新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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29話

今日も今日とてトレセンを散歩する。こうやって散歩しているとスローライフの大切さをひしひしと実感する。俺ももう少しのんべんたらりと生きていこうかな?

 

「おや、奥沢さんじゃないですか!開店前ですが占っていきますか?」

 

「いや、遠慮しとく。凶が出たら泣きたくなる」

 

軽く手を振ってフクキタルを躱す。ああいう水晶占いって当たるのか?俺の持論だが、当たらないと思う。

 

「キャアアァァァァァァァッ!!!」

 

「なんぞっ!?」

 

そんなことを思いながら歩いていたら悲鳴が聞こえてきた。しかも割とちゃんと事件性のある悲鳴だ。恐らく近いだろう、駆けつけてみるか。

 

「ドトウ!?どうした、何があった!」

 

「あ、奥沢さん!その、あそこに…あそこに!」

 

ドトウが指さした方向を見ると…

 

「ふ、フクキタルぅ!?」

 

何とフクキタルがぶっ倒れていた!おいおいどういうこった!?

 

「さっき見つけたのか?」

 

「はいぃ~、歩いていたらむぎゅって何か踏んだ感触がして、足元を見たらフクキタルさんが…!」

 

「脈は無い…しかも冷たい。行き倒れか?だがしかし、天下のトレセン学園生が行き倒れるとは、フクキタル、相当金に困ってたのか?」

 

さっきの悲鳴を聞きつけたのか、周りに人だかりができている。だがガン無視だ。一旦警察に電話するか。遺体の始末の仕方なんか知らないからな……あれ?

 

「コイツ本当にフクキタルか?」

 

「奥沢さん?それってどういうことですか?」

 

「だってよぉ、俺さっきフクキタルと話したぞ?本当にさっき。1分前くらいに」

 

「えぇ!?でもどう見たってフクキタルさんじゃないですかぁ~!」

 

「そっくりさんの可能性だってあるだろ?まぁこういう時は本人連れてくるのが一番だ。ちょっと待っててくれ。ちゃんと見とけよ~」

 

「あっ、ちょっとぉ!?」

 

という訳で、来た道を戻ってフクキタルの占い屋に行く。さっきもさっきだし、まだいるだろ。

 

「おーい、フクキタルー?いるかー?いねーのかー?」

 

「おやおや、さっきぶりですね。やっぱり占いっていきます?」

 

「いや占わねぇよってそうじゃねえんだよ、お前死んじまってるんだよぉ!」

 

俺の言葉に目をパチクリとさせて…次の一言は…

 

「はい?」

 

これである。そりゃそうだ。お前死んでるって言われたら俺でもこのリアクションを取る自信ある。

 

「いやえぇっとぉ?どういうことですか?」

 

「どうしたもこうしたもあっちの方でドトウがおめぇの遺体見つけて騒いでたんだよ!俺もこの目でしっかり見たんだよ!」

 

「いやいやいや、私こうして生きてますし、脚だってにょろにょろしてませんよ!?」

 

「それならたんねるけど、昨日の夜辺りお前何してた?」

 

「そうですねぇ~ごはんとライスのライスかけライス丼を食べた後に店じまいして、それから寮に帰ろうとして~…あれ?」

 

腕を組んで唸り始める。ていうかあれ実在したんだ。そして唸る事約一分。腕組を解いて眉間にしわを寄せる。

 

「思い出せません…どうしてたんでしたっけ?」

 

「ほらな?じゃあちょっと来てくれ、自分の遺体確認してくれ」

 

 

 

「ドトウー、連れてきたぞー。スゲェ人だかりだな」

 

「ふ、フクキタルさんが二人になったぁ~~!??」

 

「こうやって見るとスゲェ状況だなこれ。じゃあフクキタル、後は任せた」

 

「分かりました!ではでは…」

 

フクキタルがフクキタルを抱きかかえると顔の隅々まで確認する。俺にはどう見てみ二人いるようにしか見えない。

 

「ほ、本当に私じゃないですかぁぁぁ~~~!」

 

「本人が認めたんなら本人なんだろうな。多分だけどお前ここで行き倒れたんだよ。どっか悪かったのか?金に困ってたとか?」

 

「困ってませんけど…なんででしょうねぇ」

 

周りは訳の分からんこの状況に頭にはてなを浮かべ、ドトウはキャパオーバーしたのか煙を出し始めている。

 

「…あれ、でもなんかおかしくないですか?」

 

「へ、何が?」

 

「だって、ここに私が倒れて死んでいるとしたら、今話している私は…誰なんでしょう?」

 

聞かれて確かに思う。ドッペルゲンガー的な何かだったら今度こそあの世へ強制送還だし、実際問題どういう事なんだろうな?なんてことを思っていたら後ろからバタンと鳴る。

 

「お、おい!どうした!?知恵熱か!?」

 

振り返ると群衆の一人が突然倒れたようだ。しかしここから異様な状況になり始める。一人倒れたのを皮切りにドミノ方式に群衆がバッタバッタと倒れていく。フクキタルとドトウに助けを求めようにもフクキタルはフクキタルと添い寝し始めるし、ドトウは遂にパンクしたのか白目をむいて泡吹いてぶっ倒れてしまった。

 

「うっ…!!」

 

その次には俺の意識が飛びかける。だがすんでの所で繋ぎ止め、膝をつく程度で済ませる。

 

「すまんな、手荒な真似をした」

 

「フクキタル…?」

 

顔を上げると、二人いるせいで訳分からんが、多分最初に死んでた方のフクキタルが浮いていた。雰囲気もそうだが、物理的に浮いていた。浮くだけで結構神々しくなるものなのな。…などと軽口叩いているが、まずい状況であることには変わりない。

 

「お主に忠告したくて少し手の込んだことをやらせてもらったが…やはりと言うか、ウマ娘のみを眠らせて、余波がお主にも効くとはのぉ」

 

「お前…誰だ!」

 

「ワシの事なぞどうでもよい。少し、見させてもらうぞ」

 

フクキタルのような何かが俺の顔を覗き込む。じろじろ見やがって…。ぶん殴ってやりたいが、体に力が入らない。

 

「…ほう、これは」

 

「なんだよくそ…」

 

「なに、直お主も眠る。その前に忠告じゃ。近いうちにそのものは目覚める…いや、既にワシを見ておるな。今の日常を送りたいのなら、その怪物を飼いならすのだ」

 

「何訳の分からねぇことを…!」

 

「よいか、認識するのだ。さすれば道は拓けよう」

 

そう言い終わった後、フクキタルの姿を借りた何者かが奥沢の顔の前で指を鳴らす。その音と共に奥沢は簡単に意識を手放してしまった。

 

 

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