魔女っ子傑はクラッシャーである。   作:かりん2022

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魔女っ子は伝統クラッシャー

 

「ほ、本当に燃やさない? もしくは水に沈めない? 死んだ魔女がいい魔女だとか」

「呪術界では魔女も市民権を得てるから大丈夫だって。今度会わせてやるよ。資格試験がどうこう言う程メンバーいるなら、却って喜ぶと思うぜ?」

「そんなこと言って、一網打尽にするんだろ?」

「安心しろよ! そんなことしねーし、なんなら俺が守ってやるから! スポンサーだろ、俺!」

「私もスポンサーとして弁護するぞ」

「本当に本当だね、約束だからね」

 

 

 覚悟はしてたけど、二日目で自爆は嫌すぎる。

 それにしても悟は頼りになるな。

 お昼休みが終わったので授業に向かおうとすると、先生に呼ばれた。

 

「傑にお客人が来ている」

「俺達、もう傑と契約してるから一緒に行く」

 

 そして、私は加茂家というとても良い家柄の人に自分の為だけに呪具を作るように詰め寄られていた。

 えっ こわっ これどういう状況?

 戸惑っていると、悟が庇ってくれた。

 

「傑は俺のだから、他の奴にしろよ」

「なら、その他の奴をすぐに紹介しろ」

「えーと、ベルを渡して向こうにも商品の希望を伝えることはできますけど、直接交渉はまだ怖がると思います。どういう系統のがお望みですか」

「造血剤だ。鼻血チョコは大量の鼻血を出すが、貧血にならないそうではないか」

「加茂家は血を操る術式を使うんだよ」

 

 悟が教えてくれる。なるほど。

 

「割と面倒な分野ですね。鼻から増やした分を流す分にはいいですが、単純に増やすとなると、すぐに傷から血を出さないと危ないのでは? そういう調整得意な人は知ってますから、希望は伝えておきます」

 

 部屋からベルを持ってきて、三つ渡す。

 

「3人も調整が得意な者がいるのか。待て、未登録の呪具師がそんなにいるのか?」

「呪具師……かどうかはわかりませんが、コミュニティはありますよ」

「ふむ。品が良ければ当家からそちらの暴挙に関して擁護してやろう」

「暴挙?」

「一般人に呪具を売るなんざ正気ではないということだ。二度とするな」

「まー確かにねー。ガイドライン見ると正気じゃないよね」

 

 悟がケラケラと笑う。

 

「その辺はきっちり国と総監部から指導がされると思うし、僕も呪具について色々教えてあげるから、見守っててくれねーかな」 

「助かるよ、悟」

「でも、そういえばこれ、一般向けなのか。玄人向けには何販売しているの?」

「勉強用のものが多いよ。古典魔具は殆どそう。飲水を出す石とか、現代では役立たないものばっかり。一般向けの方が役立つものが多いかな」

「ゲロゲロチップスが役立つと申すか」

「実用的な方でしょ?」

「頭おかしい」

 

 ゲラゲラと笑われ、ムッとする。

 

「で。玄人向けのガイドラインはないの?」

「教科書はあるけど、流石に外部に出せないかな」

「まーでも、いいじゃん。飲水を出す石」

「欲しければ練習用に作ったのあげるよ」

「「「もらう」」」

 

 そういうわけで、一週間後。

 

 添削されたガイドラインが帰ってきたので大魔女様に提出。

 ガイドラインを受け取る際に、なぜか私が魔女代表として、いたいけな子供達にとんでもねぇ物を売っていたことを説教された。

 価格改定も行われて、今後一般向けに売り出す品は値段を国と総監部に相談することとなった。なお、ここで国が出るのは異例のことだという。呪術界だけに売れ、といわないだけ、未知のコミュニティに気を遣っているのだそうだ。

 

 幹部会議が行われ、一般向けは指導に従う事が決定され、修正版ガイドラインが流され、新しいサイトのためのベルが配布された。

 一般向け、呪術師向け、仲間向けの三種類のお店の住み分けについて話し合いが行われ、私は情報収集を一手に引き受けることになった。

 

 と言っても、魔女で呪術師なんて私ぐらいだから、呪術師の望むものを作れるのかという不安はある。

 大魔女様にお願いされ、一般向けが無理なら国家向けで何か欲しい魔具はないですか、とこれもまたアプローチする役目を請け負った。ひとまず、リサーチと商品提案を代行していくことになる。

 

 一般向けだが、ジョークグッズは全て禁止か年齢制限がつけられ、かなりの低威力のお守りのみ販売可能というかなり厳しい処置が降り、ざわめきが走った。

 

 え、私、任務と呪術師の勉強もあるし、交渉と勉強もするとなると、かなり大変なのでは?

 

 困惑しつつも、日曜日になったので約束通り呪具の見学ツアーと、五条家お抱えの職人に所有の魔具を見せる事となった。本当は任務もあるのだが、常識を学ぶ方が大事と任務をしばらく免除してくれるらしい。

 京都まで移動して、五条家に泊まりがけで勉強会である。

 魔女の一族という西宮家の人とも会うことになっている。

 

「呪具は殺意が高すぎないかい……?」

 

 どれも攻撃したり呪い殺したりと危険なものばかりで、蔵から出た時はへたり込んでしまった。

 

「お疲れ」

 

 冷たいジュースをもらい、水分補給をする。

 そして、西宮家の奥様と会うこととなった。

 

「魔女見習いの夏油です。白魔女中級資格、黒魔女初級資格、箒免許はスズメです」

「西宮 クルミよ。よろしくね」

 

 お互いに挨拶して、じっと見る。

 え? この人、魔力ないじゃない? 隠しているのかな???

 

「えっと。発芽式ですか、貸与式ですか? 力を隠してらっしゃるんですか?」

「ごめんなさい、何を言っているかわからないわ」

 

 嫌な予感がビンビンするが、もう魔女って言ったし、後戻りできない。

 呪力しか感じないんだが、これで魔女??? 嘘だろ? 呪術師が魔女っぽいことしているだけじゃないか?

 

「使える魔法があれば見せて欲しいです」

「そうね。先程箒免許と言ったけれど、箒なら、私も得意なの、競争しない?」

 

 困ったように見つめ合う。

 それから、覚悟を決めて、大魔女様にプレゼントされた箒を出した。悟が帷を下ろしてくれる。

 

 同時に浮かび、私は告げた。

 

「持ってる免許は雀ですが、もうすぐ隼免許取得取れます」

 

 そして、私は箒の上に立ち上がり、立ち乗りと曲芸飛行を披露した。

 クルミさん、呪具師、悟、硝子がポカンと私を見て、私もクルミさんを見つめて戸惑う。

 彼女はどう見ても呪力で飛んでいる、呪術師だった。

 しまった、マウントを取ろうと最高級の箒を持ってきたのは失敗だった。

 

「あー。傑。楽しそうだな、俺も乗せて?」

「いいよ。この子、サンダーボルトは敬意を払えば魔女以外も乗せてくれるし」

「まじで?」

「最高級の意思ある箒だよ」

 

 悟が恐る恐る箒に跨ると、ふわりと浮いた。

 しばらく悟と硝子が交代で飛ぶのを眺めた後、サンダーボルトを口説き始めた悟を慌てて止めて、全員でお茶をすることとなった。悟、運動神経が異常に良くて、サンダーボルトが気に入っちゃったんだよね。

 サンダーボルトに無理強いはできないので、実はかなり焦ってる。

 そうだ、今は呪術師のクルミさんだ。

 

「ええっと。魔女様と言いましたか」

 

 様がついた!

 

 私は緊張する。

 

「私も魔女様に弟子入りさせてはいただけないでしょうか」

「えと」

「お礼として、西宮家としても呪術界の魔女様の受け入れを全面サポートさせていただきます。いかがでしょうか」

「ええと……。魔女になるには、発芽式か貸与式かの2種類があって」

「はい」

「発芽式は、魔法の種を受け取って自分を養分に芽吹かせる……要は、魔力がある体にするっていう方法と」

「は?」

「はい?」

「ウケる」

「ほう」

「貸与式は、大いなる存在とラインを繋げて魔力を借りる方法があって。前者は貴重な種を使わないとだし危険だし、後者は危険だから、どちらにしろ見習いの私が返事できることではないかな」

「生まれ持っての才能とか」

「適正は勿論あるし、検査はするよ? パッチテストして合格しないと種が無駄になるかもしれないし。でも、大抵の魔女は後天的なものかな。本来は男禁制で、女だけの流派だったんだけど、ジェンダーフリーが進んで今は大魔女様も男だから、時代の流れだよね」

「まあ、お守りが呪霊に効果あるんだし、呪術師枠で受け入れるしかねーよな。新たに組合作られてもめんどーだし」

 

 悟は当初から呪力以外の不思議な力に気づいていたらしく、落ち着いている。

 

「溶け込めるように色々アドバイスしてやるから、安心しろよ、傑」

「ありがとう、悟」

 

 持つべき者は友達である。

 後、なぜか五条家の人達が悟の成長に感涙していた。

 

 ちなみに、飲水の石、雷を発生させる石、火を発生させる石、風を発生させる石、お守りは政府があるだけ買ってくれる事となった。

 呪術じゃないことで進展する話し合いもあるらしい。

 

 少しずつ悟と硝子を信頼し始めた私は、魔術についてもよく話すようになった。

 驚きはされたものの、受け入れてもらえたので、クルミさんを師匠に紹介がてら、休みの間に一緒に採集に行く約束をした。

 とても楽しみである。




マシュマロ
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