新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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38話

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「ブチちゃんの恨み、晴らさでおくべきか!」

 

「だから話を聞いてくれ!」

 

「問答無用!」

 

「うおおぉぉぉぉぉぉ危ねええええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

死ぬ!死ぬ!!マジで死ぬ!!!今まで死にそうなときは何度もあったが今回ばっかりは本当に死ぬ!

 

…あ、どうも。開始早々今際の際に立たされている男、奥沢だよ。なんでこんなことになってるかって言うとね…

 

 

 

「どうも~奥沢さんいます~?」

 

「おう、セイちゃんか。キャットフードか?ちょっと待ってろ。ちゅ~るでいいか?」

 

「いやー今日は特別なものを食べさせてあげようかなって思いまして」

 

「へー何食わすんだ?」

 

「それはですね~」

 

色々と用意をする俺の目の前を薙刀が通る。何が起こったのかまるで分らないのでセイちゃんの方を見ると薙刀に日本刀、背中にクロスボウを担いで完全武装していた。

 

「ゑ?」

 

「ブチちゃん、殺したんですよね?」

 

「はい?…いや、何の事?」

 

ブチちゃん…あのメス猫か。もちろん俺は殺してない。たまに触れ合ってはいるがその程度だ。

 

「あの時ジョーダンさんが言ってました!奥沢さんが骨と皮に分けて粗大ゴミに出したって!!」

 

「……ああぁ!!」

 

確かにあの時ジョーダンはセイちゃんにそう言ったって言ってた。あれから訂正するのを忘れていたが…こうなるとは!

 

「思い出しました?では死んでください!」

 

「待ってくれ、話を聞いてくれ!これには深くはねぇけど訳があるんだ!」

 

「くたばれぇぇぇ!!」

 

 

 

……以上、回想終わり。俺昨日死にかけたばっかりだぜ?命日がかなり近い証拠だな。実際厄年だし。

 

ドヒュン!

 

「ヒュイ!?」

 

「外しちゃったか~。…次は当てるよ~」

 

怖えぇ…。俺の左耳掠めやがった…。今はとにかく逃げねぇと!隠れて話ができる程度まで落ち着いてもらわねぇと。

 

「隠れても無駄ですよぉ?私たちは嗅覚も人間より鋭いんですよ?すぐに見つけてムースにしてあげますね」

 

え、俺泡立てられるの?そのレベルまでミンチにされるって事…?捕まるわけにはいかねぇじゃん。だって死にたくないもん。幸いアイツの移動方法は徒歩か距離を詰めてくるときの縮地くらいだ。…なんで縮地使えるんだ?そんな疑問をポッケに仕舞いながら対抗策と隠れる方法を模索しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれれ~こっちから匂いがしたんだけどな~おかしいな~」

 

倉庫の中で息を潜める。逃げてる途中で厨房から胡椒を拝借。警察犬ですら誤魔化せるんだ。アイツだって誤魔化せるはずだ。

 

「流石にちょっと休憩しますか~」

 

セイちゃんが段ボールに腰掛ける。思わず息を吞んでしまう。だって…

 

「ここにいるのは確かだと思うんだけどな~」

 

うん、正解。その下にいるよ。段ボール箱は潜入の必需品だってどっかの伝説の傭兵が言ってたし。実際今俺は活用している。

 

ドズッ!

 

「ッッッッッッ……!!!!」

 

「気のせいだったか~この中にいるような気がしたんだけど」

 

だから正解だっての。俺の肩を掠ってるし。確実に血がついてしまった。もうダメだ、おしまいだぁ。しかしそれから何のアクションもなく、足音の後に扉が閉まる音が聞こえる。どうやらやり過ごせたようだ。肩のキズを手当てしてから外に出るとしよう。…おっと、靴ひもが緩んでらぁ。

 

「フン!」

 

目の前を薙刀が通る。さっきもあったなこの光景。横を見ればやっぱり死神がいた。

 

「待ってくれ!いい加減話を聞いてくれ!」

 

「遺言ですか?少しなら聞いてあげますよ?」

 

「ジョーダンのアホが言ったのはぁ!」

 

「ニャアン」

 

「ネコ、ネコ、ネコ。うむ、やはり猫はいいもふもふ最高肉球最高吸い心地最高。…む、貴方たちどうしました。まるで死んだネコの弔い合戦をしているようですが」

 

「え」

 

弁明しようとしたらライトオが猫を連れて通りかかる。それだけなら驚かない。セイちゃんが驚いたのは連れてた猫が上手い事件のブチちゃんだったのだ。

 

「なんで…すでに灰になったはずじゃ?」

 

「だからさっきから言ってるだろ俺の話を聞けって!」

 

「どういうことか説明してもらえます?」

 

ご要望にお応えしてどうしてああなったかを説明する。俺の中で後でジョーダンにポテトを買わせることが閣議決定したのと同じタイミングでセイちゃんが喋り始める。

 

「ごめんなさい。そうとは知らずに随分追い回しちゃいましたね」

 

「うん、今度ばかりは本当に死ぬかと思ったよ」

 

「何の話かは分かりませんが取り敢えずにゃんこを吸いましょう。そうすれば万事解決です。さあこのにゃんこを吸いなさい。私が自分からにゃんこを差し出すのは天文学的確率ですよ」

 

「そうですね~。運動したから疲れちゃいましたよ~」

 

「おいセイちゃん、次は俺だからな」

 

順番待ちでブチちゃんを見ているとふと違和感に襲われる。ブチちゃんの模様ってこんなんだったか?あとなんか心なしか大きいような気がする。

 

「あれ…この子、ブチちゃんじゃない」

 

「…ッ」

 

「ブチちゃんはですね、こんな模様じゃないですしもう少し軽くて何よりも…この子“ついてる”んですよ」

 

「ッ!」

 

決定的だ。ブチちゃんはメスだ。ついてるってなったら言い逃れが出来ないほど知らない人になってしまう。軽くストレッチをしながら、セイちゃんに背を向ける。

 

「気のせいじゃねぇか?」

 

「言い残すことはありますか~?」

 

「俺のせいじゃねぇ~~!!!」

 

「…ねぇジョーダン、奥沢が追っかけられてるけど」

 

「ふーん。沢さん何やらかしたんだろ。さ、ご飯だぞブチー」

 

「ニャン」

 

その後、今度こそ本物のブチちゃんを発見してセイちゃんの誤解を解いたのはまた別のお話。

 

ブズリ

 

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

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