魔女っ子傑はクラッシャーである。   作:かりん2022

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魔女っ子は友情と恋の境目クラッシャー

「じゃあ、飲むよ!」

 

 私は、思い切ってごくりと秘薬を飲む。

 すると、ぽんっと私の胸から小さなハートが出てきた。

 それを専用のペンダントに入れて、悟に渡す。

 

「はい、私の恋心。大事に扱ってね?」

「お、おう」

 

 ペンダントが悟の手に渡った途端、私の中に温かくも切ないきゅうっとした気持ちが広がった。

 悟が三倍ましで格好良く見える。

 

「どうだ?」

「悟……。触れていい、かな?」

「すげー、傑、顔真っ赤w」

 

 逆に悟が私の頬に手を寄せてくる。暖かな手に、私はビクッと震えて、心臓が早鐘のようになった。

 

「えーと、抱擁、デート、一緒に任務、と。まずは抱擁だな」

「う、うん、よろしく頼むよ」

 

 悟がちょっと緊張した顔で、咳払いしてギュッと抱きしめてくる。

 力を込めてギュッとされると、私の心臓も締め上げられる。

 私はドキドキしすぎて気を失った。

 

 

 

 

 

 

「ウケるwww」

「傑、俺の事が好きすぎて気絶しちゃったのかよwww すげー乙女じゃんwww」

「う、煩いな! ちょっと調合失敗しちゃっただけだろ」

 

 軽率に触れてくるその指に堪らなくドキドキする。

 

「……なあ」

「何かな?」

「俺も使ってみたい。惚れ薬っての? 秘薬貸して」

 

 突拍子もない悟の言葉に、はぁ? となる。

 

「縛りしてるから、エッチは避けられるし、いいだろ?」

「いいけど……認可受けてないよ?」

「いーよ」

 

 ということで、悟も秘薬を飲んでハートを出したので私はそれをそっとペンダントに入れた。

 そのペンダントを撫でる。

 

 愛しくて愛しくて仕方がない。満たされて心が暖かくなる。

 

「すっげ、結構クル。傑のこと見てるだけですげードキドキする」

「私も試したい! 先輩に見せてくるからちょうだい」

「いいよ。半日でハートは消えるから、安全だし」

 

 ということで、秘薬を渡して硝子を見送ると、二人きりになった。

 

「……キスしてみる?」

「……最後にね?」

「じゃ、ハグ。気絶するほど、嬉しいんだろ。好きなやつとのハグ」

「う、うん」

 

 恐る恐る近づいて、ぎゅっと抱き合う。

 うわーうわーうわー、心臓が早鐘のようになって恥ずかしい。エッチしてるみたい。えっちだ。これはもはやえっちだと思う。

 

「愛ってすげー。俺、傑を全然愛してなかったわ。友情友情。大丈夫! 安心だな」

「そ、それは良かった、ね?」

 

 意識が飛びそう。

 

「じゃ、デート、行こう、か。映画見て、ゲーセン行って、ご飯食べて、任務いって……最後にキスしよ?」

 

 デートは天にも昇る心地だった。

 悟が一生懸命気遣いしてくれるのが心地いい。

 任務では絶対大丈夫って知ってるはずなのに、互いが心配で仕方なかった。

 キスをした時、それだけで頭が飽和した。

 私は魔術の奥義に絶対必要だという、愛を学んだんだ!!

 

 レポートは大成功だった。

 私は人間としてひと回り大きくなったに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔女の惚れ薬100瓶くれって。実家から」

「あれ、処方条件厳しいよ? 単なる友達同士の遊びならともかく、この場合ガチだろう?」

「そーそー。政略結婚が多いからさ。お互い好きになれたら楽って話。俺にも使う話が出てる」

「両方の同意、結婚していることがわかる住民票があれば効果薄めのを処方するよー。必要かどうかの診断は緩めにしてあげる。試験受かったから、私が処方できるしね」

「面倒だな」

「流石に心を操る薬をばら撒いたら、そっちでいう呪詛師認定されちゃうよ……。この前のは試験で必要なのと友達同士だから出したんであって、本来グレーなんだよ。こっちもタチの悪いのは死刑なんだ」

「まあ、そーだな。そーだろーな」

 

 そう言いながら、悟は私に触れてくる。

 頭、頬。肩。腰。最後に唇。

 

「どうしたんだい?」

「いや、全然ドキドキしないなって思って。薬の効果が切れたら。つまんねーの」

「薬の効果が切れてもまだドキドキしてたら困るからね? 解毒剤と師匠呼び出し案件だよ」

「遊びなら良いんだろ。また使おーぜ」

「中毒みたくなったらまずいからだーめ。結婚したら処方してあげるよ」

「傑に使うのが面白いのに」

 

 その後、惚れ薬を寄越せとかなりの圧力が上層部から掛かった事を記しておく。

 ちゃんと相手が結婚相手で面接しての処方ならするってば。結婚してない人に処方するなんて犯罪の温床になるだけでしょ。エッチなしって縛り付き、監視ありなら結婚関係なしでもいつでも処方するよー、

 

 その後、悟からの距離感が0になったが、愛情と友情は違うと理解してたし、確かに薬で私に恋してた時の悟は触るたびに顔真っ赤にしてたから、これは友情だね!

 

 一年生が入った時、冗談で無断で秘薬を使おうとした時には流石にブチ切れたけど。

 その後、一年生当人から取りなしがあり、歌姫ー硝子、私ー悟、灰原ー七海でトリプルデートしたのは良い思い出である。

 

 そんなこんなで互いの距離感が消滅し、どんどん仲良くなり、毎日楽しんでいたある日。

 護衛依頼が舞い込んだ。

 

 胸騒ぎがして、大魔女様に連絡を取る。

 

『この件、救いはないよ。一番必要なものは、武器でも呪術でも魔術でもない。覚悟になるだろう』

「えっ 護衛失敗するってことですか」

 

すると、魔女様は大仰にため息をついた。

 

『今、傑が予想している覚悟など何の備えにもならぬ。人の道を踏み外す覚悟、大切なものを失う覚悟、平穏を失う覚悟、以前の自分と決別する覚悟、常識が、世界が変わるのを受け入れる覚悟。あらゆる覚悟をしていきな。後悔は避けられぬ。介入は避けられぬ。ならば、覚悟だけは抱いておけ。輝ける思い出はこの依頼までと思え。悪意の波の、その第一波が襲いくる。さあ、時間がない。急ぎな!』

 

 えっ 

 準備する時間もなし?

 

 私は慌てて待たせていた悟を急かしながら事情を話す。

 

「なんだよ、それ?」

「大魔女様の予言だからね。大変なことになった。依頼の失敗は確実、それより酷い事が起こるのも確実って事だと思う」

「俺たちサイキョーだろ。心配すんな。……でも、準備と警戒は全力でするぞ」

「灰原達に荷物を持ってきてもらうことにするよ。全力で行く」

 

 走っていると、爆発が起きた。

 

 ああ、急がなきゃ。




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