侑「♪~〜〜〜〜ん?どわー?!せ…生徒会長?!」
─────侑は彼女が優木せつ菜だと知らずに、驚いてピアノの席から立ち上がる。
そんな侑にせつ菜は音楽室に入り、歩いて近づいてくる。
せつ菜「高咲侑さん─────音楽室の使用許可は取ったんですか?」
侑「いや〜あのぉ~ ………ごめんなさい!」
侑は嘘ついてもバレると思ったのか、直ぐ様正直に謝罪をし、頭を下げた。
侑「あっはは……ちょっと弾いてみたくなっちゃって……」
せつ菜「はぁ………」
侑「でも、初めてだと全然駄目ですねぇ~………ところでさっきぃ、せつ菜ちゃんの曲知ってるみたいな感じだったよねぇ!」
せつ菜「えっ…?!」
侑はせつ菜の前に詰め寄り、更に彼女の手を取り、マシンガントークを繰り出した。
彼女の瞳にはハートが浮かんでいた。
侑「いいよねぇ
せつ菜「ち─────近いです!」
侑「あっ! ごめんごめん~…」
侑があまりにも近い為、せつ菜はとうとう我慢できずに言う。
だが、代わりに彼女はここまでスクールアイドルのファンになったということだ。
それをせつ菜は、複雑な感情を感じた。
せつ菜「─────そういえば、先日お会いした時………優木さんに会いたがってましたね」
侑「うん!大好きなんだぁ!」
せつ菜「…………!」
せつ菜は目を見開く。
侑は続けた。
侑「この前、ライブやっててね………凄かったんだよぉ……せつ菜ちゃんの言葉が、胸にずしんってきたんだ……歌であんなに心が動いたの、初めてだったぁ!」
侑は笑顔で、青空が映る窓を見た。
彼女のその言葉には、興奮が滲んでいた。
侑「私、夢中になれるものとか、全然なかったんだけど─────あの日からスクールアイドルにハマって、今すっごく楽しいんだぁ!歩夢、英二君と一也君も一緒に同好会にも入ってね~!」
せつ菜「─────同好会?」
侑「そう!かすみちゃんが誘ってくれて─────あっ………」
侑はそこでまずいと思った。
そして慌てて言い始めた。
侑「ち、違うの!勝手に部活始めたわけじゃなくってね……」
せつ菜「特に問題ありませんよ─────スクールアイドル同好会は一度廃部になりましたが、新しく立ち上げてはいけないという校則はありませんし」
侑「え……?」
せつ菜は侑の言葉に怒らなかった。
それどころか、微笑んで、彼女達に「問題ない」と言う。
彼女は侑の隣まで行き、青空が映る窓を眺めた。
せつ菜「部員が五人以上集まったらいつでも申請に来てください」
侑「そうなんだ……」
その言葉はつまり、賛同をしてくれるようだ。
侑は内心で驚きながら、彼女に対する印象が変わった。
せつ菜「優木さんが聞いたら喜ぶでしょうね」
恐らく─────否、確実にそうだ。
何故なら優木せつ菜は侑の隣におり、その本人の内心では喜んでるからだ。
しかし喜びつつも、これまでのことに対するのも含めて、複雑な気持ちになっていた。
侑「だったら、嬉しいな!」
侑は微笑んだが、直ぐに顔を俯いて悲しい表情にする。
侑「─────何で辞めちゃったのかなぁ……せつ菜ちゃん。こんなこと思っても、仕方ないって分かってるんだけどね………きっとせつ菜ちゃんも、色々考えてのことだろうし……えっへへ!でも時々思っちゃうんだよね………あのライブが最後じゃなくて─────始まりだったら、最高だろうなって」
せつ菜「─────何でそんな事言うんですか?」
侑「え?」
侑の言葉にせつ菜は言った。
彼女の声には震えていた。
せつ菜「良い幕引きだったじゃないですか─────せつ菜さんは、あそこで辞めて正解だったんです。あのまま続けていたら─────彼女は部員の皆さんをもっと傷つけて、同好会は、再起不能になっていた筈です」
侑「え?そんなことは─────」
せつ菜「高咲さんは─────
侑「ん?スクールアイドルの全国大会みたいなやつだよね?」
侑の言う通りだ。
ラブライブとは、全国のスクールアイドル達が集い、野球やサッカー等といった他の部活動のように競い合う大会─────せつ菜は、それを侑に言う。
せつ菜「その通りです。ラブライブは、スクールアイドルとそのファンにとって、最高のステージ─────あなたもせつ菜さんのファンなら、そこに出て欲しいと思うでしょう?」
侑「…………」
せつ菜「スクールアイドルが大好きだったせつ菜さんも、同好会を作り、グループを結成し、全国のアイドルグループとの競走に、勝ち抜こうとしていました。勝利に必要なのは、メンバーが一つの色にまとまること─────ですが、まとめようとすればする程、衝突は増えていって、その原因が全部自分にあること気づきました」
せつ菜の言葉を、侑は黙って聞き続けた。
彼女はまるで、自分のことのように話をしていた。
─────本人であることは間違いないが、侑は知らない。
しかし、彼女も内心では何かを気づき始めていた。
せつ菜「せつ菜さんの大好きは、自分本位な
せつ菜は拳を握り締める。
そして、いつもの生徒会長として戻り、侑に聞いた。
せつ菜「─────幻滅しましたか?」
侑「─────」
─────それから沈黙が訪れた。
両者共に、何も言葉を発しなかった。
何かを言おうとした侑だったが─────その時、音楽室のドア付近に歩夢が様子を伺っていた。
歩夢だけではなく、英二と一也もいた。
歩夢「侑……ちゃん………?」
英二「何して─────生徒会長?」
せつ菜「─────失礼します」
せつ菜は侑にそう言い、入口に立っていた三人に声もかけず、その音楽室を後にした。