幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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気付いたらハロウィンが過ぎていた……


ガラ

「……」

暗い夜道を一人歩く。

風の音だけがこの場に響いている。

 

(そろそろ秋……なのか?)

少し肌寒く感じる風に、正確な時期は分からないがそんなことを思う。

 

さらに歩みを進めていると、やがて広い水面が見えてきた。

湖が見えてきたということは、そろそろ館の方も見えてくるだろう。

 

 

メイと名乗った人物はどこかへと行った。

 

今回の件の元凶とやらの名を告げた後、覚えておくといいと言って、そのまま死体を引きずりながら森の中へと姿を消した。

 

わざわざ追いかけるのも今はしたくないため、そのまま館の方へと戻ることにした。

 

 

フラン(あっち)の方はどうなっているのだろうか?

いくつかあった気配も消えているため、戦闘の方は終わっているだろうが……

 

まあいいだろう。

あれがそう簡単にやられるとは思えないし、先に戻って寝よう。

 

 

そう思った時だった。

 

 

「──お疲れさま」

そう言うフランの姿がそこにあった。

 

「………」

正直言葉を交わす気になれない。

こんな時間に連れ出した上に、客人に戦わせるとは、館の主としてそれでいいのか?

 

「……怒ってるの?」

フランは不思議そうにそう聞いてきた。

 

「うん」

 

 

◆◇◆◇

 

 

それはフランと共に館へと戻っている時だった。

 

「止まって」

急にフランは腕を横に伸ばして彩乃を制止する。

 

それに対して彩乃は、一歩程進んだところで止まった。

急に止められたためにフランの腕に少しぶつかった彩乃は、フランの方を見る。

 

 

「………」

彩乃とフランが立ち止まってからほんの少し経った頃だった。

地をえぐるような轟音と共に、二人の目の前に何かが物凄いスピードで降り立った。

 

 

「いってぇ……」

 

「もう少し丁寧に下ろしてくれない?」

 

舞い上がった砂煙の中から、そんな声が聞こえてくる。

 

砂煙は次第に晴れ、その中から二人の人物が現れる。

その片方が、こちらを見て口を開いた。

「彩乃……」

 

砂煙の中から現れたのは、ボロボロになった魔理沙だった。

 

「何でこんな時間に外にいるんだ?夜遊びか?」

「違う」

魔理沙のそんな第一声に彩乃は即答した。

 

 

「随分と派手にやられたわね」

そんな中にフランが割って入るが、それに魔理沙は何も答えなかった。

 

 

「へぇ……やっぱりあなたが関わっているのね」

そこへ地面に倒れているさとりがさらに割り込んでくる。

 

「あら、元気そうじゃない」

嫌味でしかないであろう言葉を、フランはさとりに投げ掛ける。

「あなたこそ、まだくたばっていなかったのね」

さとりは悪気しかない言葉を返す。

 

 

はっきり言って空気が悪い。

あまりよくない空気感が、周囲に漂っている。

 

「お、落ち着けよ……ここで言い争っても何も良いことは無いだろ?」

その様子を見て、この場では一番重傷の魔理沙が仲裁に入る。

 

 

「……」

さとりは無言で魔理沙のその様子を見る。

 

「……はぁ、仕方ないわね」

フランはその意図を汲んで、静止する。

 

 

魔理沙のその行動で、この場は一旦収まった。

 

 

◆◇◆◇

 

 

朝──

 

 

「………」

少女はその者を前に、言葉を失った。

 

「これは……その……ちょっと、ボーッとしてたっていうか……」

その者──博麗魔理沙は言葉を濁す。

 

 

魔理沙の全身に張り巡らされている絆創膏の数々。

それは単に転けたなどでは言い訳できない程のものである。

 

そして、その姿を見る少女──アリスにはその怪我の理由が分かっていた。

 

 

「ごめんなさい」

アリスは咄嗟に頭を下げた。

 

「お、おい……」

頭を上げろと、今にもそう言いたそうな声が聞こえてくる。

 

だが、アリスはその頭を上げなかった。

「私の……せいです……」

その声はか弱かった。

風が吹けば掻き消されてしまいそうなほどに、弱々しい声だった。

 

「私がいなければ……こんなことには……」

それは全ての責任は自身にあると、そう言っているような言葉だった。

 

 

「違う、襲ってきた奴等の目的は私たちだった」

魔理沙は諭すように、言葉を続ける。

 

戦った相手について、アリスにはもうわかっているのだろう。

ならば変に隠す必要はない。

 

「いずれ戦うことになる相手だった。お前のせいなんかじゃない」

 

「それに言ったろ?私は博麗の巫女だってな」

 

「私を……私たちを頼ってくれていいんだぜ?」

 

 

「なっ」と言って魔理沙が振り返ると、後ろにいた彩乃とさとりは揃って魔理沙から目を逸らした。

「そこは『もちろん』って言うところだろ⁉」

魔理沙がツッコミを入れるも、二人は依然として目を逸らしたままだった。

 

(ダメだこいつら)

──と魔理沙が内心呆れていると、小さな声が魔理沙の耳に入ってきた。

 

「……か?」

 

 

「……いいんですか?頼っても……」

アリスは聞いた。

震えながらも、勝手に口が動いていたのだ。

「ああ、いくらでも頼ってくれ」

 

 

「……いいんですか?巻き込んでも……」

こんなことに巻き込んでもいいのだろうか?

自分に関わらなかったら、傷かずに済むかもしれないのに……

 

「いいぜ、私は構わない」

 

 

「私なんかを……助けてくれるんですか……?」

 

出会ったばかりの自分に、そこまでしてくれるとでも言うのか?

勝手に巻き込んだというのに、それを責め立てはしないのだろうか?

 

 

「私たちが、助けてやる……だから、お前の知っていることを話してくれ」

 

「──っ」

その目は本気だった。

魔理沙の意思が、決意が、その目からは伝わってきた。

 

「………」

アリスは少し間を空けて、口を開いた。

 

 

「あいつらの目的は私です」

その言葉を告げたアリスの目からは、僅かながらも決意を感じた。

逃げずに立ち向かう、決意があった。

 

「恐らく、今回はその邪魔になりそうな魔理沙さんたちを先に排除しようとしたんだと思います」

「お前は何で狙われているんだ?」

 

「……わかりません」

 

「でも、私を何としてでも手に入れたいのは事実だと思います。あいつらに軽い怪我を負わされることはあっても、殺されそうになったことは無いんです」

 

「つまり生け捕りということね」

さとりがそう言うと、アリスは「恐らく」と返した。

 

 

「私を狙う者たちは、悪魔と天使の二つの種族の者」

 

 

「そして、その二種族を率いているのが──」

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

「そうか、至極どうでもいい報告ご苦労だったな」

 

「「………」」

 

目の前に広がる空間のその奥、他より数段程高い位置にある玉座の前に立ち、こちらを見下すように見る者が一人。

 

「確かに、貴様らに命じたのは博麗の巫女とやらの抹殺のみ、そこにいる妖怪に関しては何も命じていない」

 

 

「だが、対峙しておいて逃げられたとはどういうことだ?」

 

「何故逃がした?」

 

「何故殺さなかった?」

 

「よもや、思っていたよりも手強かったなどとは言わないだろうな?」

「そんなくだらん言い訳などしないよな?」

 

 

「たかが下等な妖怪一匹すらも殺せんとは……なあログ、まさかそこまで腕が鈍ったのか?」

 

「それとも貴様の怠慢か?」

「驕った挙げ句に逃がしたのか?」

 

「使えない奴だとは思っていたが、貴様はいったい何ならできる?脆弱な妖怪一匹すらも始末できん貴様が……」

 

「それとも何だ?」

 

「せめてもの我への反抗のつもりか?」

 

「──エリシア」

 

「そんなに我のことが憎いか?」

 

「だからか?」

「わざと手を抜いたのか?」

 

「そんなに我のことが憎いのであれば、直接殺しにくればいいだろうに……脆弱で軟弱で臆病な貴様では無理か?」

「そんなだから今こうなっているということを理解したらどうだ?」

 

「お前は他の奴よりはマシだから置いてやっているんだぞ?」

「別に今すぐお前を殺してもいいんだぞ?代えなんぞいくらでもいるのだからな、ログ」

 

「どうした?何か言ったらどうだ?」

「反論の一つや二つでもしたらどうだ、エリシア」

 

「だんまりか?」

 

「……まあいい。貴様らが何かほざいたところで、耳障り以外の何者でもないからな」

 

「それはそうと、もう少し危機感とやらを持ったらどうだ?」

「貴様らのような貧弱で軟弱な有象無象の雑種どもも、ある程度の位や格を与えてやれば、幾分はマシになると思ったんだがな……」

 

「貴様らもツドラも、まるで使い物にならん」

 

「他の連中は言うまでもない。使えない奴は何処までいっても使えないただのゴミでしかないのか?」

 

「だがまあ安心しろ、端から貴様らには何も期待はしていないからな」

 

 

玉座の背後にある大きなステンドグラスから光が差し込む。

光は玉座の前に立つ者の姿を露にしていく。

 

所々黒の混じった金の長髪、そのうちの一束をサイドにまとめた、男か女なのかも分からぬ者──

ログやエリシアとは違い、洋服ではなく、首から膝の辺りまである前掛けに、袖や裾の広い和や華のような服。

灰の目はその冷酷さを、黒の服はその重圧を引き立てているようだった。

 

「次はない。もし逃げ帰ってくるくらいなら、そのまま死ぬがいい」

 

最後に一言、『ガラ』はそう吐き捨てた。




超おまけ(ハロウィン過ぎてるけど……)


「よおエリシア、トリックオアトリート」
ログは笑顔を作ってそう言う。

「dead or dead」
「どっちも死じゃねーか⁉」

「はぁ……何の仮装をしているの?」
見たところログに変化は見られない。
いつもの服装のログだ。

「ん?悪魔の仮装」
「つまり何も仮装していないと」

「いいだろ別に。それよりも、渡すものがあるだろ?」

「鉛玉?」
「いらねーよ!!」


超おまけなので細かいことは気にしないでください。
感想、コメント等お待ちしてます。
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