幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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しばらくは書き方を模索するため、少し安定しないかもしれませんが、よろしくお願いします。
読んでくれてる方Thanks


森の先へ

深い森の中──

そこに居るのは二人──

その関係は捕食者と被食者、喰らう者と喰らわれる者、獣とただの餌でしかない。

 

 

人食い妖怪はこちらをじっと見つめ、タイミングを見計らっている。

 

一歩、後ろに下がった

 

──その瞬間、妖怪は身を屈め、足に力をいれ、その場から飛び付くようにしてこちらへと急接近する。

 

こちらへと飛びかかる妖怪へ反撃しようと手に力をいれる。

「──っ」

 

 

だが、食らいつこうとする妖怪に攻撃を入れることなく、咄嗟に横に飛び退く。

妖怪は勢いそのまま後ろにあった木へと突っ込み、森に衝突音を響かせた。

 

「……」

 

こちらを喰らおうと開いた口は木に噛みつき、妖怪は衝突した木を食べようとしているかの様になっている。

 

 

手を握ったり開いたりして感覚を確かめる。

(……やはり、ダメか……)

一度はこちらから攻撃をしようとしたものの、その瞬間に確信した。

 

自身の体は本調子ではない、能力を使って戦ったとしても、すぐに体は限界を迎えるであろうほど。

今のこの状況ではあの妖怪とまともに戦うことすら難しいであろうのに、ましてや勝つことなど言うまでもない。

 

 

 

バキッ!!

バリッ!!バリッ!!

 

「……チッ」

森に木が折れる音──

いや、噛み砕かれる音が響く。

バリッ、バリッ

妖怪は噛みついていた木をまるで煎餅でも食べるかの如く音を立てながら噛み砕く。

 

大木とも言える木の幹を噛みちぎり、いともたやすく噛み砕くほどの咬合力──

それは、生物を食いちぎることなど造作でもないと言わんばかりだった。

 

妖怪は再びこちらへと向き直る。

その目は目の前にいる獲物だけを捉えている。

 

 

(戦うのは賢明ではないな……)

妖怪は再びこちらを食べる隙を伺っている。

妖怪と円を描くようにして一定の距離を取り、警戒する。

(仕方ないか……)

ほどなくして一つの結論に至る。

 

『逃亡』

──あまりしようとはしてこなかった選択肢。

 

だが、つべこべ言っている場合ではない。

本調子ではないのにプライドだのなんだの言って死ぬつもりはない。

 

(逃げるとしたら……あの瞬間……)

 

魔力で自身の身体能力を今できる限界まで上げる。

戦う余裕はない、逃げることにだけ集中する。

 

 

足を止めて妖怪の方を向く。

妖怪は再び足に力を入れ、先程よりも速くこちらへ接近する。

 

──タイミングを見て、再び躱す。

 

ドン!!

妖怪は自身の背にあった木にまた同じようにぶつかった。

すぐさま走りだし、妖怪から離れる。

後ろから木がメキメキ音を立てているが振り替えることなく、走り続ける。

(本能だけでこちらを狙っているのか?まあ、どちらにせよ単純で助かる)

 

 

 

----------------

 

(森の出口は……)

しばらく走ったものの出口はまだ見えない。

遠くからあの妖怪が追ってくる音が聞こえる。

 

(いったい、どこまで続いて──)

「──!!」

咄嗟に身を屈める。

 

バギィッ!!

 

身を屈めるのと同時──

横から飛び出してきた何かが自身の上を通過し、横にあった木をへし折った。

 

(何だ──⁉)

へし折られた木の前に居たのは、追ってきていた妖怪とまったく同じ特徴を持っている──

(もう追い付いたのか……⁉いや……)

 

 

否、先程とは少し差異のある──

 

(別個体……⁉)

 

妖怪はこちらを見る。

「チッ……」

(もう一体いたのか……)

妖怪が追ってきている音が聞こえる。

(さっさとこいつを撒いて……)

 

ザッ……

「──っ⁉」

(音……目の前にいる奴とも、追ってきている奴とも違う)

 

妖怪の後ろ──

そこにある木の陰からそれ(・・)は現れた。

 

(三体目、いや──)

 

 

三体目が現れた木の隣、その隣から、自身の背後の木から、さらには木の上から現れる。

 

少し開けたこの場所を、こちらを取り囲むように妖怪は現れた。

(多い……少なくとも20はいる……)

 

ある程度似た特徴はあるものの、個体によって違いが見られるものもある。

(どうする……この量はさすがに……)

 

ザッ、ザッ……

「フーーッ」

 

(くそっ……)

木の間から追ってきていた妖怪が姿を現した。

妖怪は息を吐き出し、呼吸を整えているのか、それともやっと追い付いた獲物を前に興奮を抑えられないのだろうか?ただ妖怪は微かに息を漏らしながらこちらをじっと見ている。

 

 

自身を取り囲む妖怪達はじっとこちらを見ている。

その目は追い詰められた獲物を見るような、哀れで惨めなものを見るような、こちらをただ見下しているような、捕食者の目だった。

 

しかし、それに非を唱えることをできる状況ではない。

自身の今置かれている状況は文字通り袋のネズミであり、ゲームで言うなら詰みと言わざる得ない。

妖怪たちの圧倒的優位としか言えない状況。

 

妖怪はそれを理解しているのだろうか、ただこちらの最後の足掻きを見るかのようだ。

 

 

「……」

じっとただ見ているだけの者

 

「ウ、ウゥーー」

「グルルルルッッ」

こちらを威嚇しているのか、声にもならない唸り声をあげる者

 

「アハ、ハ、ハハハ」

嘲笑うような声をあげる者

 

「ウ、あ、う……」

言葉を上手く発せられないのか聞き取れない言葉を言う者

 

「アセ!!アセ!!」

「ホセソヌロニアセデ!!」

訳の分からぬ言葉を発する者

 

多種多様と言うべきか、個体差のある妖怪たちはこちらに対して様々な反応を示している。

だが、あれらの中では既にこちらは食われることは決まっているということは伝わってくる。

 

(……やるしかないか……?)

構えを取り、警戒する。

 

無駄な抵抗としか思っていないのか、妖怪は気にも止めない。

 

「ワタ、タシがタ、タベル」

「あは、ははは、食べていい人間」

「ヲテソゲテバン!!」

「ウゥーー」

 

こちらを食べることしか考えていないであろうが感じられる。

 

「ただおとなしくやられるつもりはねぇよ…」

妖怪たちはこちらをじっと見つめ、こちらを食べる、その瞬間を見定めている。

いつでも対応できるように警戒する。

 

 

「……?」

自身の頭上に何かが浮かんでいる。

妖怪たちも突如現れたそれを見ていた。

(……弾幕?)

少し光を放っているそれはこの場をほのかに照らしている。

 

 

「──ッ!!」

すぐさま身を屈め、腕で目を覆う──

それは経験か、直感からきた行動だった。

 

その瞬間、浮かんでいた弾幕はまばゆい光を放った。

「グ、ウアーー⁉」

「あ、あああーー⁉」

光を直視した妖怪たちは怯みその場から動けなかった。

 

 

ダッ!!

妖怪たちが怯んでいる隙にすぐさま立ち上がり、走りだす。

妖怪の間を抜け、森の出口へと向かう。

 

 

----------------

 

ひたすらに走り、妖怪からなるべく距離を離す。

 

バキッ!!ドンッ!!

一部の妖怪は混乱したのか、その場で暴れていたり、適当に攻撃を放っていたりする。

その衝撃が、音が、森に響いている。

 

 

 

その時──

「アアアアアァァァーーーッ!!」

妖怪の叫び声が森に轟いた。

 

「……ッ⁉」

目が見えるようになったのかそれとも直感か本能で捉えているのか、何人かの妖怪が追ってきたようだ。

それも、先程の比ではないほどの剣幕で……

 

余程さっきのことが嫌だったのか、癪にさわったのか、妖怪から尋常ではない殺気が伝わってくる。

そのことから、妖怪たちが本気で追ってきているのが分かった。

 

 

「はぁ、はぁ……」

走り続けたことにより、今の弱った体の体力の底が見えてきた。

 

バキィッ!!ドンッ!!

だが、そんなことはお構い無しに妖怪は邪魔な木を薙ぎ払いながら、こちらを追っている。

 

木が倒れる音が、妖怪の咆哮が、森中に響き、空気を揺らしている。

 

「はぁ……はぁ……」

妖怪の叫び声がだんだん近づいてくる。

 

それと同時に木々の間から差し込む光が強くなってくる。

(……出口!!)

体力を、魔力を振り絞りようやく見えた出口へと向かう。

 

 

バキィッ!!!!ドンッ!!!!

木が倒れる音が大きくなっている。

妖怪がそこまで迫ってきていることが振り返らずとも分かった。

 

 

(クッ……走れ!!)

もう限界が近い足を無理矢理動かし、全速力で走る。

 

 

「ア゛ア゛ア゛アアアァァァァッ!!!!」

妖怪の怒号がすぐそこまで迫る。

 

外の光が強くなる、森の出口はすぐそこにある。

 

(間に合えッ!!!!)

 

 

妖怪はこちらを捕まえようと手を伸ばす──

 

 

 

その瞬間、自身の前にあった木を寸前で避ける。

 

 

妖怪は追っていた獲物に気を取られ、その前にある木に気づかなかった。

「──ッ!!!!⁉」

 

 

 

ドォォォン!!と大きな音を立てて、背後にいた妖怪は木に激突した。

 

 

「はぁ……はぁ……」

木にぶつかった妖怪を尻目に森の外へと出る。

森の外は拓けており、道のようなものがあった。

 

森から離れようと、そこにあった少し整った道に沿うように走った。

 

 

「……?」

だが、先程のような追ってくる音は聞こえず、振り替えると、妖怪たちは苦虫を噛み潰したような顔をして、森の中へと去っていくのが見えた。

 

 

「……」

妖怪の気配は森の奥へと戻っていく。

 

「…はぁぁ……」

大きく息をついて呼吸を整える。

「やっと行ったか……」

光が嫌いなのか、それとも他の理由があるのかは分からないが一先ず助かったことに安堵する。

「それにしてもなんだったんだ……あれ……」

 

気がついたら居た森に、そこに居た得体の知れない妖怪、ただ疑問だけが頭に浮かんだ。

「何なんだよ……ここは……」

 

 

 

----------------

 

息を整えてからあの森に背を向けて歩きだす。

まだ分からないことが多い、そのためにも何かないか探すために歩く。

 

 

「……?」

少し歩いたところで鳥居を見つけた。

「ここは……」

鳥居の先には先が見えない階段が続いていた。

「はあ…行くしかないか……」

不満気ながらも階段を登り始めた。

 

あまり行きたくないが、ここを知るためにも行くしかないと言い聞かせて階段を上る。

 

ここには行きたくない。この足で階段を上りたくないというのもあるが──

何より、戦った、敵であった者が居るであろう場所へ行くのは気が乗らない。

 

しかし、今はここしか行くところがない。

これは運命の悪戯か何かなのか?

何であろうと、嫌な事をするものだ。

 

 

「はぁ……」

ため息をつきつつ階段を上っていく。

 

今の状態では襲われたらひとたまりもない。

(事を荒らげず、穏便に行くしかないか……)

 

(嫌なものだ……別に嫌いと言うわけではなく、ただ自分にとって邪魔だった存在なだけだったが、それでも敵対した奴とただ話し合うことしかできないというのは……)

 

 

そんなことを思っていると、長かった階段の終わりが見え、神社がその姿を現す。

微かに、ほうきで掃く音が聞こえる。

 

覚悟を決め、境内へと足を踏み入れる。

 

 

境内には社殿の前で掃除する者が居た。

その者は特徴的な紅白の巫女服を着ていた。

 

「──は…?」

 

「──うん?」

その者はこちらに気づき、近づいてきた。

「おお、何だ?参拝客か?こんなとこまでありがとな。えっと…うーん、初めて見る顔だな……人里から来たのか?いや、それよりも、どうしたんだその服。妖怪にでも襲われたか?」

 

矢継ぎ早に言う彼女を見て、困惑することしかできない。

 

「…なん…で……?どういう……?」

「ん…?ああ、悪い悪い、自己紹介がまだだったな」

 

 

 

「じゃあ、改めて。私はこの博麗神社で巫女をしている──」

 

 

 

 

 

 

 

 

「博麗魔理沙だ」




なんか、やっと物語が動いたって感じがします。
不定期更新でやるつもりです。
感想等あれば嬉しいです。
ではまた次回で
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