新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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22話

「よう、昨日は悪かったな。大事な所にタオルもかけてくれて」

 

脱衣所で起きた俺は書置きを見て状況を把握、多分ジャーニーだろうな。錯乱坊はそんなことしなさそうだし。まずは風呂からサルベージしてくれた二人に感謝を伝える。

 

「ああいいっていいって。クルペッコも貰ったし」

 

「それにモザイク物をそのまま放置しておくわけにはいかないでしょ」

 

「それはそう。…ああそうだ、二人は多分左肩のコレ…見ちゃったよな?」

 

左肩の件に触れると二人の肩が上がる。触れないようにしてくれてたんだな。ははーん、ツンデレ?

 

「いいんだよ、目に入りやすい所だからな。というか気になるだろこれ?」

 

「お、俺は全然気にしてないぜ?スカーレットは寝る前ずっとそのこと考えてたんじゃないのか?」

 

「はぁ!?アンタの方こそその話題ばっか振ってたじゃない!」

 

あぁやべ、ケンカし始めちゃった。仲がいいんだから全く。とは言え、もやもやになってしまっているのは事実らしい。

 

「やっぱり気になってたか、そう、気になるんだよなぁ」

 

「いや無理に話さなくていいって!」

 

「そう、あれは俺が五歳の頃…」

 

「ああこれ無理ね、回想に入っちゃうわね」

 

 

 

 

 

「パパー!あの鳥凄い顔色悪いよー!」

 

「ハハハ、あの鳥さんはヒクイドリっていうらしいね。危ないから近づいちゃダメだぞー?」

 

「すごーい!足の爪デカーい!爪切り大変そー!」

 

「キエエェェッ!!」

 

「グエェェ!!」

 

「こ、康ううぅぅぅぅ!!」

 

 

 

 

 

「…で、こうなった」

 

「それは…そうなるわね…」

 

「ヒクイドリのキック力って相当なもんって聞いたことあるぞ…」

 

「あの時は本当に痛かった。あと少し近づいてたら腕無くなってたんじゃないかってお医者さんに言われたよ」

 

まぁ実際、えぐられたみたいな感じだったから神経を繋ぐのに難儀したらしい。というより全部は繋がってないから若干感覚が鈍い。でも日常生活には支障ないし完治したようなもんだ。

 

「そういう訳だから、あんま気にしないでくれ。ほいじゃあな」

 

アフターケアをこなして昨日できなかった荷解きに取り掛かる。…そういえば、数日前から感じてた視線がここ最近消えたな。…良い事だ。すごい気になってたから助かる。

 

「さて、外じゃトレーニングやってるっぽいし…覗きに行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水着って…エッだよなぁ」

 

こんなことを呟いてしまう。皆さま、冷静に考えて欲しい。例えばお城のようなホテルに行った時、皆恥ずかしがって脱ぐくせにここではほぼ裸同然の格好をなんの恥ずかしげもなくさらけ出しているのだ。いったいどんな心理状態なのか。隠すべき所を隠しているから問題無いという事なのか?ならなぜこんな夏のくそ熱い時期に服を着ている?熱いと嘆くなら海以外でもあの格好でもいいではないか。

 

俺はそこに一つの解を出す。海という開放的な場所。ここは文明を育んできた場所と言っても過言ではない。なら文明の始まり、つまり縄文時代の方々は何を着ていたか?そう、毛皮か…もしくは“全裸”である。つまり、水着とは現代のモラルと原始回帰のマリアージュと言えるのではないか?だからあんな格好を平気で出来る。

 

こう仮定すれば、水着がエロい理由の答えも出てくる。原始に帰れば人間は全員裸である。そこに水着という薄いながらも俺たち男にとっては強固で突破しがたい装甲が増設されている訳だ。人間隠されればそこに何があるのか気になってしまうもの。好奇心とは即ちエロス。好奇心を掻き立てる服…それが水着…だからエロイと感じる訳だ。だからこの状況で興奮してしまっても…。

 

「止む無し!」

 

「止む無くないっスよ!」

 

「おぐっへぇ!!」

 

頭頂部にチョップをかまされる。勇んで砂浜に行こうとしていたのでがくんと地面に倒れてしまう。

 

「ここから風紀の乱れを感じたっス!バンブーメモリーの名に懸けて神妙にお縄につくっスよ!」

 

「いや待て、そりゃあ誤認逮捕なんじゃあないか!?俺まだ何にもやってないし!」

 

「そんなこと言ってもアタシは騙されませんよ!昨日の女湯侵入事件もあります!前科を考えれば御用になっても仕方ないっスよ!」

 

「チクショウなんも言えねぇ!」

 

それを出されると口答えする権利が無くなってしまう。諦めてワッパを掛けられよう。

 

「フェノーメノに聞いてたより大人しく捕まりますね。兎に角、風紀委員で取り締まるっス!」

 

「しょうがねぇだろもうどうにもならねぇんだから」

 

「いつもそれくらい大人しくしていてくれればフェノーメノも少しは楽できると思うっスけど…。そういうば奥沢さん、フェノーメノを見てないっスか?」

 

「うん、知らん。誰だそいつ?」

 

悲しいくらい誰か分からない。見たことはあるだろうけど話したことは無いんだろうなぁ。

 

「一か月くらい前から連絡が取れなくなったんスよ。奥沢容疑者を逮捕するでありますと言って…張り込み疲れしてないといいんスが」

 

「あー道理で視線を感じた訳だ。…最近消えたけど。真面目にぶっ倒れてんじゃねぇか?」

 

「あの人に限ってそうはならないと思うっスが。っとと、今は奥沢さんを連行するのが先っスね」

 

「チッ、流れで釈放されると思ったのに…」

 

という訳で、バンブーに引きずられていく。…この時の俺は思いもしなかった。まさかこの次の日、あんなものを見ることになるとは。

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