日がな一日、本の解読に勤しむ。
齢4歳、こちらの世界に転生して1年ほど経った。
簡単な言葉なら、日本語を使った解読表やメモを使わずとも読めるようになってきた。
神童と持て囃されるが、色んな事を学んでる兄貴や遊んでる妹と比べたら、読書しかしてないのだから読めるくらいなろうというもの。
つまり、神童とか言う外野の声はウチの家の中の派閥によるプロパガンダである。
やめて欲しい、家督なんて欲しくないのに暗殺とかされたくない。
なんかあったときのスペアとはいえ、排除されないとは言えないのだから。
という訳で自衛の手段が必要であった。
どんな世界も力が必要だって分かんだね。
筋力とか、権力とか、財力とか、魔力とか、力と呼ばれるそれらである。
「元々少ないとはいえ、もう大体読んだな」
ウチにある秘伝書とでも言えばいいか、魔法の研究結果や理論の書いてある本は大体読んだ。
過去には母方が魔法陣の適性がある血筋だった当主が星座からパワーを得て戦う話とか、血統魔法のメテオで戦場で活躍した話とか、俺自身が星になるみたいな感じでビームだしたり、重力操ったり、対象を自分の周りでぐるぐる移動させたり、星で出来そうなことをイメージして各年代の当主達の歴史書的なのも読んだ。
だいぶ盛ってると思うけど、仕組みは分からんけど有名になったら魔法が強くなるから誇張してんだろうなと思う。
「まさか筋トレで学んだメタ分析が役立つとは」
メタ分析とは似たような研究を複数見て、それを元に検証するみたいな物である。
で、シンプルに強い魔法使いの共通点と言うとだ。
魔力がすごい!効果が強い!しぶとい!の3つ。
MPと攻撃力と防御力がある奴が強いである、当たり前だよね。
流れ星を模倣して速さを追求した当主もいたらしいが、普通に戦争で魔力が切れたところをグサッと刺された話があったので、素早さはぶっちゃけいらない。
「メガテンで言うなら継戦能力と攻撃性能と耐久性能やろなぁ」
やはり整理するには書くのが一番。
ということで貴重な羊皮紙に貴重なインクを使って刻むように文字を書く。
勿論、日本語である。
情報漏洩しないのは大事。
魔力について、どう増やすか、それは使いまくって寝る、以上。
なんか筋トレと一緒で魔力を使うと超回復で最大値が増えるらしい。
魔力を生み出す臓器的なのが鍛えられるそうだ、ちなみに実際にある訳ではなく概念的な仮想の臓器らしい、難しくて分かんね、哲学みたいな説明だったしな。
魂を鍛える的な認識をみんなしてる。
まぁ、例外的な裏技として自分より魔力のある存在と契約して共有したり、禁忌を上位存在に誓うことで祝福を得たり、色々裏技はある。
多分、犬を食わないとか魔力を捨てる代わりに身体能力アップとか、漫画でよくある奴だと思う。
「ゲッシュかな」
次、魔法の効果を強くするにはオリジナル魔法の開発である。
仕組みは分からんけどみんな知ってるしスゲーって世間で有名になると神秘性が増すので強くなる。
信仰とか無意識下での共通認識とか、そう言うのを元に魔力合体して出来たのが精霊なのだが、個人にもそういうのが適用されるらしい。
水ってやべー、とかだと水に対する恐れとか感謝とか水に対するイメージに魔力が集まって水の精霊が出来る、
将軍の人やべー、とかだと強いイメージがあるので実際に将軍は強くなる。
知名度あるだけで実質、オート元気玉状態である。
オラに魔力を分けてくれみたいな。
そのため、みんな使える魔法ばかり使う奴とオリジナルの魔法を使う奴では、魔法を強くする信仰心が分配されるのと集中されるという違いがある。
100の信仰心を10人使えるから10の信仰になるのと、1人しか使えないから100そのまま信仰の恩恵を得られるのと、っていう違いだ。
「耐久性能はもう物理と魔力だからな」
鍛えて物理的に強くなるか、魔力で概念的に強くなるか、どっちかである。
現実的なのは限界のない魔力の方だろうな、どんなに鍛えても剣とかで普通に切れたりするし、魔力でガードとかの方が簡単そう。
まぁ、魔力がない代わりにすごい身体能力で皮膚が岩みたいに強いみたいな例外もあるけど、それは鍛えて成れたりはしないだろ。
「魔法かぁ、魔法の構想は出来てるんだけど、どうやって作ればいいのかな」
俺の血筋による魔法の適正、前世の知識を用いたオリジナルの魔法のイメージは出来てる。
だが、実現するには魔力とか足りなすぎる。
あと名声もないから魔法も強くないので色んなことが出来ない。
最後に防御力が紙性能すぎる、ワンパンで死ねる。
「こういう時はママだな、ママとかもう卒業してぇ……」
ということで、母親の部屋に来た。
母親はニートなので、部屋で刺繍や絵を描いてる。
貴族ってインドアって分かんだね。
部屋の前に来た俺はちっこい手でドアをノックして、後ろを振り返る。
俺の近くにいた家人、まぁメイドとか執事、今回はメイドさんが頷きどあを
「入りなさい」
「お母様、話が」
「お母様!……いえ、驚きました、ママではないのですね。とはいえ、マルセル。入室の際は失礼しますと目上の者には言う、これが仕来りです」
「すいません」
開口一番、バチクソに怒られてて草。
はえー、育ちのいいお家って家族間でも厳しいんすね。
っていうか、毎回同じこと言われてる気がする。
「貴方は何度言っても……はぁ……」
「元気出してよお母様」
「誰のせいだと、いえ4歳に求め過ぎなのでしょうか。それに成長はしてるのですものね」
頭を押さえながら、手に持っていた刺繍を背後に控えるメイドに渡した。
そして、両手を広げてこちらに来いとの合図。
俺は黙って従って抱っこされる。
「それで本の虫のマルセルは私に何の用かしら?何か欲しいものでもできたの?」
「そろそろ僕も魔法が欲しいなって」
「ッ……それは、基礎魔法ではなく血統魔法って事かしら」
心なしか、部屋の空気が冷えた気がした。
殺伐とした、お母様からの魔力の影響だと思われる。
漏れてる漏れてる、周りの人達が顔を顰めて辛そう。
そんなシリアスな感じじゃないんだが。
「別にメテオとかはどうでも良くて、お母様みたいに召喚獣が出したいなって」
「まぁ!なんて可愛らしいこと!」
急にハイテンションになって、フワッと身体が軽くなる。
部屋全体も心なしか安心感が漂っていた。
ふぅむ、俺、なんかしちゃいましたか?家人救っちゃったわー。
「ではお母様の手持ちをあげましょう。貴方くらいの魔力なら……コボルトあたりかしらね?」
「えっ?」
そう言って、ポンといつの間にかお母様の側にプルプルと二足歩行で立った犬が現れる。
犬種は柴犬っぽい、いや四足歩行でもいいッスよ。
キツそうだからそう思わずにはいられない。
「お前、この子の物になりなさい」
「ワン!」
犬が俺にタッチ、すると何だか身体に入ってきた気がした。
なんかヌルっと温かい物がタッチされたとこから広がったんだが、何や今の。
『よろしくな、ご主人』
『コイツ……脳内に直接、ファミチキ下さい』
『ファミチキ?おぉ!美味そう!』
『バカな、通じるだと!?』
いつの間にか四足歩行で尻尾振って俺の周りをクルクル回る犬。
お前コボルトやめろ、今日から犬や!
「ふふふ、お話できるようになったでしょ?今、貴方は魔力を共有してパスを形成したのよ」
「そーなんだー」
「貴方より少し弱い子にしたから、おおよそ倍近く魔力が増えたんじゃないかしら」
えっ、こんなんで魔力増えるんですか?
何も解決してないけど魔力が増えた。