魔女っ子傑はクラッシャーである。   作:かりん2022

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魔女っ子はクラッシュされる

 

なんとか天内理子を助けた私は、二人に守護の魔法を掛ける。

準備する時間があればよかったのに。っていうか、場所と時間が決まっているなら、もっと早く言えと。

 

「なあ、本当に天内を同化させるのか? 本人が嫌だって言ったら」

「そこまで考える余裕はないと思うよ? 占い結果が占い結果だし、同化に失敗したらどの道殺されるんじゃないかな。あんな酷い占い結果は聞いたことがない」

「占いって絶対なのか?」

「不思議な道具、見てるでしょ? それでも占いなんてって言う?」

「……いや。そうだな。そうだよな」

「私も彼女を助けたいけど、それ以上に犬死させるのが嫌だな」

 

 何せ占い結果が酷い。酷すぎる。護衛失敗以上のことが起きるに違いなかった。

 そういうわけで、警戒して護衛をする。

 沖縄では、ちょっと気を抜いちゃったけど……代わりに守護の魔具を作って持ってもらった。

 

 高専に帰って、悟と分断される。

 黒井さんを魔法で隠して、理子ちゃんを連れて奥へと走る。

 

 悟に掛けていた守護の魔法は容易く破られていて、凄く心配だ。

 なんとか、生きていて欲しい。生きていれば、流れ星でなんとかなる。

 

 銃が撃たれた。でも大丈夫! 守護の魔法で防げた。気絶しているだけだ。

 

 そして、私の前に、男が立ちはだかる。すぐに分かった。この人は、悪意の第一波なのだと。

 

 ありったけの呪霊を出して、魔法のステッキを構える。

 

「ゲロゲロナメクジ!」

 

 一番早い嫌がらせ呪文。だが、男は軽く避けて呪霊達を切り刻む!

 肉薄した男に、肉弾戦を仕掛けられる。

 

 鍛えてないと思ったら大間違いだからな! って強い!?

 あっという間に倒されて、仰向けになったところで腹を踏まれて苦鳴をあげる。

 

 その口に、ザラザラっと見知った味のものが放り込まれ、口を押さえ込まれてペットボトルの水を注がれる。

 げっ 飲んじゃった。何これ。やば……。

 私の胸から、ハートが次々と飛び出して、それを男はザラザラっと口に流し込んで………!

 

 う、嘘!? 惚れ薬!? 私の心、食べちゃ……素敵な人♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟は走った。

そして、追いついた先には、何もなかった。

戦いの後だけで、何も。何も。何も。

 

「傑!??」

 

 攫われる天内を追ったのかもしれない。でも、不安が胸をざわめかせる。

 急いで天内を探す。

 ようやく見つけた天内理子の死体。そこにも男はいない。傑もいない。

 焦って依頼主を締め上げる。

 

「い、依頼を二つ受けていると言っていました。男の捕獲も依頼で受けていると……。恋人同士のように寄り添ってましたがね」

「恋人同士!? そんなはず……魔女の惚れ薬か!!!」

 

 ゾッとする。

 傑が、敵の手で心を好きなようにされている。もしかして、体だって……! いや、傑は男だ。

 落ち着け、きっと大丈夫。

 

 とにかく依頼主を探さなくてはならない。

 高専に戻って、情報取集をして、いやダメだ。そんな事をしている時間が惜しい!

 

 どうしよう。どうすれば。どうすれば。

 

 その時ふと、傑に渡された道具を思い出した。

 願い叶える流れ星。魔女の最高の魔具。

 

 小瓶に入ったその光る石を取り出し、願う。

 

「傑の場所を教えてくれ……!」

 

 石が砕け散り、光が五条に吸い込まれる。

 

 五条は、腐った蜜柑の屋敷に襲撃をかけた。

 

 

 

 

 

「すぐ、る」

「五条悟っ 何故ここに!!」

「帰ろう、傑」

 

 寝室で、傑そっくりの痣だらけの女の子が、素肌を晒していた。

 同じように肌を晒す老人。その胸には、惚れ薬のハートを入れるペンダント。でも、間に合った。間に合ったんだ。

 傑だと、すぐにわかった。すぐに上着を脱いで、傑を包む。もちろん、ペンダントはもぎ取ってハートを回収した。

 

「さ、悟!? ごめんね、依頼の最中に。でも私、運命の人に会って……あれ、でも悟も運命のような」

「運命でもなんでもねーよ。師匠さんに解呪してもらうぞ」

 

 殺したいほど腐った蜜柑が憎かったが、そうしている場合ではない。

 今は傑の解呪が一番大事だ。

 

「嫌だ。だって、こんなに温かい気持ちなんだ。この気持ちを失いたくない。あの襲撃してきた人が、私があの人に抱かれないと困るんだって」

「傑は今正気じゃねーの。ほら、帰るぞ」

 

 抗う傑に、業を煮やして、口移しで数個、惚れ薬を飲ませる。

 そして、ポンと飛び出たそれを喰らった。

 奪ったハートの一部は、解呪に必要かもしれないので取っておく。

 

「……悟♡」

 

 ゆるりと抱きつく傑を抱えて高専まで運びつつ、悟はつくづく思った。

 俺が間違っていた。惚れ薬に関する法整備は絶対に必要である。

 

 

 

 

 

 

 

高専に戻ると、すぐに傑の師匠に連絡を取らせた。

 

『これは……性転換に流れ星を使ったね。お守りがこんな事になるなんて……男に戻すのは難しいかもしれない。焦ると大事故起こすしね』

「そんな……」

『ハートを食べたんだよね? 酷い真似をする……。こちらも解呪は酷く困難だ。解析はしてみるけど、しばらく時間が掛かるよ』

「傑……」

『ひとまず、正気を奪う成分だけは消せるから、それは調合しておく。でもそれは惚れ薬の効果を消せたって事ではないから』

 

 それから、魔女が何人か行方不明になっていること、呪詛師に捕まったことが判明する。

 魔女界と呪術界の間に、緊張感が生まれた。

 

 傑は正気に戻った後、部屋に閉じこもって出てこない。

 悪意。

 ドミノ。

 これが不幸の単なる一段階目って冗談だろ?

 

 

 あー……とりあえず、傑を抱こうとしてた蜜柑を潰さなきゃ。

 天元様同化のための護衛依頼を邪魔したんだから、当然秘匿死刑は取れるだろ。

 




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