幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

33 / 68
この頃あまり場面が変わっていなかったため、ようやく状況が動いたような気がしてます。


急襲

『ログ』

そう名乗った目の前の男は、こちらの動きをじっと観察しているようだった。

 

こいつは何者なの……?

 

四天とは何?

 

何が目的?

 

こいつを揺さぶって少しでも情報を……

 

 

(こいつくらい、猟犬だけで十分だろ)

「……っ⁉」

そう思ったのだが、結局それをすることはなかった。

 

 

(いや、そんなことをしている場合じゃない……)

そんな猶予など無かった。

 

一瞬過った考えをすぐに振り払い、急いで考え直す。

 

 

(逃げなければ──)

 

その考えに至るとほぼ同時に、体が勝手に動いた。

『逃げろ』と、生存本能が叫んでいたのだ。

 

「あ?」

その行動にログはそんな声を漏らした。

 

少し離れたところでさとりはログに向けて弾幕を放つが、ログはそれを腕で軽く払う。

 

「はぁ……ったく、めんどくせぇ……」

気怠そうにするログの足元の影が伸び、伸びた影の中から何かが這い出てくる。

 

 

「──っ」

さとりが後ろを振り返ると、数体の黒い獣が追って来ているのが見えた。

 

『ほらほら~、逃げないと死んじゃうかもよ~♪』

 

恐怖を煽られながらも、さとりは走った。

 

 

頭の中にごちゃごちゃとした感情が渦巻く。

怒りと悲しみが、憎しみと絶望が、まだ整理しきれていない現実が煮詰められて、頭に押し寄せて来る。

 

だが、そんな中でも逃げなければいけないということだけはわかった。

それはただの生存本能から来たものなのか、それとも……

 

 

 

(地霊殿(ここ)に逃げ場はない……)

 

捕まるのは時間の問題……

だが、一つだけ道はある。

 

「………」

(行くしか……ないか……)

不本意ではあるが、さとりは決心する。

 

 

さとりは地霊殿を駆け抜け、あの場所を目指した。

 

 

----------------

 

 

「……?」

(何か、音がしたか……?)

 

一方、魔理沙は丁度地上に出てきたところだった。

 

(気のせいか……?)

何かが崩れるような音が聞こえたような気がしたが、軽く見渡しても何も無いため特に気にも留めず、神社へ帰ることにした。

 

 

魔理沙は地を蹴って空へ飛び、神社の方向を確認する。

 

 

神社の場所を確認し、そちらへ飛んで行こうとしたその時だった。

 

 

微弱な魔力を感じ、振り返ると共に──

 

ドンッ、という音が森中に響いた。

 

「──っ⁉」

突如鳴り響いた轟音とほぼ同時……いや、それよりも少し速くに、何か(・・)が魔理沙の頬を掠めた。

 

 

その掠めた部分から血が垂れる。

それと共に、魔理沙は確信する。

(攻撃……⁉一体どこから?)

魔理沙は微弱な魔力を感じた辺りを中心に見渡すが、それらしき影は見当たらない。

 

 

「──ッ!!」

次の瞬間、魔理沙は即座に下降する。

すると、直後に下降した魔理沙の頭上を再び何かが通過した。

 

 

 

(──外した⁉)

 

(何故?狙撃地点も変えたのに……)

 

 

 

「──チッ」

思わず魔理沙は舌打ちした。

 

(危ねぇ……勘で咄嗟に避けたが、避けてなかったら脳天に直撃だったぞ……)

魔理沙の額に冷や汗が出る。

 

(先程の一撃──それはこちらが避けた場合の事も考慮して放たれたものだった)

 

(反応できなかったら心臓、反応したとしても首か頭を撃ち抜ける……)

(最初の一撃は私の反応速度でも試していたのか……?)

確実に命を取ろうとした攻撃に、緊張が走る。

 

 

(まあ……なんにせよ──)

 

 

「そこだな──」

魔理沙は八卦炉を向け、レーザーを放つ。

 

先の一撃を回避しつつ、魔理沙はそれが飛んできた方向を見ていた。

 

 

(森の中──木と木の間に隠れている……)

敵は木の影を上手く移動し、こちらに正確な居場所が悟られないようにしている。

 

 

(──ならば、そこら一帯を根こそぎ薙ぎ払うまで……)

 

魔理沙は自身の周りに弾幕を生成し、レーザーを放った場所の周りに向けて放つ。

数撃ちゃ当たると言わんばかりに弾幕を放ち、隠れられそうな木を減らしつつ、どこに居るかわからない敵へ向けて攻撃をする。

 

 

当たったような感じはしない。

魔理沙は周囲を警戒しながら、下へと降りる。

 

障害物のない上空では、魔理沙は格好の的でしかない。

そう考え、魔理沙はこちらも木の影に身を隠しながら敵の動きを伺う。

 

 

気配を隠すのが上手いのか、敵の位置が特定できない。

 

 

相手方はどうだ?

もうこちらの位置はバレているのか?

 

 

その答えはすぐにわかった。

「──ッ」

再び、勘が告げた。

 

即座にその場から離れる。

それと同時に、轟音と共に先程まで隠れていた木に穴が空いた。

 

 

穴の空いた木はへし折れ、倒れる。

 

魔理沙は即座に弾幕とレーザーで反撃する。

 

すると、お返しとばかりに向こうからも弾幕が飛んでくる。

 

(このまま続けたとしても、埒が明かないか……)

 

(なら──)

魔理沙は飛んでくる弾幕を潜り抜けながら、敵へ接近する。

 

弾幕を放って相手の弾幕を相殺し、合間合間に飛んでくる木を抉った攻撃を避けながら駆け抜ける。

 

(見えた──)

 

ある程度進んだところで、弾幕を放っている者の人影が見えた。

魔理沙は御札を構える。

 

相手は後退して距離を取ろうとするが、魔理沙はさらに速度を上げ、その者に急接近する。

 

「──⁉」

 

ある程度距離が縮まったところで魔理沙は飛び上がり、その者に向けて御札を振り下ろす。

 

 

意表を突いたと思われたその攻撃──

 

しかし、その攻撃は防がれた。

御札は何かで防がれ、びくともしない。

 

 

月明かりがその場に差し、その光景が鮮明になっていく。

 

 

そこに居たのは、薄い黄色の髪をした、魔理沙と年が近いような見た目の女。

 

彼女が持つ銃の銃身によって、御札は防がれていた。

 

彼女はその長い銃身で御札を振り払い、続けて魔理沙に向けて蹴りを放つ。

それを魔理沙は間一髪腕で受け止める。

 

「ぐッ……」

だが、魔理沙の体は勢いよく吹き飛ばされた。

彼女の容姿に反して、体の内に響くような重い一撃。

 

空中で身を翻し、勢いで数メートル程押されながらも魔理沙は地面に着地する。

 

 

魔理沙が着地すると、彼女は即座に追撃を行う。

間合いを詰め、至近距離での銃撃を試みる。

 

だが、距離を詰めてきた敵の攻撃をかわし、魔理沙は腹に向けて蹴りを放つ。

「お返しだッ!!」

蹴りは見事に腹部に入り、彼女の体を吹き飛ばす。

 

「──ッ」

吹き飛ばされた彼女は、銃を地面に突き立て勢いを殺す。

 

この場に軽い砂ぼこりが舞う。

 

 

両者一度体勢を立て直し、お互い見合う。

 

 

「……お前は誰だ?」

その状況で、魔理沙が口を開いた。

 

「………」

その問いに対して、彼女は少し考えた後に間を空けて答えた。

 

「──『エリシア』」

 

ただ一言、エリシアと名乗った彼女は、警戒を解くことなく魔理沙の様子を伺っている。

 

 

「何が目的だ?」

それに対して、魔理沙はエリシアに問い掛けることで正体を探る。

 

博麗の巫女(じぶん)を狙って来たんだ。

それなりの目的があるのだろうと、そう踏んでの問いだった。

 

「別に……知る必要なんて無いでしょ?何がともあれ私たちは敵同士、だから殺し合う。ただそれだけで十分じゃない?」

その問いにエリシアはそう返す。

 

長い髪を持つ、コルセットスカートと白い洋服の彼女─

その目に映るのは、ただの一人の敵。

 

それに同情など要らない。

 

「ハッ……つれねぇなぁ」

わざとらしく、魔理沙は言った。

 

だからそちらもそれ相応の殺意で答えよと、そう言っているのだろう。

 

 

お互い、再度構える。

魔理沙は八卦炉を、エリシアは銃口をお互いに向ける。

 

 

一発の銃声と、一筋のレーザーにより──

 

 

戦いの火蓋は、再び切られた。




感想、コメント等お待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。