新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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53話

「どうすりゃいいんだよ」

 

なんか久しぶりな気がするな。前回前々回と出番のなかった奥沢君だよ。俺は今ちょっと悩んでいる。変な思い違いはしないで頂きたい。担当付かないからヤケを起こそうなどと思ったことは何度もあるが今回はそうではない。

 

先日商店街で買い物したら福引券を貰ってな。その福引を引きましたら何とビックリ、一等が出たんですよ。それで景品をスマートウォッチ、ドライヤー、商品券の中から選べる形式だったから面白半分でドライヤーを選んだわけだ。そうしたら…

 

「ではこちら、リファのドライヤーでございまーす!」

 

「…りふぁ?」

 

んで、俺の目の前には普通じゃ絶対に買わない四万円のドライヤーが鎮座してるって訳。…どう使うのこれ。さっきネットで使い方を調べたけどめんどくさいことこの上ない。世の女性方はこんなめんどくさい事をやってんのかと頭を抱えていると、妙案が浮かんだ。…ココ女子高じゃん。

 

 

 

 

 

「という訳で、使い方を教えてくれ」

 

「なんでこんなの貰ったの」

 

泣きついた先はゴールドシチー。モデルやってるらしいしいい感じの回答を頂けるだろう。

 

「すげーこれ結構いい奴じゃん。シチー、アタシに使ってみてくんね?良さそうだったらフジさんにねだってみる」

 

「買ってくれないでしょ。ほらそこ座って髪濡らすからタオル巻くよ」

 

「りょ~」

 

シチーがどこからともなく霧吹きを召喚してジョーダンの髪を下ろして濡らしていく。ツインテが髪下ろすとやっぱなげぇのな。ほんで全然癖毛って訳じゃねぇのな。

 

「奥沢、よく聞いてなよ」

 

「あ、はい」

 

「ドライヤーっていうのは、出来れば使わない方が良いんだ。へアアイロンだって髪にダメージあるし。理想は水気を取って自然乾燥。その補助に使うっていうのを意識しなよ」

 

「ほーん」

 

「こうやってカールしたりとかボリューム持たせるときはブラシで髪を掴んでドライヤー当ててその形を固定させていくようにしていく。分かりやすく言えば紙粘土みたいなもんかな」

 

「あたし図画工作の課題かってのw」

 

図工の正式名称をジョーダンが知っていることに驚きながらシチーの講義をメモを取る。おふざけ半分で聞いてみたもののちゃんと有益な情報をくれた。やっぱネットより人に聞く方がいいな。

 

「ドライヤーで手っ取り早く乾かすならタオルで水気を取ってからスカルプで頭皮を乾かしていく。これやらないとふけとかかゆみのの原因になるよ。前髪と分け目、襟足、耳周辺、つむじの順で乾かす。次にモイストで毛先に残った水分を飛ばしていく。この時腕を目いっぱい伸ばして風の温度を出来るだけ下げる。温いくらいの風が当たればいいはず」

 

「…ほーん」

 

「ほらそこ、聞かなきゃよかったなんて顔しない」

 

聞かなきゃよかった。聞いただけでもうめんどくさい。頭皮からなんだって?髪だけ乾けばいいんじゃねぇのか?ケアってめんどくせ~~。

 

「やってみれば案外簡単だよ。それに奥沢の髪ってアタシから見てもきれいなんだしちゃんとケアしてあげな」

 

「あ~~伸ばしたことが恨めしい。髪あるってのも邪魔だしいっその事切ってしまおうか」

 

「てか沢さんってなんで髪伸ばしてんの?やっぱ女装のためなん?…すげーめっちゃなめらか~」

 

ジョーダンが俺の髪をくるくるしながら聞いてくる。お前持ってるそのヘアアイロンで何しようとしてんだ。

 

「俺に女装癖はねぇよ」

 

「この前あんなことやってて?」

 

「触れるな。まぁ、昔に囚われてるって所か。アイツってこれ位髪長かったなって忘れられなくて、この髪にしてんだよ」

 

「アイツって、吉花って人?」

 

「ああ。自分でも女々しいって思ってるけどなんでかやめられないんだ。…そうだ、お前らの手でばっさりといってくれ。そっちのほうが未練断ち切れるかもしれないし」

 

カバンの中から文房具一式を入れたポシェットを取り出しその中からはさみを出してシチーに渡す。しかしシチーはその手を払いのける。

 

「しないよそんな事。アンタは助けられたんだからその子の分までオシャレ楽しみな。ジョーダンそれ返して、奥沢の髪で遊ぶから」

 

「あいよ~。沢さんラッキーじゃん。シチーに髪いじってもらえばすぐに盛れるしかわいくなるぜ?」

 

「男がかわいくなってどうすんだ。まぁ物は試しだ。やってみてくれ」

 

「こんな髪型がいいとか何か希望はある?」

 

「かき上げて後ろで結ぶだけのやつに希望があると思うか?」

 

「じゃあ適当にやらせてもらうよ」

 

シチーがくしで俺の髪をとかし始め、タオルと水をかける。何だこれくすぐったい気がする。あとなんでか恥ずかしい。少し経つと顔に熱が集まっている気がした。

 

「沢さんなんで赤くなってんの?」

 

「なんかこっぱずかしくなってきた。シチー、なるはやで頼む」

 

「とは言ってもねぇ、アンタ髪細いね。ホントに女の子みたい。手入れとか大変じゃないの」

 

「してる訳ねぇだろそんなメンドクセェ事。そこらで買ったメンズシャンプーしか使ってねぇよ」

 

「うーわ全国の美容女子を敵に回した。髪ツヤ気にしてる人なんていっぱいいるよ?」

 

「無問題。言論の自由って奴だ」

 

ドライヤーとくしで髪にボリュームを出していく。すると頭頂部の右側を集中的に触られる。

 

「え、なにこれ…」

 

「ちょ、どっどーいうこと?」

 

え、いや何?どうなってんの?超大型ニキビでも見つかったか?

 

「奥沢、アンタさ…」

 

「何?何だよ?俺のアタマに何があるってんだよ?」

 

するとジョーダンが写真を撮り、それを俺に見せる。その写真に俺は…言葉を失った。

 

「」

 

「沢さん…なんでウマ娘の耳があるの?」

 

「知らなかったはナシでお願いね」

 

「俺が…知る訳ねぇだろ…」

 

この世に生を受けて二十年余り、人生一の衝撃を一瞬で更新するほどの出来事。俺はいったい…何者なんだ?

 

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