『ログ』
そう名乗った目の前の男は、こちらの動きをじっと観察しているようだった。
こいつは何者なの……?
四天とは何?
何が目的?
こいつを揺さぶって少しでも情報を……
(こいつくらい、猟犬だけで十分だろ)
「……っ⁉」
そう思ったのだが、結局それをすることはなかった。
(いや、そんなことをしている場合じゃない……)
そんな猶予など無かった。
一瞬過った考えをすぐに振り払い、急いで考え直す。
(逃げなければ──)
その考えに至るとほぼ同時に、体が勝手に動いた。
『逃げろ』と、生存本能が叫んでいたのだ。
「あ?」
その行動にログはそんな声を漏らした。
少し離れたところでさとりはログに向けて弾幕を放つが、ログはそれを腕で軽く払う。
「はぁ……ったく、めんどくせぇ……」
気怠そうにするログの足元の影が伸び、伸びた影の中から何かが這い出てくる。
「──っ」
さとりが後ろを振り返ると、数体の黒い獣が追って来ているのが見えた。
『ほらほら~、逃げないと死んじゃうかもよ~♪』
恐怖を煽られながらも、さとりは走った。
頭の中にごちゃごちゃとした感情が渦巻く。
怒りと悲しみが、憎しみと絶望が、まだ整理しきれていない現実が煮詰められて、頭に押し寄せて来る。
だが、そんな中でも逃げなければいけないということだけはわかった。
それはただの生存本能から来たものなのか、それとも……
(
捕まるのは時間の問題……
だが、一つだけ道はある。
「………」
(行くしか……ないか……)
不本意ではあるが、さとりは決心する。
さとりは地霊殿を駆け抜け、あの場所を目指した。
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「……?」
(何か、音がしたか……?)
一方、魔理沙は丁度地上に出てきたところだった。
(気のせいか……?)
何かが崩れるような音が聞こえたような気がしたが、軽く見渡しても何も無いため特に気にも留めず、神社へ帰ることにした。
魔理沙は地を蹴って空へ飛び、神社の方向を確認する。
神社の場所を確認し、そちらへ飛んで行こうとしたその時だった。
微弱な魔力を感じ、振り返ると共に──
ドンッ、という音が森中に響いた。
「──っ⁉」
突如鳴り響いた轟音とほぼ同時……いや、それよりも少し速くに、
その掠めた部分から血が垂れる。
それと共に、魔理沙は確信する。
(攻撃……⁉一体どこから?)
魔理沙は微弱な魔力を感じた辺りを中心に見渡すが、それらしき影は見当たらない。
「──ッ!!」
次の瞬間、魔理沙は即座に下降する。
すると、直後に下降した魔理沙の頭上を再び何かが通過した。
(──外した⁉)
(何故?狙撃地点も変えたのに……)
「──チッ」
思わず魔理沙は舌打ちした。
(危ねぇ……勘で咄嗟に避けたが、避けてなかったら脳天に直撃だったぞ……)
魔理沙の額に冷や汗が出る。
(先程の一撃──それはこちらが避けた場合の事も考慮して放たれたものだった)
(反応できなかったら心臓、反応したとしても首か頭を撃ち抜ける……)
(最初の一撃は私の反応速度でも試していたのか……?)
確実に命を取ろうとした攻撃に、緊張が走る。
(まあ……なんにせよ──)
「そこだな──」
魔理沙は八卦炉を向け、レーザーを放つ。
先の一撃を回避しつつ、魔理沙はそれが飛んできた方向を見ていた。
(森の中──木と木の間に隠れている……)
敵は木の影を上手く移動し、こちらに正確な居場所が悟られないようにしている。
(──ならば、そこら一帯を根こそぎ薙ぎ払うまで……)
魔理沙は自身の周りに弾幕を生成し、レーザーを放った場所の周りに向けて放つ。
数撃ちゃ当たると言わんばかりに弾幕を放ち、隠れられそうな木を減らしつつ、どこに居るかわからない敵へ向けて攻撃をする。
当たったような感じはしない。
魔理沙は周囲を警戒しながら、下へと降りる。
障害物のない上空では、魔理沙は格好の的でしかない。
そう考え、魔理沙はこちらも木の影に身を隠しながら敵の動きを伺う。
気配を隠すのが上手いのか、敵の位置が特定できない。
相手方はどうだ?
もうこちらの位置はバレているのか?
その答えはすぐにわかった。
「──ッ」
再び、勘が告げた。
即座にその場から離れる。
それと同時に、轟音と共に先程まで隠れていた木に穴が空いた。
穴の空いた木はへし折れ、倒れる。
魔理沙は即座に弾幕とレーザーで反撃する。
すると、お返しとばかりに向こうからも弾幕が飛んでくる。
(このまま続けたとしても、埒が明かないか……)
(なら──)
魔理沙は飛んでくる弾幕を潜り抜けながら、敵へ接近する。
弾幕を放って相手の弾幕を相殺し、合間合間に飛んでくる木を抉った攻撃を避けながら駆け抜ける。
(見えた──)
ある程度進んだところで、弾幕を放っている者の人影が見えた。
魔理沙は御札を構える。
相手は後退して距離を取ろうとするが、魔理沙はさらに速度を上げ、その者に急接近する。
「──⁉」
ある程度距離が縮まったところで魔理沙は飛び上がり、その者に向けて御札を振り下ろす。
意表を突いたと思われたその攻撃──
しかし、その攻撃は防がれた。
御札は何かで防がれ、びくともしない。
月明かりがその場に差し、その光景が鮮明になっていく。
そこに居たのは、薄い黄色の髪をした、魔理沙と年が近いような見た目の女。
彼女が持つ銃の銃身によって、御札は防がれていた。
彼女はその長い銃身で御札を振り払い、続けて魔理沙に向けて蹴りを放つ。
それを魔理沙は間一髪腕で受け止める。
「ぐッ……」
だが、魔理沙の体は勢いよく吹き飛ばされた。
彼女の容姿に反して、体の内に響くような重い一撃。
空中で身を翻し、勢いで数メートル程押されながらも魔理沙は地面に着地する。
魔理沙が着地すると、彼女は即座に追撃を行う。
間合いを詰め、至近距離での銃撃を試みる。
だが、距離を詰めてきた敵の攻撃をかわし、魔理沙は腹に向けて蹴りを放つ。
「お返しだッ!!」
蹴りは見事に腹部に入り、彼女の体を吹き飛ばす。
「──ッ」
吹き飛ばされた彼女は、銃を地面に突き立て勢いを殺す。
この場に軽い砂ぼこりが舞う。
両者一度体勢を立て直し、お互い見合う。
「……お前は誰だ?」
その状況で、魔理沙が口を開いた。
「………」
その問いに対して、彼女は少し考えた後に間を空けて答えた。
「──『エリシア』」
ただ一言、エリシアと名乗った彼女は、警戒を解くことなく魔理沙の様子を伺っている。
「何が目的だ?」
それに対して、魔理沙はエリシアに問い掛けることで正体を探る。
それなりの目的があるのだろうと、そう踏んでの問いだった。
「別に……知る必要なんて無いでしょ?何がともあれ私たちは敵同士、だから殺し合う。ただそれだけで十分じゃない?」
その問いにエリシアはそう返す。
長い髪を持つ、コルセットスカートと白い洋服の彼女─
その目に映るのは、ただの一人の敵。
それに同情など要らない。
「ハッ……つれねぇなぁ」
わざとらしく、魔理沙は言った。
だからそちらもそれ相応の殺意で答えよと、そう言っているのだろう。
お互い、再度構える。
魔理沙は八卦炉を、エリシアは銃口をお互いに向ける。
一発の銃声と、一筋のレーザーにより──
戦いの火蓋は、再び切られた。
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