新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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36話

「ハァ…ハァ…」

 

渇く。その形容があたしを飲み込んでいく。初めて自覚したのは菊花賞の後。あの人のウイニングライブを見ていたら心の内がざわめくのを感じた。あの時は気のせいだと思った。でも日を経るにつれその感覚が強くなっていく。紛らわせるために色んなことを試した。でも何も変わらない。

 

「…何か飲もう」

 

財布を出して物色する。リンゴジュースは論外だ。こんな状態で飲んでしまってはリンゴに失礼だ。

 

「買わぬのならそこをどけ。余を待たせるな」

 

「あ…すいません…っす」

 

振り向くとオルフェさんがいた。その目を見た瞬間に渇きが強くなる。…くそ、この感情は何なんだよ!このままでは待たせてしまう。素直にどくことにしよう。

 

「どうぞっす…」

 

彼女は私を見ることなくリンゴジュースを買う。依然渇きはどんどんと強くなり…意思を持って表に出ようとする。

 

「なんだ?私の顔に何かついているのか?」

 

見るな…見るな!あたしを見ないでくれ!抑えきれなくなる!

 

「答えよ。余に何か言いたいのだろう?」

 

……モウオサエナクテイイカ。

 

「ほっぺの所に何かついてますよ。……取って、あげますね」

 

そう言ってオルフェさんににじり寄り、肩に手を回して引き寄せる。

 

「待て、自分で取れッ……!」

 

何か言う前にその唇を奪う。まだ抵抗しそうなので舌をねじ込み強引に黙らせる。その味はリンゴのように甘く官能的なものだった。暫くして解放してあげると混ざり合った唾液が私たちの間に橋をかける。

 

「貴様…!」

 

「まだ終わってないっすよ」

 

左手でオルフェさんの右手を押さえて押し出すようにしてあたしの部屋へ進む。幸いあたしの部屋は近い。それにシュヴァルさんはトレーナーさんと出かけているからいない。ここまで都合のいい夜は無い。

 

「ま、待て!」

 

何か言っているが無視してあたしのベットに押し倒す。はだけた制服の隙間から右手を這わせる。白く絹のように透き通り、それでいてその下には確かな筋肉がある。その黄金比のような肢体をなぞるように人差し指をゆっくりと動かす。

 

「ヒャ……」

 

オルフェさんが小さく嬌声を上げる。その声に疼きを覚えつつ、腰の後ろに右手を回し、頭を抱きかかえるようにして再び唇を重ね…そして離す。

 

「お願い…やめて……」

 

見るとオルフェさんが涙目になり、あたしに懇願してくる。……ああ、やめてくれ、そんなことしないでくれ。

 

「あ…」

 

腰に当てていた右手を太ももに動かし、なぞる。それと同時に頬に出来た涙の一筋を眼球ごと舐めとる。我慢できなくなる。抑えようとも思わなくなる。これはいけないことだ。今すぐ止めるべきだ。そんなことは分かっている。なのに……ナノニ。

 

「止めて……お願い…します……」

 

あのオルフェーブルを屈服させている。その事実があたしを狂わせる。いや、もう既に狂ってしまっているんだろう。制服の上から……彼女の胸を強く掴む。

 

「ヒンッ!」

 

ああ…オルフェーブル!オルフェーブル!!オルフェーブル!!!お前のその顔、その金髪…!貞操まで!

 

「グチャグチャニシテヤル…♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前自殺願望でもあるのか?」

 

「悩みがあるなら聞くわよ?」

 

「アアアアアアアアごめんなさいいいいいいでも欲が止まらなかったあァァァァァァァァ!!!」

 

ドーベルと共にデジタル先生の秘蔵本を読むがご覧の有様である。きっかけとしては些細なものだった。先生がこけてその拍子にばらまかれたものを通りがかったドーベルと一緒に拾ってついでに読ませてもらった。以上、悲劇終わり。

 

「にしても…思いっきりシオンと錯乱坊のエ〇本かぁ。本人たちに見せるわけにはいかねぇな」

 

「そうだね、見られたらついでにアタシたちまで殺されるだろうし」

 

「そうなんです!だからこれだけは門外不出の超極秘漫画なんです!」

 

「「じゃあそんなモノ持ち歩(かないでよ)くんじゃねぇよ!」」

 

「ご尤もですぅぅぅぅ~~~!」

 

なんでこんな禁忌級のモノを持ち出したのか理解に苦しむが持って来てしまったもんはしょうがない。解決法だけ伝授しよう。

 

「はぁ…とにかく、今すぐにでも燃やすなりシュレッダーにかけるなりして処分するんだな。存在してなけりゃ書かなかったのと同じだ」

 

「えぇ~でも~」

 

「でもじゃねぇ!死にたくないなら始末するしかねぇぞ!」

 

「奥沢さんじゃないっすか。何かあったんすか?」

 

「ゲッ、今会いたくない奴第3位が来ちまった!」

 

「何すかその言われよう…」

 

ついうっかり口にしてしまったが至極その通り意味だ。こんなものを描いた、見たなんて知られたらいくらシオンだろうと殺意の波動に目覚めてしまう。だがシオンだけなら問題なく対処できる。

 

「いやぁ、そういう意味だけどそういう意味じゃないんだ。ちょいとな…緊急事態でな。なに、すぐ終わる」

 

(先生、今のうちに逃げろ!)

 

(は、はい!)

 

アイコンタクトで先生に避難を促す。そしてなんてことない事を言いながらシオンに近づく。本の通りの事をするわけじゃあない。最悪の場合には不意打ちでシオンの生命活動を一時的に終わらせなくてはならないからだ。

 

ガン!

 

「ア゜ッ!」

 

「先生ぇ!??」

 

まぁたこけやがった!ドトウめ、いつの間にか因子注ぎやがったんだ!?こけた拍子に原稿が入った封筒を落としてしまっている。しかし中身がばらまかれることは無かった。所でお前ら、悲劇っていうのは連鎖的に起こるって知ってるか?例えばよぉ。

 

「おや。デジタルさん、大丈夫ですか?」

 

「余の道を塞ぐでない。すぐに立ち上がるが良い」

 

こんな感じ。ちなみに今会いたくない奴2位と1位です。

 

「しっ失礼しましたぁ。ではあたしはこれでぇ…」

 

先生が封筒を拾いながら起き上がりそそくさと失礼しようとする。しかしそこは錯乱坊、その封筒に興味を示してしまう。

 

「デジタルとやら、それは何だ」

 

「あぁ~…禁忌に御座いますぅ~」

 

「王命である。それを見せてみよ」

 

「はうっ!で、ではどうぞ~」

 

「うおぉおりゃあぁぁぁー!!」

 

錯乱坊にとび膝蹴りを見舞う。しかし片手で簡単に受け止められてしまう。

 

「先生てめぇ!ほいほいと渡してんじゃあねぇ!」

 

「ですがオルフェーブルさんの王命ですしぃ!」

 

「あぁ分かった俺からも王命くれてやるよ!」

 

髪を掻き上げ…余の望むことを言の葉にする。

 

「疾く失せよ。そしてそれを焚書にせよ」

 

「は、はいいぃぃ!」

 

「よし、これでどうにかなった」

 

「奥沢、そこをどけ。彼奴を追えぬ」

 

「ワリィな。あの中身は少しばかり俺にも都合が悪い。ここは通さないぜ?もし通りたければ…俺を倒していくんだな!」

 

即座に戦闘態勢に入る。錯乱坊はこの程度で止まるわけがない。

 

「そうか…ではいくぞ」

 

ゆっくりと近づいてくる。しかし隙が無い。ヘタな攻撃をすれば一瞬でカウンターを取られてYOU DIEDだ。身構える事しかできないでいると、回し蹴りの予備動作に入る…しかしそれも一瞬の事。100分の1秒で脚が俺の顔面を。

 

「オル、そこまでだ」

 

捉えることは無かった。ジャーニーの言葉で当たる直前で止まったようだ。

 

「お前の脚はそんなくだらない事に使うものではないよ。奥沢さんの相手は私がしよう」

 

「そうか。…姉上、油断するな」

 

「分かっているよ。さて、奥沢さん。私は少し怒っているんですよ」

 

「へぇそうなのか?助けてくれたから慈愛の女神に見えてたんだがな?」

 

「そうではありません。オルの言葉をそう簡単に使わないで頂きたい。その纏う空気はオルが纏ってこそです」

 

「モノマネにケチ付けるためだけにこの喧嘩買ったのかよ!」

 

「早く言えばそういう事です。さぁ…始めましょうか」

 

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