新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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31話

「前が見えねぇ」

 

あれから2、3日経ったが、ハヤヒデに陥没させられた顔面は未だ陥没したままである。あのタイミングでジャン拳でなく黒閃を打ってくるとは…アイツ呪術師かよ。

 

「やっほ~沢さん~いる?…どしたのその顔」

 

「おぉ、ジョーダンか。顔面は気にしないでくれ、今直す。…でどうした?万引きでもしたか?」

 

「するわけないっしょ!?…いやさぁ、教室でネイルやってたらセンセに別の所でやれって言われてここに逃げてきた的な?」

 

「おめぇトレーナーいたろ。だったらそっち行けばよかったじゃねぇか」

 

「そうしたかったけど寮にカギ置いてきちゃって取りに行くのもメンドいじゃん?ちょい場所貸してくんね?」

 

そう言って許可も取らずに机の上を占領してしまった。まぁいいけどさ。取り敢えずPSPとかスイッチだけでも除けておくか。

 

「何飲む~?コーラかオレンジジュースかお茶があるけど」

 

「コーラよろ~。この部屋って結構色々揃ってんな~。ここだけで結構時間潰せそうじゃん」

 

「まぁ遊び部屋とか溜まり場になりかけてることは認める。お前もいつでも使ってくれ。カギは基本掛かってねぇから」

 

ジョーダンがあいよーと言いながらネイルをしているのを眺めながらパソコンとにらめっこしていると電話が鳴る。相手は同僚からだ。

 

「ハイなんでしょ?」

 

『奥沢やべぇぞ!近所のコンビニでハッシュドポテトが半額だぞ!おい行こうぜ!』

 

「待ってろすぐ行く!!」

 

電話を切って急いで準備する!待ってろポテト、今行くからな!

 

「じゃあ行ってくる!カギとか掛けなくていいからなー!」

 

「いってら~」

 

 

 

嵐のような勢いで沢さんがポテトを買いに出かけていった。あたしの分もお願いすればよかったかな?

 

「やっほ~奥ちゃんいるー?」

 

「トランさんじゃん。どしたん?」

 

「これから近所のコンビニにハッシュドポテト買いに行くんよ。なんか半額らしいし。でも外雨じゃん?だから傘貸してもらおうかなって」

 

「沢さんもそれで出てったけど…そこにあるの使っていいんじゃね?あたしから言っとくし」

 

「マジ?助かる~。じゃあジョーダンちゃん、後頼んだ」

 

ネイルしながらトランさんを見送る。…あーやべ、トランさんにもお願いし忘れた。やべぇめっちゃポテト食いてぇ。

 

「外雨じゃねぇかよ傘忘れちまった…あれ?ジョーダン、ここに置いてあった傘知らねぇ?」

 

「あーそれ?さっきトランさんもポテト買いに行くって言って借りてった」

 

「あれまだ2回しか使ってないのに!結構お気にだったのに!」

 

「マ?ゴメン別にいいかなって」

 

「まぁいいや、どっかに折り畳みが…あったあった。次誰か来た時にはこういうんだぞ。『確かに傘は1本あったけどこの前の雨の時に突風にやられて使い物にならなくなったから骨とピニールに分けて粗大ゴミに出した』ってな。じゃあ頼んだぞー」

 

「あいよー」

 

そう言われても、モノ借りに来る人ってそう簡単に来なくね?

 

「奥沢さーん、ブチちゃん来てますかー?あれ、ジョーダンさんじゃないですか。珍しいですね」

 

「スカイちゃんじゃん。どしたの、てかブチちゃんって誰?」

 

「猫ちゃんですよ。雨でどこかに避難してると思って探してるんですよ」

 

「…あーえーと確か」

 

「知ってます?」

 

「あ、そうそう。確かに猫が1匹いたけどこの前の雨の時に突風でやられて使い物にならなくなって」

 

「なんですか使い物にならなくなったって」

 

「それで骨とビニール…いや猫だからビニールじゃなくて…そうだ!骨と皮に分けて粗大ゴミに出したって言ってた!」

 

「言ってたって…奥沢さんがですか!?酷い…なんてことを!…分かりました、日を改めてまた来ます」

 

「またいつでもー」

 

ネイルの出来を確かめながらスカイちゃんを見送る。右手が終わったので左手の準備をしているとガチャリと扉が開く。

 

「財布忘れちまった…誰か来た?」

 

「うん、スカイちゃん。ブチちゃんどこだって言ってたぜ?」

 

「あぁそう。なんでか知らんけどなんか無茶苦茶怒ってそうな背中を一瞬だけ見たけどお前なんて言った?」

 

「いや?沢さんに言われた通りに行っただけだけど」

 

「言われた通りにって…嘘だろお前」

 

「いやだから、確かに猫が1匹いたけどこの前の雨の時に突風にやられて使い物にならなくなって、骨と皮に分けて粗大ゴミに出したって。ここであたしの知恵が爆発したわけよ。骨とビニールって所を骨と皮って言い直してるのよ」

 

「お前何言ってんのか分かってんのか!?とんでもねぇ誤解を生んじまってるじゃねぇか!いいか、猫の時はなぁ『確かここによく来る猫はいたけど秋になって盛りが付いたんで爪切ってマタタビ付けといたからどっかで寝てます』って言うんだよぉ!」

 

「生物の時はそれね。りょ~」

 

「何だよ生物の時って。まぁいいや、頼んだぞー」

 

沢さんが今度こそポテトを買いに出かけていく。あたしも後でポテト買いに行こ。そんなことを思っているとコンコンとドアがノックされる。

 

「すみません、お邪魔します。おや、ジョーダンさんですか?珍しいですね」

 

「たづなさんちーっす。ちょとやぼ用でして、深い理由は無いんですけどね」

 

「そうですか。そういうば、奥沢さんはいらっしゃいますか?少しお話したいことがあって」

 

「奥沢さん…あぁ確かにここによく来る沢さんはいたけど」

 

「なんですかよく来る沢さんって」

 

「秋になって盛りが付いたんで爪切ってついでにマタタビ付けたから多分どっかで寝てるんじゃないすか?」

 

「………」

 

「どしたんすか?そんなに口開けて」

 

「そ、そうですよね!奥沢さんも年頃の男性ですもんね!そうですよね!それでは、また日を改めるのでお伝えください!」

 

「りょー」

 

ネイル道具を仕舞いながらたづなさんを見送る。…やば、今日のネイルサイコーじゃね?写メってウマスタにあげとこ。

 

「ふざけやがってアイツ…半額なの明日じゃねぇか」

 

「おかえりー結局なんも買わなかったんだ」

 

「明日からだったんだよ。ったく、急いで損した。…所でさ、さっき俺の部屋からたづなさんが出てくるのが一瞬だけ見えたんだけど、なんかあった?」

 

「あぁ、沢さん探してた。でも大丈夫、ちゃんと言っておいたから」

 

「言っておいたって何を………まさかあれ言っちまったのか!」

 

「言った。確かにここに来る沢さんはいたけど秋になって盛りが付いたから」

 

「それは猫じゃねえか!たづなさん俺の事発情期になってる奴って見るだろ絶対!オレと猫一緒にするんじゃあねぇよ!」

 

「えーでも一緒じゃん」

 

「何が!」

 

「沢さんいつもお偉いさん相手に猫被ってるじゃん」

 

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