幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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紅魔と星聖─弐─

フランがカリエルへと近接戦を仕掛け、そこへ放たれる遠距離からの掩護射撃。

 

 

互いの攻撃が当たることもなく、見事に連携が取れている。

いや、どちらかと言えばフランが完璧にエリシアに合わしているだけだろう。

 

フランは放たれた弾丸を躱し、エリシアに攻撃が当たらないように調節している。

対してエリシアは、フランが斜線上にいてもお構い無しに弾丸を撃っている。

 

 

心の通じた見事な連携と言うより、ただフランが頑張っているだけなのだが、それでもその二人の攻撃は厄介なものだった。

 

 

フランの攻撃は勿論の事、それに対処すべき事柄が増えたことで、先程よりも避けるための動作が増え、こちらから攻撃することが中々できない。

それを解決するため、先にエリシアを潰そうにもフランの間合いを詰める速度が速く、思うようには行かない。

 

 

カリエルは頭部へと飛んでくる弾丸を躱し、後ろへと下がるが、間髪入れずにフランが距離を詰める。

 

 

(このまま行けばジリ貧だろうか?)

 

一番の脅威は依然としてパワーとスピードのあるフランドール。

エリシアはパワーこそあれど、元が銃弾であるため対処は簡単だ。

 

弾丸は速度も上がっているようだが、一直線に飛んでくるのであれば容易に対処できる。

 

 

地面を抉るような弾丸が放たれるが、カリエルはそれを顔色一つ変えずに蹴り飛ばす。

 

「チッ……」

エリシアは更に弾丸を放つも、カリエルはフランと戦いながらそれを躱した。

 

 

(当たらない……)

 

(背中に目でも付いているの?)

背後を狙った攻撃すらも躱され、そんなことを思うエリシアは次に上へ向けて連続で弾丸を放つ。

 

 

何十、何百と弾丸を放つと、エリシアは能力を発動する。

すると、上に滞留していた弾丸が一斉に下を向く。

 

その意図を察したフランはカリエルから少し距離を取る。

その行動から何か来ると考えたカリエルは、同様に後ろへ下がろうとするのだが、何かがそれを妨害した。

 

 

足がその場に固定されたような感覚、それを感じた瞬間にカリエルは目線を下に向ける。

(──氷……?)

目に入ったのは氷漬けになった両足。

 

ツドラと違い、エリシアには氷を操ることはできない。

そのことから、消去法で犯人と思われるのはフランのみとなった。

カリエルは咄嗟にフランの方を見ると、剣から冷気のような白い煙が多少漏れていた。

 

それがフランの能力なのか否か、それを考えるよりも前に、雨は降ってきた。

 

 

カリエルは足に力を入れて氷を破壊し、砕けた氷の欠片の幾つかをフランに飛ばすが、フランは刀身でそれを防ぐ。

 

次にカリエルは上から降ってくる無数の弾丸の対処に移る。

自身との距離が近いものは拳で弾き飛ばし、それよりも離れた位置にある弾丸は拳を振り上げた衝撃波で軌道をずらす。

 

それによってスペースができたタイミングで、カリエルは一気にフランとの距離を詰める。

 

初撃をフランが防いだ時、弾丸の雨は両者を飲み込んだ。

 

一つ一つが魔力や圧力によって強化された弾丸の雨、それが着弾した箇所の地面にはクレーターができていることから、その威力を物語っている。

 

その中に二人は居た。

 

拳を突き付けるとその真横を銃弾が通り、剣を振るうと近くの銃弾もまとめて切り裂かれる。

それでも二人は止まること無く攻撃を続け、弾丸もまた降り注ぎ続ける。

 

フランはカリエルに接近し、剣を降る。

それをいなすと、カリエルは鋭い突きのような蹴りを放つが、その時には既にフランの姿はそれよりも低い位置にあり、フランはそこから剣を振り上げる。

カリエルは身体のバランスを取っているもう片方の足に力を入れ、大きく跳び上がる。

 

だが、それによりカリエルは空中でまともに身動きが取れない状態へと陥る。

 

 

──のだが、それで倒せる程甘くは無い。

空中で身を翻し、カリエルは飛んでくる弾丸を掴み取り、同時に手の届かない位置にある弾丸を蹴り飛ばす。

 

空中で弾丸の対処をしたカリエルは掴み取った弾丸をフラン目掛けて投げると、地面へと着地する。

フランは飛んできた弾丸をまとめて剣で薙ぎ払うのだが、その剣は冷気を纏っていた。

 

「──!」

真っ二つにされた状態で弾丸は凍り、剣を振ることで放たれた冷気はカリエルの頭上へと向かい、そこにあった弾丸を凍らせる。

弾丸は鋭い氷を纏い、カリエルへと降り注ぐ。

 

(氷……フランドールの能力というより、あの剣の力か?)

あの冷気の発生源と思われるものは、フランドールというよりも剣の方だった。

剣が冷気を纏っていたのは、フランドールが剣に付与したのではなく、剣が冷気を生み出していたからだろう。

カリエルはそう考えた。

 

 

結論から言うと、カリエルの読みは当たっている。

この氷はフランの能力ではなく、剣の能力によるものである。

 

この剣の能力の一つ──『熱を操る』

フランはその力で周囲の熱を奪い、極寒の冷気として放つことで凍らせていた。

 

 

そしてそれは、逆も然り──

氷を纏った弾丸を避けたカリエルへと、それ(・・)は放たれた。

 

 

(──炎)

剣は炎を纏い、その炎は剣を振ると共に周囲へと広がる。

弾丸の雨から逃れられぬよう、道を塞ぐように炎は広がる。

 

炎によって退路を絶たれたカリエルへ追い討ちをかけるように弾丸が降り注ぐ。

(恐らくこれが最後の一波……)

先程よりも攻撃が激化し、戦いを一気に詰めに来たように感じる。

 

上から降り注ぐ弾丸に、カリエルは素手で対抗する。

(これが終わると同時にエリシアを叩く)

 

(気配からおおよその位置は分かる)

弾丸の数は時間が進むに連れて次第に減っていく。

まるで残りの秒数を刻むタイマーのように、弾丸は少なくなっていく。

(そして、次に来る攻撃は恐らく──)

 

カリエルはその場から飛び退き、それを躱す。

(フランドールの一閃──)

カリエルの目線の先には、自身が先程居た場所に向けて剣を振るうフランの姿があった。

 

それを背にカリエルは炎の中を突っ切って、エリシアを目指す。

 

 

熱く燃えたぎる炎を意にも介さず進み続け、やがて炎を抜けると、その直線上にはエリシアの姿があった。

その姿を捉えたカリエルは、深く地面を踏み込み、引き金を引かせる間も無くエリシアへと接近する。

 

次に来る攻撃、エリシアの位置、カリエルの予想は完璧に当たった。

カリエルは大きく腕を引き、エリシアの腹へと強烈な一撃を繰り出そうとしている。

 

だが、どんなに優れた教師であっても、子供の行う行動の全てが分かる訳では無いように、ただ一つ、カリエルにとって予想外の事態が起こった。

 

 

「──グッ……!!」

拳は捩じ込まれ、肉の壁を破って体内へと進む。

まともに喰らえばこうなる。そんなことはエリシア自身分かっていたはずだ。

 

しかし、エリシアは躱さなかった。

回避行動を取ると踏んでいたのだが、結果としてエリシアは微動だにせずに真っ向から攻撃を受けた。

 

拳はエリシアの腹を突き抜ける寸前で止まっており、今はエリシアの体内に拳がある状態となっている。

 

(魔力を腹に集中させたのか……)

貫くつもりだったができなかった。

(回避ではなく防御に専念するとは……)

意表を突かれた行動に、カリエルは感心しつつも思考を巡らせる。

 

「──!」

そして今、再びカリエルは驚愕する。

(抜けない──)

カリエルはとりあえず腕を引き抜こうとしたのだが、腕はエリシアの腹に入った状態から動かなかった。

 

身体を貫通しなかったため、腹の中にぐちゃぐちゃになった肉やらが溜まっているのだ。

行き場を失ったそれらがつっかえて、抜きにくくなっているのだろう。

カリエルはそう考えた。

 

 

その時──

ガシッと、エリシアは自身の腹に突き刺さっているカリエルの腕を掴んだ。

カリエルはもう片方の腕でエリシアの頭部を狙うが、エリシアももう一方の手でそれを止めた。

 

「──!!」

(この力は──)

エリシアの掴む手の力が次第に強くなっていく。

逃がさないとばかりに掴むその腕はびくともしなかった。

 

 

「捕まえた──」

エリシアは血の溢れる口で笑顔を作った。

 

 

その瞬間、カリエルは背後から気配を感じた。

横目で後ろを見ると、そこには剣を振りかぶるフランの姿があった。

それと共に、自身に向けていつ放たれたのか分からない弾丸が飛んできていた。

 

 

(誘われたか──)

あの時、フランドールを迎え撃つ選択を取っていたとしても、結局同じことを繰り返すだけだっただろう。

続けてもジリ貧、終わりの見えない泥試合──

それを打開するため、人は行動を起こす。

 

そう、エリシアを先に倒そうとする行動だ。

ここまでエリシアへと向かわせないように、何度も妨害された。

その時訪れた接近するチャンス。

 

これだけ邪魔されたのであれば、エリシア(向こう)へ行かれるのは相当不味い事なのだろう。

人はそう考える。

十分にそう思わせた上で、そのチャンスを演出した。

 

それを好機と捉え、偶然だと勘違いした者はそのチャンスに乗る。

乗らなかったとしても、フランドールとの戦いは終わりが見えない。

耐えきれずに、いずれ行動をせざるを得なくなる。

 

 

しなくては、状況は何も変わらないのだから──

 

 

四方を囲まれたこの状況で、カリエルは微笑を浮かべた。それはまるで、子の成長を喜ぶ親のような柔らかな笑みにも見えた。

 

 

「──ッ⁉」

次の瞬間、エリシアとフランに衝撃が走る。

それと共に、カリエルを囲っていた弾丸が吹き飛ばされる。

 

 

エリシアとフランはすぐにカリエルから距離を取る。

 

ビチャビチャと、エリシアの腹の穴から血が流れ出る。

左手は無い、右手はちぎれかけで力無く垂れている。

 

「治しなさい」

ただ一言、フランは重傷のエリシアへとそう告げる。

「人使いが荒いわね……」

エリシアはフランの方をチラリと見て、そう返した。

一方フランの視線は、カリエルの方を見て動かなかった。

 

「一つ問おう、何の為にお前たちは戦う?」

そのフランへと、カリエルは問いかけた。

 

「……何故、と聞かれても困るのだけど……強いて言うならば、私の進む道にあなたがいたから、かしら?」

 

「私の歩みを妨げるものは全てぶち壊す。それが私の性のようなものなの」

「そうか……エリシアはどうなんだ?」

そういうタイプには見えないけど……と、エリシアがフランに対してそう思っていると、次に自分へと問いかけられた。

 

「……言わなくても分かっているでしょうに──」

最初に一言そう言ってから、エリシアは答えた。

「アイツを……ガラを殺す、ただそれだけ。あなたはきっと、邪魔をするだろうから。その為にあなたを倒す」

吐いた言葉はガラへの憎しみ。

今、こうして戦う理由はそれだけだった。

 

「ほら、答えたわよ。あなたも答えなさいよ」

言い終わると、エリシアはすぐにカリエルにも回答を求めた。自分達だけがよく分からない質問に答えさせられたということが嫌だったのだろう。

 

「私か……」

カリエルに少し考え込んだような間が空く。

 

「私はただ、強き者と出会いたいだけだ」

そして出された回答はそれだった。

「あら、戦闘狂?」

「見方によってはそうかもな。だが私は、武人として強者を求めている」

 

「己を更なる高みへと導いてくれる強者を、私は求めているのだ」

カリエルは言葉を続けながら、フランを見た。

「そして今日、フランドール。お前と出会えた」

「お前もまた、一人の武人なのだろう?」

 

「武人……まあ、その定義次第じゃない?」

「何を以て武人とするか、それ次第では私も武人に当たるのでしょう」

 

 

「……その者が何者であるかなど関係無い。常に高みを目指すという志、それがあれば皆武人なのだ」

「……私が目指すものが高みなのかは知らないけれど、少なくとも私は何かを追い求める旅人ではあると思うわ」

「旅人だって、立派な武人だ。『追い求める』それこそが大事なのだ」

 

「それが無ければ、人はそこで立ち止まってしまう。立ち止まれば、その者に進化が訪れることは無い」

「常にその先へ、より高みを目指す。その志が人を成長させる」

 

「強さを追い求め、武を極めんとする者。それが武人だ」

「だが私は、何かを追い求め、それの為に戦うことのできる者も、一人の武人だと思っている。『己の進化』それを成そうとする者が、真の武人なのだ」

 

「旅人は武人であり、武人もまた、一人の旅人なのだ」

 

 

一度目を閉じ、再度その目を開いた時、カリエルの雰囲気が変わった。

「私はお前に敬意を払おう」

 

「老若男女種族問わず、それが高みを目指す武人であれば、私はそれに応えるのみ」

 

 

「構えなさい、エリシア」

そう言われたエリシアは、言われた通り構える。

その言葉を告げられるよりも前に、既にエリシアにはその緊迫感は伝わっていた。

「ここからが正念場よ」

 

 

カリエルは力強く地面を踏み込み、構える。

その姿は、カリエルの着ている服を神に遣える者の聖なる装束のようでありながら、武を追い求める者の道着のようにも見せた。

 

 

「能力解放──」

 

 

星の海(ウィア・ラクテア)




おまけ

四天にインタビュー!!あの人のことどう思ってる?

エリシア編
ツドラ「クソ悪魔の一匹。親友が死んだ?ザマァww」
ログ「利用できるだけ利用して、用済みになったら後はどうでもいい」
カリエル「相手が自分のことを嫌いだからってあからさまに態度に出さないで、ちゃんと話し合った上で仲良くしてほしい」

感想、コメント等お待ちしてます。
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