新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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41話

「ねみぃ……ふぁああぁ~~~」

 

最近寝不足気味である。理由は…特になし。まぁお布団が恋しい季節になったからと言っておこう。とは言えここは東京。なんやかんや気温は2ケタある。十分にあったかいもんである。今日は休みという事で近所のゲーセンで少し遊んで歩いてトレセン寮に帰っている所。既に日が落ちかけ、街灯が仕事を始める時間帯に差し掛かる。

 

「……!…………!」

 

遠くの方で何かが聞こえる。寮まであと10分って所だが、ご近所でなんかあったのか?野次馬しに行くか。幸い耳はいい方なので大体の目星を付けながら歩いていくと現着できた。

 

「おめぇんトコの担当さんには昔世話になってなぁ!」

 

「そのお礼参りだよ!」

 

「お願いです、どいてくださいトレーナー殿!これ以上は!」

 

誰かがウマ娘をかばっていてそいつをいかにもガラの悪い男5人くらいが殴る蹴るの応酬。可哀そうになぁ。…あれ……あいつ、ヤエノ師匠か?んでかばってるのは師匠のトレーナーか。……ッち。

 

「ヤエノ…ダメだ。君の力はこんな奴らに使っちゃいけない」

 

「ですが…!お前ら!」

 

「待ち遠しいだろぉ?こいつの後はお前だぜぇ?お前の大好きなトレーナーさんはこれで終わりだ!」

 

「まぁ落ち着け」

 

師匠のトレーナーに対する蹴り上げをいなし、カウンターで正拳突きを入れる。上手く入ったのか、相手を後ろに引かせることに成功する。

 

「よう師匠。邪魔しちまったか?」

 

「奥沢殿!どうしてここに!?」

 

「偶然通りがかっただけだよ。なんだこいつら」

 

「お恥ずかしながら、昔の私は少々荒れてまして。その時に暴力を振るってしまった方々だと思います」

 

「結構なやんちゃしてなんだなお前。大丈夫っすか、先輩」

 

先輩を見ると中々にボコボコにされたようで、顔にはあざが出来ている。あーれま、結構な時間かばってたんだなぁ。あ、気絶した。

 

「取り敢えず病院行った方がよさそうっすね。師匠、警察の対応はやっとくから119番頼んだ」

 

「よそ見すんな!」

 

「奥沢殿、危ない!」

 

「ん」

 

ノールックでパンチを止める。多分強い部類だと思うんだけど…普段の相手が相手のせいで軽く止めてしまう。順調に人外になっていってる気がするのは俺の気のせいだという事にしておこう。

 

「通りがかりが邪魔すんじゃねぇ!」

 

「赤の他人だったらスルーしてたけど、知り合いだからな。カッコつけさせてもらうさ。師匠、今のうちに警察に通報よろしくな」

 

「すいません、恩に着ます!」

 

これで準備が整った。後は耐久戦だ。

 

「予定とは違うけど……まぁいいや!お前ボコれば少しは気が晴れるだろ!」

 

「気晴らしか?ならちょうどいいや。俺も鬱憤溜まっててよぉ。……クレゲでありえんくらい沼った憂さ晴らしだ!覚悟せい!」

 

「俺ら関係ねぇ!」

 

3人の攻撃を組み手をするようにいなしていく。多対一という事で少し手こずるが相手のスピードが遅いので何とかなる。もう少しで完全に慣れるな。ポリ公が来るまで10分はあるだろうな。…やめた、ボコってノックダウンさせた方が楽だなこりゃ。

 

「ちょこまかと!」

 

「痛いのは嫌なんだよ!」

 

躱しながら師匠の方を見る。状況的に師匠は動けないし先輩はダウンしている。無いとは思うけど人質代わりにされたら面倒になる。さてまずは1人…。

 

「破ぁ!」

 

「グハッ!」

 

正拳突きを完璧に決めて戦闘不能にする。あと2人も軽く仕留めるか。残りに目を向けると闇の中で街灯の光できらりとしたものがこちらに向かって飛んできていた。

 

「うお!?」

 

「避けるとはスゲェなぁ。次は当てるぜぇ?」

 

「オレもいることを忘れんなよぉ?」

 

「魔術かなんかでも使えるのか?是非とも見せて欲しいね」

 

全く見えなかったが飛び道具があるとなると師匠と一直線に並べない。避けると当たっちまう。少し慎重に立ち回らないといけなくなった。さて、先に潰すべきは…。

 

「近距離担当!」

 

「バカが!おい、やっちまえ!」

 

「おうよ!」

 

飛び道具担当が師匠目掛けて何かを投げる。だがそれは分かってる。対策は打たせてもらってる。

 

「何!?」

 

「射線上にお仲間さんを投げておいた。案外軽かったんでな、助かったよ」

 

「てめぇ!」

 

よく見たらメリケンサックを装備してたがもう関係ない。頭をアイアンクローで掴み、そのままアスファルトにたたきつける。気絶はしてるし多少出血してるが死んではいない。まぁ正当防衛でしょう。

 

「さぁて、じっくり料理してやろうか」

 

「く…くそ!」

 

じりじりと距離を詰め、スウェイで距離を詰められるくらいになったその時。

 

「あ、ヤエノさん!ってどういう状況ですか!?」

 

「凄いケガ…大丈夫ですか!?」

 

チヨちゃんにアルダン…!?後ろから聞こえてきた。偶然来たんだろう。だがしかし、面倒になった。チヨちゃん達と俺は直線上。相手はそれを見逃してはくれなかった。

 

「これでも避けられるか!?」

 

くそ!避けれねぇ!

 

「…いってぇ」

 

「奥沢さんも!?大丈夫ですか!?」

 

「…大丈夫に見えるか?」

 

左手の甲と右腕に刺さったナイフを見せながら答える。来てくれない方が幸福だった。左手の方に刺さったナイフを抜いてチヨちゃんの脚元に投げる。

 

「塀の陰に隠れてくれ。そこに居られたら面倒だ」

 

「は、はい!」

 

「肩をお貸しします!」

 

2人のおかげで先輩も塀の陰に運ばれる。この点は感謝しないとな。

 

「さて、アクリルのナイフか。成程見えない訳だ。だがタネが分かれば何ともねぇな。見えないって事はよぉ」

 

右腕のナイフを抜いて男に投げる。それが右足首に直撃する。

 

「あがぁ!」

 

「お前にも見えないよなぁ?このまま左腕貰うわ」

 

左腕の関節を外してゲームセットだ。あーくそ、無傷で行くつもりだったけどな、2発喰らっちまった。

 

「悪い師匠、少し時間かかった」

 

「時間かかったではありません!凄いケガじゃないですか!」

 

「その事なんだが…包帯ない?普通に痛いんだこれが。まぁ次回には治ってるはずだ」

 

「それなら私が」

 

アルダンに手当してもらっているとさっきの所から物音が聞こえた。その次にはサイレンの音。

 

「そろそろ来ますね。これで解決ですね!」

 

「いや、1人逃げた」

 

覗いてみるとやはり一人いなかった。ナイフの野郎か。どこ行きやがった?

 

…追えるかな。待っててね。

 

「逃げても捕まるのは時間の問題でしょう。あとは警察の方々にお任せしましょう」

 

「いや、追ってみる」

 

「ですが、手掛かりもありませんよ?町外れとは言え入り組んでますし…見つけられるんですか?」

 

「うん、見つけるよ。先に帰ってていいよ」

 

「は…はい」

 

返事も聞かないで追跡を始める。そう遠くは無いはず。…必ず捕まえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

康くんの手に穴を開けた責任、取らせてあげる。生まれてきた事を後悔させてあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チヨノオーさん、アルダンさん。ここをお任せしてもよろしいですか」

 

「えぇ!?ヤエノさんも追うんですか!?」

 

「すぐ戻ってくるでしょうし…奥沢さんにお任せしてもよろしいのでは?」

 

「いえ、何か嫌な予感がするんです。可能な限り直ぐに戻ってきます」

 

奥沢殿が曲がった角を同じように曲がる。いや…あの人は本当に奥沢殿だったのか?そんな疑問を抱えながら次の角を左に曲がると…

 

「ッ!!?これは!?」

 

顔に何かがぶつかる。払いのけるとそれが紙であることが分かった。よく見ると何か書かれていた。追いながら読んでみ

 

「なッ!?」

 

そこに書かれていたのは、ただ一文。

 

『賢明な判断に期待するよ』

 

これのみである。だがしかしこれだけで分かってしまった。踏み入れてはいけない領域に入ろうとしていることに。得も言われぬ恐怖に支配されかけたが、何とか振り払い、来た道を引き返す。アルダンさん達には見失ったとしか言えないだろう。恐らく、他言した瞬間…。

 

「ありがとね」

 

「…」

 

考えない方が身のためだろう。

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