌でググイッと…

 

「く~~ッ!!この一杯のために生きている!」

 

「奥沢…その…一杯くれねぇか?」

 

「顔はよく見えねぇから誰だが分からんが…ほれ」

 

もう一つおちょこを生成してそいつに渡す。…よく見たらウオッカじゃねえか。まぁいいや。

 

「ささ、グイッといっちゃいな」

 

「こ、これで俺もギム先輩みたいに…!」

 

「未成年飲酒を平然と勧めてるんじゃないわよ!」

 

「「ゴボボボボボボボッ!!」」

 

多分スカーレットだろうね、二人仲良く沈められてしまった。強引に振りほどいて肺と脳に酸素を供給する。

 

「殺す気かてめぇ!」

 

「殺されて当然よ!女湯はいる未成年飲酒を勧める!アンタ教育者としてどうなの!?」

 

「お言葉だがよぉ、おめぇら俺の事教育者として見たことあるのか?」

 

言った瞬間にシーンとなってしまった。…流石にひどくねぇか?ここ来て三カ月程度だけどさぁ、結構知名度あると思うんだけど?…悪い意味でだけど。

 

「はいはい、じゃあ酒は仕舞うよ。仕方ねぇ、クルペッコ人形で遊ぼうか」

 

「クルペッ…え?」

 

という訳で、無からクルペッコ人形を生み出して遊ぶ。…あ、亜種出た。

 

「それ、どこから出してるの?」

 

「そりゃお前…無から」

 

「二次創作だとしてもどうなのそれ?」

 

「お前ディス地球とかディス鮪とか見て同じこと言えるのか?」

 

スカーレットを強引に黙らせて人形を出し続ける。…これも意外とすぐに飽きる。手で水鉄砲をやろうとするも出来た試しがないのでゆったりとお湯を堪能する。こうしていると日々の喧騒を忘れてただただ優雅なひと時を堪能できる。足首をボキッと鳴らして関節という関節を全部鳴らす気持ちで体を伸ばす。すると眠気が襲ってくる。そういえばどこかで聞いたことがあるな。風呂場で眠気が来るのって実質気絶してるようなものだって。まぁ俺は風呂場で寝たこと無いし、そんなことにはな

 

 

 

「ねぇ、寝ちゃったわよ?」

 

「こいつ女湯入っといて本当に何も思ってなかったのかよ…」

 

スカーレットとサウナ対決をしてすんでの所で負けて汗を流してもう一回風呂に入ろうとしたら奥沢の奴が思いっきり寝ていた。

 

「放置しておくわけにもいかないでしょう。ウオッカさん、スカーレットさん、お手伝い願えますか?」

 

「あ、はい!」

 

ジャーニー先輩の指示で奥沢を湯船から引っ張り出して俺が左腕、スカーレットが右腕を持って脱衣所に引きずっていく。ジャーニーさんは奥沢が出したクルペッコを片付ける。後で一匹貰おう。

 

「にしても、結構筋肉質なんだなコイツ」

 

「でも見た目の割には軽いのよね…あら、なにかしら、それ」

 

「それって…どれだよ」

 

「左肩の辺りのそれよ…模様みたいな…」

 

言われて奥沢の肩を見ると確かにそこだけ肌の様子がおかしかった。だが湯気で良く分からない。途中で脱衣所へのドアを開け、視界が晴れるとはっきりと視認できるようになった…が…

 

「なんだこりゃ…」

 

「何よコレ…えぐられたみたいな…」

 

そこには古傷と言っていいのか…明らかに残りすぎている生々しい傷が残されていた。

 

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