遅くなってごめんなさい
嫌な予感というものはよくあたるものだ。
案の定、魔理沙はアリスを彩乃と同じ部屋で寝かせた。
それに対し、アリスは申し訳無さそうに彩乃に謝っていた。
「ご、ごめんなさい……」
そう謝るアリスに、
「いいってことよ」と、魔理沙が許しを与える。
魔理沙に謝っている訳ではないのに……
「………」
魔理沙はアリスを見て少し考える。
「なあ、アリス」
「……?」
「お前、空は飛べるのか?」
「空……ですか?」
「ああ、少し行きたい場所があってな……空を飛んで行ったら早いんだが、飛べないなら私か彩乃で運んで行くが……」
「一応、魔法で飛べはしますけど……」
アリスはそう答えた。
「そうか、ならよかった」
「…えっと……ちなみに、どこへ?」
「ああ、それは──」
◆◇◆◇
「──ってことで、ここに来た」
「……少し説明が足りていないと思うのだけど」
全体的に紅が目立つ館の一室──
話し終わった魔理沙にそう愚痴がこぼされる。
愚痴をこぼしたのはこの館の主であるフランドール・スカーレットだった。
「それで?私にどうしろと言うのかしら?」
「あいつのことで来たんだが……」
魔理沙は少し離れたところで咲夜といるアリスを見ると、それにつられてフランもアリスを見た。
「………」
「あいつの泊まる場所を探しててな」
神社は狭いしもう少し広々としたところの方がいいだろうとのことで、魔理沙は紅魔館へと来た。
でも、さすがに許可は取っておいた方がいいだろうとのことで、こうしてフランと話しているのだ。
フランは見定めるようにアリスをじっくりと見た後に口を開いた。
「……パチュリーにあげたら喜んでくれるかしら?」
「あいつを何だと思ってんだよ……」
魔理沙は思わずそう言った。
「……?違ったかしら?」
「私はあいつを泊めてやれる奴を探してるだけだ」
「そう……」
フランは残念そうに言った。
「でも……あまり気は乗らないわね……」
泊めるだけと言ったのだが、フランはあまり乗り気ではなかった。
「……あの子、面倒事しか引き寄せないじゃない」
フランの顔は嫌そうにしていた。
「そう言わずに頼めないか?」
魔理沙がそう言うと、フランはため息をついた。
「他に当てはいないのかしら?」
そう言われ魔理沙は考えるが、思い付く人物はいなかった。
「……お前だけだな」
「そんなに人脈がないの……?」
フランは可哀想で哀れなものを見る目で魔理沙を見た。
「いや、お前ぐらいしか人を泊めてくれそうな奴がいないんだよ……」
魔理沙は咄嗟に弁明する。
「部屋……余ってるだろ?」
「物置のことかしら?」
「一つ位空けてくれてもいいだろ?」
「はぁ……本当にここしかないの?」
「仕方ないだろ?他に泊まれるだけのスペースがありそうな奴なんて……」
『いない』と、そう言おうとした時頭に何かが引っ掛かった。
「──さとり……」
ポツリと、その名前が出てきた。
「さとり……『古明地さとり』だったかしら?」
フランはそれを聞いて名前を思い出す。
「ああ、あいつもそこそこの場所に……」
言いかけた時だった。
「いや、あいつはダメだな」
何かを思い出して魔理沙はすぐに否定した。
「……あのさとり妖怪はまだ引き籠っているの?」
魔理沙の言葉で何か察したのか、フランはそう聞く。
「たぶんな……最近様子を見てないから分からねぇけど」
「まあ大丈夫……だと思いたいが……」
心配ではあるが……まあ、時間が空いた時にでも様子を見に行ってもいいだろう。
「……いいわ」
「?」
唐突に、フランがそう言った。
「あの子、
「……本当か?」
どういう風の吹き回しか……まあ、そうしてくれるのならこちらとしてもありがたいが……
「……ただし、条件があるわ」
「条件?」
まあ、そう簡単にはいかないか……
「……彩乃も引き取らせてもらうわ」
フランはアリスを引き取る条件としてそれを提示した。
「彩乃を?」
「ええ、二人とも引き取ってあげるから、その間に彼女の様子でも見に行ったらどうかしら?」
フランなりの気遣いか、それとも別の意図があるのか……
どちらにせよ、悪い条件という訳でもない……
「……」
「で、どうするの?」
フランから出された条件を魔理沙は考える。
(まあ、こちらにデメリットは無いしな……)
「わかった、それでいい」
魔理沙はその条件を受け入れた。
(さとりに会ういい機会か……)
そう思っておくことにしよう。
◆◇◆◇
「えっと……今日はここで寝泊まりをすればいいのですか?」
「悪いな、こっちで勝手に決めて……」
「いえ、そんなことは……むしろ感謝してます。こんなどこの馬の骨かも分からない私にここまでしてくれるなんて……」
「そこまで言わなくていいって……」
「……」
彩乃は魔理沙をじっと見ていた。
「……ああ、彩乃も悪かったな」
その様子に魔理沙は申し訳程度にそう言った。
しかし彩乃は不服そうにしていた。
「じゃあ、よろしくな」
魔理沙は無視してフランにそう言う。
「ええ、あなたも頑張りなさいね……」
そうフランと言葉を交わして、魔理沙は紅魔館を後にした。
◆◇◆◇
「どうぞ」
そう言われ咲夜に案内されたのはずいぶんと綺麗にされた部屋だった。
部屋には埃一つなく、ベッドにはシワが一切ない。
まるで今しがた用意したような部屋……
アリスは別に部屋が用意されており、先に案内されていた。
「……」
夕食の時間になれば咲夜が呼びに来るらしい。
それまで、何をして時間を潰そうか……
────────
夕食も終わり、時間は過ぎていった。
ここは部屋も広く、食事もいいものが出され、至れり尽くせりのように感じるのだが……
どうも嫌な予感がしてならない。
ベッドの上に寝転んで、そんなことを思っていた時だった。
コン、コンとドアをノックする音が聞こえてきた。
「入っていいかしら?」
直後に、その声が聞こえてくる。
この声は……
その声は咲夜のものでもアリスのものでもない。
フランの声だ。
「……」
彩乃は少し考えた後、声を押し殺し、音を立てないようにベッドの中に潜る。
すごく嫌な予感がする。
もう一度扉が叩かれる。
さっさと諦め…「入るわね」
そう言いながら扉が開かれた。
最初からノックする必要はなかったのでは?と思ったが、こうなれば寝たふりでもしていよう。
そう思っていたのだが……
フランは一直線にベッドへと向かうと、布団を掴んで無理矢理引き剥がした。
「──⁉」
「さ、起きて」
「……何の用?」
一応、そう聞く。
「大事な用」
そう言って、彩乃は無理矢理フランに連れ出された。
まったく……今何時だと思っているのだか……
彩乃が連れ出され、誰も居なくなった部屋にある時計は二時を示していた。
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フランが彩乃を連れて来たのは館の外だった。
外には暗く、静かな世界が広がっていた。
「………」
そこで分かった。
自分がここに残された理由と、今こうして連れ出された理由が──
「私はあっちに行くから、あなたは向こうをお願いするわ」
フランは手で方向を指し示しながら言う。
「一人で何とかならないのか?」
「分担した方が早く済むでしょ?それとも、あなたがあちらに行きたいのかしら?」
「……はぁ」
仕方ないか……さすがに今は面倒くさい……
「物分かりがいいと助かるわ」
「グングニル──」
その声と共にフランの手元に一本の剣が現れる。
黒を基調とした、フランの背丈ほどありそうな大剣──
その刀身は刃の部分を除いて、結晶のようになっており、その紅い結晶は、この暗闇の中でも煌めいていた。
夜風によってフランが肩に羽織っているコートがなびく。
「さあ、狩りの時間といきましょうか」
おまけ
フランの肩掛けコート
フランが外出時に着る(羽織る)黒のコート
少し大きめのサイズのため、普通に着ると戦闘時に邪魔になるため肩から羽織っているらしい。
咲夜が用意したものらしく、どこで手に入れた物なのかは咲夜にしか分からない。
夏用と冬用があり、夏用は通気性が良く、冬用は防寒がしっかりしているとのこと。
咲夜曰く、身に付けると威厳が120%アップするらしい。
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