『『鈴風、誕生日おめでとう』』
そのお祝いの言葉と共に
『これって……』
『ほしいって言ってただろ?』
鈴風の顔はどんどん明るくなっていき、やがて満面の笑みを浮かべた。
『お父さん、お母さん、ありがとう!!』
────────
『偽……者……?』
私がその言葉を理解するのに時間がかかった。
『ああ……恐らくは妖怪だろうと思うが……』
『──犯人は子供を拐い、その子供に化けて残りの家族を襲っている』
『つまり、私たちに協力を頼んだのは……』
『ああ、ここ最近で子供が行方不明になった家族だからだ』
『そうですか……』
『あの、一ついいですか?』
恐る恐るといった雰囲気で妻は質問しようとする。
『何だ?』
『その…犯人は……子供に化けるんですよね?』
『ああ』
『つまり、鈴風の姿ということですか?』
『……ああ』
『……じ、実は本当に鈴風だったりとか……』
『……ない、今までのことから考えてもそれはない』
『ど、どうしてですか?』
『今までで起きた、今回の犯人が起こした事件は一家惨殺が多数……だが、そこに子供の死体は見つかっていない』
『そ、それだけで……』
『……』
『今回は違うかもしれないじゃないですか……』
『おい…やめろ』
私は妻を止めようとした。
『鈴風が戻ってくるかもしれないじゃないですか』
『……』
『なんでそう言い切れるんですか……⁉』
『おい!──』
『……そうだよな、さすがにすんなりとは飲み込めないよな……』
私が怒気を強めて言おうとした時、魔理沙さんがそう言った。
『……ここに犯人が来ることは確実だ』
『だからなんで……』
『私の……友人から聞いた……』
『は…?』
『そいつによると、今日の夜、この家に犯人が来てあんたらを殺そうとするだろうと』
『……その友人が間違っているかもしれないじゃないですか……』
『いや……あいつはこういうことに関して間違えない』
『……来るんですか?絶対に……』
『ああ』
『鈴風に化けた犯人が来るんですか?』
『ああ』
『そう……ですか……』
『あの……わがままだろうと思いますけど、一ついいですか?』
『?』
『偽物でもいいんです……最後に……少しだけでも』
『抱き締めてもいいですか?』
『……ダメだ』
『……そう……ですよね……危ないですよね……』
それを聞いた妻は少し俯いた後、「少し休みます」と言って席を立った。
『……魔理沙さん。囮役をやらせてください』
『いいのか?』
『ええ、そいつが鈴風に何かしたんだったら……私はそいつに一矢報いてやりたいです』
『……わかった』
『……あの、妻はどこか別の場所で待っているというのはダメですか?』
『いや、どちらか一人だけでもいいと思う』
『なら、私一人でやります』
『囮をやる上で守ってほしいことがある』
一つ、家に入れてはならない
二つ、接触しない
三つ、一定の距離を取る
四つ、何を言われても信じてはならない
────────
「鈴風……ごめん……」
口から出るのはそんな言葉だけ。
先程家に来たのはどこからどう見ても鈴風と言える者
その汚れた服から、森に入って出られなくなってしまったという言葉にも信憑性があると言えるほど。
偽物と言われていなければ、恐らくその者を家に上げていただろうというのは容易に想像がつく。
偽物が家に来た時は疑った。
これは本当に偽物なのだろうか、と。
だけど、その者を見ていてわかった──
これは
偽物と聞かされていたからこそ気づけた些細な変化──
いや、私たちにとっては大きな変化……
あの日、鈴風が誕生日を迎えた日─
私たちは鈴風にプレゼントを送った。
その日以来、鈴風は毎日肌身離さずにそれを身に付けていた。
髪飾り──
私たちがあの日、鈴風に送ったプレゼント
鈴風はどこへ行く時もそれを身に付けていた。
鈴風はその髪飾りをとても大切にしていた。
一度鈴風が髪飾りを失くした時、それはもう泣いた。
泣きじゃくって、夜になっても必死に髪飾りを探してた。
探して、探して、見つかった時は泣きながら喜んでた。
あの時もそうだった。
鈴風がいなくなったあの日、あの時も鈴風は髪飾りをつけていた。
しかし、今日家に来た鈴風は違った。
あの鈴風は髪飾りをつけていなかった。
そのことに気づいた時、目の前にいる鈴風が偽物であると確信した。
それと同時に守れなかったと理解した。
別に妖怪について詳しいわけじゃない。
細かい部分はどうでもよかったとか、そこまで再現するのを忘れていたのか……
考えようはある……だけど、不思議と直感のようなもので分かった……わかってしまった。
鈴風はもういないのだと──
「怪我はないか?」
その言葉に顔を上げると、そこには魔理沙さんの姿があった。
「はい、おかげで……」
「いや、あんたがちゃんと言ったことを守ってくれたおかげだ」
すると、魔理沙は突然頭を下げた。
「それよりも……すまない、逃がしてしまった……」
「……そうですか」
「だが、あいつは必ず退治する。信じてくれ」
「……はい、お願いします……」
私はその言葉を信じることにした。
この人なら鈴風の仇を討ってくれると信じて。
────────
「はぁ……なんでバレたんだ?」
暗い森の中を歩く一人の影があった。
それはこの暗い森に居ることはないであろうまだ幼い少女の姿。
「少しやりすぎたのかなぁ?」
「だとしてもピンポイントで当ててくるなんて……」
「はぁ…少し早いけど…さすがにこの体とはおさらばかぁ」
「はぁ…」とため息をつきながら、森の中を歩き続ける。
「さっさと次の子探さないとなぁ……」
あれ?彩乃出てない?
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