世界征服しようとしたらヤンデレに呼び出された~我が大正義軍は生え抜き軍に負けるのか~ 作:三重知貴
「えっと、ねえハラディス大丈夫?」
「大丈夫だよ。ドラゴンの相手は慣れてるしね。それにこれのためにわざわざ復活薬見つけてきたんだから。」
実際この世界に来てからは初めてなので緊張感はかなりあるのだが、あれから色々と試した結果自分の強さが一定であるのはわかっている。それに貴重な復活薬も1つだけに宝箱から見つけてきた。ランダムで本当に苦労したよ。
さて、僕たちが今いるのは隣国のヤクルティアとは反対の位置にある国、マリーニアだ。ちゃんと不正入国している。
まぁ、色々と事情があって国境警備もいないのでバレる心配はないから合法みたいなものだ。
さてなぜそんなとこにいるかといえば、今日はちょうど大人になるという決断をしてからはや一週間が経った日だ。僕らは家出をしていた。
決して国からの逃避行をしているわけじゃない。ちょっとドラゴンが欲しいのだ。
魔法使いのイベントを利用して大人になることを決心したわけだが、そのイベントの発生場所はなんと大陸の反対側。馬やそこらのモンスターで行くにも時間がかかる。
なので、この世界最速の足ことドラゴンを捕まえにきた。本編だと後半からしか使えない移動手段だがそんなことは関係ない。
なお勇者のドラゴンは特別仕様の龍神の子供である。強いし速いかっこいい、将来の最強候補の白き竜だ。
ドラゴンというのは大抵高い山におり、ヤクルティアは高い山と海に囲まれたドラゴンの名産地である。ということで捕まえるため現在登山中だ。
「ていうか、ハラディス。本当に国のほうは大丈夫なの?」
「そろそろ大変なことにはなってるころだね。僕ら、誘拐されたことになってるから。」
家出の言い訳というか、誤魔化しとして現在僕らは誘拐されてる。しかも反政府組織に連れ去られたこととなっている。
まぁ部屋を適当に散らかして、置手紙を残して、あとは部下にしている奴らにそれっぽいことをしてもらうだけだ。本当は1人で来る予定だったのだが、ユミリアがついてきたので、国は王女誘拐事件として大騒ぎしてるだろう。
「(色々とゲームだからと無理矢理なことをしてきたが、現実になるとえげつないことしてるな、僕。)」
霧で前が見づらく木々の生い茂る山を登りながらなんとか重くなってきた足を上げて、そんなことを考える。というか頂上が全く見えなくて考えるくらいしかやることがない。
ドラゴンというのは大きな山にいるやつほど強いのだが、流石に高すぎる。この世界は富士山級の山がそこら中にある。この山も雲で頂上は見えないし、実は登り始めて二日目だ。
魔法でワープはできなくても身体強化はできるのでそこまで大変ではないが時間がかかれば人は精神から疲れてくるものだ。
「というか、この山モンスター全然いませんね。」
「ドラゴンの膝元で生活できるほどの頭のないモンスターもいないからね。小動物やらはいるだろうけど、魔力を理解してる生物は寄り付かない。それだけ強いドラゴンなら歓迎だな。」
強いドラゴンというのはいわゆる固定湧きモンスターだ。色付きと呼ばれるドラゴン達で、体の色が通常よりもほぼ1色だけに近い色をしていて高い強さを誇る。彼らはゲームでも固定出現の強敵として登場し、山岳地帯を飛び回っていた。
そもそも種族的に強いのでなんでもいいし、足替わりでしかないが、強いに越したことはない。
「(あれ、でもこの世界なら戦闘に活用したりできるんだろうか?ゲームだと戦闘システム的に関係はなかったけど、戦場に出せたら色々便利だよな?)」
勇者レベルになるとドラゴンくらい簡単に倒してくるのだが、一般兵相手ならドラゴンは軍隊を殲滅できるほど強い。
さらに言えば、ゲームなら一匹しか従えられないが、この世界なら複数従えることもできるかもしれない。
「ハラディス。あれなんだろう?」
新しい作戦を黙々と考える僕に、ユミリアが服を引っ張り、上の方を指さしている。
見上げると、背の高い木々の間にまるで道を開けるように向こうの方までなにもなく空が見えているところがある。ユミリアと顔を合わせ、急ぎ足でその場所へと向かう。
そこには倒れた木々が重なり合うようにいくつもあり、そこには大きい、いや今まで山だと思っていたものがあった。
「ドラゴンか?」
10メートルくらいだろうか。自分たちよりも大きなそれは目玉だった。
その頭に登り上の方から覗いてみると、体は山の頂上へと向かっており尻尾のはまったく見えない。というより、一面が龍の鱗しかない。
ここらは霧が晴れているのか、向こうの方まで片翼が伸びているのがわかる。
「ねぇパラディス。これ本当にドラゴン?」
ドラゴンというのは、だいたい建物2つか3つくらいの大きさがデフォルトだ。龍の国と呼ばれるところではそれよりも大きいのもいるがこれほどじゃない。
だが、1つだけ心当たりがあった。
「もしかして、龍王か?」
「龍王?守り神の?」
龍王、読んで字のごとく龍達の王。
この世界には4体いるとされている。実際には隠しボス含めて5体。1体は主人公のドラゴンの親で、他3体を含め守り神と呼ばれるドラゴン達だ。
強さは当然の如く最強なのだが、原初の頃から生きていると言われその大きさは山を足掛けにするとも言われる。
「うん、この大きさの生物は龍神以外では考えられない。」
「でもなんで?というか、死んじゃってる?」
そう、その生物最強ともいえるそれには、目にも、体にも生気は感じられない。
魔力は大きいが、減っていってる。魔力を持った生物が死ぬ時に起こる、体外に魔力が発散して減る現象だ。
「龍神を倒せるやつがいるってことか?いやありえない。それはない。いやでも……現にこれは……というかこいつは?」
「大丈夫……パラディス?」
「うん、大丈夫。大丈夫だと思う。いやこれは大丈夫じゃなくなったのか……」
ユミリアの心配はありがたいところだが、混乱が大きすぎ、まとまらない思考が言葉に出てしまう。
ただでさえ、龍神が死んでいるという状況だけでもキャパオーバーなのに目の前の龍神から思い出せる記憶が余計に脳に負荷をかける。
「(間違えない、こいつ裏ボスだ。守り神とは反対の破壊神《黒い天災》だ。ゲームなら僕も一度倒したことがある。無限大の可能性があるゲームのやり込み要素とかいう狂ったコンテンツの1つ。)」
万単位では収まらないほどの人がプレイしたゲームでも、ほんのひと握りしかクリアしていないクエスト「黒い天災」。桁を何桁打ち込んだという狂ったステータスを持ったイカレ性能のボスはまさに神だった。
「(たしか、ギミック攻略以外は1回ハメ技が見つかった時くらいだったよな、クリア情報。あのゲームで数少ない、クリア手段がほぼ固定のボス。)」
そう、倒し方は確かに存在する。しかしそれは最強が最強武器と無限と言えるアイテム、そして練習して、完璧にギミックを理解する必要がある。
「(ゲームで死者蘇生はたしかに存在している。アイテムでもあるし、僕も持ってる。だけどそれでも回数に限りはある。ゾンビ戦法なんて不可能だ。どうやった?というよりなぜやった?)」
どうやったのかはこの際どうでもいい事だ。現に出来ているのだから。問題は何故やったのかだ。
設定上この龍神、今は大人しいドラゴンだ。ゲームでも伝説に挑むため儀式で呼び出して戦うという、別に倒す目的自体はなく、ゲームのご都合的なものだった。
つまりは、今のところこの世界では命をかけてこいつを倒す理由がない。
「(そもそも、こいつが暴れたら余裕でうちの国にも届くぞ。それがこんなしれっと倒されるとか、まさか僕の知らない強キャラか、それとも――もしかしてハメ技使った?)」
それ以外では説明しようがないだろう、というのがパラディスとしての結論だった。
「ねぇ、ユミリア。こっちに呼んだのは僕だけだよね?」
「え?うん。ハラディス以外わからないし、必要ないし。」
「まぁ、そうだよね。」
こちらに来て考えてはいたが無視していた事実。この世界はなにか、何故僕はこちらに来たのか。そしてもう1つ――
「僕以外も来た人がいるんじゃないか……。いや、いるなプレイヤー。」
自分だけというのも考えた。僕がこの世界に来たのはユミリアが呼んだからだと言われた。それらの真実やら原理はどうでもいい。
ただ、この世界に来ることができるのは事実がある。
「そういや、ユミリア。僕に来てもらうために魔法の研究したんだよね?研究ってどんな感じなの?」
「研究は城の本とか色々な魔術書を取り寄せて研究した感じかな。言ったと思うけど、魔法と呪術を組み合わせたみたいな感じで、呪術はかなり調べたかな。えっと、急になんで?」
「いや、ちょっとね。確認なんだけど、それってユミリアじゃないとできない?」
僕の問いかけにユミリアは頭を抱えて考え込む。
「うーん……できるかな?簡単に言えばあの魔法って相手の魂を見つけて引っ張るものなの。だからほかの人でも相手の魂がわかればできるはず。でもそれって無理じゃない?」
「なんで?できるんじゃないの?」
「だって、私はハラディスの記憶があったからできたもの。でも他のみんなは前の記憶なんてないのよ?どうやって相手を知るの?」
「あ……。」
彼女と僕しかないもの、それはこれまでの記憶だ。これに関しては例外はない。僕ら以外に記憶を持っている人はいなかった。
「(いや、だがそもそも他の人間はランダム要素だ。この国にネームドキャラは彼女だけ。王様など設定上存在するキャラも常にいるが、そいつらは容姿や能力が多少違ってくる。つまり、明確に前の周回にもいた人間はユミリアだけだ。)」
彼女がなぜ今回だけ記憶を持っていたかはずっと疑問だった。ただ一つ答えの手がかりが出てきた。
「もしかして固定キャラは記憶がある?」
「固定キャラ?」
「ああいや、なんでもない。」
「そう?」
もしこれが本当なら、世界征服など言っている場合じゃない。
国々を襲う自分を知られていれば、勇者などが自分を狙う可能性がある。というよりむしろその可能性が高い。
僕なら生まれた瞬間殺しに行くだろう。
「いやそれなら――」
頭の中に浮かんだその思考を口に出すよりも速く、地響きが鳴り響く。
立っていられないほどの揺れに風圧、体の内に響くようなそれに、足をついてしまう。
「ユミリア!」
「ハラディス!」
伸ばされた彼女の手をつかみ取り抱き寄せる。
この天変地異のような一瞬を引き起こした原因はもうわかっている。その原因たる目の前の巨体、いや厄災に目を向ける。
「生きてかよ、生え抜きクソボス。」
体は倒れたままだが、その目は確かに僕たちに視線をあわせていた。
次回 裏ボス
投稿頻度が遅いです。読んでくれる人達に申し訳ない。
今回は準備回になってしまったので次からはもっとテンポあげたいな。それはそれとして書きたいものもあるって感じです。趣味なのでちょくちょく上げていきます。
感想とかくれるとすごくうれしいので、気軽にください。やる気が100倍なので。お気に入りもすごく嬉しいです。