流石にブチ切れたのか、ウチの家にこんな所あったんだという場所に連れてこられた。
木製の格子がある、まんま座敷牢だった。
えぇ、投獄されるのは流石に草。
「久し振りだな」
「あっ、兄貴じゃん。半月ぶり?」
「もうそれくらいになるか」
座敷牢を掃除して、差し入れをさせることでベッド周りをいい感じにさせていたら兄貴が来た。
おぉ!これが面会か!
「何をしてるんだ?」
「俺の魔法について検証していた。見ててな」
俺は適当に水差しを持って魔力を込める。
何となく注ぐイメージ、俺の中に何かパワーがある想像で煙みたいなのが身体から出てくる。
もうこれだけでテンションが上がる、一日中魔力を動かすだけでワクワクする。
で、まるで念や気のようなそれで道具を覆うと……カードになった。
「消えた!?水差しがカードに、大きさが違う!?」
「魔法だし、そういうこともあるだろう」
「いや、可笑しいだろ」
「そうなんだよな、なんの効果もないデザインだけのカードで戦闘には使えないんだよ」
「そういう話ではないだろ!」
水差しは何も書いてない絵だけのカードになっていた。
アミュレットならカウントダウンの数字が書いてあるのに、そういうのもない。
魔力をカードから吸い出すイメージで元の状態に戻すくらいだ。
うーん、つまんね。
「お前は、自分がどんなに凄いことをしてるか分かってないのか?」
「えっ、すごいの?」
「その力を使えば大量の食料を簡単に運んだり、貴重な物を傷付けずに移動させられる。それどころか重さも無視出来るんだぞ」
「いやでもバトルに使えないし」
「なんでここまで説明して理解出来ないんだ……嘘だろ……」
俺より年下で小学生くらいの兄貴が残念そうな顔で俺を見る。
まぁ、持ち運びとか楽なのは分かったけど対して運べないと思うよ。
あーあ、でもウチの宝物庫とか忍び込めたら家宝レベルの道具をカード化出来るのにな。
絶対強いはずだし、欲しいなぁ。
「お前の魔法は、マティーナの魔法ではないが、それでもそれは有用だ」
「はぁ、なるほど?」
「だが、家督はお前に譲れぬ。今は研鑽を積むといい、いつか雌雄を決する……その時まで」
「えー、家督とかいらないんだけど」
「そうなの!?」
いらないでしょ、役職が上がると責任を取る羽目になるんやで。
領主?になんて、なった日には毎日が仕事みたいな。
うわぁ、辛すぎワロタ。
あと、たまに素が出てるにこういうよく分かんない言い回しも大人に教わってるから兄貴の本心ではないんだろうなぁ。
俺、ガキだから分かんねぇけどそれくらいは分かる。
脳が小さいのか、明らかに前世より頭悪いけど……うーん、肉体に引っ張られる的な奴だろうか。
「えっ、でも、相当ヤバい魔法を習得してるし」
「強くはなりたいけど家督はちょっと……てか、名前とか奪われてるしないかなと」
「いや、そんなの後からでも変えられるし」
分かってないな、実際がそうでも建前があるでしょ。
貴族社会なんて面子と家が第一だからヤクザみたいなもんやし、一度奪ったってのはウチの母親がブチ切れるくらい屈辱だし、周りへのアピールって事でしょ。
「もうさ、紙でもいいからデュエルしようよ。対策してるんでしょ?」
「もしものために武器契約や従魔は手に入れたが、お前とは関わるなって」
「知らん単語言われても、どうせ母親だろ。まぁ、残当か?」
ほら、帰れ帰れと手を向けて払えば、兄貴は渋々離れていく。
貴族なんて借金だらけの零細企業の社長みたいなもんだろ。
自分より年上の部下、当然優秀であれこれ言ってくる。
俺、なるんだったら責任とか取らなくていい立場がいいよ。
一人でデッキ2つを使って10戦くらいしていたら、妹がやってきた。
なんか、メイドを引き連れているのでちょっと立場が良くなってるんだろうか。
妹が目配せするとマリア付きのメイドさんが部屋から出ていく。
「おい、デュエルしろよ」
「いや、まずは何で来たか聞きなさいよ」
「何しに来たの?デュエルしないの?」
妹は眉間のシワを伸ばし始めた。
ねぇ、どっちなん?
「まずは良くやったと言いたいところだけど、哀れな状況ね」
「そうか?最高だと思うが」
「自分の状況が分かってないの?」
何を言ってるんだろうか、この妹。
お前こそ、何も分かってないんじゃないか?
「貴族として屈辱的な目にあってるのよ?」
「お前、今の生活が当たり前だと思ってないか?」
まぁ、俺も体験してる訳では無いから想像になるけど。
「モンスターに怯えず、毎日の食事にも困らず、綺麗な水や衣服があって、不当な暴力にも晒されない。起きている時間は好きに寝て、好きに遊んで、好きに食べ物を得られて、面倒なことは家人がやってくれる。どこが屈辱的なんだ」
毎日働いて、間違ってるから理由は自分で考えて直せと叱責され、払えなくはないが食い物が高いなと思いながらコンビニで買って、休みの日は何かやろうとして寝たら終わったり、ゲームしてたら明日仕事かぁってなったり、そして仕方なく家事とかやったりしなきゃいけない生活。
そっちのほうが余程、今より屈辱的だわ。
「それは貴族の生き方ではないわ」
「お前ら兄妹揃って何しに来たんだよ、意味わからんぞ」
「はぁ……貴方の謹慎もそろそろ終わるわ。応えてなさそうだけどね」
「おー、そうなんだ」
「でもまだ安心出来ないわ!2年後に吸血鬼が暴れ始めて国中が大打撃を受けるの、その後は隣国と戦争して、疲弊した国は婚姻による地固めを進める。つまり、結婚ブームで私が見初められて破滅ルートになるってことよ!私、可愛いから!」
おぉ、自己肯定感すごいな。
ヤバすぎる貴族も対応できない吸血鬼ってどんなよ。
後、隣国も被災したみたいな国を攻めるってやってることエグいな。
「で、それを聞かされてどうしろと?」
「アンタには幼体の吸血鬼を倒してもらうわ。幸い、場所は分かってるし」
「えー、どうやっていけと」
「そこは何とかしなさいよ、国家の危機よ」
偉い、大きく出たなぁ。
まぁ強いモンスターは大歓迎だからいいけど、じゃあ早速行くか。
座敷牢の錠前を魔力で包んでカード化すると、ギギギと自重で座敷牢の扉が開く。
それをよいしょと押して開けたら、口を開けて間抜け面を晒してる妹がいた。
「えっ、出れたの」
「出れんだろ、魔法があれば」
うーん、食料とかカードにしたら運べるか。
あー、兄貴の言ってたのこれかぁ。
確かに便利だな。
「何とかしろとは言ったけど、4歳でしょ?流石に一人旅は無理じゃない」
「それもそうか、俺に従順な奴がな……家の人間は俺の部下じゃなくてマティーナ家の部下だし」
魔法の世界って奴隷とかいないのかな。
それだといい案が浮かぶんだけどな。
「奴隷っているの?」
「考えたわね、確かに逆らえないけどアイツらは家畜より高いわよ」
「いるならこっちのもんだわ」
伊達に転生してないぜ。
俺に秘策がある。
これはもう勝ったな、ガハハ!
「お嬢様!なんてことを!」
「あっ」
「あっ」
油断してドアを開けたら外で待機していたマリア付きのメイドに見つかった。
メイドはどうするかといえば、まぁ命令違反はクビが飛ぶか体罰は当たり前なので、当然のように当主の命令を優先する。
なので、マリアを飛び越えて脱走した事を伝えに行くのだ。
「ヤバい、こっちはどうにもならなさそう」
「早く!早く戻って!」
「おし、錠前を……あっ、ロック掛かった状態で出て来やがった!偽装できない!」
「ふぉぉぉ!お父様の魔力が近付いてきた!めっちゃ、圧が!」
このあと、吊るされて滅茶苦茶叩かれた。
幼児虐待が過ぎるだろ。