幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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星の巫女

「魔砲『マスタースパーク』!」

その掛け声とともに、手に持つミニ八卦炉から収束した魔力が極太のレーザーとして放たれる。

レーザーは木を薙ぎ倒し、地をえぐりながら直進する。

 

 

攻撃を放ち終わった後、レーザーが作った道を通って、すぐにその場所にいる者たちのもとへと向かった。

 

 

────────

 

 

「悪い、待たせた」

到着が遅れたことを軽く謝りながらその場へ降り立つ。

 

 

そこに居たのは彩乃と見知らぬ少女。

しかし、その少女から感じるのは明確な殺意と、溢れ出る妖力。

そのことから、少女が人間でないことはすぐにわかった。

 

 

「彩乃、どういう状況だ」

彩乃の側へ行き、今の状況を聞く。

 

「見つけた、あいつが犯人」

彩乃は少女に向けて指を差し、かなり簡潔に説明した。

 

「なるほど、地道に聞き込むより、直接探したほうが早かったか……」

「──ありがとな、おかげでようやくあいつをぶっ飛ばせるぜ」

魔理沙は彩乃の肩をポンッと叩き、横に並ぶ。

 

 

(博麗の巫女……)

博麗の巫女との遭遇──

シフにとって一番の懸念事項が現実となり、焦りが出てくる。

(どうする……二対一……こちらが不利……)

 

脳は再び逃亡の案を──(いや、ここで逃げる訳にはいかない)

 

 

逃亡の文字が脳を駆け巡るより速く、シフはその結論に至った。

 

 

(博麗の巫女が来たから逃げる?博麗の巫女だって人間だ。博麗の巫女だからと言って、人間相手に逃げるだと?否、そういう訳にはいかない。そんなことがあってはいけない!!)

 

(二度目の撤退は相手より弱者であるという確たる証明となる。博麗の巫女だからと、二度も背を向けて無様に逃げるつもりなどない!!)

(博麗の巫女だって、いずれ越える壁だ。別にそれが今だっていいだろう……そうだ、ここで博麗の巫女を殺せばいい。逃げる必要などない──)

シフが抱いたのは勇気か、それとも無謀な決意か、どちらにせよ、その何かが背を押し、シフは戦うことを選んだ。

 

 

 

「あの夜以来だな、博麗の巫女」

「今度は逃がさねぇぞ」

魔理沙は構えながら、そう言う。

「──その心配はない」

「?」

 

 

「なぜなら、ここを貴様の墓場としてやるからな」

もう迷いはない、ここで殺す。

 

「はは、この墓場に名前を刻むのはお前の方だぜ」

もう逃がさない、ここで倒す。

 

 

 

両者はその覚悟の下、戦うことを決意する。

 

 

シフから沸き上がるのは明確な殺意。

 

己を邪魔する障害

──そのすべてを殺すという意思。

 

二度も逃げることは許されぬ──

これは、強迫観念から来たものか、己の信念か──

その両方か……

 

 

魔理沙が抱くのもまた、殺意である。

 

異変を起こした犯人

──巫女として、かの者を討つ使命。

 

二度も逃がすことは許されぬ──

これは、信念からくるものであり、揺るぎない決意でもある。

 

 

 

両者に緊張が走る。

 

一瞬の静寂の後、戦いの火蓋は再び切られた。

 

シフはすぐさま後ろを振り向き、魔理沙たちと距離を取るように走り出す。

 

「──まてっ!!」

魔理沙はすぐにシフを追った。

 

 

 

ある程度進み、適度に木の生い茂った場所へついた瞬間、シフは突然振り返り、追って来た魔理沙に向かって土を投げた。

 

 

 

(目眩まし?)

 

悪あがきか何かとも思った次の瞬間、シフの投げた土が何本もの包丁へと変わる。

「──っ⁉」

魔理沙は身を翻し、間一髪それを避け、包丁は魔理沙の後ろにあった木に刺さった。

 

「──あっぶな……」

魔理沙はそう漏らした。

対して、不意打ちをかわされたシフは舌打ちをした。

 

 

(今のが能力か……)

魔理沙は先程の現象からそう考える。

 

 

(──彩乃に訊いとけばよかったか……)

うっすら『先に言っとけよ』という言葉が頭の中に浮かんだ気がしたが、頭を左右に振って余計な考えを捨て、シフへと意識を集中させる。

 

 

弾幕をシフの足元へ放ち、飛んで避けたシフへと接近し、拳を振るう。

しかし、その拳はシフではなく木の枝に当たる。

「──!」

 

 

シフは一瞬動きが止まった隙に弾幕を打ち込む。

──が、魔理沙はその弾幕を軽々とかわし、シフへと向かう。

 

 

「っ……⁉」

その瞬間、シフと先程の弾幕が入れ替わった。

 

「ぐっ……」

不意を突かれ、魔理沙は避けきれずに被弾する。

 

 

シフは追撃を与えようと、魔理沙に近づく。

しかし、その時シフの動きが止まる。

 

まるで何かに足を引っ張られたような感覚がし、シフは自身の足を見る。

 

 

そこにあったのは──

「──札……⁉」

 

 

御札は自身の足を縛るように、その空間に固定するように足に絡み付いている。

 

それを振りほどこうとした時、魔理沙の蹴りが顔に当たった。

 

 

被弾の衝撃で吹き飛ばされながら、シフの方を向きつつ、回し蹴りの要領でシフを蹴飛ばす。

──これが魔理沙が咄嗟にとった行動だった。

 

シフは地面へと直行し、着地しきれず激突する。

 

 

「くっ……」

(さすがに……か)

さすがは博麗の巫女と言うべきか、やはり一筋縄ではいかないようだ。

 

 

巫女は間髪入れずこちらへ御札を飛ばす。

枝との入れ換えを交えながらそれをかわし、巫女へと接近する。

 

 

巫女の死角へと飛ばした木の枝と入れ替わり、背後を取る。

 

だがその時、巫女はこちらを振り向くことなく、手に持つ魔道具をこちらに向けた。

「マスタースパーク」

「──っ⁉」

 

すぐさま能力を発動し、その攻撃の射線上から離れる。

一瞬の内に撃ち放たれたそのレーザーは、先のレーザーとは違い細身であったがその威力は申し分ないものだった。

 

レーザーはその先にあった木を貫き、撃ち抜いた木に焼け焦げたような痕をつける。

 

 

シフは再び土を投げ、それを数本の包丁へと入れ換える。

魔理沙は上に飛んで避けながら、シフへ弾幕を撃つ。

 

 

上から降り注ぐ弾幕を避け、魔理沙の背後へ枝を投げる。

「──!」

魔理沙はすぐに後ろを向き、入れ替わりに対応しようとする。

 

 

 

しかし、木の枝とシフが入れ替わることはなかった。

 

シフは投げられた木の枝に気を取られた魔理沙へ、地を蹴り大きく跳躍して接近する。

 

 

──その時、シフの体に大きな衝撃が伝わる。

「……っ⁉」

そこにいたのは自身の体を蹴り飛そうとする彩乃の姿だった。

 

その蹴りに対応できず、シフはそのまま吹き飛ばされる。

 

 

「ありがとな」

魔理沙は軽く感謝をした後、すぐにシフへ向き直る。

 

 

彩乃はシフへ弾幕を放ち、シフはそれを横に投げた枝と入れ替わり、避ける。

魔理沙は上から弾幕を放ち、シフの退路を絶つ。

 

 

シフは入れ替わりを駆使し弾幕を避けるが、それにも限界があった。

「くっ……」

 

一撃当たればそれに足を取られ、二撃、三撃と弾幕に当たる。

 

(──やはり、二対一では分が悪い……)

(一対一(タイマン)での戦いで相手と五分五分か相手の方が上手(うわて)の現状で多対一の戦いを強いられるのはまずい)

 

相手の攻撃をいなし、防戦を強いられる中、現状を打開する策を考える。

 

思いつかなければこのままジリ貧でやられる。

そのプレッシャーがシフの頭をフル回転させる。

 

 

状況を好転させる一手、シフはそれを模索する。

しかし、それを考える暇は与えぬとばかりに攻撃はひっきりなしに行われる。

 

 

魔理沙と彩乃は攻撃を続けている。

このまま押しきろうと先程よりも密度を上げ、何発も当てている。

 

 

しかし、二人は自身の想定とは異なる現状に困惑していた。

 

 

(こいつ……)

魔理沙は御札弾を放ちながら思った。

 

(思ったより……)

彩乃はシフの背後から弾幕を放ちながら思った。

 

 

((──しぶとい))

 

 

 

魔理沙はシフに攻撃を続けながら思考する。

(奴の肉体は人間の子供──ならば私と彩乃で与えた攻撃にその体が耐えられる訳がない……)

 

(……妖力で体を強化している?)

 

(だとしても並大抵の妖怪が耐えられる攻撃はしていない。シフ──その名前なんてあの夜初めて聞いた。有名な大妖怪ではない……ならば無名の……?)

(そうだとしても、ここまで……)

 

(ただ妖力で強化しているだけだとしても、この攻撃に耐えられるだけの強化をし続けていたら、もう妖力がなくなっていてもおかしくない)

 

(果てしないほどの妖力量?それとも何か種がある?)

 

(どちらにしろ、あいつは並大抵の妖怪じゃない……)

 

 

(……さっさと暴かないと…だがどうやって……?)

 

 

その時、魔理沙の頭に一つの案が浮かんだ。

(…やるだけやってみるか……)

 

 

 

一度息を吸い、呼吸を整えてから口を開く。

「……さっきからチョロチョロと逃げ回ってるだけでどうしたんだ?」

魔理沙はシフへと伝わるよう大きな声で言う。

シフはその言葉に少しだけ反応するも、すぐに弾幕を避けることに集中した。

 

「まさか、しぶとさ以外自慢できるところが無いなんて言わないよな?」

 

「まあ、その耐久力も何か仕掛けがあるんだろ?」

「お前みたいな奴がここまで耐えれる訳がないからな」

 

「小細工しても、お前じゃ勝てねぇよ」

 

 

一か八か、魔理沙は煽った──

考え付くものから口に出し、シフを挑発する。

 

その挑発にシフは──

 

「舐めるなぁあああ!!」

──乗った。

 

 

シフは飛んでくる弾幕を力任せに振り払い、強引に弾幕の嵐を突破する。

 

「一体どんな小細工してんだ?お前のような無名の雑魚妖怪でもここまで耐えられる小細工なんて──」

「教えるとでも?」

怒り混じりの声でシフは言った。

 

 

「………教えたら負けるから、教えることなんてできないだろうな」

何かを察した彩乃はそれに乗った。

 

 

「あ"?」

「ん?違った…?ああ、単に教えるのが下手なだけか?」

 

 

シフは必死に怒りを抑えていた。

強く握りしめた拳から血が出るほどに。

 

 

「──弱いと苦労するな」

彩乃の発したその言葉にシフの堪忍袋の緒が切られた。

 

 

「調子に乗るなよッ!!人間ッ!!」

 

 

「さっきからペラペラと舐めたこと言いやがって……そんなに気になるなら教えてやるよ」

 

「──人間のお前らが理解できるかは分からんがな」

一言シフは付け足した後、話し出した。

 

 

「──魂さ」

「魂?」

 

「ああ、『人間の魂』──これこそが私にさらなる力を与えるモノ」

 

「妖怪というのは人間からの恐れがなければ存在し続けられない。しかし、私はそれを克服した」

「これにより、私は何の気兼ねもなく人間どもをすべて葬れる。それだけじゃない、目障りな妖怪どももすべていなくなる」

 

 

一拍置いてシフは続けた。

「生きた人間どもを恐怖させるというのは実に効率が悪い。ならばどうするか──」

 

 

 

「そう、無理矢理恐怖を作らせればいい」

 

 

「──そこで私が目をつけたのが人間の魂だ」

 

 

「取り込んだ魂に恐怖を生ませ、直で私に供給させる」

「──さらにその魂の持つエネルギーを私の力として再利用し、さらなる力を得る。自給自足の仕組みを構築しながらより強大な力を得る」

「それに加え人間を減らしながら、恐怖を得られなくなった妖怪も消せる」

 

 

「──まさに一石四鳥!」

 

 

「この力で、人間も、有象無象の雑種の妖怪どもも、あの偽者さえも!!私の邪魔をする奴を!」

「──すべて消し去ってやるッ!!!!」

 

 

「そのためにも、ここで貴様らを殺す!!」

 

そう啖呵を切ったシフは魔理沙に向けて木の枝を投げる。

魔理沙は入れ替わるであろう刃物に警戒しつつ、それを弾き飛ばそうと構える。

 

 

しかし、木の枝と入れ替わったのは包丁ではなかった。

 

「──っ⁉」

魔理沙の目の前に突然現れたのはこの場所にたくさん生えている木。

 

 

大木と言えようそれは魔理沙に向かって勢いよく飛んでいく。

魔理沙は咄嗟に腕でガードするが、大木のぶつかる勢いを防ぎきることはできず、後ろに飛ばされる。

 

「くっ……」

 

空中で体勢を整え、近くの木に着地する。

その間に、彩乃はシフへ接近し蹴りを入れる。

 

 

「チッ……」

(どうする……妖力は温存できているが取り込んだ魂の方の底が見えてきた……)

(だとしてもこの状況で身体強化を解くことはできない……早く決着をつけなければ……)

 

 

やはり、この場に於いて真っ先に仕留める必要があるのは──

 

 

シフは彩乃の振るう拳を後ろに下がって避ける。

彩乃はその勢いのままに体を捻り、回し蹴りをする。

彩乃の蹴りはシフの鼻先を掠った。

 

 

後ろに弾幕を放ち、それと入れ替わり追撃をかわす。

 

入れ替わった先にいた巫女の殴りを避け、弾幕を放ち、もう片方の牽制をする。

 

博麗の巫女はすぐにその場を離れようとするが、それよりも早く、その腕を掴む。

 

 

 

次の瞬間、この場から博麗の巫女(博麗魔理沙)の姿が消えた。




しぶてぇ妖怪だぜ
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