新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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5話

「君をスカウトさせてくれ!俺と一緒にトゥインクルシリーズを!」

 

「いやああぁぁぁぁぁぁァァァァッ!!!!」

 

「……クッ!何でだ!何故いつも拒まれる!」

 

逆立ちの状態から腕の反動で元の状態に戻る。失敗数は今まで食べたパンの枚数と同じように覚えていない。こうなったらスカウトの方法から見つめ直した方が良いのかもしれない。

 

「ゴールドシップさん!いい加減にしてくださいまし!それがいったい何だと言うんですの!?」

 

「おめぇには分かんねえのか?この伝説の物質…ゴルシウムの圧倒的輝きをッ」

 

「ただの石ころにしか見えませんわよ!!」

 

俺の目の前を二人が通過していく…いや待て………あの葦毛、今なんて言った?

 

「ちょおッと待ちなそこの二人!アンタが持っているその石……もしかしてゴルシウムと言ったのかな?」

 

「えぇっとぉ…どちら様でしょう?というか、ノッてこなくてもよろしいんですが…」

 

「おめぇは分かるのか!コイツの輝きを!」

 

「あぁ分かるとも…だけど悪い方でだがな…」

 

俺が生唾をすると二人もつられるように表情が消える。

 

「な、何があるんですの?」

 

「俺も聞きかじったような知識だがな……コイツの出所はバミューダトライアングルの中心…その深海で取れるとされているらしい」

 

「バミューダトライアングル…その海域に入ってしまった船、飛行機が消息を絶つ魔の海域ですわね」

 

「ゴルシウムの事を何も知らないマックちゃんでもそれ位の事は知ってたか。そして、コイツを手にしたものは金銀財宝、不老不死、ありとあらゆる望みが叶うとされているんだ!」

 

「ありとあらゆる!それでは、スイーツ食べ放題でも叶うのですか!?」

 

「応とも!ゴルシウムに掛かればフォフォイのフォイだぜ!」

 

嬉々としてゴルシウムの有用性に心躍らせているな。そんな力があるなら俺も欲しい位だ。だがこいつには恐ろしい話がまだ残っている。

 

「喜んでいるところ悪いが…話はまだあるんだ。言っただろ?悪い方で知っているとな」

 

俺の言葉に今度は冷や汗のようなものを流し始める。

 

「心して聞け。出所はさっき言った通りだが…あそこは曰く付きだ。しかもとっておきのな。マックちゃんも自分で言っただろ?船や飛行機が消息を絶ってるとな。だからか、あそこには怨念が積もりに積もっているらしい。それこそ道連れを欲しがるほどに」

 

「お、おい……じゃあまさかコイツは」

 

「一説によれば怨念の結晶がそのゴルシウムではないかと噂されている。そいつを手にすれば何でも願いが叶う反面、近いうちに必ず怨念に祟り殺されるって話だ」

 

「そ、そんなものどこで手に入れたんですの!?というか、私達もひょっとして…!?」

 

「落ち着けマックちゃん!この怨念は射程はせいぜい数十センチメートル。ゴルシウムに触れる…もしくは物凄く接近しなければ問題ない。」

 

「じゃあアタシはとっくの昔に手遅れだっていうのか!?マックちゃん助けてくれよぉ~!」

 

「どうにもできませんわ……ですが、丁重に弔って差し上げますわ」

 

ゴルシの葬式が確定したか…南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…いや、待てよ?ひょっとしたらまだ助かるんじゃあないか?

 

「ゴルシ、まだ願いはかなえてもらってないな?」

 

「あ、ああ。さっき手に入れたばかりだからな。もしかして助かるのか!?」

 

「まだ行けるかもしれない。解呪すれば助かるかもしれない。知り合いの呪術師はいないか?最悪占い師でもいい」

 

「それならフクキタルとリッキーだ!早速奴らの居る場所に出発じゃ~い!」

 

 

 

 

 

「…成程、事情は分かりました。リッキーさん、行けますね」

 

「もっちろん!どんな呪いでもコパッと解決しちゃうよ!先ずは呪いの種別と強さから調べちゃうね!」

 

「た、助かったぜ~」

 

「これでどうにかなればいいのですが…」

 

「どうにかなることを祈るしかないだろ」

 

フクキタルとリッキーが何やらそれらしい儀式っぽいことをする。まるっきりの専門外なので黙って見守ることに徹する。少ししてトラブルシューターを終えた二人が不思議そうな顔をしながらゴルシの方を向く。

 

「ゴルシさん、本当に呪いに掛かってるの?」

 

「掛かってない訳がねェ!このゴルシウムを触っちまったんだからな!」

 

「ゴルシさんとそのゴルシウム?…からも呪いといったものが感じ取れないんですよ。断じて!手を抜いている訳ではありません!シラオキ様に誓って!」

 

「まさか…呪いが隠れた?」

 

「そんなことが?あり得ますの?」

 

「いや、あり得るぜ。呪いとは本来、意志を持っているものだ。そいつが祓われる危機に迫った瞬間、石の奥深くに自身を隠してステルスしているのかもしれない…だとしたら相当なレベルだ」

 

「じゃ、じゃあ…ゴルシちゃんはもう助からないのか?う、うう……ううう~~~」

 

「…いえ、まだ道はあります!」

 

フクキタルがジャージに早着替えして、自信ありげに立ち上がる。ほぼ詰みだっていうのに、まだ諦めていなかったのか。

 

「こうなったら片っ端から試すんです!除霊、解呪、その他もろもろ!数うちゃ当たる戦法です!」

 

世間ではそれをパワープレイという。だが他に打つ手が無いというなら……

 

「やるしかねぇだろ。安心しろゴルシ。片棒担いだんだ、一緒に乗り越えてやるよ」

 

「ほぼ巻き込まれた形ですが…友人にこのまま死なれるのも後味が悪いですわ。リッキーさん、フクキタルさん、まずは何から始めましょうか」

 

「お、お前らぁ~!」

 

「ではいきますよ!まずは…滝行ですッ!!!」

 

こうして俺たちは古今東西ありとあらゆるものを試した。中には呪いが来るまでもなく死んでしまうかも知れないこともあった。だがこれも友の為に乗り越えた。

 

「次は相撲です!」

 

この時ばかりは本当に死んだと思った。ウマ娘と相撲ってよく考えなくても命の危険が危ない。だがしかし、俺は乗り越えた。呪いが解けることを信じて。

 

「ど、どうだ?呪いは消えたか?」

 

「いや、ダメだ。……隠れていて判別…出来ねぇけど……肩にかかる重さってのがどんどん重くなってきやがる」

 

気付いたら俺たちは海辺の砂浜であおむけに倒れていた。いったいどれほどの時間が経ったのだろう。既に日が沈みかけている。俺たちの心はまだ折れていない…が、体が言う事を聞かなくなっている。

 

「リッキー大先生、次は……なんでしょう?」

 

「も、もうほとんど試したよ~……!いったいどうすればいいの!?」

 

「万策尽きたか……!すまねぇ、ゴルシ!」

 

ここまでやってもダメなのかよ。結局俺は、誰一人として守ることが出来ないのか!

 

「こんなものが…」

 

「マックちゃん?」

 

いつの間にかゴルシのすぐそばにマックちゃんが立っていた。そしてその手には……

 

「…おい、何する気だお前!!」

 

ゴルシウムが握られていた。

 

「こんなものがあるから!!」

 

「よせマックちゃん、ダメだ!そんなことしたら、お前のスイーツ食べ放題の野望はどうするんだ!」

 

海に向かってゴルシウムを投げようとするマックちゃんを急いで制止するゴルシ。その制止を振り切るように振り向いたマックちゃんの顔は……一筋の涙が零れていた。

 

「スイーツ食べ放題がなんですの!?金銀財宝、不老不死!?大切な友人と引き換えに得られるものがそんなちっぽけなものなら!こんなもの、海の底に沈めてやりますわ!」

 

そう言いながら見事な投球フォームから放たれたゴルシウムははるか彼方へ吹っ飛んでいった。もう目視で確認する事は出来ない、どこへ行ったのかはもう俺たちすら分からない。

 

「お、おお!?」

 

「どうしたゴルシ!」

 

「肩の重みが…消えた……。呪いが解けたんだ!」

 

「マジかよ…よくやったマックちゃん!!」

 

「ほ、本当に大丈夫なんですの?…うう、良かったですわー!」

 

マックちゃんがわんわん泣きながらゴルシに抱き着く。これでようやく終わったんだな。

 

「でもなんで急に呪いが解けたんだろうな」

 

「それについて、一つの仮説を立てました。バミューダトライアングルでの怨念という事は、即ち海に眠る者の怨念。それを無暗に陸に上げることは彼らに対する冒涜、侮辱と捉えられたのかも知れません。そして今、場所こそ違えど、再び海中へと戻ったことで彼らの怒りが静まったのではないかと思います」

 

「なるほどー。流石フクキタルさん!」

 

「そいつは、あり得るかもしれないな。触らぬ神に祟りなしとはよく言ったもんだ」

 

「何はともあれ、お前らのおかげでゴルシちゃんは助かったんだ!ラーメン食いに行こうぜ!今日はアタシのおごりだ!」

 

「ちょうど腹が減ってんだ、たらふく食わせてもらうぜ」

 

歩きながらゴルシの横に並ぶ。その後を三人が追いかける。そこで俺は、最初に気になった事を聞いてみる。

 

「所でよゴルシ、ゴルシウムってなんだ?」

 

「「「…え?」」」

 

「マックちゃんをからかおうとしてな、そこら辺に落ちてた石を拾って来たんだ!おめぇこそバミューダトライアングルの呪いって何だよ!危うくゴルシちゃんが死ぬところだったじゃねぇか!もうちょっと怖くない設定にしてくれよな!」

 

「「「は?」」」

 

「わりぃわりぃ、咄嗟だったからよぉ設定練る時間も無かったんだよ。初対面の奴の話題に合わせるのって結構大変なんだぞ?」

 

「それもそうだったな!だけどマックちゃんがあんな事思ってたなんてな~ゴルシちゃん思わず目が潤んじまったぜ」

 

「友情っていいよなぁ。俺ももう少し友達を大事にしとくべきだったかなぁ」

 

「お二人とも、こっちを見てくださいませ。お話があります」

 

これは…殺気!?今にも射殺さんとするほどの殺気だ。この殺気の出所は分かってる。

 

「えと……ハハッ……なんすかね?」

 

マックちゃんである。

 

「理由や罪状を事細かに説明して差し上げたいですが、ごちゃごちゃしたものは省かせていただきますわ。という訳で、結論だけ述べさせていただきますわ」

 

「ゴルシ」

 

「ああ」

 

顔を見合わせて、次の瞬間にはマックちゃんに背を向ける。

 

「「逃げる!!」」

 

「逃がしませんわよ!今度という今度はてめぇらを確実にぶち殺しますわ!」

 

という訳で今日の教訓。からかいやすい人でも限度というものを設定しておこう。でなければ本当に命を差し出す状況になりかねない。今の俺みたいに。取り敢えず、今は逃げ切る事だけを考えよう。後ろをちらりと見てマックちゃんとの距離を確認する。

 

「あの世で後悔するといいですわ!!」

 

あ、モーニングスターってこんな感じなのね

 

 

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