「話……?」
「ええ、私に用があってここに来たのでしょう?」
「それに──」フランはこちらを向く。
「長々とアイスブレイクをするのは嫌でしょう?」
「んー、やっぱ咲夜の作るお菓子はうまいなぁ」
一方、魔理沙はお菓子を食べるのに夢中だった。
「…魔理沙はそうではなさそうね……」
「ん?どうした?自己紹介は済んだのか?」
「あなたも早く用件を済ませたいでしょう?」
「別にそこまで焦らなくても……初対面の印象は大事だぜ?」
「それは事が済んだ後でもいいでしょう?」
「……そういうことにしといてやるよ」
そう言いながら、魔理沙は立ち上がった。
「あら、どこに行くのかしら?」
「パチュリーのとこだよ、本を返さないといなけないからな」
「だから、二人で雑談でもしていてくれ……いや……そうだな……なあ、フラン」
「?」
「彩乃はまだ
「そういうことはあなたがするべきじゃないかしら?」
「私よりお前の方が説明が得意そうだからな」
そう言って説明を丸投げしようとしている魔理沙にフランは軽くため息をついた。
「……わかったわ」
「ありがとな」
「咲夜」
「はい、お嬢様」
「魔理沙に付いていってあげて」
「かしこまりました」
そう言った後、咲夜は魔理沙と共に歩いていった。
魔理沙がいなくなり、フランと彩乃の二人だけになった空間に静寂が訪れた。
その空間で先に口を開いたのはフランだった。
「……なんだかんだ言ってたけど、結局は私たち二人だけでゆっくり話をする時間を作ってあげたかったのでしょうね……」
「……どうしてそんなことを?」
「あなたはこの世界に来たばかり、人脈もなければ信じられる人もいない。まだあなたがこの世界で深い関わりがあるのは魔理沙だけ。だから、他の人との関わりを増やしてあげたかった──」
「まあ、私は勝手にこう思うことにするわ」
実際の真意はわからないが、フランの言うように思うことにした。
「それじゃあ、何か聞きたいことはあるかしら?」
そう言われ、何かないかと考える。
「……異変」
「異変?」
「この世界で起きている異変について教えてほしい」
ふと思い出した、まだあまりよく知らないそのことを聞いた。
「……少しいいかしら?」
異変のことについて聞く前にフランに静止される。
「?」
「八雲紫とは会っているわよね?」
「……ああ」
「そこで、説明はされなかったのかしら?」
「色々とされたが、異変のことは誰かに聞けと」
「…あのスキマ妖怪……」
フランは何かを察し、思わずこぼしたその言葉からは怒りに近い何かを感じた。
◆◇◆◇
「言ってくれれば私が返すのに」
魔理沙と共に歩く咲夜はそう言った。
「図書館までは遠いだろ、そこまでの苦労はかけられねぇよ」
「別に、そこまで大変だとは思っていないわ」
魔理沙に対して咲夜はそう言い切った。
「そ、そうか……」
「……まあ、本音を言うなら、久しぶりにパチュリーの顔を見たいだけだ」
「そう……」
その言葉を聞いて、咲夜は自分と一緒に行く意味がわかった。
「分かってると思うけど、様子を見たいなら扉越しにしてちょうだいね」
咲夜はそう忠告する。
「……まだ、ダメなのか?」
「ええ、依然として何も変わっていないわ」
「あなたはおろか、お嬢様も受け付けていない」
「そうか……」
そう言われた魔理沙は少しもの悲しそうだった。
「……」
残念がる魔理沙を見て、咲夜はあの時のことを思い出した。
────────
『違う……あなたじゃない……』
目の前にいるその者は、私の横にいる主──フランドールにそう言った。
『あなたはレミィじゃない……』
『あなたは誰なの……?』
その言葉を聞くフランお嬢様は悲しげな表情をしているように見えた。
パチュリー様は他を拒絶している。
それはこの館の主ですらも例外ではなかった。
しかし、私は違った。
お嬢様と違い、私は彼女から拒絶されなかった。
彼女が何を基準に拒絶しているのか、私達に何を求めているのか、それはわからない。
彼女が発する言葉は何かを探しているようにも聞こえた。
「レミィ」という言葉も、私たちにはわからなかった。
私たちには何も出来なかった。
────────
そうこうしているうちに、図書館の扉の前についた。
私はもう一度魔理沙の方を見た。
「わかってるよ、私だって死にたくはないからな」
そう言って魔理沙は借りていた本を私に渡す。
コン、コン、コンと扉をノックした後、扉を開き中へ入る。
◆◇◆◇
「三大異変?」
「ええ、この世界で問題となっている主要な異変の総称よ」
フランはそう言った。
「私たちが今、特に問題視している異変たち、それが三大異変」
「実のところ、本当に三つなのかはわからないのだけれど…今起こっていることを大きく分けたら三つになるだけだもの。それ以外にもあるかもしれないけれど……まあ、目先の目標としてはちょうどいいでしょう?」
「今起こっている中で異変の影響だと思われるもの─」
「一つ目は、幻想郷の土地や建物といった場所が入れ替わること。これのせいで、一週間に一度は地図を書き直す必要があるのではないかと言われるほどの影響が出ているわ」
「……そこまで問題あるのか?せいぜい迷いやすくなるだけだろ?」
「一見ただのはた迷惑なもののように聞こえるけれど、実際のところ、それの影響で人里の人間が妖怪の棲む森に踏み入れてしまうということが実際に起こっているわ」
「そして二つ目、未知の怪物の存在」
「怪物?」
「ええ、妖怪とは思えないナニか、それは非常に好戦的で、人間も妖怪も関係なしに襲っている。私たちはそれを『魔物』と呼ぶことにしたの」
「魔物…?」
「魔力を動力源として動く怪物、略して魔物よ」
「奴らの発生源も目的も未だ不明。まあ、不安要素は排除するに越したことはないわ」
「最後に三つ目、これはまだわからないことが多いの」
「本当に起こっているのかすらもわからないもの──」
「意図的な存在の消滅」
「気のせいかもしれないけど…最近、人がまるで消えるようにいなくなっている気がするの。杞憂だったらいいのだけどね……」
「以上三つが今懸念している異変」
「……そんなことが起こっていて、よく幻想郷は無事でいられるな」
「…不幸中の幸いと言うべきか、三つも同時起こっているおかげね……」
「これらの異変はそれぞれ違う者により引き起こされたものだろうし…異変の主犯同士、目的の不一致や自身の目的にとって邪魔な存在だったりするのでしょう……」
「おかげで幻想郷は今もこうして存在しているわ」
皮肉のつもりか、フランはそう言った。
「こんなところでいいかしら?」
「まあ、今は」
「そう、ならよかったわ」
「……」
再び沈黙が訪れる。
「…魔理沙はこうして会話させるためだけに俺をここに連れてきたのか?」
ふと、そう言った。
「……さあ?魔理沙に聞かないとわからないわね……」
その言葉に対し、私はそう返す。
(…確かに、この子ならば……)
品定めするようにフランは彩乃を見る。
魔理沙がここに彩乃を連れてきたのは恐らく私に見極めさせるため。
この子が異変解決の鍵となるのか、はたまた私たちにとって害ある存在なのか……
恐らくこの子は異変を終わらせられる。
この子の実力は申し分ない。
吉と出るか凶と出るか……
楽しみね……
魔理沙はいい本がないか純粋に見ていたら、盗られると思ったパチュリーにガチギレされたため、借りたい本は咲夜に取ってきてもらっています。
ちなみにこの魔理沙はちゃんと借りた本を返します。
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