新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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37話

「はい」

 

「チィッ!!」

 

「これも避けますか。ではこれで」

 

「ウグッ…!」

 

腹の間に腕をクロスしてジャーニーの前蹴りを何とかガードする。攻撃動作がいちいち速ぇ、予備動作も少ねぇ、反応してからじゃ遅れる!

 

「どうしました?フェノーメノさんとやった時はこんなものではなかったはずですよ?」

 

「ふざけんな俺はただの人間だ!ウマ娘と戦って善戦できてる方がおかしいだろうが!」

 

「そうでしたか。身体能力を考慮しても私たちとほとんど同格でしたのでついうっかりウマ娘だと思ってしまいました」

 

「嘘つけ!男が娘名乗ってたら気持ちワリィだろうが!」

 

「昨今の情勢を全否定する発言ですよ?大丈夫なんですか?」

 

「どっかの大統領が大丈夫なんだから大丈夫だ!これでも喰らえ!」

 

右ストレートに左ジャブ、その回転力を利用して右エルボーに繋げるが悉くいなされる。構わずに右アッパーに両こぶしで打ち降ろす。しかしスウェイで紙一重で避けられる。ここまでやっても汗一つすらかかねぇとは…。

 

「もう終わりですか?ならこちらから行かせてもらいますが」

 

「…いいぜ、来いよ」

 

カウンターの姿勢を取りながら後ろの様子を見る。俺の目的はあくまでも時間稼ぎ。先生がここを離脱してしまえば俺の勝ちだ。

 

「シオンさんお願いします通してください!」

 

「い、行かせないっすよ!」

 

(;゚Д゚)

 

なぜシオンが通せんぼしているのか、これが分からない。

 

「シオン頼む先生を通してくれ!俺らが死ぬ!」

 

「なんか…中身が気になるっす!」

 

「畜生め!ドーベル!お前もメジロだろ!武器の一つくらい持ってるだろ!」

 

「え、えぇ!?」

 

俺に言われてスクールバックの中を漁るドーベル。すると中からやっぱり何か出てきた。

 

「か、カリスティックなら!」

 

「なんでそんなマイナーなモン持ってんだ!もう何でもいいからどうにかしてシオンを押さえてくれ!」

 

「う、うん!」

 

ひと悶着あったせいでもう少し時間を稼がないといけなくなった。ジャーニーに向き直って改めてカウンターの姿勢を取る。

 

「お話は終わりましたか?では…少し寝ててください」

 

「うおっ!?」

 

ジャーニーがまず繰り出したのは左のジャブ。まず速すぎる。構えも無しにあの速さは意味分からねぇ!カウンターなんか取れやしねぇ!

 

「脇腹がお留守ですよ」

 

「フグ!」

 

言葉の時点で既に貫手が刺さっていた。マジに刺さっている。そこから血が滲み始める。

 

「おや失礼、うっかり手加減し忘れてしまいました」

 

ニタニタ笑いやがって…。だが刺さっているならこれがチャンスになる。ジャーニーの右手を左で掴む。そのままギリギリと握りしめる。

 

「情熱的ですね。ですが、今はご遠慮いたします」

 

ハイキックで拘束を解こうとするジャーニー。だが一回掴んだんだ。

 

「離さねぇよ!」

 

「これは…」

 

数発パンチを貰うがそれでも離してやらない。耐えながら右手に力を籠める。このチャンスをものにするには一撃でジャーニーを沈めるしかない!

 

「いい加減離していただけませんか?」

 

「無理な注文だ!」

 

「では右耳を貰いましょう」

 

その魔の手が右耳へ迫ってくる。しかし…いやはや…

 

「何…?」

 

「悪いな」

 

俺は渾身の右ストレートをジャーニーの喉に直撃させる。瞬間、左手の拘束を解くとジャーニーは後ろに吹っ飛んでいく。そして俺は右のもみあげ付近をかき上げる。

 

「右耳はとっくの昔に無くなってるんだ」

 

「まさか……そんなことがあるのです…ね」

 

「無理するなよ。息できないだろ?そのまま寝ててくれ。…俺も少し寝る」

 

少しばかり疲れた。わき腹からの出血も止まってきている。もう時間を稼ぐ必要も無いだろう。壁にもたれかかって休憩

 

「おい、これを描いたのはどこの不届き者だ」

 

「…?」

 

「こ、こんな羨ま…いやいや、こんな破廉恥な事…!」

 

目を開けると錯乱坊とシオンが封筒から原稿を取り出して読んでいる。…なんで?見渡しても先生はここにはいない。なのになぜ原稿だけがここにあるのか?

 

「ドーベル、どういうことだってばよ」

 

「…デジタルって確か原稿持ち歩くときには原本とコピーの二つ持ち歩いてたような」

 

「デジタルどこ行きやがったぁ!ぶっ殺してやる!」

 

休憩するのは後だ。奴をぶっ殺してこの2人の前に差し出してやらないと気が済まない。

 

「よい。彼奴は放っておけ」

 

「あたしも…大丈夫っす」

 

「あぁ、なんで!?」

 

「そういう気分故…な」

 

え、なんで期限良さそうなの?2人とも一応それお前らの江戸本だぞ?俺なら即刻ブチギレて描いたヤツをあの世に送ってやるところだが。

 

「この一件は一点を除きすべて余の元に許すことにする。…奥沢、近う寄れ」

 

「何だよオルフェ…ッ…!」ドズン

 

歩いて行ったすぐに俺の喉に錯乱坊のハイキックが刺さる。次の瞬間には意識が遠のきほぼ逝きかけるがギリギリで耐える…が、今度は呼吸困難で死にそうになる。

 

「ァ…カ…」

 

「姉上への不遜はこれで手打ちとしてやろう。姉上、よいな?」

 

「お前がそう決めたのなら構わないよ」

 

「ゲフッ…後腐れ無しってんなら俺もそれでいい。部屋帰ろ。ハァ~…なんか無駄に疲れた気がする」

 

ボッコボコにされたし何より血に染まった服を着たままそこら辺を歩く訳にはいかない。完全に治ったしもう何ともないけど傍から見れば事件待ったなしだ。

 

「奥沢さん、少々よろしいですか?」

 

「どうした?傷の治りが速いってか?」

 

「それは最初から分かっていますが…何故オルの攻撃に対して…いや、私の攻撃に対してもカウンターを取らなかったのですか?」

 

「取れる訳ねぇだろ反応する前に既に当たってるんだから。…なんでそんなこと聞くんだ?」

 

「不思議に思ったんです。捌くので手いっぱいのはずなのに目線は全て正確に攻撃を捉えていたんです」

 

「あっそう。偶然じゃね?」

 

「…引き留めてしまい申し訳ありません。ゆっくりとお休みください」

 

「ああ、そうさせてもらう」

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