幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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明けましておめでとうございます。
今年も、幻想滅失録をよろしくお願いします。


運命の日

「運命は不変ではない」

 

「運命というものは変えられるものである」

 

「変えるために必要な材料は行動であり、その者の意思」

 

「意思というものは覚悟であり、決意であり、時には殺意であり、憎悪でもある」

 

「着飾らなくてもいい……不格好でも、醜くても、それが意思というものであり、運命を変える原動力である」

 

「行動が変われば未来が変わる。未来が変われば運命も変わる」

 

「選択というものは人生の中にある未来への分かれ道」

 

「運命というものは道中ですれ違う旅人」

 

「運命は常に選択の先にある」

 

 

「今宵は二人、運命が変わった」

 

「そして明日、世界の運命が大きく変わる」

「今宵変わった運命が、その変化にどれ程の影響を与えるか……」

 

 

----------------

 

 

朝日が昇り、世界を照らす。

楽園は今日も、変わらぬ日々を始めようとしていた。

 

 

「咲夜」

フランは側にいるメイドに話し掛ける。

「はい」

メイドはそれに返事を返す。

 

「あなたには行ってもらいたい場所があるのだけど」

「お嬢様のご命令とあらば何処へでも──」

 

「フフッ、そう言うと思ったわ」

 

「あなたに頼みたいことは二つ──」

「一つはその場所に行くこと、そしてもう一つはそこにいる彼女の手伝い」

「場所はここに記したわ」

フランは懐から一枚の紙を取り出し、咲夜に渡す。

 

「ここは……」

咲夜は紙に書かれた場所を見て、そう言葉を漏らす。

「少し悪いことをしてしまったようだから、そのお詫びよ」

 

 

「よろしくね、咲夜」

「はい、お嬢様」

 

 

◆◇◆◇

 

 

「これで全員?」

紅魔館の前に降り立つ魔理沙の姿を見て、エリシアはそう呟いた。

 

この場にいるのは、魔理沙、フラン、咲夜、彩乃、エリシア、そしてアリスの六人。

 

魔理沙は周りを見渡して、この場に全員がいることを確認する。

「ああ、全員揃っている。後は──」

確認を終え、六人は彼女が来るのを待つだけだった。

 

 

「準備ハイイカシラ?」

そんな場に八雲紫がスキマから現れる。

 

「お前はもっと早く来いよ」

魔理沙は最後に現れた紫に愚痴を溢す。

「少シクライイイジャナイ」

 

 

「それじゃあ、行ってくるわ」

フランは咲夜にそう告げる。

 

「行ってらっしゃいませ」

主へとそう返した咲夜は、次に魔理沙たちを見た。

 

「あなたたちも、後武運を」

 

 

────────

 

 

空間が広がるこの場所に、その者は一人佇んでいる。

 

「我はいずれ全てを手に入れる」

 

「天を、地を、その全てを統べる王となる」

静けさが広がるこの空間では、その声が普段より響くように聞こえる。

 

その者は空間の中央へと歩みを進める。

「キー……それがあれば……」

あれを手に入れる。

後はそれだけだ。

 

中央で立ち止まり、一度上を見上げる。

周囲には柱が立ち並び、重厚感やある一種の神秘性を見る者に感じさせる。

 

 

「しかし、よく邪魔が入るな……」

 

 

その者を──ガラを囲むように、柱の影から人影が現れる。

 

現れた人影は五つ。

それぞれが魔力を溜めたり、武器を構えてこちらを狙っている。

 

 

「……」

 

まず放たれた二対のレーザーを、ガラはその軌道を見ることなくかわし、直後に飛んできた弾丸を体を軽く反らして避け、同時に飛んでくる弾幕を片手で防ぐ。

大剣による一閃をスレスレで避けると、お返しとばかりに蹴りを放つ。

 

 

剣を盾にしてフランは直撃を避けるが、それでも勢いで体は後ろに吹き飛ばされる。

 

 

「クソッ……」

(完全に不意打ちだったろ……)

魔理沙はこの事態に不満を漏らす。

 

全員、気配は消した。

完全なる不意打ち。

気付かれていたとしても、どれか一発は当たる想定だった。

 

(フランがああ言うだけはあるか……)

 

体勢を立て直すと、皆次の攻撃へと移る。

 

「よってたかって、この程度か……」

エリシアが、彩乃が、アリスが、フランが立て続けに攻撃をするが、そのどれもがガラにダメージを与えることなく終わってしまう。

 

「何度やったところで結果は変わらんぞ、エリシア」

「クッ……」

エリシアは即座に弾丸を放つが、ガラは容易く弾丸を掴み取る。

 

その隙にフランは背後からガラを狙う。

 

贖罪(しょくざい)(やり)

 

「──ッ」

フランは攻撃を中断し、急に飛んできたそれを防ぐ。

紅い細身の槍がフランに迫る。

 

フランは剣でそれを弾き、すぐにその場から離れる。

 

(……右)

キンッ、という金属音が鳴り響く。

槍は弾かれても、フランを狙うことを止めない。

空中で軌道を変え、四方八方からフランを狙う。

 

フランは迫り来る槍を全て弾き返す。

 

 

一方、アリスは魔法でガラを狙う。

単純だが発動までの時間が短いレーザー。

しかし、アリスの魔法はガラが腕を振っただけで弾かれる。

 

その間に魔理沙はガラとの距離を詰める。

御札を構え、ガラに向けて振るうが、ガラは片手でそれをいなす。

 

「お前が博麗の巫女か……」

「ハッ、私も有名になったもんだな……」

 

「一度どんなものかと見に行こうと思ったのだが、よくわからん奴や邪精霊に邪魔されたことはよく覚えている」

 

ガラは魔理沙の腹に向けて蹴りを放つ。

魔理沙は間一髪でそれを防ぐが、その体は後方へ飛ばされる。

 

実力差

それをこれ程までに実感したことは今までに無い。

 

魔理沙の頬を冷や汗が伝う。

 

 

彩乃はガラの背後から打撃を、エリシアは距離を詰めての至近距離からの発砲を仕掛けに行く。

 

 

「……貴様らをチマチマ相手するのも面倒だ」

 

その言葉と共に、五人の周囲に魔法陣が展開される。

吹き飛ばされている魔理沙はその先に、攻撃を仕掛けようとしている二人にはその進行方向に、フランとアリスは足下に魔法陣が現れる。

 

五人の体は魔法陣の中へと吸い込まれるように入っていく。

 

(転移魔法……⁉)

魔理沙はいち早くその魔法陣の正体に気が付いた。

 

しかし、それに抵抗することはできず、五人は何処かへと飛ばされた。

 

 

 

ドスンッ、と大きな音を立てて槍は地面に突き刺さった。

 

この場にはガラだけが残った。

再び静けさが、この場に訪れた。

 

「少しは楽しめるといいのだが──」

 

 

────────

 

 

ガラとの戦闘と同刻──

 

 

「何であなたがここにいるの?」

彼女はそこに居た者にそう聞いた。

「お嬢様からここに行けと」

 

「あの吸血鬼が?一体何のつもり?」

「あなたを手伝ってやれと申し付けられました」

咲夜は淡々と答える。

 

「ああそう」

それに対し彼女──さとりは適当に返す。

 

『ほら、無駄な時間を過ごしてないでさぁ~』

 

「ええ、分かっているわ」

さとりは目的地へ向けて歩き出し、咲夜は後ろからそれに着いて行く。

 

 

◆◇◆◇

 

 

暫く歩いて辿り着いたのは、あの日のあの場所──

 

 

戦いの跡が残る、地底への入り口があった場所。

 

 

そこに()は居た。

 

 

「よく会うなぁ、妖怪」

後ろを振り向き、彼はそう言った。

「ログ……」

 

ログは次に咲夜の方を見る。

「ん?そっちは初めましてか?」

「ええ、そうね」

 

「そうかそうか、初めましてなら仲良くしようぜ?」

作ったような笑みを浮かべて、ログは言った。

 

「お断りさせてもらうわ」

「──だろうな」

ログは最初から分かっていたというような雰囲気でそう言った。

 

「で?二人して俺に何の用だ?」

 

「聞かなくても分かるでしょ?」

さとりはログを睨んでそう告げる。

「ああ……まあ、そうだなぁ」

 

 

「じゃあ、相手は頼んだわよ」

さとりは咲夜にそう言って、後ろに下がる。

 

「結局逃げてばっかだな、妖怪」

そうログが言い放った瞬間、ログの眼前に無数のナイフが現れた。

 

「──ッ」

ログは即座に影から狼のような獣を出してナイフを防ぐ。

「話してる最中だろォがッ!!」

その叫びに呼応するかのように、影から次々と獣が溢れ出てくる。

 

しかし次の瞬間、獣たちへとナイフの雨が降り注ぐ。

それに対しての獣の反応は三種類あった。

 

 

ナイフをかわす、または弾く

 

ナイフが刺さるが物ともしない

 

ナイフが刺さり、溶けるようにして消える

 

 

(個体差がある?)

咲夜はそれを見て、獣の分析をする。

 

 

(また……)

先程の攻撃と言い、攻撃の予備動作が全く分からない。

ノーモーションで発動するタイプの能力?

それとも、こちらが見逃しただけ?

 

さっきからいきなり現れるナイフは何だ?

空間に関する能力か?

 

対してログも、咲夜の能力について考察していた。

 

(まあ何にせよ……)

「──殺すだけだ」

 

ログの周りに新たに獣が現れる。

咲夜は新たに取り出したナイフを構える。

 

 

こうして、ガラとの戦いの一方で、ログとの戦闘が幕を開けていた。




新年プラス五十話記念でもあります。
ここまで読んでくださっている方々、本当にありがとうございます。
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