幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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第一章完結記念みたいなものです。
プロローグでの別視点(彩乃と戦ってた側)という感じです。
何かしらの物語の主人公みたいな奴がいる側です。



ついに、異変の黒幕─彩乃との最終決戦も終わりを迎えようとしている。
この物語の結末とは──
(存在しない記憶)


番外編 異変の終わり

聞き慣れた弾幕の爆ぜる音。

何度目かの拳のぶつかり合う音。

 

嗅ぎなれた血のにおい。

鼻に入ってくる硝煙のにおい。

 

ズキズキと痛む体。

感覚の無くなってきた腕。

 

上下する肩

 

上がる息

 

動かない体

 

ぼやける視界

 

底の見える残りの魔力

 

とうに限界の体力

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

(動け……動け……)

そんなことを思っても、動くのは呼吸と共に上下する肩だけ。

 

 

 

「なんだ……?終わりか?」

目の前にいる者はこちらにそう問いかける。

「はぁ…はぁ……」

それに返答しようにも、呼吸しようとする体が邪魔をする。

「ま…だ……カハッ──」

絞り出した声は吐き出される血がかき消す。

 

 

「さすがに自分の体を過信しすぎたな…。後先考えずに使い続けたツケが回ってきたな……」

 

誰がどう見ても限界といえる体。

(まだ……)

だとしても、このままやられるわけにはいかない。

 

「──そろそろ終わりにしてやる」

そう言い、握りしめた拳をこちらをめがけて振るってくる。

(…速く……オーバー──)

 

 

しかし、再びそれを発動するよりも早く、体の力が抜けた。

 

(あっ……)

死を覚悟した。

 

 

 

しかし、その攻撃は当たらなかった。

相手が放った拳は目と鼻の先を通りすぎていった。

 

当たる寸前で体が地面へと落ちはじめたのだろう。

なんにせよ運よくそれをかわすことはできたもののそれで終わりとはいかないようだ。

 

 

「運のいいやつだな…。だが、二度はない──」

 

 

 

落ち行くなか見えたのは弾幕を新たに作り出す奴の姿。

 

 

このままいけば地面に落ちる、だが今のこの体に落下の衝撃に耐えれるだけのものはない……

魔力で体を固めればギリか……?

しかし、この魔力ではもって数秒……

着地できればダメージを最小限に抑えられるか……?

 

だが、さすがにあの弾幕は無視できない。

あれをなんとかしない限り、地面にたどり着く前にあれに被弾する。

これ以上攻撃を喰らうわけにはいかない。

これ以上は体がもたない。

 

しかし、両方をどうにかできるほどの余力はもうない……

 

あれをどうにかしたところで待っているのは落下死……

 

 

どう転んでもあるのは『死』、のみ。

 

 

──打つ手なし、詰みか……

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、奴の背後に見覚えのある姿があった。

 

(あれは……)

 

 

赤い巫女服を着た彼女はこちらへと向かう弾幕をすべて打ち消した。

 

 

 

もう見ることはないとも思った彼女の姿がそこにあった。

 

「霊……夢……」

 

彼女──霊夢は即座に夢想天生を放とうとしている。

 

奴はそうはさせまいと弾幕で妨害しようとしていた。

 

 

──が、その前に奴の腕に弾幕を当て、それを阻止する。

 

 

「はは…遅ぇよ……」

残った魔力すべてを込めた最後の一撃、もうこれ以上はない。だから──

(後は頼んだからな……。しっかり終わらせてくれよ──)

「やれ──霊夢」

 

 

 

 

お前が、決めろ

 

 

 

 

 

ゆっくりと目を閉じて、力を抜き、重力に身を任す。

 

 

霊夢ならきっと大丈夫だろう。

きっとやってくれる。

ただ、そんな安心感だけが心の内にはあった。

 

 

やがて、眠りに落ちるように意識は遠退いていった。

 

 

 

 

────────

 

 

やった、ついに倒した。

 

私の放った弾幕(夢想天生)は奴を貫き、その体を遠くへと飛ばしていった。

 

今すぐにでも本当に倒せたのかを確認しに行きたい、異変が終わったという安堵感を達成感を噛み締めたい──

 

──だが、そんな暇はない。

 

 

奴に弾幕が確実に命中し、恐らくトドメをさせたであろうことを確認した直後、すぐさま体の向きを変え、速度を上げながら降下する。

 

(早く…早く……)

 

目指すは力尽きて落ちていった者のもと。

そして、地面へと落下する前にその体を受け止める。

 

 

雲を抜け、今出せる最高速度(全力)で向かう。

 

 

(──見えた)

それは重力に引っ張られるがまま落ちてゆく姿。

しかし、その者の姿が見えると同時に下に広がる森の姿が明確に大きくなっていく。

 

 

(もう少し……)

手を伸ばし、その体を掴もうとするもののうまく掴むことができない。

 

「死なせない……から……!!」

霊夢はさらに少し速度を上げ、その者と同じ高さに並んだ後、霊夢はその者の体を抱き止め、減速し始める。

 

(間に合わない……)

しかし、霊夢が減速を始めた頃にはもうすぐそこに森があった。

「くッ……」

 

急上昇しようにも、その前に森にぶつかる。

ならばせめてと霊夢は木の少ない場所へ行こうと、木と木の間を減速をしながら飛ぶ。

 

減速をしているものの、空高くからここへ来るまでで上げ続けた速度はなかなか落ちてはくれない。

そんな状態で木と木の間を人を持ちながら潜り抜けるのは、まるで針の穴に糸を通す時のような、神経をすり減らしている感覚がする。

 

 

 

森の中を突き進み、地面がすぐそこまでに来たところで身を翻し、地面へと着地する。

しかし、速度を落としきれておらず体が前に引っ張られる。

足で踏ん張り、土煙をあげながら勢いを殺していく。

 

「──っ!」

その時、自身の進行方向に木があった。

霊夢はとっさに抱き抱えていた者を庇うようにして、自身の背を木に向ける。

 

「ぐっ──」

勢いを完全に殺しきることはできず、大きな音を立てながら霊夢は背中から木に直撃した。

 

「はあ……はぁ……」

自身を受け止めた木に寄りかかるように霊夢は座り込む。

 

 

「はぁーー、危なかったーー」

霊夢は一息つき、ようやく安堵した。

 

 

 

(背中が痛い……)

しかし、自身の痛む背中だけは心残りになりそうだと霊夢は思った。

 

 

◆◇◆◇

 

 

「ん……」

重い目蓋を開け、ぼんやりとする視界で周りを見渡す。

 

まだはっきりとは見えないが、ここがあの世というやつだろうか?

 

 

「……きたの?……少し…ててもよかったのに」

聞こえてきたその声がぼんやりとする視界を鮮明にし、意識をこちらへと引き戻した。

 

 

「霊…夢…?」

「おはよう、それと……心配かけて悪かったわね……」

そこに居たのは赤い巫女服の少女。

 

 

「いや、そんなことな…いッ!!」

起き上がろうとしたその時、強烈な痛みが体を巡った。

 

「ああ、あんまり動かないほうがいいわよ」

「先に言って……」

「言う前にあんたが動いたんでしょ……」

 

 

頭だけを動かして自分の体を見ると、簡易的ではあるが応急処置がしてあった。

 

 

「これ……」

「…はぁ……あんたねぇ、無理しすぎよ……」

「詳しくはわからないけど、どうせ体の限界が来ても無理矢理使い続けた、ってところでしょ?」

「やるな、って言ったわよね?」

「……はい」

霊夢からの軽いお怒りの言葉に萎縮する。

 

「はぁ……勝てたからよかったけど、あのままじゃああんた死んでたわよ」

「…それは……ありがとう……」

「……まあいいわ」

霊夢はいつものようにあしらった。

 

 

「……霊夢はいつ起きたんだ?」

「さっき、起きたばっかよ」

「元気そうでよかった」

霊夢は一拍置いて、「はい、はい」と答えた。

 

 

 

「それじゃあ、行くわよ」と言いながら霊夢はこちらを背負う。

「行くって、どこに?」

「永遠亭、このまま歩いて行くわ」

霊夢はこちらを背負って歩き出す。

 

 

「……大丈夫か?」

「あんたを背負って行くくらいできるわよ」

そのくらいなんともないと言うように霊夢は答えた。

「……そうか」

 

 

 

────────

 

 

(──腰がッ!痛いッッ!!)

(うぅ……嘘でしょ、傷を負うつもりなかったのに……)

 

 

(あの戦いで『腰だけ負傷しました』、なんて言えるわけないわよ!!こいつみたいにボロ雑巾になってたらまだしも、服もそこまで汚れてるわけじゃなくて、外傷も特に見られないのに腰だけ痛めたなんて、まるで私がお年寄りみたいじゃない!!)

(こんなこと誰かに知られたら絶対バカにされるわ!!)

 

(博麗の巫女もついに年かーとか、博麗の巫女の年齢は実は○○歳だった!!とか、絶対に誰かが言うに決まっているわ!)

 

(このことは口が裂けても言わないわ……)

 

博麗霊夢は決意した。

このことは墓場まで隠し通すと──

 

 

────────

 

 

「……そういえば、あいつはどうなったんだ?」

先程まで戦っていた者との決着を霊夢に聞いた。

 

「……たぶん死んでるわよ」

「たぶん?」

 

「あんたが寝ている間に探していたんだけど、見つからなかったわ」

 

「でも、あれをまともに喰らったならタダじゃすまないはず。現に私はあいつに弾幕が当たるのを見た。だから、たぶん死んでる。大方、近くにいた妖怪か何かが死体を持っていったんじゃない?」

「そうか……終わったんだな……」

「ええ、終わったわ」

 

 

「……さっさと永遠亭に行って、その後は紫に終わったことをみんなに伝えさせて、パーっと宴会にしましょう」

「そうだな……」

 

霊夢は森を突き進み、永遠亭へと歩いて行った。

 

 

 

 

長かったような、そうでもないような、そんな戦いが終わった。

異変によって多くの被害が出たが、それでもいつかは前を向かなくてはならないのだろう……

 

 

そのいつかがいつ来るのかはわからないが、今はただ、この異変が終わったことを喜ぶとしよう。




彩乃のもといた世界にもきっと何か物語があったのでしょう。
感想、コメント等お待ちしてます。
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