ログとエリシアによる襲撃と同刻──
「本当にアイツらだけでいいのか?」
確認のため、そう聞くのは金髪で洋服を着た彼──『フレム』
「彼らが別行動がいいと言ったんだ。どうなろうと、私たちの知ったことではない」
フレムの言葉に返したのは、ボサッとした髪に随分とラフな格好の彼女──『フィティス』
「それよりも、此方は此方でさっさと済ませましょうよ」
フィティスの言葉の後にそう言ったのは、半透明のベールを被り、長い髪と虹のような瞳を持つ彼女──『ミラシュ』だった。
「……天使って、ああいうのばっかなの?」
二人の会話を聞きながら、だぼっとした服の女のような彼──『リュシス』は近くにいる者にそう聞く。
「さあ?あれ以外に知らないから何とも」
それに対し、手袋をした黒髪のスーツの男──『ダイスト』はそう返す。
他愛もない雑談のような会話を交わしながら、彼らは目的の場所へと向かっている。
「はぁ……何で俺たちがこんなことを……」
そうぼやくのは、彼らの先頭を歩く品の良い洋服を着た彼──『アトフィシア』
彼ら六人が目指す場所──
それは吸血鬼の棲む紅い館──『紅魔館』
『悪魔』の彼らは、あるものを求めてそこへ行く。
「丁度手が空いているのが俺たちなんだと──」
ダイストが愚痴を溢すようにそう言う。
「何それ?人のことを暇人みたいに……そもそも、あいつが自分で行けばいいじゃない」
それに対し、リュシスは納得がいかないと言うようだった。
「そんなこと言ってても、何にもならねぇよ」
「とにかく、さっさと用件済ませて帰りましょう」
ミラシュは再度そう言う。
「終わったらどうするの?
ミラシュに対して、リュシスがそう返す。
「そりゃあ、逃げ……いや、できないからこうしているのか……」
フレムが何か言いかけたところで、それに対して自分で解答を見つける。
「みんなでゆっくりご飯でも食べれたらよかったのにね……」
ミラシュは残念そうにそう言う。
それについては皆それぞれ思うところがあるようで、返答は返ってこなかった。
「フィティス、どうだ?」
アトフィシアは立ち止まり、フィティスのことを見てそう聞く。
「……?ああ、成程……少し待ってくれ」
最初は何のことかわかっていなかったようだが、フィティスはすぐにその意味を理解する。
フィティスは目を閉じ、集中する。
「……そうだね、差程距離は無いし……ここから順に見ていっても……」
独り言のように、フィティスは呟く。
フィティスがそれを始めた直後のことだった。
「──っ⁉」
何かを
「……?どうした、フィティス」
アトフィシアが疑問に思い、同じ方向を見る。
それにつられて他の三人もその方向を見る。
「……え?」
リュシスが思わず声を漏らす。
そこに居たのはフレムだった。
最後に見た所と殆ど変わらない位置に居るのだが……
先程との違いを挙げるとするならば、それには──
頭の上半分が無かった。
「フレム……?」
ダイストがその状況に困惑するが、すぐにこうなった原因はわかった。
「「「「──っ⁉」」」」
全員の息が詰まる。
言葉を発せず、ただ立ち尽くすことしかできない。
そんな状況の中──
「あなたたち、私の館に何か用かしら?」
血が溢れ出るフレムの背後に居る者が、口を開いた。
宝石のようなものが釣り下がった羽に、大剣を手に持った少女。
しかし、その圧はただの少女のものではない。
アトフィシアの額に汗が垂れる。
その場に立っていることすらも困難になりそうなほどの重圧。
許しもなく動けば死ぬのではないかという恐怖が、今にも倒れてしまいそうな体を無理矢理にでも立たせている。
「──っ」
そんな中、まず行動を起こしたのはリュシスだった。
「
リュシスの腕より長い袖から煙が漏れ出る。
しかし次の瞬間、突如現れた彼女はリュシスの背後に立っていた。
その直後、リュシスの体が腰から肩にかけて切り裂かれる。
「……クソッ、ミラシュ!!」
その光景がダイストを現実に引き戻す。
「分かってるわよ!!」
ダイストの声にミラシュはすぐに答えた。
直後にミラシュはいくつもの弾幕を放つ。
すると、放たれた弾幕が姿を消す。
「……」
彼女は表情を変えることなく体を反らす。
すると、彼女の近くの地面に突然窪みができる。
彼女がまた一、二歩下がればそのすぐ近くに何かが爆発したかのような窪みができる。
(なっ……見えているの……?)
その光景にミラシュは一瞬困惑する。
その後も、彼女が体を少し動かすと地面にクレーターができる。
ミラシュが放った攻撃は悉くかわされている。
今彼女に襲いかかっているのは無数の透明な弾幕。
なのに、まるでそれが見えているかのように彼女は避けている。
(……何故避けれているのかは分からないけど──)
しかし、ミラシュには次の策があった。
(取った──)
次の瞬間、何もない空間から腕が現れ、重力によって地面に落ちる。
「──グッ⁉」
すると、彼女の前方に突然ダイストが姿を現す。
現れたダイストには片腕が無く、ダイストはその無くなった腕を押さえている。
(クソッ……どうなってんだ……⁉)
(ミラシュの力によってこちらの姿は見えていなかったはずだ……)
(──にも関わらず、こいつは正確に俺の腕を落としてきた……)
(どういうことだ……?それに腕を切ったということは俺の能力を……)
ダイストは今の状況について思考を巡らせる。
ミラシュの能力は『屈折』──
光を屈折させることで人や放った弾幕を視認できなくすることができる。
それだけじゃない……
弾幕の軌道を屈折させることで、自由自在に弾幕を動かせる……
なのに、それすらも分かっていたかのように奴は避けた。
まさか見えているのか……?
一体どうやって……?
それとも、感覚が鋭いだけか……?
いや違う……
感覚だけであんなに綺麗に避けれるとは思えない。
それが勘だとしてもそうだ。
俺の腕を落とした時点で奴は何かしらが分かっていると考えていい。
でも一体どうやって……?
奴の能力か?
だとしたらどういう……?
(いや……考えていても埒が明かない……)
(これは手探りで見つけるしかねぇ)
ダイストは彼女に向けて魔法陣を展開する。
(腕が治るのには少し時間がかかる……それに近接での戦闘で勝てる相手には思えない……)
「
ダイストが詠唱し、魔法を発動しようとしたタイミングでそれは起こった。
彼女がダイストの背後に瞬時に移動し、直後にダイストの頭が左下から右上にかけて出来た赤い線に沿ってずれ落ちる。
その後に、ダイストの残った体が力なく倒れる。
その様子をミラシュは静かに見ていた。
(この短時間で三人が殺られた……残りは私とフィティスとアトフィシア……)
(勝算は薄い……)
ミラシュはそう結論付ける。
そして、ミラシュが出した答えは──
(仕方ない……逃げるか……)
この場からの逃走。
(彼らには申し訳ないが、私も命は惜しいのでね……)
自分の能力ならば可能のはずだ。
先程からずっと木の後ろに私の姿を出している。
これで能力が自分自身には使えないのだろうと思ってくれたらいいのだが……
────────
「それで?あなたたちはこないの?」
彼女はそう言いながら手に持っていたそれをこちらに向けて投げる。
ドサッ、と重い音が鳴ったそれはアトフィシアの足下に転がって行く。
「ミラシュ……」
そこにあるのはミラシュの頭部。
これで四人目、残るはフィティスとアトフィシアのみ。
「怖じ気づいているのですか?」
「……?」
ふと、フィティスがそう言ってきた。
「戦わなければ未来はない。未来は切り開くものだ……でしたっけ?」
フィティスはまるでからかうようにそう言う。
「……お前はどうするんだ?」
「ここまで来たんですよ?最後までご一緒してやりますよ」
何度見ても死ぬ未来以外は見えない。
だとしても、最後まで抗うとしましょうか……
「……そうか」
アトフィシアは一度深く深呼吸をする。
(ごめん……フレム、リュシス、ダイスト、ミラシュ)
怖かったよ。
何もできずに死んでいくのを見るのは……
知ってる奴が目の前で死ぬのを見るのは……
何もできなくて、ごめん。
短い間だったけど……お前らと一緒に居れて良かったよ……
「行くぞ……フィティス」
アトフィシアは構える。
それと共に、アトフィシアの周りに氷の粒が浮かぶ。
「微力ながら、手伝うよ」
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「やはりこちらには気付いていたか……」
金色の髪をした男は、こちらを睨んでそう言う。
目の前にいるのは金色の髪に青い目、上下白を基調とした服を着た雰囲気のよく似た男女。
女の方には白い翼が生えているという違いはあれど、見るに兄妹といったところだろうか?
彩乃は相手のことをじっと観察する。
「お兄ちゃん……」
少女は不安そうに隣にいる彼を見る。
「大丈夫だ、『フェイラ』」
それに対して彼は優しく囁く。
彩乃はナイフを構え、二人に向ける。
「お前のことは、死んでも俺が守る」
そう告げ、フェイラの兄『ラクルス』は、戦闘体勢に入った。
新キャラいっぱい出しちゃった。
そういえば彩乃は久しぶりの登場なのか……
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