「ここだな」
魔理沙が立ち止まった先にあるのは森へと通じる獣道。
人形屋敷へと向かうため、一度行ったことのあるという魔理沙について行ったところ、案内されたのは人里の近くの森の前。
道の様子から見て、長い間人はあまり通っていないことがわかる。
「この道に沿って行けば人形屋敷に着く」
魔理沙は道を指差しながら言う。
「だが、聞いていたと思うが、人形屋敷のブームはもう過ぎてんだ。だから、人通りがかなり少なくなって道が分かりづらくなった」
「野草取りにたまに人が通るから、途中まではかろうじて道はわかるが……」
◆◇◆◇
獣道を通り、森の中を進んでしばらくした頃、魔理沙が足を止めた。
「?」
彩乃は魔理沙が立ち止まった先を見る。
するとそこには生い茂った草木があり、道が見えなくなっていた。
「人形屋敷に行く上で問題なのがここだ」
「見ての通り、こっから先は道がわからなくなってしまっている」
「人形屋敷に行ったことがない奴がよくやるミスが、このまま直進することだ」
「しばらく直進が続いたから、ここもそのまま行こうとする奴が多いんだ」
「こっちの道は間違っているのか?」
彩乃はそう聞く。
「いや、そういう訳じゃない。直進しても、少し離れてはいるが人形屋敷の近くには辿り着く。問題なのはそこに辿り着くまでの道のりだ」
「何があるんだ?」
「このまま進めば、ルーミアの生息地に直撃する」
「人形屋敷はルーミアの生息地と近いから、少し道を間違えたらそこに踏み入れることになる……」
「だから、私としてはあまり人形屋敷には近づいてほしくない」
「こっちだ、行くぞ」
魔理沙はそう言い、草に覆われた獣道を歩き出す。
◆◇◆◇
「──ここだ」
それは切り開かれた森の中にあった。
森のど真ん中とも言えそうなこの場所に、洋風な一軒家が一つあり、まるでおとぎ話にでも出てきそうな雰囲気が漂っている。
「ここが……」
彩乃は人形屋敷を眺めている。
所々古くなった部分も見受けられ、手入れが行き届いていないであろうことから、誰も住んでいない廃墟であることが伝わってくる。
魔理沙と彩乃はその家の玄関へと向かい、魔理沙がドアノブを引いた。
鍵はかかっておらず、扉はすんなりと開いた。
ギィィ、と音を立てて開かれた扉から二人は入って行く。
中はまさに廃墟と言えるものだった。
当然のことながら掃除はされておらず、所々にガラスの破片が飛び散っている。
だが、それにしても……いや、だからこそ──
埃っぽい。
彩乃が中に入って一番に出た感想はそれだった。
玄関を開けたことでそこから外の空気が入ってきて、それが床の埃を巻き上げる。
あまり長居はしたくない場所だ。
魔理沙の方を見ると、手に御札を持っていた。
「気を付けろよ、ここは怨霊とかが溜まりやすいから、いつでも対応できるようにしとけよ」
魔理沙は彩乃にそう警告した。
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近くの部屋に入ると、そこには大量の人形があった。
「これは……」
どこを見ても人形だらけ、やはり人形屋敷と呼ばれるだけはある。
「さぁな……誰がここにこんだけの人形を置いたんだろうな……?」
魔理沙も部屋に入って来て、傘を探す。
この部屋の至るところに人形が並べられており、床には落ちて壊れた人形もある。
(それにしても……)
彩乃が気になったのは飾るように並べられた人形ではなく、乱雑に放り投げたかのように床に落ちている人形。
その内の何体かには黒く、焦げたような跡がある。
中には炭としか言えないようなものもあった。
ここで誰かが火でもつけたのだろうか?
だが、そんなことを気にする必要はない。
今回の目的はあくまで傘探し、屋敷の秘密を暴くというものじゃない。
彩乃はすぐに他の所を探し始めた。
一通りこの部屋を探したが、傘らしきものは見当たらない。
さっさと次の部屋を探した方がいいだろう。
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「ここで最後だな」
あの後屋敷の部屋をいろいろと見ていったが、傘は見つからず、結局最後に残ったのは一番奥の部屋だった。
「やっぱりここか……」
魔理沙はその扉を見て、そう呟いた。
小傘が何かの気配を感じたという例の部屋。
ここの可能性が高いとは思っていたけど……
案の定と言うべきか……
まあ、確かめるまではわからないが……
ここまで来たら仕方ない、入るしかないだろう。
彩乃はその部屋の扉に手を掛け、中に入る。
その時のことだった。
背後から何かの気配がした。
「彩乃!!」
それと同時、魔理沙の声が響く。
振り向くと魔理沙が大量の何か──怨霊と戦っていた。
「お前はその部屋を調べろ!!私はこいつらを抑える!!」
そう言われ、彩乃は魔理沙を背に部屋を調べ始める。
その部屋は作業部屋だろうか?
部屋の中には作りかけの人形や道具が散らばっている。
他の部屋とは違った雰囲気を醸し出すその部屋には人形がほとんど無かった。
あるのは3体ほどの人形(壊れているのか作りかけのものかわからないものもある)、それとまだ制作途中の人形が作業机の上にある。
彩乃は部屋全体を見回す。
「!」
すると、探しているそれらしきものを見つけた。
紫色の傘──聞いていた情報とも一致するし、恐らくこれだろう。
机に立て掛けられた傘を手に取り、部屋を出ようと後ろを振り返った時だった。
そこには先程までなかったはずの人形があった。
その人形は他の人形と違い、床の上に立ちこちらを見ている。
(……後ろ)
彩乃は振り返りながら自身の背後へ向けて蹴る。
彩乃の放った蹴りの先にあったのは先のものとは別の人形。
背後から襲おうとしたのか、刃物を持っていたがその刃物は人形諸共吹き飛ばされる。
人形は音を立てて飛ばされ、壁に当たった。
壁に激突した人形にはヒビが入り、力無く床に落ちる。
「くそっ……なぜ、わかった……?」
人形からそんな声が聞こえてきた。
おおよそ、人形に取り憑いていた霊が喋っているのだろう。
人形は再び立ち上がろうとするが、それは叶わず、力尽きて床に伏した。
彩乃は突然襲って来たそれを気にも留めず、部屋から出ていこうとする。
そうして部屋から出ようとしたその瞬間──
「もらったああぁぁ!!」
先程蹴り飛ばした人形が彩乃の背中に刃物を振りかぶろうとしていた。
バカな人間だ、この人形屋敷に入った時点でお前の敗北は決まっているッ!!
何故なら、あの日捕り逃した獲物のことを踏まえ、獲物を逃がさないための最強の作戦を考えたからだ!!
ステップ0
この部屋へと入らせる。入りそうになかったら待機させている霊たちを使ってこの部屋に押し込む!!
ステップ1
突如として現れた人形に気を取らせている内に背後に回り込む。
ステップ2
背中からブッ刺す!!
失敗した時のためのステップ3
死んだふりをしてやり過ごす。
ステップ4
油断したところを背中からブッ刺す!!
ステップ5
相手は死ぬ!!
(完璧な作戦、これでこいつは終わりだ!!)
それに対し彩乃はスッと体を横に避ける。
すると、彩乃が避けた位置に御札が飛んできた。
「ぬああぁぁぁッ!!」
御札は彩乃の背後に居た人形に当たり、人形は再び吹き飛ばされた。
「見つけたか?」
部屋から出てきた彩乃に魔理沙はそう聞く。
「これか?」
彩乃は見つけた傘を魔理沙に見せて確認する。
◆◇◆◇
「まさか不意打ちのつもりで押し掛けて来るとはな……それにしても、思ったよりは少なかったな」
屋敷から出た魔理沙はそう呟く。
恐らく魔理沙が言っているのは、相手していた怨霊たちのことだろう。
「少なかったのか?」
彩乃はそう聞き返した。
「ああ、以前来た時よりはずっと少なかったな……まあ、あの時がおかしかったのもあるけどな」
「この屋敷は霊の溜まり場になりやすいんだ」
「近くにルーミアが居たりと、そもそもとして生息できる場所が少ないのもあるだろうが……詳しい理由はわかってないんだ」
「前に来た時に屋敷の霊を一掃したから、それで少なかったのかもな……」
「居たのも然程力のないやつばっかだったし、前に居たやつが居なくなったから住み着いたってのが大半だろうな」
「ま、これでしばらくは放っといて大丈夫だろう」
そうして、やることを終えた二人が帰路へとつこうとした時だった。
「うわああぁぁぁ!!!!」
という叫び声が森の中から響き渡ってきた。
おまけ
人形に憑いていた霊「え、出番終わり?これから無双シーンが始まるところだったろ⁉」
Q.何で小傘は襲わなかったの?
A.小傘?あー、あの青髪?いや、襲おうとしたよ。襲う前に軽くビビらせたら尻尾巻いて逃げられたんだよ。
てか、傘投げんなよ。
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