さぁ、魔法だよ!ということで、我がサンダルモニカ王国の真ん中あたりにある内陸部に位置するマティーナ領、その領地を馬に乗って移動する。
目的場所は山である、それも領地の端っこの山だ。
なんでかと言うと家の周りはモンスターが出ないからである。
精霊でも悪魔でも天使でも、俺の中ではモンスター扱いなのだが、そういうのがいないから管理してない場所に行くのだ。
まぁ、そりゃ管理してる人類の生存圏にモンスターなんかいないよねって話である。
言うなれば、都会の街中に野生の熊なんか普通はいないよね、みたいな。
「早いぞー!」
「あまり、動かれては困りますぞ」
さて、当然小さい俺がそんな場所に行けるわけもなく、マティーナ家の騎士に連れてってもらってる。
騎士ってのは一応貴族、でも土地は持ってない、そんな奴ら。
つまりは社長の息子を部下が運んでる図である。
領主の騎士が息子のわがままに付き合ってるのだ。
「坊ちゃん、あまり狩りに熱中なされては困りますぞ。確かに魔法は強力ではございますが」
「俺より年下で強い奴もいるもん」
漫画で言ってた、この世界に漫画はないけどな!あと、忍者の癖に忍んでない奴のセリフだったけどな。
コイツ、ダメだなぁと言う目で見られているのが分かる。
でも権力の前になにか言いたげなまま騎士は黙った。
分かるよ、俺も金持ちのクソガキの世話とか頼まれたらムカつくもん、まぁムカつかせる側だから気にしないけどね。
「さぁ、登るぞ!モンスターを探して」
「私の側から離れないで下さいね」
とはいえ4歳なんぞ、たかが知れてるので担がれる。
はぁ……鎧冷てぇ……コボルト召喚しとこう。
「あっ……」
「どうしました?」
何回やっても出ろっ念じてるのに出てこない。
しまったなぁ、魔法のフィールドを展開しないと召喚できない仕様になってたんだった。
前みたいに召喚できないぞ、うーん無力。
「むっ!」
「どうした、なんかあったか?」
「見てください!」
騎士の指差す先、そこには生乾きの茶色い棒状の物があった。
何やら虫も集まってるそれ、酷い匂いが漂ってくる。
「ウンチだ!」
「えぇ!しかも、半日程度でしょう。縄張りかもしれません」
何らかのモンスターの物って訳だ。
なるほど、木に付いた傷とか草の倒れ具合とか、轍とかからモンスターの痕跡を見つけるのか。
お前、有能だったんだな。
騎士だからってバカにしてたよ、魔法使えないからな。
そして探索を続けていると、我々は猿のような動物を見つけた。
緑や茶色、灰色や黒と肌の色は斑でバラツキがある。
猫の毛色みたいにバラエティに富んた日本猿みたいなのだ。
「ゴブリンです!離れて!」
「おぉー」
「おい!俺から離れろって意味じゃねぇ!」
言われた通り抱き着いてた騎士から飛び降りたら、めちゃくちゃキレてて草。
しかし、そんなのはどうでもいいぜ。
「ゴブ?」
「ゴブって言ってるんご、ほな!デュエル!」
デュエルの宣言と共に俺を中心にフィールドが発生する。
なんか半透明の灰色の膜が広がっていき、俺とゴブリンを含めてドームみたいになっている。
なんか、めっちゃ騎士が叩いてる。
なるほどなぁ、このドームは内側から外が見えるのか。
あと、中に入ってこれないのか。
「ゴッ!ゴブ!?」
「おぉ、動けないか」
ゴブリンは右往左往しているのだが、俺に気付いて向かって来ようとしては見えない壁に阻まれていた。
一定範囲からは動けない仕様が働いている。
そして、俺とゴブリンの頭上には20の数字があった。
中央にはデカい砂時計、あれが制限時間か。
「俺のターンドロー!おっと、先行ドローはルール禁止じゃないぜ!異世界だからな」
「ゴブ!」
虚空から人差し指と中指の間にカードが収まる。
俺の手札は6枚、コポルトと魔法しかない。
そして、感覚的に分かる。
残りデッキ数は1枚、次がラストターン、ピンチである。
だが、俺には必勝法がある。
「俺はコボルトを召喚してターンエンドだ!」
半透明のコボルトが意気揚々と現れる。
次のターンダイレクトアタック、だが攻撃力は1か。
以前ピンチなままゴブリンのターン、ゴブリンは手札を握っている。
おぉ、ルールの刷り込み効果は適用されているのか?
あっ、カード捨てた!めっちゃ、踏んでる。
「ゴブブ、ゴルァ!」
「なんかキレてて草」
ゴブリンは騒ぐだけ騒いで……タイムアップした。
そう、奴は人間じゃないからターンエンド出来ないのだ。
「うおっ!急に入れた」
「よし、弱ってるぞ!騎士よ、行け!」
「坊っちゃん、肝が冷えましたぞ」
そう言ってスパーンとゴブリンの首が飛ぶ。
ゴブリンは魔力が切れたのか、疲労困憊で動けてなかった。
そして、ゴブリンの身体から光が発生して俺と騎士の中に吸い込まれる。
パワーレベリング的な感じか?
「何、今の?」
「魂と言うやつですね。次は坊ちゃん一人でやってみますか?」
「説明雑だなぁ、何か影響あるの?」
「魔力が増えたり、身体能力が上がったり、召喚士なら召喚できるようになったりします」
ゲームみたいな世界観で草、ほんとにパワーレベリングやん。
はえー、養殖されてる。
「ゴブ!」
「またゴブリンだ!よし、デュエル!」
安全がわかった騎士の後方腕組みを見ながらデュエルを宣言、タイムアップでゴブリンがヘロヘロになる。
「まだ俺のデュエルは終わりじゃないぜ」
「ギョ?」
「デュエル!」
魔力が切れたらどうなる。
知らんのか、命を削る。
筋トレで疲れてる人を無理に走らせるような物だ。
連戦を敢行、ゴブリンがまたもやタイムアップ。
口から泡を吐いてぶっ倒れる。
だが、俺のデュエルは終わらないぜ!
「ゴ、ゴブゥ……」
「デュエル!」
倒れたままのゴブリンとデュエル、タイムアップで今度は胸を抑えて動かなくなった。
過労死したようだ、魂的なのが俺に入ってくる。
……ハッ、俺の手元に新しいカードがいつの間にかある。
「コスト1ゴブリンか、雑魚め!」
「おめでとうございます。坊っちゃん」
やったー!ゴブリンのカードが手に入ったぜ!
よし、この調子でモンスターを手に入れまくるぞ!
「良し、行くぞ」
「モンスターは人語を喋れない、確実に殺すとは素晴らしい魔法ですね」
「うむ」
子供に媚びる大人の姿があった。
この騎士とデュエルしたらどうなるんだろ、負けたらまずいからやるなら家でかな。
人とのも楽しそうだなぁ。
一日中、山を駆け巡ったことによりデッキが出来上がった。
いやぁ、狼とか熊は強敵でしたね。アイツら魔法のせいで強化されてんだもん、何でもかんでも精霊扱いすればいいってもんじゃねぇよ。
あんなの、どう見てもモンスターだから、荒々しい精霊ですねとか内心思ってねぇだろ。
「マルセル」
「あっ、お疲れ様です」
ウチの騎士が道具の手入れをしている横でデッキの手入れをしている俺の前に、大人を引き連れた子供、俺の兄貴のレオンがやってきた。
小学生が10人くらいおじさんを引き連れてるよ、ふぇぇぇ。
何の用だろ、珍しい。
「お前、魔法が使えるようになったらしいな。それも特別な」
「おぉ!そうなのです!この魔法はですね!」
「祖霊より話は聞いている。代償はデカいが、強力な物とな」
あっ、なるほど。
と、どこから聞いたか分かった。
流石に御先祖も命を代償にしたとは言ってないらしい。
「来い、俺が魔法を指南してやる」
「おぉ、やりましょう」
7歳の兄貴が4歳の弟とカードゲームしたいのか、ええやん。
何やらウチの派閥の騎士が大慌ててどっか行ったけど、トイレだろうか。
言われるがままに庭に来たら、何やらギャラリーが増えてた。
ちょうどいい、俺の魔法のお披露目も出来る。
「これはどういう事ですか」
「あら、魔法使い同士。技を競い研究成果を披露する事は研鑽する上で望ましくなくって?」
「詭弁を、我が子はまだ齢4つ。競えるほどでは」
「それこそ普段より早熟で英才だと伺っておりますが」
なんか母親がバチバチで草。
大丈夫、負けなきゃ無傷になる。
まぁ、最初に5年分の価値ある物、そんで魔力がなくなって、最後に寿命がなくなるだけだしな。
「お前が負けた場合に対価を支払うゲッシュを結んでいる事は聞いた。ほら、これをやろう。これはウチの物が取り寄せた魔鉱石。お前の数十倍の魔力を秘めている、負けても賄えることだろう」
「おぉ、気兼ねなく出来そう」
なんかダイヤモンド的なのを投げて寄越してくる兄貴、そんなにカードゲームやりたかったんか。
なんか生意気そうな面してると思ってたけど、中身は小学生だったんだね。
母親が家臣団に取り押さえられてるけど遊びの邪魔だな。
「さぁ、どんな魔法か――」
「デュエル開始ぃー!」
「えっ?」
ギュイーンと俺を中心に魔力の膜が発生し、対象としてなかった兄貴の取り巻きである家人がフィールドに押されて兄貴からどんどん離されていく。
何か騒いでたり攻撃してきてるけど、壊せなくて草。
お客様!あー、お客様!フィールドの破壊はご遠慮ください、黙って見ててください。
「うぅっ……な、何だこの知識?なんて複雑な魔法なんだ、魔法を直接叩き込んだのか」
「先行は俺が貰うぜ、ドロー!モンスターカード!俺は1ターン目の召喚ポイント……PPでいいか、消費してコボルトを召喚!ターンエンドだ!」
「待て、まだ手札もルールも分からん、えーとえーと」
「兄貴、時間ないよ」
「分かってるよ、もー!」
カッコつけてたのに、素の言葉が出て来てだいぶ焦ってるようであった。
なお、大人達はなんかもっと焦ってる。