「待たせたわね」
そう言って一人の女性が入って来る。
「それで……診断の結果なのだけど──」
目の前の女性──医者は診断書を出し、それを見る。
自分は今、迷いの竹林の奥にある病院に来ている。
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あの後、結局魔理沙の診断だけでは信用できなかったため、一応病院に行くことにした。
魔理沙が指差した方向へ歩いて行き、医師を探したのだが、それらしき人も建物も見つからなかった。
その後、里の人間に話を聞き、ようやくその場所を見つけることができたのだが……
『休業日?』
扉に貼られていたのは、本日休業の張り紙。
どうしようかと思っていると、通りかかった老人に竹林の奥にある『永遠亭』という場所を教えてもらい、そこに向かうことにした。
竹林を通り、奥へと進んで行った先にそれはあった。
迷いの竹林は以前にも通ったことがあったため、特に迷うことはなく行けた。
その後、
────────
「まず、軽度の内臓損傷、これは胃と肝臓に見られたわ。内蔵機能に問題がなかったのは幸いね」
「そして、あばらが3本、右前腕骨、左腕、右の下腿に左大腿骨と下腿。これらの骨にひびが入っているわ」
「後は、所々に内出血が見られる」
「でも、心配しなくても、安静にしていれば自然に治るわよ」
「それにしても、何をしたらこんなことになるのかしら?」
「左側を中心に負傷しているけど、それらしき外傷は見当たらない……」
ぶつぶつと医者は呟いていた。
「ああ、あと、腕と太ももの痛みはただの筋肉痛ね」と医者は付け加えて言う。
(思ったよりも損傷している……)
やはり、魔理沙を信用せずに病院に来たのは正解だったと心の中で思った。
それにしても、やはり外傷はないのか……
これは、八雲紫のおかげと言うべきだろうか?
しかし、内傷が治りきってないことを考えると……
いや、それを含めて八雲紫という者なのか?
やはり
「どれも自然に治る範疇のものだし、安静にしていたらそのうちに治るわ。だから、くれぐれも無理はしないように……」
医者は再度忠告する。
「──必要なら痛み止めを出すけれど」
「……いや、大丈夫だ。そこまで痛むわけじゃない」
医者はそう提案するも、一泊置いてそれを断る。
「そう。ならいいけど…何かあったらまた来なさいよ」
「…ああ」
「それじゃあ、お大事に」
◆◇◆◇
病院をあとにし、人里を散策する。
まだ昼まで時間がある。
さて、どうするか……
まだ、魔理沙から貰ったお金も残っている。
どこかの飯屋にでも行くか?
いや、そこまでの時間はないか……
「ん…?」
どうするかと悩みながら歩いていると、ある店が目に留まる。
「まあ、見るだけ見ておくか……」
いいものがあればいいなと思いつつその店へと歩いて行く。
◆◇◆◇
「──か……ありがとうな」
「いえ、少しでも力になれたならよかったです」
「では」と言って里の人はその場を立ち去る。
(まあ、こんなとこでいいか……)
(これ以上は難しそうだし、あとは
魔理沙はふと空を見上げる。
空にはほぼ真上に太陽が浮かんでいる。
「もう昼か……そろそろ行くか……」
魔理沙は集合場所へと向かった。
◆◇◆◇
集合場所で待っていると遠くから魔理沙が来ているのが見えた。
「いやー悪い悪い、待たせたな。飯行こうぜ」
店へと歩いていると、魔理沙がこちらを向き話しかけてきた。
「で、人里は楽しめたか?」
どうだった?と言うような顔で魔理沙は聞く。
「……ほぼ、病院にいた」
「あっ──」魔理沙は何かを察した。
◆◇◆◇
「よっと」
魔理沙は軽やかに地面へと着地する。
「ただいまー」
昼食をとり、用事をすべて済ませた後、再び博麗神社へと戻ってきた。
「いやーいっぱい買ったなあ」
よいしょ、というように魔理沙は荷物を下ろす。
「これでしばらくは大丈夫だな」
「そういや、お前は何か買ったのか?」
「まあ、一応」
「何買ったんだ?」
魔理沙は「見せて」というように目を輝かせている。
「秘密」
「そう言わずにさー」
「秘密」
「見せてくれよー」
「秘密」
「ケチー」
その後、日が落ち、夜食を食べ、この日は特に何事もなく過ぎていった。
結局今日里で買ったものを魔理沙に見せることはなかった。
布団に入り、目を閉じ、1日を終える。
この流れをいったい何回繰り返すことになるのだろうかと思いつつ、眠りへと落ちていった。
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「はあ…はあ……」
何で…?
どうして…?
何で?
何で?何で?
何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?
「グフッ…ゴホッ……」
口から血が湧き出る。
そのせいで声がうまく出せない。
朦朧としだした視界で後ろを見ると、そこには依然として
それは背中に包丁が深く刺さり、ピクリとも動かない妻だったモノ
頭はそれを理解するのを拒もうとしているが、視覚情報はそれを否定し続けている。
何でこんなことに……
なんで……
やっとあの子が戻ってきたと思ったのに……
どうして……
腕を使い体を這わせて移動する。
背中の刺し傷が動く度により痛む。
早く、早く、早く
もう虫の息とも言える体を必死に動かし外を目指す。
まだ扉までは距離がある。
「誰……か……」
声を振り絞るも、それは家の中、ましてや部屋にすら響きわたらないか細い声でしかない。
早く……早く……
「あれ~?どこに行くのかな?」
その時、自身の後ろから声が聞こえた。
その声はまだ幼さを感じさせるような声。
こんな時じゃなければ可愛らしさを感じられただろう。
「あっ……ああ……」
早く……逃げないと……
必死に腕を動かして外へ向かう。
しかし、結果など火を見るより明らか──
「よっと──」
その者は少し飛び上がりこちらの背中に着地する。
「グッ…あ、ああぁぁぁぁ……」
声になりきらない叫びが漏れる。
「もー、ダメでしょー」
飛び乗ってきたそいつは背中を踏みにじる。
「ウッ……グッ……」
弱った体は上に乗るそれを押し返すこともできない。
「悪い子にはお仕置きだよね♪」
その瞬間、自身の太ももから激痛が走る。
「ア゛…ア゛あ゛あああぁぁぁッ!!!!」
刃物のような何かで刺されたような感覚。
恐る恐る後ろを見ると自分の足に突き刺さった鉄ヤスリが見える。
そのヤスリには見覚えがある。
それは、普段工具箱に入れているものだった。
どこかに行ったと思ったら、部屋を漁っていたのだろうか?
しかし、そんな疑問を考える余裕なんてない。
思考なんてものを吹き飛ばすように痛みが襲ってくる。
痛い
痛い
足が動かない
痛い
誰か…
痛い
誰か……
痛い
誰……
「もー、寝ちゃダメだよー」
「あ゛あ゛ああぁぁぁッ!!!!」
意識を手放そうとした時、背中からの痛みによって叩き起こされる。
「はぁ…はぁ……」
一体何をした?
この痛みは何だ?
「──ッ⁉」
後ろを見ると、奴は自分の背中の上にまたがるように座って、手にヤスリを持っている。
一見平和な微笑ましい家族のように見えるそれは手に持っている血の付いたヤスリによってぶち壊されている。
理解した
こいつが何をしたのかがわかった気がした。
こいつの仕草でそれを察した。
背中に乗ったそいつがヤスリを持った手を伸ばす。
肩の辺りでそれを止め、背骨の上にヤスリを添える。
ああ……また……
「は、はは……」
それを止めることは出来ず、ただ笑うしかない。
──背中に添えたヤスリを押し付け、自分の方へと引く。
再び悲鳴を上げ、痛みに悶えてのたうち回ろうとしている。
スーッ、と背骨に沿ってヤスリを引く。
それはまるで猫を撫でるかのよう。
ヤスリは皮膚を削る
ジワジワと削っていく
ヤスリを当てた部分に真っ赤な線が引かれる
赤く、赤く
腰の辺りで止め、再び上から引いていく
一枚、また一枚
皮が、肉が、削られる
しばらく、それは続いた。
意識を手放そうとしても痛みがそれを邪魔する。
「お前は……何なん…だ……」
必死に声を振り絞り、精一杯睨みながら言う。
「何って……」
「あなたの愛しい愛しい愛娘だよ」
そいつは笑顔で答えた。
「違う……」
「違う……」
「違う……違う、違う、違う……」
「お前は娘なんかじゃない」
「お前は違う……」
「娘をどこにやった…?」
「だからここにいるって」
「違う!!」
「お前は娘じゃない!!お前は誰だ!!」
「娘はどこだ!!」
「…だからここに……ああ、そういうこと?」
「うーん…それじゃあ、お空の上ってやつなのかな?」
「は……?」
動きが止まる
声も出せない
静寂がその場に流れる
今まであった感情もすべて消え去ったように心が空っぽになったように感じる
ただただ喪失感のようなものだけがある
そして──
ただただ憎い
目の前にいるこいつが
どうしようもない憎悪と殺意が沸き上がってくる
「ねぇ、あなたは今何を感じているの?」
「教えてほしいの、その感情を」
「それは、怒り?悲しみ?憎しみ?」
「それとも愛?」
「それは愛なの?」
「それは誰への?」
「あなたの娘?」
「それとも私?」
殺してやりたい
「教えて」
憎い、憎い、憎い
「そしてちょうだい」
殺す、殺す、殺す
「その愛を」
娘が味わったであろう苦しみを
「私に」
妻の痛みを
「あいを」
無念を
「アイを」
絶対にこいつに
「哀を」
こいつを
「曖を」
こいつを!!
「愛を」
「あ、ああ…」
「ちょうだい」
「あ゛あ゛あああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!」
「私を愛して」
愛を
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