異世界ファンタジー世界でカードゲームしてる   作:nyasu

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魔法じゃなくて紙のデュエルをやりなよ

婚約者のエレナ殿は、それはもう地味であった。

前髪は長いし、顔は全然見えない。

しかも猫背で、おどおどしている。

コミュ障のきらいがありそうな感じだ、シャカパチしてそう。

でも多分妹の話では将来超絶な美少女になって、アンタがあのエレナですって!デデドン、みたいな展開があるんだろうな。

 

「マルセル様は、その、普段は何を」

「室内で出来る遊びを少々」

「剣などは、なさらないので」

「習いはしましたが、魔法の方が好きなので」

「そうですか」

 

はい、会話終了。

この子、そうですかで会話を終わらせがちなのである。

続かない、会話が続かないよ。

 

「エレナ殿はカードゲームなどは」

「私、そういう物には疎く、我が家は武家である為、主に武芸一辺倒でして」

「そうですか」

「その、知らないので興味があります。どんなものでしょうか」

 

えっ、カードゲームにご興味があると……素晴らしい。

これは布教しないと、特にカードゲームプレイヤーは臭いから女子は少ないのだ。

そもそも、この世界の人間は水が汚いとか言って風呂に入らないのが異常なんだよ。

カードゲーマーの才能あるよ、じゃなくて布教だ!

 

「カードは良いですよ、特にトレーディングカードがよろしい。トレーディングカードとは元々観賞用として普及した絵札なんですがね、そこにルールと対人戦を想定した遊戯とした側面も合わさって、あぁ最近は投資の対象とする場合もありますが」

「んんっ、んんっ!」

 

なんか護衛がうるせぇな、布教の邪魔するんじゃないよ。

ほら、エレナ嬢もうんうん頷いてるじゃないか。

 

「何を隠そう私の魔法もカード、つまりは絵札を元にしてましてね。ファンデッキで遊ぶティミーなどもおりますが、私はロマン寄りのジョニーでしてね。ガチ勢を倒せたときの感動と言っては」

「エホン!エホン!」

 

うるさいよ、おい肩掴むんじゃねぇ!

デッキ見せれねぇだろうが!

 

「失礼。それで、あぁそうだこれが私のデッキなんですが暇な時はモンスターを狩ってカード化してるんです。最近は道具などに魔力を流せばアミュレットカード化出来ることが分かりましてね。スペル系のカードだけは相手を倒して魔力から生み出すしかないのが難点なんですが」

「いけません!坊ちゃん、それ以上はご迷惑ですぞ!」

 

護衛の騎士の一人が俺に向かって、何やら騒ぎ始めた。

おい、二人きりって設定なのに話し掛けて邪魔してくるんじゃねぇ!

何だテメェ、キレちまったよ。

 

「実際に見せてあげますよ、デュエル!」

「なっ、ご乱心!ご乱心!」

「おい、デュエルしろよ!」

 

エレナ嬢を巻き込んで、俺と騎士がフィールドに立つ。

俺の横には困惑するエレナ嬢、そして離れた場所には騎士がいる。

刻限は世界に示されたり、俺達の中心には砂時計が現れた。

命運は数値になって頭上に掲げられる。

世界は隔離され、結界は俺と騎士とエレナ嬢以外の侵入を拒んだ。

そして、俺と騎士の手元には5枚のカードが現れる。

 

「くっ……ハァハァ……」

「おい!デュエルしろ!」

「やらねば……やらねばならぬのか……ドロー!」

 

騎士が虚空に手を伸ばせば、その指先に6枚目のカードが現れた。

ほぉ……コイツ新顔の癖に出来るな。

 

「う、動けませんね。壁でしょうか……これがカード、数字は召喚に必要な贄の……いえ、魔力かしら?攻撃力と体力というのは何を区切りに……あっ」

「そうでしょう、素晴らしいのです。そうだ、実際にやってみましょう」

「えっ、えぅ……」

「どれが良いですか、何でも召喚出来ますよ」

 

手札をエレナ嬢に見せて好きなのを選ばせる。

サレンダーしないとは根性があるな、お前ボコボコにしてやんよ!

 

「で、ではこのワンちゃんを……コボルト召喚!」

 

エレナ嬢がモンスターを召喚する。

半透明のコボルトがこっちを2度見した。

ご主人……じゃない!?みたいな顔してた、意志があるんか?

 

「ドロー!俺は訓練場の案山子を召喚!カウントダウン3!このアミュレットがある場合リーダーへ攻撃を無効にし、そのダメージ分だけカウントダウンを進める」

「おぉ!アミュレットです、すごいなぁ。みんな対策してきたんだな」

 

さて、俺達のターンである。

ドローしたカードはコスト2の血に酔ったウルフ、手札は後攻な為5→4から4→5になった。

 

「このコストが高いほうが強そう……血に酔ったウルフを召喚!」

「グルァ!」

 

おう、久しぶりやんけと俺の腹を噛み千切りながら狼が登場した。

痛みはないが、血がドバドバ流れる。

誤解されてるようだが演出なので実際には痛くない。

 

「なっ、モンスターが」

「あぁ、大丈夫です。かすり傷なんで、ほら頭上の数字が1減って19になってるでしょ。ダメージを食らわせることですぐに受肉出来るんです。まぁ、エレナ嬢が勝てば無傷になりますから」

「負けたら……」

「あー、まぁ実際に影響受けて死にますかね?」

 

それか魔力が切れてぶっ倒れるか、なんか身につけた魔道具が魔力を徴収するか、正直対価というか代償で何を取られるか分からんからな。

 

「それより攻撃してみましょう、ほら!」

「負けられない……総員!攻撃せよ!」

「ひぃ……た、耐えろ!」

 

コボルトとウルフが目の前に立つ案山子をボロボロにぶっ壊していく。

途中で消えるように案山子は薄くなって消滅した。

 

「俺のターン、ドロー!俺は……コスト2を支払い、攻撃力2体力2の死刑囚の男を召喚!ターンエンド」

『うわぁぁ……あっ?あれ、斧は……なんだこれ、デュエル?』

「おぉ、召喚獣として何かしてたのか」

 

現れたのは人間の男だった。

すげぇや、モンスターみたいに騎士は殺した相手をテイム出来るんだろうか。

まぁ、受肉出来てないし攻撃は出来なんだろうけど。

 

「よし、あのおじさんを攻撃してみましょう」

「えっ?」

「ここは相打ちになりますが盤面を取れますのでウルフが良いですね、ほらウルフの体力は1なんで負けるんですよ」

「で、でも!何やら生きてるような」

「いや、レイスの一種ですよ」

 

しっかりデュエルしようと騎士くんが用意してくれたんだろ。

ほら、ほらほらと急かすと、急かされたのが嫌だったのか何か泣かれた。

えー、ごめんて、そうだよねコボルトで攻撃するかとか自分で考えたかったよね。

それはマナー違反だったわ。

 

『や、やめてくれ!嫌だ、死にたくない!』

「ウルフで、攻撃……」

『うわぁぁぁ!離せ!死ね!あぁぁぁ!クソがぁぁ!死ね、死ね!』

「グルァァ!」

 

血に酔ったウルフが突撃し、死刑囚の男と絡み合う。

首筋に噛みつき血を撒き散らしながら、眼球を殴られて潰し、腕を噛み、喉を殴られ、壮絶なバトルをしていた。

そして、お互い薄くなって消えていった。

おぉ、演出が凝ってるなぁ。

 

「コボルトで攻撃!」

「ぐっ、攻撃力1か衝撃は来るがまだ耐えられる」

「あの、もし勝ったらそちらの騎士はどうなるんでしょうか」

「あぁ、多分魔力がなくなって倒れるだけですね」

 

相手には命の危機がなくて、魔力があればずっと出来るんだからズルいよな。

まぁ、大体一回くらいしか出来ないのが普通だけど。

 

「俺のターン……コスト1風の矢でコボルトを攻撃!コスト2で攻撃力2体力2のスケルトンウォリアーを召喚!」

「おぉ!デュエルできてるぞ!あぁ、コボルトが死んだ!」

 

コボルトの首がいきなり飛んで消えていく。

相手の場には骸骨の兵が現れた。

ちゃんとデッキ作れるように召喚獣契約とかしてるんだな。

しかも魔法とか元から持ってたやつかな、アドリブかな。

アミュレットもあったし、今までで一番いいぞ。

 

「何をしておられるか!」

「お父様!」

「えぇい!」

 

俺が楽しんでいたら、外から声が聞こえた。

あれ、前は外野の声とか聞こえなかったのに仕様変更だろうか?

おぉ、トール卿ではないか。

強そう、なんか身体が燃えてる!すごい、炎のパンチだ!

 

「何故だ!壊せぬ!おい、レオンハルト貴様!」

「待たれよ!誤解である!おい、マルセル解除しなさい!」

 

はぁ?嫌だが……せっかく楽しくなってきたのに毎回邪魔しやがってよ!

 

「俺はサレンダーするぞ!な、なんで……」

「おい何してんだよお前、俺のターンでお前がサレンダー出来るわけないだろ」

 

背後でなんか勝手にサレンダーしたが、仕様的に無理である。

なんでみんな俺の邪魔をするんだよ。

 

「あの……魔法を使わないで絵札だけで遊べないんでしょうか?」

「あー、あまり気味だから出来るけど」

「でしたらそちらでやりますので、ここはひとまず辞めませんか。お父様達……怖いし……」

 

言われてみると、ちょっと怖い……いや、かなり怖い。

なんか冷静になったら怖くなってきたな。

 

「エレナはいつでも、でゅえる?とやらに付き合いますので」

「ターンエンド」

「サレンダー!よし、やった!うぅ、魔力が……」

 

俺の宣言と共に向こうがサレンダーしてフィールドが消えていく。

まぁ、エレナが遊んでくれるしいいか。

 

「貴様と言うものは!マルセル、何をしたか理解してるのか!」

「待てレオンハルト!私の拳を防いだ結界は捨て置くには惜しい、抗議はするが婚約は進めるぞ」

「テセオス!お前正気か!娘が危険に晒されたのだぞ!」

「フン!俺の娘だ、いつでも死ぬ覚悟は出来ておる。それに最後は手綱を握っておったではないか!」

「そういう話ではないはハゲ頭が!」

「何だと、若作りのロン毛野郎!」

 

親父たちが何か掴み合いの喧嘩を始めて周りの人間が止めに掛かる。

その様子を、俺とエレナはボーっと見守るんだった。

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