よし、ここは難しい方の弐を使ってみよう。
─弐─
(なんか、かっこいいな……)
『お前が……お前が……』
『──逃すつもりはないわ。ここで裁く』
『せいぜい地獄で悔いることね……』
───────
「……」
目を開けると、今の感情とは正反対の澄んだ青い空が視界の端で顔を覗かせている。
体を起こすと、離れた所で魔理沙が掃除をしているのが見える。
(……)
体が若干痛い。
あれだけ走ったせいだろうか?
どれほど時間が経ったのだろうか?そんなことを考えていると魔理沙がこちらに近づいてきた。
「よお、起きたか」
「…どれくらい経った?」
「ん?あー、2時間くらいだな」
「まあ、それよりも、腹減ってるか?」
昼時だからと、そう聞いてきた。
「いや、別に──」
断ろうとしたその時、グーッとお腹が鳴った。
「……」
「ちょっと待ってな……」
魔理沙はそう言って、部屋の中へと入って行った。
◆◇◆◇
少しすると、魔理沙はおにぎりを乗せたお盆を持って戻ってきた。
「ほらよ」
魔理沙が差し出したお盆を受け取る。
「……いただきます」
ここに来て初めて食べる食べ物。
若干の不安はあったが味は普通においしかった。
「なあ」とおにぎりを食べていると魔理沙が声をかけてきた。
「お前、どっか行く当てはあるのか?」
「……」
少し考えるも思い当たる節はなかった。
「無いのか……どうするんだ?」
「……野宿でもするさ」
「ああ……当てが無いなら家に泊まっていくか?」
「いや、いい。そこまでしてもらう義理は無い」
魔理沙の提案をきっぱり断る。
「いや、そうもいかねぇよ。外は危ないし、このままお前を野宿させる気は無いしな。また襲われたりでもしたら目覚めが悪くなる」
どうやら魔理沙はこちらを野宿させる気はないらしい。
正直野宿するつもりだったが「野宿する」なんていくら言っても聞き入れることはないだろう。
「はぁ…わかった……」
渋々、魔理沙の提案を呑んだ。
「そうとなったら、部屋を用意しないとな」
◆◇◆◇
「…ここかな……」
魔理沙の目の前にあるのはまるで物置のような部屋だった。
「…どこで寝るんだ?」
部屋の中には雑貨によくわからない小物等々、とりあえずこの部屋に置いてあるような感じだった。
「…片付けするか……」
魔理沙はこちらをチラッと見ている。
それはまるで「手伝って」と言いたいような目だ。
「……」
「この量は一人じゃ大変だなぁ」
チラッと見てくる。
「……」
「だ、誰か手伝ってくれないかなー」
チラッと見ることをやめ、魔理沙はジッと見てくる。
「…はぁ……」
「ありがとな」
片付けを手伝わされることになった。
◆◇◆◇
「こんなものか……」
かなり時間をかけたが、片付けが終わった。
ゴチャゴチャしていた部屋は見違えるほどに綺麗になった。
「おー、ずいぶん片付いたなぁ」
魔理沙が片付けられた部屋を見て感心している。
「……」
まるで一仕事したというような顔をする魔理沙をあきれた目で見る。
「な、何だ……?」
「──途中からお前手伝ってねぇだろ」
◆◇◆◇
机に夜食が並べられている。
「いやー、お疲れさん」
「……」
「あ、あの部屋は好きに使ってくれていいからな」
ちょっとだけ気まずい空気が漂う。
「ごめんって……」
「…今日はしっかり休めよ」
「……わかってる」
特に話す話題が見つからず淡々と食べ続ける。
「……ああ、そうだ。明日、人里に行くからな」
「人里?」
「ああ、ちょっと買い出しにな」
「……わかった」
そうこうしているうちに夜食を食べ終わった。
「ごちそうさま……」
◆◇◆◇
寝る準備を終え、布団の中へ入る。
外は暗闇に包まれ、静けさだけがそこにある。
この世界はあの世界と違う──
だけど、根本的な部分は変わっていない
そんな気がする。
「……」
自分はここに居てもいいのだろうか……
この世界にいる必要はあるのだろうか?
なぜこの世界に来たのだろうか?
どうやって?
誰が?
何のために?
複雑な感情が内に渦巻く。
「私は……」
「?」
その時、床が抜けたかのような、空に投げ出されたかのような浮遊感に体が包まれる。
そしてそのまま、抜けた床に……
否、裂けた空間に飲み込まれた。
寝床を襲うタイプの誘拐犯
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