新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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6話

「えーっと?ウマ娘にモーニングスターで襲われて全身粉砕骨折で翌日には完治かぁ…君って意外とファンタジー?」

 

「ファンタジーな事したの先生じゃあないですか。取り敢えず、今日で退院でいいっすかね?」

 

「退院って言っても一日しかいなかったけどね君」

 

という訳で無事退院出来たので気分転換も兼ねててっこてっこと歩いて帰ることにする。にしても酷い目に会った。少しばかり、反省する必要がありそうだ。…にしても今日は天気がいいなぁ。散歩を選択したのは正解だったようだ。

 

「……ハァ…」

 

おそらく一キロ歩いた辺り、若干疲れてきた。散歩なんてするものじゃあない。ベンチなりなんなりを探して休憩しよう。結構近場の病院だったはずだけど、こうやって歩くと意外と距離あるのね。僕ビックリしちゃった。

 

…おっ、ちょうどいい所にベンチを発見。早速休憩。

 

「ふー…足痛い」

 

意外にも多分ただの筋肉痛だろう。モーニングスターによる怪我は先生がビックリするくらい完璧に直してしまった。一体どうやったんだろうなぁ。

 

「さあ見たまえ子供たち!ボクの美しきこのオペラを!」

 

目の前で突然オペラが始まった。否、始まってしまった。こういうのは一度見てしまうと最後まで観ないと失礼なのではないかと考えてしまうから出来る限りこういう突発の奴は勘弁いただきたいんだけど。

 

…いや待て考えろ?あのウマ娘は子供たちに向けてオペラを見せようとしているに過ぎない。あの子はいま俺に背を向けている。ならばここはクールに去らせてもらおう。

 

「さあ君も一緒にオペラを楽しもうじゃないか!」

 

畜生コイツ後ろにも目が付いてやがった。

 

 

 

「さぁ第二幕の開演さ!」

 

…長い。時計を見ると既に三十分経過している。子供たちはまだ楽しそうだ。無邪気っていうのはいいなぁ。だが俺は少しばかり…というよりかなり飽きた。俺は元よりミュージカルのようなものがあまり好きではない。さて、彼女には悪いがばれないように逃走を図ろうか。

 

「ああ、どこへ行くんだい!ボクのオペラはまだ序章を迎えたばかりだよ!」

 

コイツ全方向に目が付いてるっぽいな。なんかの拍子に後ろ向いたタイミングで段々と離れ始めた瞬間に勘づきやがった。というかまだ序章かい。

 

「それだと全編で四時間くらいを予定してるじゃねぇか。子供たちをそんなに拘束したら親御さんが心配なさるだろうが。あと三十分くらいに収めてくれ頼むから」

 

「確かに、君の言う事にも一理あるね。ではみんな!終幕まで盛り上がってくれるかい!」

 

「うん!」「おねーちゃんがんばってー!」

 

よし、これでいい。後は三十分我慢すれば学園に帰宅と相成れる。終わりが分かっていればこっちのもんだ頑張って楽しませてもらうとするか。

 

「さぁ、君の手を借りようか!」

 

座った瞬間に彼女の手が俺の前に出される。そうかいそうかい、俺に死ねというんだな。

 

「俺にオペラやれっていうのか!?」

 

「ボクが引っ張るから心配いらないよ!ボクと一緒にオペラを完成させようじゃないか!」

 

「よぉーし分かった!そこまで言うなら手を貸してやろう!俺を選んだこと、後悔させてくれるわ!」

 

 

 

 

 

「「「おねーちゃん達、さよーならー」」」

 

「またいつでも来たまえ!テイエムオペラオーは逃げたりしないからね!」

 

「気を付けて帰れよー」

 

何とか三十分のオペラを演じきってやった。中身なんか全カットだ。くそメタい話をしてやるよ。作者にこの中身を考えるアタマは悲しいことに存在しないのでね。書けるならもう少しましなもの書いてるよって言ってる。

 

閑話休題、彼女の手慣れている所を見ると相当に場数を踏んでいるようだ。…いや待てコイツ聞いたことある。実際に喋らないと人を覚えない俺でも噂を耳にしたことがある。

 

「君ってトレセンで度々無断でオペラ開いてる問題児か」

 

「問題児とは失礼だね。だが、ある意味では正しいのかもしれない。何せ、ボクの美しさはそれ自体が罪になってしまうだろう!ああ、自分の美しさが信じられないよ!」

 

関わったことを心の底から後悔してる。俺は自分の事を中々にイカれていることを自覚している。自覚していないだけでここまで重症になることを目の前で体験してしまった。軽く恐怖。

 

「どうしたんだい、しゃがみ込んで。…ひょっとして、ボクの美しさと覇王ゆえの煌びやかなオーラに充てられてしまったのかい?」

 

「あーうんそうそう頭痛が痛くてしょうがない。今すぐトレセンに帰りたいよ」

 

多分こうでも言わないとオペラオーは離れてくれないだろう。いや待て悪手だったかも知れんこういう手合いは大抵…

 

「ならばオペラを再演しようじゃないか!そうすれば必ず治るとも!」

 

やっぱりね。こうなったらオペラオーをぶちのめした方が早そうだ。だがそんなことをすれば大前提、返り討ちに合う事間違いなしだ。二秒で負けた前科がある男が言うんだ、説得力が違う。こうなったら強引にでも帰らせてもらおう。

 

「いや大丈夫、トレセンの保健室に行きたいなぁそれでは失礼させてもらうよ~」

 

「そういう訳にはいかないよ!君をこうしてしまったのはボクの責任だ!それにオペラ団員を見捨ててはボクの沽券に関わるからね!」

 

…オーマイガーワッツハーペン。

 

「マジで大丈夫、ほら見ろよ、結構動けるだろ?おーっと!急に体が軽くなったぞう!そういう訳だから心配無用、ではサラダバー!」

 

俺は逃げ出した!

 

「照れているのかい?可愛い所があるじゃないか!ボクも学園に戻るところなのさ!さぁ、共に帰ろうじゃないか!」

 

しかし回り込まれてしまった!

 

「…ウン、ソウダネ」

 

その後俺は学園に帰ってからも三時間は拘束された。これで二日分の仕事が停滞した。ハッハッハ、明日は缶詰で強引に終わらせてやるー。ここまで来て思ったのが、この学園って案外問題児が多いのか?度々様子がおかしかったり正気でないものがいたりするし。さて、アヤベさんにご愁傷様って顔をされながら、この言葉で今回は締めるかな。

 

「安西先生…担当が……欲しいです!」

 

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