新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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51話

「あ、オルフェさん、ジャーニーさん!」

 

ファインが通りがかりの二人に声を掛ける。オルフェーヴルは特に見向きもしないがジャーニーが変わって対応する。

 

「おや、ファインさん。シャカールさんとグルーヴさん。屋台を引いていらっしゃいますが、どうかされましたか?」

 

ジャーニーが見たのは、ラーメン屋の店員のような恰好をしたファインとシャカール。それを諫めるグルーヴといった様子。初見でも何が起こっているかは想像に難くはないがジャーニーは念のため確認する。

 

「実はね。グルーヴさんに天下の往来で屋台を開くなって言われちゃって。折角仕込んで皆に食べてもらおうとしてたんだけど」

 

「やるなら事前に許可を取ってくれ。シャカールも流されないでくれ」

 

「その場にいてこのカッコさせられて巻き込まれただけだ!」

 

「…そういう訳なので、一旦片付けさせている所です。お気遣いありがとうございます」

 

「でもでもグルーヴさん!折角昨日から仕込んだ食材が今にも食べてほしそうにこちらを見ているんだよ?それに鮮度も落ちちゃう!」

 

「ラーメンで鮮度という単語もあまり聞かんが…それとその目をしてるのはお前だろう。選択肢はいいえだ」

 

「まぁまぁエアグルーヴさん、良いじゃないですか。仕込んで食べられる状態なのでしたら、食べてから片付ければいい。ファインさん、一杯頂いてもよろしいですか?」

 

「ジャーニー先輩!?」

 

予想外の回答で驚くグルーヴ。その回答を聞いてファインは顔を輝かせ、シャカールはにやにやとしている。

 

「はーい!徳島ラーメン一丁!」

 

「はいよー」

 

「作り始めるな!ジャーニー先輩、どういうおつもりですか!?」

 

「そのままの意味です。ちょうどお昼時ですし、ファインさんのラーメンですから味も問題無いでしょう。オル、お前はどうする?」

 

「余の舌を満足させよ。不足なきようにな」

 

「シャカール、ラーメンもう一丁!」

 

「おう」

 

ぶっきらぼうな返事とは裏腹に一杯目の麺を天空落としで一撃で湯切りする。麺から無駄な水分は抜け、ダメージも最小限、洗練された技である。その麵をファインが用意したスープに落とす。湯切りザルに新たに麺を入れる流れで豚バラ、ネギ、もやしをトッピング、即座にジャーニーへ提供される。

 

「ほらよ。オルフェの分もすぐに出来る。座って待ってろ」

 

「お前らなぁ…!」

 

次の瞬間、グルーヴの腹の音が鳴る。直後赤面、弁明が開始される。

 

「これはだな!」

 

「グルーヴさん、最近忙しいんでしょ?私がラーメン食べに行こうって言っても断るようになったし」

 

「毎日誘ってくるからだ」

 

「それに後輩指導も欠かさずに行ってる。いくらトレーナーと分業してもお前のそれは明らかに過労だ。そこらでぶっ倒れてリソース無駄にするくらいなら今休め。…食ってくか?」

 

「くっ…食べたら手分けして片付けるぞ」

 

「だとよファイン」

 

「オッケー、すぐに作るからね!」

 

その言葉通り、3分もしないうちに追加で四杯のラーメンが作られる。

 

「それでは、いただきます」

 

ジャーニーの言葉で一斉に麺を啜る。

 

「とんこつ醤油か。…奥の方で甘さがあるな。醤油の味か?」

 

「そうなの!私が食べた味を再現してみたんだ。それで、関西の方は甘い味付けが多いから醤油も少し甘いものを使ってみたの」

 

「チャーシューではなく豚バラですね。これもまた美味しいですね」

 

「…しかし凡庸だな。わざわざ模倣するまでもなかろう。何故だ?」

 

「確かにそうかもしれないね。でもラーメンって普通な食べ物でしょ?だからその地域の普通が詰め込まれてると思うの。私はその出会った普通を大事にしていきたいんだ」

 

「…そうか。ファインモーションよ、その在り方を忘れるな」

 

「ありがとうオルフェさん!あ、そうそう。忘れる前にこれもどうぞ!」

 

ファインが食べる手を止めすだちを取り出し、それを半分に切り、小皿に乗せ皆に配る。そして自身のラーメンにすだちを絞りながら説明を始める。

 

「三分の一くらいになったらこれを絞って味変すると香りでも楽しめるし美味しいんだ。皆もやってみて!」

 

「そうなのか。では早速やらせてもらおう」

 

グルーヴがすだちを絞り軽くかき混ぜてから麺を持ち上げる。するととんこつ醬油にすだちのさっぱりとした香りがハーモニーを生み出す。その香りに頷き、麺を口に運ぶ。

 

「これは…」

 

「どう、美味しいでしょ?」

 

「ああ。最初は少し戸惑いがあったから驚いたぞ。スープの濃さがすだちでさっぱりしたものになっている。それでいてスープの主張を邪魔することなく、すだちはあくまで助演の立ち位置にとどまっている。すだちが名産の徳島らしいラーメンと言えるな」

 

「随分と饒舌じゃねぇか。オレとファインのラーメンがお気に召したと見える」

 

「いいものはいい、それだけだ」

 

「確かに、エアグルーヴさんのリポート通りですね。委員会でもおススメできるよう、リサーチしておきましょうか」

 

「姉上。そのリスト、私にも回せ。我が臣下に使いに行かせる」

 

その後、和気あいあいとラーメンを完食する。そして当初の約束通り屋台を片付けていた時。

 

「そこの貴様、近う寄れ」

 

「何だよ、王様がなんか用か?」

 

「少しばかり、問いたいのだ。貴様はなぜ二冠ウマ娘に甘んじたのかをな」

 

「…あ゛ぁ?」

 

事件が起こる。オルフェーヴルが突然、シャカールの地雷をぶち抜いたのだ。理由不明、動機不明、すべて不明の喧嘩が突発的に起こってしまった

 

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