辺りが暗闇に包まれた夜の人里
屋根の上からある家を見る二つの影があった。
「本当に来るのか……?」
「ああ、きっと来る」
疑念を抱く者の質問に対して、その者は確固たる確証があるように答えた。
────────
紅魔館に行った日から一夜明けた今日
彩乃は魔理沙に連れられ、再び人里に来ていた。
「ここだ」
魔理沙に案内されて来たのは何の変哲もない民家だった。
「この家がどうしたんだ?」
そう魔理沙に聞くも、その質問に対する答えを返される前に魔理沙はその民家の扉を叩いていた。
「はい、どちらさまで──」
そう言いながら出てきたのはこの家の住民であろう男。
その男は魔理沙の姿を見た瞬間、驚いた顔をした。
「あ、あなたは…博麗の巫女の──」
「博麗魔理沙だ。こっちのは彩乃だ」
魔理沙はその男に軽く自己紹介をする。
「なぜ魔理沙さんがうちに…?」
「それは──」魔理沙が言おうとした時、
「も、もしかして!!子供が!
男は魔理沙の肩をつかんで鬼気迫るような顔で言う。
「お、落ち着けって」
男のその様子に魔理沙の顔と声は驚きと戸惑いを示していた。
「っ⁉あっ…す、すみません。いきなり…こんな……」
戸惑う魔理沙を見て、男は冷静さを取り戻した。
「いや、こっちもいきなり来て悪いな」
「それで、魔理沙さんはなぜここに?」
「その…
「…!魔理沙さん、ここではなんですしお入りください。彩乃さんもどうぞ」
子供という言葉に反応してか、そう言って男は二人を家の中へと招く。
「悪いな」と言いながら魔理沙は家へ入っていく。
彩乃もそれに続き、家に入る。
◆◇◆◇
「どうぞ」
「悪いな」
魔理沙と彩乃の前にお茶が差し出される。
その後、お茶を出した女性は魔理沙と彩乃の向かい側に座る。
魔理沙と彩乃、先程の男とその妻がテーブルを囲む。
「それで、魔理沙さんはどんなご用でここに?」
男の妻が魔理沙にそう聞く。
「異変関係でな」
「異変?……もしかして、鈴風は異変に巻き込まれて…?」
「たぶんな……」
その言葉に夫婦は言葉を失う。
「鈴風は、鈴風は大丈夫なのでしょうか?」
「……それはわからない」
「……」
「私はこの異変を終わらせたい」
「異変を……?」
「そのためにも協力をしてほしいんだ」
「協…力……?」
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「それじゃあ、頼んだぜ」
「はい…わかりました。これで異変を終わらせれるなら……」
そうしてその夫婦の家を後にした。
「よかったのか?あんなこと言って」
「……知らないよりはいいだろ」
「──後はその時が来るまで待つだけだ」
「どれくらい待つんだ?」
「夜まで」
空を見上げると青い空が広がっており、まだ昼を過ぎたくらいの時間だった。
「どこか行きたいところはあるか?」
同じく空を見た魔理沙が聞いてきた。
「ない」
────────
「本当に来るのか……?」
「ああ、きっと来る」
あの後、何もすることが見つからず、ただただぼーっとして夜まで待つことになった。
屋根の上から昼間の夫妻の家を監視する。
「どれくらい待てばいいんだ?」
「そいつが来るまで」
さっさと来ることを祈って、再び待つことにした。
────────
数時間前──
「異変の黒幕?」
「ああ、あんたらにはこの異変を起こしている犯人をとっ捕まえるのを手伝ってほしい」
「もちろん、できることならそうしたいのですが……」
「私たちがお力になれることなんて……」
「あんたらにしてほしいのはいわゆる囮だ」
「おとり……?」
その言葉に夫妻は不安げな顔をする。
「心配しなくても危なくなったら助けるさ」
「……その、囮というのは…」
「そのまんまの意味だ。あんたらには──」
「──黒幕を誘き寄せるえさになってほしい」
────────
監視を始めてから一時間ほどがたった頃
時間としても寝はじめる人が出てくる時間、
(子供……?)
彩乃はボロボロの服を着た子供が歩いているのが見えた。
────────
一体いつ来るのだろうか?
どこから来るのだろうか?
頭の中を不安だけが駆け巡り、たった一秒が今まで感じたことのないほど長く感じる。
どれほど待っているのだろうか?
三時間は経ったか?
それとも五時間?
もう一日経ったのか?
もしかしてまだ一時間も経っていないのか?
気が気じゃない途方もない時間を過ごしているような気分だ。
まだ…
まだ…
ま─コンコン
その時、扉を叩く音が聞こえ、すぐさま扉の方を見る。
ゆっくりと扉へと近づき、恐る恐る手をかける。
ゆっくりと扉を開き、訪問者の顔を確かめる。
「──っ⁉」
そこに居たのはもう見ることも叶わないと思っていた
「…す、鈴風……?」最愛の一人娘。
「お父さん……」
今にも泣きそうな声でそう言う。
「鈴風……鈴風なのか?」
「うん……」
鈴風は頷きながら答える。
「ごめんなさい……私……森に入っちゃって……それで……」
目に涙を浮かべながら鈴風は言葉を紡いで話す。
「大丈夫……大丈夫……」
気づいた時には自分も涙を流していた。
目の前には最後に見た、あの時と同じ服を着た娘。
抱き締めたい、そして『お帰り』と言ってあげたい。
今まで溜め込んだ感情が押し寄せてくる。
また、あの時のように暮らしたいと心が言っている。
また、三人で……
「お父さん」
鈴風は私を見上げ、目を見つめる。
お互いの目には涙が浮かび、目元が赤くなっていた。
鈴風は鼻水をすすり、その言葉を言った。
「──ただいま」
その言葉を聞いた瞬間、私の涙腺は崩壊した。
「鈴風……」
涙を流す父親はバランスを保つこともできなくなったかのように後ろへとよろける。
父親はそのまましゃがみこみ、涙を流し、嗚咽を漏らす。
そんな父親の姿を見た娘はそのまだ短い腕を伸ばし、涙を流した優しい顔を浮かべて、父親をそっと抱き締めようとしていた。
「鈴風……」
「お父さん……」
「鈴風………ごめん……」
「お父さ──」
鈴風が一歩踏み出した瞬間
鈍い音を立てながら鈴風は吹き飛ばされた。
父親が顔を上げると、そこに居たのは赤い巫女服を着た少女だった。
「魔理沙さん……」
巫女は一度父親の顔見た後、先程自身が吹き飛ばした相手の方を向き直す。
「後はまかせろ」
巫女はただそれだけを言った。
「グッ……なんだ……?」
吹き飛ばされた者は体を起こし、さっきまで自分がいた場所を見る。
「…っ⁉」
10メートルほど離れたその場所にそれはいた。
「博麗の……巫女……⁉」
「くっ……」
すぐさま体を立ち上がらせ、走りだす。
(なんで、巫女がここに?バレていたのか?)
(いや、そんなことを考えている場合じゃない。早く逃げなければ──)
その刹那、自身の視界の端から拳が迫っているのが見えた。
「……ッ⁉」
その拳は自身の頬に当たり、体を吹き飛ばした。
(誰だ……?)
自身を殴った相手の顔を見るも、それは記憶にない見知らぬ人物であった。
「誰だ……お前……」
「誰だっていいだろ」
目の前にいる謎の人物に警戒する。
「……チッ」
「待たせたな」と言いながら博麗の巫女が追い付いてきた。
「さっさと観念するんだな」
巫女は睨みながらそう言った。
「いつ?いつわかった?」
目の前にいる少女の姿をした者はこちらにそう問う。
「教えるわけねぇだろ」
「お前は一体何者だよ?妖怪か?人間か?」
魔理沙はボロボロの少女へとそう問う。
「教えるかよ……と、言いたいが……」
「ここまで辿り着いた褒美だ」
「私は妖怪だよ。怨霊でも、亡霊でも、ましてや人間なんかでもない。そこのところを間違えるなよ、人間」
「人間……?悪いな、私の名前はそんなのじゃないんだ」
「お前の名など興味はないが……一応聞いてやろう」
「私は博麗の巫女──博麗魔理沙だ」
「……私に名前らしいものはないが……そうだなぁ」
「『シフ』……そう名乗るとしよう」
(シフ…?聞いたことのない名前だな……)
魔理沙は構え、すぐに攻撃できる体勢になる。
「それじゃあ、また会う時があればその時に話そう」
そう言いながら、シフはこちらに向けて弾幕を放つ、その弾幕を魔理沙が防いだ。
砂煙が巻き起こり、一瞬、シフの姿が見えなくなる。
「…⁉」
「……いない」
砂煙が晴れ、シフの方を見るも、そこにシフの姿はなかった。
Deltaruneの全てのチャプターがでるのは何年後になるのだろうか……?
そしてこの小説が終わりを迎えるのは……
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