幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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もう少しでクリスマスですね


変化

夜が明け、新たな朝を迎えた三人は揃って朝食を食べていた。

 

 

「……」

三人の朝食は黙々と進む。

 

 

彩乃とエリシアも、何も言わずに並んで食べている。

特におかしなところは無い光景。

 

 

──なのだが、魔理沙にはどうにも気がかりなことがあった。

 

 

「お前ら、距離近くなってないか?」

 

 

◆◇◆◇

 

 

「言ったでしょう?意外なことがあるかもって」

「意外な……ねぇ……」

意外どころではないと思うのだが……

 

 

エリシアの紹介に来た魔理沙たちの様子を、彩乃とフランは少し離れたところから見ていた。

 

 

「久しぶりだな、アリス」

「お久しぶりです魔理沙さん……と、えっと……」

 

「エリシア」

 

「あ、初めまして……」

 

 

「……」

「ど、どうかしましたか?ジーッと見て……何か顔に付いていますか?」

 

 

「……思っていたより小さいわね」

「えっ⁉」

 

 

エリシアとアリスが話している中、魔理沙はフランの方へと歩いてきた。

 

「アリスに関してこれと言った変化は無いわ」

魔理沙が何か話す前に、フランが先に口を開いた。

 

「咲夜の話でも、普通の少女という感じね」

「そうか……」

 

「本当、よくできていると思うわ」

 

 

「それよりも──」

フランはアリスからエリシアへと視線を移す。

 

「自分を殺そうとしてきた者を救うとは……何か思うところでもあったのかしら?」

 

「……」

そう言われ、魔理沙もエリシアを見る。

 

 

「──かもな……」

 

 

◆◇◆◇

 

 

一時間後──

 

長机を囲むように、魔理沙、彩乃、エリシア、アリス、そしてフランが席につき、咲夜はフランの側に立っている。

 

どうやら魔理沙が全体で今回の件について話し合いたいと言ったそうで、フランによってその場が設けられたらしい。

 

 

「まず、魔理沙に代わり私から──」

 

 

「お集まりいただき感謝いたします」

フランは立ち上がり、軽く頭を下げて言った。

 

 

「今回皆様に集まっていただいた理由はもうお分かりかと思われますが、改めてご説明いたします」

 

 

「先日、魔理沙がアリスと出会ったことから始まった今回の一件──」

 

「正確に言えば、予てより幻想郷に蔓延る三大異変──その一角」

「その事での、対策、及びこれからについての話し合いの場となります」

 

「簡潔な説明故、詳細を省いたことをお詫び申し上げます」

 

「それではこれより、各人による情報共有、及び意見交換を始めさせていただきます」

フランは再度頭を下げてから、席についた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

話し合いは一時間以上は続いた。

主にエリシアの情報を元に、魔理沙とフランが今後の動きについて提案する。

 

 

だがそんな中、自分の知っていることは全て言ったアリスと、特に話すことの無い彩乃はただ聞いているだけだった。

 

 

「──まあ、相手がどう出るのかが分からない限り、作戦通りにいく保証はできないわね」

「そのためのお前だろ」

フランの言葉に魔理沙はそう返した。

 

 

「私から言えることは、お互いの戦い方を理解することをおすすめするということだけ」

 

「作戦通りにいけそうなのか、そうじゃないのかを教えろって言っているんだよ」

「はぁ……せっかちね……」

フランは面倒くさそうに答えた。

 

「そんなに生き急がなくてもいいじゃない」

「そういうことを言ってる場合じゃねぇんだよ」

 

 

「……じゃあ断言してあげる。作戦通りにはいかないわ」

 

「は?」

魔理沙は思わず声が出た。

「いくら作戦を練ったところで無駄。勝つことだけを考えた方が賢明よ」

 

「だから……勝つための作戦を考えているんだろ?」

訳がわからないと魔理沙が思っているであろうことは明白だった。

 

「魔理沙、あなたは敵の何を知っているの?」

「……?」

 

「何も知らない。あなたが知っていることは人伝に聞いた情報のみ」

「憶測だけで作戦を練ったところで、上手くいく訳が無いでしょう?」

 

「エリシアならもう分かっているでしょう?あなたは直接それを見て、さらに言えば実際に体験しているのだから」

魔理沙はエリシアの顔を見る。

エリシアのその顔は暗く、どこか諦めたような雰囲気もあった。

あまり思い返したくのない記憶なのだろう。

 

「……多分、無理」

少し間が空いて出された答えはそれだった。

「あの時の私に、神算鬼謀の策を練られる頭脳があったとしても、多分負けてる」

「底知れない……策では埋められない実力差があった」

 

「私も……死んでも勝つという考えで戦った方が、まだ希望はあると思ってる」

 

実際に戦ったことのある者の言葉──

それはこの場の誰よりも重いものだった。

 

「……だけど、ガラよりも私が警戒しているのはカリエルの方。あいつが戦っているところを見たことがない」

何の情報も無い相手と戦う。

それを考慮すれば、ガラよりも戦うリスクは大きいだろう。

 

 

皆、口を閉じた。

考えられる策が無かった。

 

少なくとも、実力が未知数の者が二人いる。

相手の能力も分かっていない。

相手に今どれだけの戦力があるのかも分からない。

 

対してこちらは戦える人数が限られている。

 

魔理沙、フラン、咲夜、彩乃、エリシア。

狙われているアリスの護衛に咲夜を付けるとしたら、残りは四人。

 

さとりはあまり戦闘に向いていない。

人里にいる小傘は戦力外。

 

他に協力してくれそうな人物なんて、この幻想郷にはいない。

四人で出来る策なんて限られている。

 

 

絶望的状況──まさにそれが相応しく感じた。

 

 

「あの……私も何か力になれませんか?」

静まり返ったこの空間で、アリスが口を開いた。

 

この状況での力になるという発言は、自身も戦闘に加わるということを意味する。

「ダメだ。敵が狙っているのに、その根城に連れていくような真似はできない」

そのため、魔理沙は即座に反対した。

「いいんじゃないかしら?戦力は多いに越したことはないでしょう?」

対してフランはそれに賛成した。

 

「冗談はよせよ、フラン」

 

「冗談?寧ろアリスは適しているんじゃないかしら?この際はっきり言ってあげた方がいいんじゃない?」

「お前……」

 

「これ以上そのままにしておけば、何か不都合が生じる場合だってあるわよ?」

 

「だとしても──」

「それは本当に優しさなの?」

 

「あの……お、落ち着いて……」

状況を理解できていないながらも、アリスは二人を制止しようとする。

 

「……好きにしろ。だが、私は止めたということを忘れるなよ」

そう言って、魔理沙はこれ以上フランに何か言うことを止めた。

 

 

「見苦しい姿を見せてしまったわね……」

フランは改まってアリスを見る。

「アリス、これはあなたにとって辛いことかもしれない。それでも、あなたはそれを知るべきだと私は思うの──だから、聞いてくれるかしら?」

 

「……はい」

フランの口から告げられることへの恐れからか、自身にとってとても重要なことだろうと予想する直感からか、アリスの体は無意識に引き締まった。

 

 

「単刀直入に言うわ──」

 

 

 

「あなたは悪魔や人間……さらに言えば生物(・・)ですら無いわ」

 

 

 

「え──?」

その言葉をすぐに理解することは、アリスにはできなかった。

 

「あなたは生命体ではない。霊とも違う──」

「あなたが最も近い存在を挙げるとするならば『魔物』かしら」

 

「魔物……?」

 

「魔物……正体はログが作り出した獣を象った魔力の塊」

「それが……私が一番近い存在……?」

 

「こんな時に言うことになってごめんなさい。いつか言おうと思っていたのだけど、そのタイミングが無くて」

「いつから……気付いていたんですか?」

 

「一目見た時から」

 

「みんな……私が生物じゃないって知ってたんですか?」

その質問に誰からも返事は貰えなかったが、それでもその答えは分かった。

 

「何で……みんな……」

 

「じゃあ、私は……何ですか?」

 

「私は一体、何者なんですか……?」

 

 

「魔力と情報の塊──」

「肉体を作っている魔力に、アリスという情報を詰め込んだ存在。それがあなたよ──」

フランは淡々と言葉を続ける。

 

 

「つまり、ガラがあなたをキーと呼ぶ理由は──」

「アリスの中にある情報……!」

フランが言う前に、エリシアの口からその言葉が出た。

 

「──そう……ガラの目的はアリスではなく、アリスの中にある情報」

「極論、それが手に入るならばアリスの生死は関係無いでしょうね」

 

「だけど、今までアリスを襲った奴らがアリスを殺そうとしなかったというのなら、敵はアリスの中の情報を取り出す手立てを見つけられていないのかもしれないわね」

 

「なるほど……それだったら殺すという、最悪情報を失うかもしれないリスクを取らないのも納得ね……」

エリシアはフランの予想から、今まで疑問に思っていたことの説明がついたようだ。

 

 

だが、アリスはまだ理解が追い付いていないようだ。

「情報って何なんですか……?」

「本当に私は……ただの魔力の塊なんですか……?」

 

「お腹だって空きますし、眠くもなります。それなのに私は……生物ではないのですか……?ただの魔力の塊なんですか?」

 

 

「……」

困惑するアリスの様子を見て、フランは何かを取り出した。

フランが取り出したものは、片手に収まる程の小さな物体。その小さなガラスの筒に、金色の糸のようなものが入っている。

 

「髪……?」

アリスはそれを見て、そう反応した。

フランの持っているガラスの筒に入っているものは、視界に入り込む自身の髪の毛の色と同じだった。

 

「この館には優秀な魔法使いが居るの」

「咲夜を通して調べてもらったの、勝手にごめんなさいね」

 

 

「結果としては、これは魔力で構築されている」

「毛先が魔力でできている生き物なんて、身体全てが魔力でできているような生物で無ければ、普通あり得ない。そして、この髪の毛から何らかの術式の一部が見つかったらしいわ」

 

「これが確固たる証拠。あなたが空腹を感じるのも、睡眠を欲するのも、恐らくそういうプログラムが作られているからでしょうね……」

「生物として違和感の無いようにするためか、結果としてそうなってしまったのか……それは制作者にしかわからないことでしょうね」

 

 

「……」

アリスは納得したような、諦めたような表情をしていた。

言葉では言い表せない思いが、アリスにはあるのだろう。

 

 

「アリス、あなたの中には魔術の情報が含まれている」

「あなたは感覚的に魔法を使っているのでしょうけど、頭の中を探せば魔法の知識はいくらでも出てくるでしょう?」

 

 

「……つまり、私も──」

戦うことができるのかと続く前に、言葉は途切れた。

 

言い終わる前に、迷いがアリスを止めた。

自身に戦える力があると喜ぶ心と、自身が魔力の塊なのだと認めたくない心がせめぎ合っている。

 

戦う力──

それは自身にある魔術の情報。

自分が魔力と情報の塊であるが故に有するもの。

それを自分の力だと認めれば、魔力と情報の塊であることを認めるのと同じだ。

 

どうすればいいのだろうか?

整理しきれない。

他の皆だったらすぐに答えを出せていたのだろうか?

 

私は……

 

 

「それはあなたの好きなようにしたらいいわ」

「恐らくあなたは殺されないだろうけど、それでも安全を取るのか、それとも敢えて危険に身を投じるのか」

「魔力と情報の塊と言えども、あなたには意思がある」

 

「どうするかは、あなたが決めるべきよ」

 

私の……意思……

 

意思って……何?

これは……私が今こうして思考しているこれは意思なの?

 

私は……魔力の……塊……

 

私は生きていない……

 

生きていないのなら私は何?

生きている?生きていない?

 

分からない……

 

私は……私は……

 

いくら考えても疑問しか湧いてこない。

情報を呑み込むのだけでも、頭がはち切れそうな程だった。

困惑と混乱が頭を支配する。

 

そんな中だった。

 

「……フランさん、一ついいですか?」

「ええ、いいわよ」

 

「私は……今こうして話している私は……何で生まれたのですか?」

口が勝手に開いた。

言おうと思っていなかったのに、勝手に動いていた。

 

「……あなたの中の情報を守るため、守人としての人格でしょうね」

「そう……ですか……」

「だから私は、逃げていたんですね……」

止まってくれない。

言葉が口から溢れ出てくる。

それでも、止める気はしなかった。

 

「逃げなければならないと、まるでそれが自分の使命かのように……どこか感じていました」

 

「訳もわからず逃げていたことに、差程疑問を抱かなかった。自分の中にある魔法の知識に、何の疑問も抱かなかった」

「そういうものなのだと思っていた」

 

……そうだった。

最初から疑いもしなかった。

 

それなのに、私は魔力の塊じゃないと否定するのか?

それが何よりの証拠だった。

私がここまで歩んできた道が、一番の根拠だった。

 

 

「フランさん、私も戦います」

「こんなところでくよくよしてる時間なんてありませんよね……」

「元々、私が皆さんを巻き込んでしまったんです。それなのに一人安全な所で見ているだけなんて嫌です」

魔力の塊であることを否定する必要は無い。

だから、私を止めないで──

 

「みんな、傷付いてまで戦ってくれています」

「命を懸けてくれています」

 

「どこの誰なのかも分からない私に、優しくしてくれました」

「人間でも、生物でもないってわかっているのに、優しくしてくれました」

 

「嬉しかったです。ただの魔力の塊の言葉ですが、これは本音です」

「だから、恩返しをしたいです」

 

「何で私に意思があるのかは分かりませんが……意思があるのならば、見て見ぬふりはできません」

 

アリスの目に、覚悟が灯った。

明確な意思がそこにはある。

 

「本当にいいのか?」

魔理沙はアリスに聞いた。

「それは無理して決めた答えなんじゃないのか?」

 

「いいえ、私の意思で決めました」

「言いたいことはわかります。さっきまで動揺していたのに、急にそれを受け入れたと思ったらこんなことを言い出すなんて……おかしいと思いますよね」

 

「私だっておかしいと思います」

「でも、おかしくないとやっていられないんです」

 

「落ち込んだら終わりなんです」

「落ち込んだら、自分はただの魔力の塊だと認めることになる。それが嫌なんです」

 

「魔理沙さんは分かっていたのに、私を人として扱ってくれた」

「それを否定したくないんです」

 

「だから、言ってください」

「これは作られた意思じゃないって、私の……心からの思いだって」

あるかも分からない心臓がバクバクする。

虚勢だって、そんなことは自分が一番分かっている。

泣きたい、それでも涙を必死に堪えている。

 

もう魔力の塊でも何でもいい。

だけどせめて、意味のある何かになりたい。

 

 

「……そこまで言うなら分かった。でも、危ないことはするなよ」

「はい、わかってます」

こうして、アリスが戦闘要員として加わることになった。

 

 

「これで役者は揃ったわね」

「私を含めて七人(・・)、少数精鋭というものかしら」

「……七人?」

この場にいるのは合計で六人であり、その言葉をアリスは不思議に思った。

 

「アラ、モシカシテ私ヲ戦力トシテ数エテイルノ?」

その言葉と共に何も無い空間が裂け、その中からぬるっと何かが姿を現した。

 

「うわっ⁉」

その光景にアリスは思わず声を上げた。

「良イ反応スルジャナイ、ソコノ吸血鬼トハ大違イネ。気ニ入ッタワ」

リアクションを取ったせいでアリスは気に入られてしまったようだ。

 

「私ガイルコトニ気付ククライナライイノダケド、出テクルタイミングマデ言イ当テラレルト嫌ニナルノヨネ」

わざとフランにも聞こえる位の声量で紫は言った。

 

 

「タイミングはバッチリよ、八雲紫」

嫌味のようにも聞こえるその言葉でフランは返した。

 

「ハァ……マアイイワ、サッサト用件ヲ済マセマショウカ……」

 

 

「敵ノ本拠地ノ場所ガ分カッタワヨ」

 

「本当か?」

その言葉に、魔理沙が一番に反応した。

「エエ、エリシアノ情報ヲ元ニ探シテアゲタワ。イツデモ行ケルワヨ」

 

 

「なら、突入は明日だ。今日の残りの時間は各々準備と身体を休めることに専念してくれ」

「「分かったわ(分かりました)」」

魔理沙のその案に、この場の全員が同意した。

 

 

「ジャア、伝エルコトモ伝エタシ、私ハコレデ──」

「……で、結局お前は戦わないのか?」

紫はそのまま去ろうとしたのだが、その前に魔理沙が呼び止めた。

 

「エエ……デモ、オ手伝イクライハシテアゲルワ。ダカラ、巻キ込マレナイヨウニネ」

「……?」

最後にそんなことを言い残して、また何か言われる前に八雲紫は去っていった。

 

やはりどこまでも掴み所が無く、訳のわからない奴だなと、その光景を見て彩乃は思った。

 

 

「さて、予定も決まったことだし、今日はお開きにして明日に備えるとしましょう」

キリのいいであろうところで、フランは全員に向けてそう言った。

 

 

「一応今夜は泊めてあげてもいいけどどうかしら?」

フランは彩乃とエリシアにそう聞いた。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「同じく」

 

「魔理沙はどうするの?」

「……私は色々と準備があるから神社に戻る」

 

「そう……なら、明日の朝紅魔館(ここ)に──」

「分かった」

軽く返事をして、魔理沙は早々に部屋を出た。

 

 

「……魔理沙さん怒ってます?」

「あれは多分怒ってるわね」

 

 

◆◇◆◇

 

 

深夜、紅魔館の廊下で二人はすれ違った。

 

 

「ついて行こうか?」

彩乃は彼女にそう聞いた。

 

「いや……いい。一人で大丈夫」

「これは私がやらなくちゃいけない問題よ」

「……?」

 

「アリスのあの姿を見て、私も変わらないといけない気がした」

「変わる……あれは気が動転していただけじゃないか?」

アリスのあれは、気の迷いや勢い余って出た言葉としか思えなかった。

その後の変化も、言ってしまった言葉を取り消すことができずに、若干自暴自棄になっていただけのように思うのだが……

 

「どっちでもいいでしょ、結果としてアリスは変わったのだから……それじゃ、明日の朝に。おやすみなさい」

そう告げて、彼女は去って行った。

 

 

────────

 

 

『変わる』

そのきっかけなんて何でもいいのかもしれない。

 

無意識の内に、その瞬間は何か意味がある時じゃないといけないと思っていた。

何かが成功したら、あるいは失敗したら。

そんな大きなきっかけが必要なのだと思った。

 

 

アリスの変化──

自身の正体を知ったという大きな出来事こそあったが、そこに至るまでに何か大きな心境の変化があったようには思えない。

 

きっとあれは勢いで言った言葉だ。

状況を理解仕切れず、混乱する頭が弾き出した突拍子もない回答。

 

無理矢理にでも理解する。

諦めて受け入れる。

言葉はその二つの行動を促した。

 

深く考えた上での行動ではなく、頭が早く楽になろうと考えての行動。

それでも、それがアリスにとっての変化のきっかけとなった。

アリスはその変化を受け入れ、自己として認めた。

 

なら私も、これで変わることができるだろうか?

 

 

それにしても──

 

「今夜はよく人に会うわね」

 

一人外へと向かうエリシアは背後から気配を感じ、一度立ち止まる。

 

 

「どこに行くのかしら?」

背後から聞こえてきたのはフランの声だった。

 

 

「……決別に」

 

 

「景気づけに頼むわよ?」

 

 

「任せて、真っ赤な花火を打ち上げてあげるから」




エリシアと彩乃の距離が近くなった理由は、お互いに話が合うからだそうです。
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