新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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43話

「確定で過剰防衛だしやろうと思えば傷害罪で簡単に起訴されるけどどうする?」

 

「そんなー」

 

警察署に連行されてそこで1日過ごして朝ごはんにかつ丼食べながらお巡りさんからお話を聞く。流石にやりすぎたかなー。

 

「それにしても、こっちでもお前を世話することになるとは思わなかったよ」

 

「いつ以来でしたっけ?最後に合ったのが院の時だったから…6年くらいぶりですか?」

 

「そのくらいか?まぁ確変あっても正当防衛は無理だが、状況が状況だしまぁ猶予くらいは付くだろ。今日は俺がなんやかんやしとくからもう帰れ」

 

「へーい」

 

さてと、学園に戻ったら俺の評価がどうなっているか。落ちに落ちまくってるものがブラジルまで貫通してる気がする。

 

「ちょっと待て、これだけ聞かせてくれ」

 

「なんすか?もう全部話しましたよ?」

 

「お前、まだあの事引きずってんのか」

 

あぁ、あれか。あの時の担当刑事もこの人だったなぁ。

 

「別に引きずっちゃいませんよ。あんなクズの事でこっちの人生滅茶苦茶にされたらたまったもんじゃないですし、やっちまったんですから事実は事実として受け止めるしかないじゃないですか」

 

「吉花ちゃんの事もか?」

 

「…」

 

その名前を出されると弱いんだよ。まぁ、そっちもそっちだ。

 

「死人は死人です。気にして生き返るんだったら結構ですけどね。んじゃ、お疲れ様でーす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、そうなるよな」

 

トレセンに帰ると明らかに避けられている感じがする。俺を見るなり2歩程度離れる。あんなことがあった手前、こうなってない方がおかしいんだけどな。仕方ねぇ、もう言わなくても分かると思うけどカフェテリアでコーヒー飲むか。

 

「よう、黄金世代勢ぞろいだな。何食ってんだ?」

 

「ど、どうも…奥沢さん」

 

うわー引くくらい警戒されてる。いくら何でも突然切りかかったりしないっての。俺辻斬りじゃないんだから。

 

「いやー大変だったよ。まぁ結論だけで言えば猶予が頑張れば付くんじゃねぇかって言ってたよ。マエあるからギリギリだろうけどさ。そんな事より警察の人に昔世話になった人がいてさ!俺ビックリしちゃったよ」

 

「何も思って無いんですか?」

 

「何もって…何?」

 

「腕を切り落としたことについてです。彼に対して罪悪感を持ってはいないのですか?」

 

グラスからの質問。聞くわな普通。昨日お縄に掛けられた人間が特に何もなかったように話してたら不思議にも思うわな。

 

「まぁくっつきそうだって話だ。あとは何も。他に手があったと言われればそうかも知れないけど、別にあれがやりすぎだとは思っちゃいない」

 

「そう…ですか」

 

俺の答えを聞いて俯いてしまった。それから間が生まれてしまう。何を話していいのか分からず、思考を巡らせているんだろう。

 

「悪かった」

 

「え…?」

 

「分かってるよ。俺がいるだけで空気が悪くなってることくらい。邪魔者だったな、すまない、立ち去るとするよ」

 

グイッとコーヒーを飲み干し席を立つ。…なんだか部屋に戻る気分でもねぇな。屋上にでも行って禁煙でも止めるか。

 

「待って奥ちゃん」

 

「なんだよ。これ以上個々の空気を悪くしたくはないんだが?」

 

「昔は荒れてたって昨日言ってたよね。その考え方は…昔からって事?」

 

「そうだな。はっきり言って、育ちが悪すぎた」

 

「でも今は全然違うじゃんよ。殺されかけたりしてるけどいつも笑ってるじゃん」

 

「まぁな。確かにトレセンに入ってから毎日笑いっぱなしだ。つまらない時間はそれこそないんじゃねぇか?」

 

それでもなんでか、お前らとは一歩引いたところで関わっている。関わってしまっている。お巡りさんに引きずってないって言ったけど…すまん、ありゃ噓だった。

 

「奥ちゃんさ…昔何があったのさ?荒れてたって言ってたけどさ。教えてくれる範囲でいいからさ」

 

こいつらとも付き合いも長いからな。少しは打ち明けるべきかな。

 

「少し…昔話をしようか。…その前にお前ら、人殺しがなんで最後の一線って言われてるか知ってるか?…はいゴルシ、回答をどうぞ」

 

「はぁ、アタシかよ!?っていうか、分かんねぇよ。そんな急に言われても。倫理的にいけねぇとかじゃねぇのか?」

 

「真面目に答えやがった。もう少しアホっぽい回答を期待したんだけど」

 

「アタシの事なんだと思ってんだ」

 

「歩く狂気。…まぁ確かに倫理的にいけないってのもあるがはっきり言って正解じゃない。これから話すことは、ただの俺の持論だ。正解なんぞどこにもないし求めてもいない。それを踏まえて聞いてくれ」

 

その場に沈黙が流れる。その空気を肯定と受け取り…重い口を開く。

 

「段階がある。まず、真っ当な人生を歩けなくなる。後悔に苛まれ、終わらない贖罪に心身ともにやつれていく。ここまでは小学校の道徳の授業かなんかで聞いたことあるだろ?まぁ普通の人間はここで止まる」

 

「その先があるんですか?」

 

「今のは…カフェか?結構集まって来てんのな。当たり前だろ。そうじゃなきゃ段階があるなんて言わねぇ。その次は開き直る事だ。まぁ前の過程ふっ飛ばしてここに来たけど。『もうどうにもならねぇんだから何したっていい』って思うようになる。それに並んで犯罪に対する躊躇が一切なくなる。本当に何でもできるようになるぞ?荒れまくるのも訳ない。無敵の人の完成だ。オルフェ、お前もなってみるか?」

 

「たわけたことを言うでない。それと貴様、まさかとは思うが…」

 

「勘付いても言うなよ。そんな無敵の人がそのまま生きてるとどうなるか。簡単に言えば他人に対して何も思わなくなる。それこそ腕を切り落としたとしてもな」

 

「ちょっと待ってよ奥ちゃん。さっきから話し方おかしくない?なんで自分の事みたいに言ってるの?」

 

「…さて、前置きはこれ位にするか。ここからもっとつまらない話になるぞ?覚悟はいいか?聞きたくなかったら今のうちに帰れよ~。じゃあ始めるか…俺が19年前にクソ親父を殺した話」

 

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