幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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第二章スタート!!


第二章 悪魔の聖書
雨中


雨音が辺りに響く

 

 

 

雨の匂いが漂ってくる

 

 

 

それに紛れて仄かに血の匂いが香る

 

 

 

手についた血を雨で洗う。

 

「……」

自身から少し離れた場所に倒れているのは、頭の潰れた死体。

 

 

 

この場所での用が済んだのか、その者は雨に打たれながらその場所を去っていった。

 

 

◆◇◆◇

 

 

「お疲れ」

人里で待っていた彼女──魔理沙は傘を片手にやって来たその者に労いの言葉を掛ける。

 

 

魔理沙の見る先に居るのはずぶ濡れの人影。

 

「それにしても、急に降ってきたな」

魔理沙は空を覆っている雨雲を見ながら言った。

雨雲のせいか、まだ昼過ぎだというのに外は薄暗い。

 

 

魔理沙は空を見上げた後、こちらの姿を見る。

「……」

 

雨の中、傘を差さずに立っているその様子を見て、魔理沙はスッと傘を差し出した。

「……あー、風邪引くぜ?」

 

 

◆◇◆◇

 

 

タオルで頭を拭いて、水分を取る。

 

「その感じだったら、頼んだことは終わったみたいだな」

「──悪かったな、手伝ってもらって」

魔理沙はそう謝罪した後、注文を取りに来た店員にいくつか頼み、再びこちらを向く。

「今日は私の奢りだ。好きなの頼めよ」

そう言われ、とりあえず目についたものを頼んだ。

 

 

「それで、特に問題はなかったか?」

「ああ、それほど強い妖怪でもなかった」

「そうか、まあ問題なかったならよかった」

 

魔理沙から頼まれたこと──それは妖怪の退治。

シフとの戦いから数日経ち、特にする事なく暇をしていたら、魔理沙への依頼が何件か重なったため、その内の一件である妖怪退治をしてくれないかと魔理沙に頼まれ手伝うことになった次第だ。

 

 

しばらく待っていると注文した料理が運ばれてきた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

「お前もそろそろこの世界には慣れてきたか?」

食事を食べ終わった魔理沙はそう聞いてきた。

 

「ある程度は」

「……そうか、まあ……あんま無理すんなよ」

「?」

 

「……なあ─」

「……?」

「少し、長くなるかもしれないけど……いいか?」

そう確認をとる魔理沙に、

「まあ、いいが」と返した。

「そうか」

 

 

少し間を空け、魔理沙は話し出す。

「……この仕事やってるとさ、嫌でも分かるんだよ」

「──救えないものは救えないって……」

魔理沙は自身の手を見ながら、そう言った。

 

自身の心の内を開くように、魔理沙は語りだす。

しかしその顔はいい思い出を語るような顔なんかではなく、悲しげでどこか悟ってしまったような顔をしている。

 

「死ぬ時は死ぬ。当たり前だよな、こんなこと……」

「人間も、妖怪も、いずれは受け入れるしかない運命(さだめ)ってやつだな」

 

「この仕事をやってるとさ、嫌でもそれを見なきゃいけない時が来るし、それをしないといけない時も来る」

「考えるだけ無駄なのかもしれないって、私もどこかそう思ってるよ」

「もう何人も目の前で死なせてしまった。もう何人もこの手で殺した。こんなことを続けていると、たまに命の価値というのが分からなくなる」

「──だってそうだろ?命なんて、簡単に散る」

「亡くなった者が戻って来ることはない……」

 

「……鈴風は覚えてるか?シフと初めて会った時の──」

 

「あの子だってそうだ。もしかしたら救えたかもしれない、私がもっと早くにシフを倒していたら……もっと早く見つけていたら助かっていたかもしれない命だ……」

「シフを倒すまでにかなりの犠牲を出した。鈴風もその一人だ」

「私はその犠牲を利用した。あいつを見つけるために、鈴風の死を利用したんだ」

 

「シフが鈴風の体を使うという保証もないのにさ……」

 

「ま、結局そこはフランに頼ったけどさ……」

「……あいつが居なかったら多分、もっと死んでた」

「シフを見つけるまで、鈴風の時と同じようなことを何回でも繰り返してた」

「その度に何人も犠牲になって……」

 

「ひどい奴だろ?私って……」

「博麗の巫女って呼ばれてんのに、幻想郷の守護者のはずなのに、犠牲を出さないとあいつすら見つけられない。あいつが隠れるのが上手いことは認めるが、それでもだ……」

 

「これは、必要な犠牲なのか?それとも、私が見殺しにしてるだけなのか?そんなことで悩む」

 

「目の前で助けられずに死なせたこともある」

「これは何だ?私の力が及ばなかっただけなのか?私の判断が遅かっただけなのか?」

 

「こんなに簡単に無くなる命は重いものなのか?それとも軽いものなのか?人が死ぬことに慣れて、そんなことを思う時もある」

 

「お前がどう思ってるかは知らないけど──」

 

「それでも私は重いものだって思ってる。重いものだって信じてる……いや、重いものだって言い聞かせてる」

「…慣れすぎたのかもな……私も、自分のことは薄情な奴だって思ってるよ」

 

「ま、それでも……大切に思ってる奴が死ぬ時は、悲しくはあるさ」

 

 

「……悪い、いきなりこんな話して……」

「自分でも何だか、話が行ったり来たりしているような気がするし、訳わからないことを言ってた気もする……」

 

 

「……私なんかでいいのかな?博麗の巫女って……」

「こんなに犠牲を出しまくってる奴でさ……」

 

 

「何人も、何十人も、何百人も、簡単に死ぬとこを見てさ……それでも、その命は重かったって言えるのか…?」

「それとも、たった一つの命なんて……ちっぽけで、軽いものなのかな……?」

 

「そもそも、こんなことを考える意味なんて、あるのか……?」

 

 

一通り話終えたであろう時、それまで静かに聞いていた彩乃が口を開いた。

「『考えるだけ無駄』命の重さという問いに答えがあるとしたら、それが一番近いだろう」

 

「獣は生きるために他の動物を喰う」

「当然、そこにも命のやり取りは発生する」

「─捕食者と被食者、その関係がある以上それは逃れられないものだ。だがしかし、獣はそこに命の重さというものを考えるのか?」

「否、考える訳がない」

「本能のままに殺して喰う、そこに命の重さなど存在しない」

「生きるために必要だから殺す。それは自然なことだろう?」

 

「命の重さなんて、人間が勝手に言ってるだけだ」

「自分たちが優れていると、他の命について考えることができるだけの余裕があると……ただそれを誇示するためだけの綺麗事だ」

 

「もし本当に全ての命が等しく重いというのなら、復讐なんて言葉は生まれない」

「例えば、家族を殺されたから、殺した奴を殺す。これには、家族という重い命とそれを奪った軽い命があるということになる」

「だってそうだよね?本当に全ての命は重いというのなら、家族を殺したそいつの命も十分重いもののはずだからね。なのに、その重い命を奪おうとするなんておかしなことじゃないか」

「逆に全ての命が軽いものだとしても同じだ」

「あなたにとって家族の命というのは軽いものなんですね、ということになる。別に家族じゃなくても、友達や想い人でもいい。それらの命だって軽いものとなる」

「そんなことを言ったら、反論する奴なんて探せばいるだろう」

 

「必ず命には軽重が付けられる」

「なのに平等と言うのは虫が良すぎる……本当におかしな話じゃないか」

 

「──命に重さなんてない」

 

「人によって変わって、時には重く、時には軽くなる。そんな曖昧なものでしかない」

 

「だから、『考えるだけ無駄』なんだよ」

 

 

「……まあ、どう考えるかはそいつの自由か……」

「ありがとな、話に付き合ってくれて。おかげで少しスッキリした」

そうして、この話は終わることになった。

魔理沙の顔は話し始める前より、少し明るくなっていたような気がした。

 

 

 

 

その後、食事代は無事魔理沙が奢ってくれた。




大事な話をしようとすると、自分がそれを言ったかわからなくなったり、同じことを何回も言っているような気がするよね……(実際書いててそうなった。書いてて何か変なこと言ってるような気がしてた)

第二章もよろしくお願いします。
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