なんとか天内理子を助けた私は、二人に守護の魔法を掛ける。
準備する時間があればよかったのに。っていうか、場所と時間が決まっているなら、もっと早く言えと。
「なあ、本当に天内を同化させるのか? 本人が嫌だって言ったら」
「そこまで考える余裕はないと思うよ? 占い結果が占い結果だし、同化に失敗したらどの道殺されるんじゃないかな。あんな酷い占い結果は聞いたことがない」
「占いって絶対なのか?」
「不思議な道具、見てるでしょ? それでも占いなんてって言う?」
「……いや。そうだな。そうだよな」
「私も彼女を助けたいけど、それ以上に犬死させるのが嫌だな」
何せ占い結果が酷い。酷すぎる。護衛失敗以上のことが起きるに違いなかった。
そういうわけで、警戒して護衛をする。
沖縄では、ちょっと気を抜いちゃったけど……代わりに守護の魔具を作って持ってもらった。
高専に帰って、悟と分断される。
黒井さんを魔法で隠して、理子ちゃんを連れて奥へと走る。
悟に掛けていた守護の魔法は容易く破られていて、凄く心配だ。
なんとか、生きていて欲しい。生きていれば、流れ星でなんとかなる。
銃が撃たれた。でも大丈夫! 守護の魔法で防げた。気絶しているだけだ。
そして、私の前に、男が立ちはだかる。すぐに分かった。この人は、悪意の第一波なのだと。
ありったけの呪霊を出して、魔法のステッキを構える。
「ゲロゲロナメクジ!」
一番早い嫌がらせ呪文。だが、男は軽く避けて呪霊達を切り刻む!
肉薄した男に、肉弾戦を仕掛けられる。
鍛えてないと思ったら大間違いだからな! って強い!?
あっという間に倒されて、仰向けになったところで腹を踏まれて苦鳴をあげる。
その口に、ザラザラっと見知った味のものが放り込まれ、口を押さえ込まれてペットボトルの水を注がれる。
げっ 飲んじゃった。何これ。やば……。
私の胸から、ハートが次々と飛び出して、それを男はザラザラっと口に流し込んで………!
う、嘘!? 惚れ薬!? 私の心、食べちゃ……素敵な人♡
悟は走った。
そして、追いついた先には、何もなかった。
戦いの後だけで、何も。何も。何も。
「傑!??」
攫われる天内を追ったのかもしれない。でも、不安が胸をざわめかせる。
急いで天内を探す。
ようやく見つけた天内理子の死体。そこにも男はいない。傑もいない。
焦って依頼主を締め上げる。
「い、依頼を二つ受けていると言っていました。男の捕獲も依頼で受けていると……。恋人同士のように寄り添ってましたがね」
「恋人同士!? そんなはず……魔女の惚れ薬か!!!」
ゾッとする。
傑が、敵の手で心を好きなようにされている。もしかして、体だって……! いや、傑は男だ。
落ち着け、きっと大丈夫。
とにかく依頼主を探さなくてはならない。
高専に戻って、情報取集をして、いやダメだ。そんな事をしている時間が惜しい!
どうしよう。どうすれば。どうすれば。
その時ふと、傑に渡された道具を思い出した。
願い叶える流れ星。魔女の最高の魔具。
小瓶に入ったその光る石を取り出し、願う。
「傑の場所を教えてくれ……!」
石が砕け散り、光が五条に吸い込まれる。
五条は、腐った蜜柑の屋敷に襲撃をかけた。
「すぐ、る」
「五条悟っ 何故ここに!!」
「帰ろう、傑」
寝室で、傑そっくりの痣だらけの女の子が、素肌を晒していた。
同じように肌を晒す老人。その胸には、惚れ薬のハートを入れるペンダント。でも、間に合った。間に合ったんだ。
傑だと、すぐにわかった。すぐに上着を脱いで、傑を包む。もちろん、ペンダントはもぎ取ってハートを回収した。
「さ、悟!? ごめんね、依頼の最中に。でも私、運命の人に会って……あれ、でも悟も運命のような」
「運命でもなんでもねーよ。師匠さんに解呪してもらうぞ」
殺したいほど腐った蜜柑が憎かったが、そうしている場合ではない。
今は傑の解呪が一番大事だ。
「嫌だ。だって、こんなに温かい気持ちなんだ。この気持ちを失いたくない。あの襲撃してきた人が、私があの人に抱かれないと困るんだって」
「傑は今正気じゃねーの。ほら、帰るぞ」
抗う傑に、業を煮やして、口移しで数個、惚れ薬を飲ませる。
そして、ポンと飛び出たそれを喰らった。
奪ったハートの一部は、解呪に必要かもしれないので取っておく。
「……悟♡」
ゆるりと抱きつく傑を抱えて高専まで運びつつ、悟はつくづく思った。
俺が間違っていた。惚れ薬に関する法整備は絶対に必要である。
高専に戻ると、すぐに傑の師匠に連絡を取らせた。
『これは……性転換に流れ星を使ったね。お守りがこんな事になるなんて……男に戻すのは難しいかもしれない。焦ると大事故起こすしね』
「そんな……」
『ハートを食べたんだよね? 酷い真似をする……。こちらも解呪は酷く困難だ。解析はしてみるけど、しばらく時間が掛かるよ』
「傑……」
『ひとまず、正気を奪う成分だけは消せるから、それは調合しておく。でもそれは惚れ薬の効果を消せたって事ではないから』
それから、魔女が何人か行方不明になっていること、呪詛師に捕まったことが判明する。
魔女界と呪術界の間に、緊張感が生まれた。
傑は正気に戻った後、部屋に閉じこもって出てこない。
悪意。
ドミノ。
これが不幸の単なる一段階目って冗談だろ?
あー……とりあえず、傑を抱こうとしてた蜜柑を潰さなきゃ。
天元様同化のための護衛依頼を邪魔したんだから、当然秘匿死刑は取れるだろ。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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