幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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冬だけどアイス食べたくなる時ってありますよね


氷の世界

「……」

魔理沙は縁側に腰掛け、空を見上げる。

すると、遠くの方に今にも雨が降り出しそうな黒い雲の塊が見えた。

 

 

ログ、エリシアによる襲撃から一週間程が経った。

今のところ、新たな被害は無い。

 

体の方は傷も癒え、骨の方も何とか直せたため、ほぼ完治したと言ってもいいだろう。

 

この数日は何も無い日々だった。

敵が来ることもなく、気味が悪いくらい何事も起こらなかった日々。

そんな日が続けばいいとは思うが、そんなに上手く行かないのが現実だ。

 

だから、味わえる内に……しっかりと平和を噛み締めて置くとしよう。

 

 

そう、思っていたのだが……

 

 

 

────────

 

 

 

「おはよう、彩乃」

朝、咲夜に連れられダイニングへと行くとそこにはフランの姿があった。

 

ニコニコと、嫌な笑みを浮かべたフラン──

「……」

その顔を見ただけで、彩乃は全てを察した。

「もう言わなくてもわかるわよね?」

フランの方も、ついにそんなことを言い出した。

そんな顔をしていたら、嫌でも分かる。

 

 

「一時間後、湖へお願い」

彩乃は端的にそう告げられる。

予想通りの事態、もはや何も言葉が出なかった。

 

「そっちは……?」

念の為そう聞くと、フランは少し笑って答える。

「私は少し用事があるから、一人でお願いね」

雰囲気で薄々気づいていたが、予想通りの返答が返ってきた。

 

 

この間の件と言い、面倒事がよく起こるなと、そう思った。

 

 

咲夜に料理が並べられた席に案内されそこに座ると、入れ替わるようにフランは立ち上がった。

 

「あなたも大分体の調子を取り戻してきたでしょう?」

「リハビリの相手にはちょうどいいんじゃないかしら?」

そう言ってフランはこの部屋を後にし、咲夜の方もアリスを呼びに行ったのか部屋を出て行ってしまった。

 

その後一人残された彩乃は、黙々と朝ご飯を食べることとなった。

 

 

◆◇◆◇

 

 

アリスは窓の外をじっと見ていた。

別に何か面白いものがある訳ではない。

ただじっと、窓の外にある湖を眺めていた。

 

 

一時間ほど前、咲夜さんに連れられて朝ご飯を食べに行った時に、先にご飯を食べている彩乃さんを見た。

すぐに食べ終えて、何も会話することなくどこかへ行ってしまったけど……これから何かが起こりそうな、そんな顔をしていたのが見えた。

 

その姿を見て、申し訳なく思った。

 

私のせいで、みんなが戦うことになっている。

私がみんなを巻き込んだのだ。

私にも、何か出来ることがあれば……

 

そんなことを思いながら、アリスは外の景色を見ていた。

 

はぁ、とやるせない気持ちをため息と共に吐き出す。

 

「……?」

アリスの吐いたため息は白く、自身のため息の大きさが目に見えてわかった。

 

(寒い……)

 

視覚的に気温の低さを理解した途端に、体で感じている温度もみるみる低くなっていく。

いつの間にそんなに冷え込んだのだろうかと思いつつ、アリスは咲夜に何か温まるものでも貰おうと、部屋を出た。

 

 

────────

 

 

「へぇ……お出迎えってこと?」

白い羽を生やした彼女は、空の上からその者を見下すようにそこにいる。

 

霧の湖上空──

そこには一人の天使がいた。

薄い水色の髪をした、一人の天使が──

 

「で?誰なの?」

湖の縁からこちらを見上げる者へそう聞く。

 

 

「人に名を聞く時は自分から名乗るものじゃないの?」

すると、名も知らぬ彼女からそんな言葉が返ってきた。

 

 

経験上、そんなことを言う奴はちょっと面倒くさい。

彼女は「はぁ……」と大きなため息をつく。

 

話も進まないだろうし、仕方ないか……

 

「四天が一翼──ツドラ」

ツドラはただそれだけの軽い自己紹介で済ます。

 

「さあ、あなたも名乗りなさい」

こういう時、普通は片方が名乗った場合もう片方も名乗るものなのだが──

「ハハッ、あっそう」

そう言って、その者はいきなり弾幕を飛ばしてきた。

 

(何よそれ……折角私が名乗ってあげたというのに……)

ツドラはそれをかわし、すぐにその者と距離を詰める。

 

 

「なら、口を裂いてでも聞かせてもらうわ」

 

 

────────

 

 

アリスが紅魔館の中を彷徨うこと数分、アリスはついにその姿を見つけた。

 

 

「咲夜さん!!」

その名前を呼ぶと、その人はこちらへと振り返った。

 

「あら、どうしたのかしら?」

 

「少しお部屋が寒くて……」

──と、それだけしか言っていないのに咲夜さんは察したらしい。

「……そう、何か温かい飲み物でも淹れるわ」

急なことだったのに、咲夜さんは笑顔で対応してくれた。

 

「ありがとうございます」

そうして、厨房へ向かう咲夜さんの後ろを着いて行こうとしたら、咲夜さんは急に立ち止まった。

 

「そういえば、お嬢様から伝言が……」

「?」

 

「外は危ないので外出しないように、と」

 

 

────────

 

 

「……」

彩乃が後ろに飛んで距離を取ると、次の瞬間先程いた場所に巨大な氷柱が刺さる。

 

「ほらどうしたの?逃げてばっかで──」

ツドラは拳を握り締め、地面へ振り下ろす。

 

地面がひび割れ、クレーターが出来上がると共にその表面を覆うように氷が張り巡らされる。

円の外周は鋭い氷が張られ、その先端は外側へと伸びている。

 

 

「空に飛んで逃げたらどう?それとも飛べないのかしら?」

ツドラが大きく翼を広げ、前方へ向けて力強く羽ばたかせると、その直線上に氷の道が出来上がる。

 

 

(先程から氷を使った攻撃ばかり……能力は氷に関するものだろうか?)

彩乃はツドラの攻撃から、能力の予想を立てる。

 

まだ様子見、四天というものがどれ程のものなのかを知りたい。

 

「──っ」

彩乃がチラリと横を見ると、ツドラが作った氷の道が湖にまで達しているのが見えた。

 

「よそ見なんてしてる場合?」

ツドラがそう言って殴りかかってきたが、彩乃はツドラの腕を弾き、バランスを崩したところへ蹴りを入れる。

 

「……っ」

ツドラの体が浮いたところへ、彩乃はすかさず弾幕をぶつける。

 

「チッ……」

少し吹き飛ばされたツドラは舌打ちをした。

(こいつ……)

 

変な感覚だった。

まるで何かしらの催しで私だけが張り切っているような、他の奴にとってはどうでもいいことを一人頑張っているかのような感覚。

本当に癪に障る。

 

ツドラは左足を上げ、勢いよく地面を踏みつける。

 

ツドラの左足を中心に氷が広がり、地面から氷の槍が突き出す。

彩乃は氷の槍を避け、再びツドラに接近して弾幕を放つ。

 

ツドラは即座に自身の前方に氷の塊を生成して、弾幕を防ぐ。

 

弾幕は爆ぜ、氷が砕け散る。

空に砕けた氷の欠片が飛散する。

 

砕けた氷に光が反射し、輝く空間を突き破って、拳がツドラに迫ってくる。

 

バキィィッ、という音が響く。

ツドラは自身の腹に向かって飛んできた拳を、氷を纏うことで防ぐ。

 

──が、その衝撃が体中に響く。

 

「──っ」

ツドラの体は湖の方へと吹き飛ばされる。

 

ツドラは空中で身を翻し、即座に水面を凍らせて着地する。

だが勢いによって体はすぐに止まってはくれず、始めに着地した地点から十メートル程の長さのある抉れた氷の道が出来てしまった。

 

「思っていたよりはやるわね……」

ツドラは体勢を立て直し、彩乃の姿を視界に入れる。

目立った外傷が無ければ、疲れている様子もない。

 

次にツドラは周囲を見渡す。

そこにあるのは、辺り一面に広がる広い湖の水面。

その光景を見て、ツドラは少し口角を上げた。

「それにしても、わざわざ狭いところで戦うなんて嫌よね──」

 

「折角広い場所があるというのに……!!」

 

 

「『氷々極冷世(ひょうひょうきょくれいよ)』」

 

その言葉と共に、ツドラに大量の魔力が集まり、十分に溜まったところで一気に解き放たれる。

魔力は冷気となり、湖を凍らせていく。

 

 

巨大な湖は一瞬にして、広大な氷の大地へと変貌した。




おまけ

人物紹介コーナー(ミニ)──
襲撃組『フィティス』
未来を喰らいし悪魔という二つ名を持つ、人の未来(寿命)を喰らい、悠久を生きる悪魔。
ラフな格好は長く生きている内にその方が楽だと思ったから。
生贄を捧げれば、その者に訪れる未来を教えてくれるとか……

感想、コメント等お待ちしてます。
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