幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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学生の皆さんはそろそろ夏休みシーズンかな?


先の時代の唐傘妖怪

「お願いしますッッ!!どうかこの通り!!」

そう叫び、懇願する声が部屋に響く。

 

 

床に頭をべったりと付け、土下座を決め込むその姿に魔理沙も困惑していた。

 

 

────────

 

 

この状況に至る少し前──

 

 

「傘を落とした?」

「はい……」

しょんぼりとしたような、申し訳なさそうな声でそう答える。

 

 

神社に一人の妖怪が来た。

 

妖怪の名は『多々良小傘』

魔理沙に頼みがあるということでこの神社までやって来たらしい。

 

 

「それで……どこに落としたんだ?」

魔理沙は小傘にそう聞く。

「いや……その……」

小傘は言うのを渋っていたが、覚悟を決めたのか一度息を吸ってから口を開いた。

 

「……に、人形屋敷(・・・・)……です」

 

 

(人形屋敷……?)

遠くから聞いていた彩乃は聞いたことの無い場所に興味を持つ。

 

 

「…あそこか……」

魔理沙はその場所のことを知っているのかのような反応をした。

 

「何でそんなところに行ったんだ?」

「それは……その、人を怖がらせる研究のために……」

 

 

 

小傘はその時のことを思い出しながら語り出した。

「──少し前に、人里で人形屋敷の話を聞いたんです」

 

 

「曰く、森の中にポツンと、誰が、何の目的で建てたかもわからない一軒家があると──」

「その中には大量の人形があることから人形屋敷と呼ばれており、中には呪われた人形があると言われている」

 

「一度入ったが最後、その人形に呪われ、不幸な目に合うと──」

 

 

「とまあ、そんな感じの所謂心霊スポットなのがあの人形屋敷なんです……」

 

 

すると、魔理沙はその話に口を挟む。

「……なあ、その話とその場所のブームはとっくに過ぎただろ。何で今更──」

「うっ……そ、それは……」

 

「何だ?もしかして今更知ったのか?」

「ぐっ⁉」

言の刃が小傘を貫く。

 

「いや……そ、それは……」

 

「あ!!そ、そうだ!!またブームが来てるんですよ。それでみんな人形屋敷で盛り上がってて」

「本当かー?」

 

「ほ、本当ですよ」

小傘は汗を垂らしながら言った。

 

「は、話を戻しますね……」

 

 

「そして、人形屋敷を知った私は研究も兼ねてそこへ向かったんです」

 

「途中迷ったりしたけど……何とか人形屋敷へ辿り着いたんです」

「中へ入ると話の通りたくさんの人形が置いてあって…」

 

 

「家の中を探索をして、最後に一番奥の部屋に向かいました……」

 

「すると、その部屋に入った途端恐ろしい気配がしたんです。すぐに後ろを向いても誰も居らず、怖く……さすがに危険かなと思って、その家を出ようとしたんです」

 

「ですがその部屋を出た途端、誰も居ないはずのその部屋から物音がして……振り返るとそこには──」

 

 

 

 

「人形が居たんです!!」

 

 

 

 

「人形が居たんです!!」

「いや、二回も言わなくていいって……」

顔色を変えずに黙って聞いていた魔理沙に小傘は再度そう言ったのだった。

 

 

「私はすぐにその場から逃げ……危険と判断し撤退を─」

「逃げたでいいだろ……」

 

 

「うっ……と、とにかく…無我夢中でその人形屋敷から逃げてる時に気づいたんです……」

「傘を持っていないことに……」

 

 

「そう、私はあの時……突然人形が現れた時……」

 

 

「人形に向かって、思わず傘を投げてしまっていたのです……」

 

「……え?」

投げたの?逃げてる時に落としたとかじゃなく?

 

魔理沙は小傘の発言に言葉を失った。

 

 

「傘が無いことに気づいた私はすぐに人形屋敷に戻ろうとしました。けど……戻っている最中にルーミアに遭遇してしまって……」

「仕方なく逃げたんです……命には変えられませんので……」

 

 

「──だから」

小傘は両手を床に付ける。

 

「傘を取って来てほしいんです!!」

小傘はそう叫びながら頭を勢いよく下げる。

 

 

「お願いしますッッ!!どうかこの通り!!」

 

 

そして、この状況に至ったのだ。

 

 

────────

 

 

「あ、あー……つまり……」

 

「人を怖がらせる方法を研究しに行ったら、人形が突然現れて、それにビビって逃げ出して、その時傘を投げつけてしまったから取ってきてほしい……ってことか?」

「……ま、まあそうなりますね……」

 

 

「まさか人を怖がらせる側(・・・・・・)の私が驚かされるとは……」

 

「……」

魔理沙は何かを言おうとしたが止めた。

 

「という訳で、改めてお願いできませんか?あれが無いと私、何の妖怪か分からなくなっちゃいますので……」

 

魔理沙は少し考えた後、あることを思い出す。

「……あー、そうかお前、一応唐傘お化けか」

「い、一応⁉」

 

 

 

「……今は傘のない唐傘お化けってことか」

彩乃はそう口を挟む。

「それはもう、ただのお化けじゃないですか⁉」

それに対し、小傘はツッコミを入れる。

 

 

 

「それにしても、お前傘なくて大丈夫なのか?」

「……?別に、体調は良いですけど……」

小傘はそう答えるが多分聞かれていることは違うだろう。

 

「いや、そうじゃなくて……」

「傘がないんじゃあ、唐傘お化けとしては存在が成り立たないんじゃ」

「……えーっと、つまり……どういう?」

小傘は考えるも、わからなかったようだ。

 

「いや、存在が成り立たなくなったらお前、下手したら消えるんじゃないか?」

「……え?」

魔理沙はさらっとそう言った。

 

「え?ほ、本当?消えるの?」

「いや、実際に見たことがあるとかじゃないし……本当に消えるかどうかは知らないけど……」

 

「いやいやいやいや⁉今そんなこと言わないでよ⁉こ、怖くなって来たじゃん⁉」

「落ち着けよ……」

慌てふためく小傘に魔理沙はそう言う。

 

「いや落ち着けないよ⁉き、消えるの⁉本当に⁉」

「いや知らないって……」

しかし小傘は若干パニックに陥っているのか、落ち着きがない。

 

 

 

 

その後、小傘が落ち着きを取り戻すまでにそこそこ時間がかかった。

 

 

◆◇◆◇

 

 

「お、お願いしますよ⁉なるべく早く取り戻して来てくださいよ⁉」

「わかってるって……」

魔理沙は渋々小傘の頼みを聞き入れた。

 

 

 

「ほ、本当に頼みましたよ⁉」

余程心配なのか、帰る時も何度か振り返ってそう言っていた。

 

 

「はあ……彩乃、準備しておけよ。すぐに行くからな」

 

そうして、人形屋敷へと向かうことになった。




時代遅れの傘なし唐傘お化け……

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