「──ぐぁッ!!」
その叫びと共に、大きな衝突音が辺りに響く。
「魔理沙さん!!」
壁に叩きつけられた魔理沙のもとへ、アリスはすぐに駆け寄る。
魔理沙の側に来たアリスは、無事を祈りつつすぐに容態を確かめる。
意識はあるようだが、身体は傷だらけでボロボロ、すぐに回復しようとアリスは魔法を準備する。
「──ッ!!」
その直後、再び大きな衝突音と共に近くの壁にまた何かが飛んできた。
煙が晴れると共に、体に大きな穴が空いた白い羽を持つ天使が落ちてきた。
ドサリと、力無く重力に従って落ちる様は、死んでいるのかどうかを確かめるまでもなかった。
「……」
アリスは恐る恐る、天使が飛んできた方向を見る。
そこには──
傷一つ無い、ガラの姿があった。
----------------
エリシアとカリエルの戦闘と同刻──
「──他の皆さんは何処に居るんでしょうか?」
長い廊下を歩く中、ふとアリスは聞いた。
「さぁな、探してはいるが気配が多すぎる」
その質問に、隣を歩く魔理沙が答える。
「彩乃は見つけにくいし、エリシアは気配を消すのが上手いし、残るフランも意外と魔力を隠すのが上手いから見つけにくいんだよな……」
「──って、全員見つけにくいじゃねぇか……」
魔理沙は頭を抱えた。
これだけバラバラにされた上に、他の全員が探し出すことが困難な人物ばかりだったのだ。
再び集まることは絶望的だと魔理沙は思った。
だが、そんなことを思っている暇は無い。
(それよりも……)と、魔理沙は思考を切り替える。
「他の奴と合流するよりも前に、アイツと出会っちまうか……」
無数に感じる気配の中に、一際異質なものが一つあった。それはどの気配よりも恐ろしく、強大なもの。
そしてこの気配には覚えがある。
「アリス、準備はできてるか?」
通路の先を見据えながら、アリスに聞いた。
「……」
アリスもその気配には気付いていた。
だがそれ故に溢れてきた緊張感で、声は出なかった。
「この先に、ガラが居る」
────────
廊下を進み続け、やがて広い空間に出た所で二人は立ち止まった。
薄暗く、どことなく重い空気が漂う空間だった。
滞留し続ければその空気に押し潰されてしまいそうな、長くは居たくない嫌な空間。
その空間で立ち止まった直後に、二人の横を何かが通り過ぎた。
通り過ぎる、というよりは何者かによって吹っ飛ばされてきたという感じであり、その証拠に壁に激突する音が響いてきた。
「思ったよりは早かったな」
何かを吹き飛ばした張本人は、こちらを見てそう言った。
「「──ッ」」
身体が押し潰されそうな程の凄まじい圧が二人を襲う。
「ガラ……」
この空間の中央に、ガラは一人立っていた。
冷たい灰の瞳がこちらを見つめる。
そこに殺意は感じない。だけど、明確な死を感じる。
まるで死がそこにあるかのような感覚。
殺す意思ではなく、命というものを簡単に摘み取ってしまいそうな、そんな冷たさが宿る瞳。
魔理沙とアリスに緊張が走る。
時間が遅く感じ、緊張はじわじわと高まっていく。
自然と武器を持つ手に力が入る。
「まあ、早かろうが遅かろうがどうでもいいがな」
そんな言葉が、二人の
「──ッ⁉」
魔理沙は即座に振り向きながら、レーザーを放つ。
流れるように放たれた一撃。だがそれは、ガラが少し体を逸らすだけで躱されることになる。
次にワンテンポ遅れてアリスが動くが、アリスの放った魔法は軽く片手で払われてしまう。
続けて、ガラは二人に向けて腕を伸ばした。
その手の先には魔力が溜まっていき、それは今にも放たれようとしている。
『0.2秒』
それは魔理沙の行動とガラの放った攻撃との間の時間。
まず魔理沙が咄嗟にアリスを突き飛ばし、その後魔理沙自身も横へ飛び退く。
その0.2秒後、溜まった魔力は一筋のレーザーとして放たれた。
その光の奔流は、地を焦がし、その先にある柱も壁も関係なく抉りながら突き進む。
後に残るのは、レーザーの通り道の右と左で二分された空間。
「くッ……」
魔理沙とアリスは地面にできた線を挟んで分断される。
だが魔理沙は即座にガラに向き直って、再度レーザーを放つ。
しかし、そのレーザーをガラは片手で防ぐ。
(何だよッ……アイツ!!)
次の瞬間にはガラが接近しており、肉弾戦へと入り込む。
(最初に全員で襲撃した時も思ったが、反応が速い!!)
魔理沙は打撃を繰り出すも、ガラはそれも軽々と躱す。
(その上パッと見でも魔力の量が桁違いだ)
気がつけば溜まっている魔力のレーザーが魔理沙の顔の横を通り過ぎる。
(この魔力量に身体能力……エリシアがああ言うだけはある)
拳を握りしめ、何発も叩き込むがガラはその全てを的確にいなしてくる。
そして出来た一瞬の隙に、膝蹴りを魔理沙の腹に入れる。
「──ガッ!!」
強い衝撃が魔理沙を襲う。
内臓が揺れ、身体の中身が迫り上がってくるような感覚が広がる。
反射的に腹を押さえ、魔理沙は後ろへよろめく。
そこへ振り下ろされるガラの腕。
魔理沙は死を覚悟した。
──が、その腕が魔理沙に届くことはなかった。
「ぐ……うぅ……」
顔を上げると、そこにあったのはアリスの背中。
アリスの正面には防御魔法が張られ、それでガラの腕を止めていた。
しかし、その防御も長く続くものでは無いことは見て分かった。
強力な防御魔法だが、既にヒビが入り始めている。
(重い……最大出力で展開しているのに、防ぎ切れない……)
防御が突破されるのも時間の問題、加えて自分には逃げ場が無い。一瞬でも気を緩めれば、その腕は自身に向けて振り下ろされる。
魔理沙と違ってガラの攻撃を一撃でも喰らえば自分は死ぬ。
魔理沙はミニ八卦炉へ魔力を溜めているが、それよりもガラが防御を破る方が早い。
『どうする』
その言葉が自身の頭で渦巻く。
今何かできるのは自分だけ、自分がこの状況をどうにかしなくてはいけない。
何か別の魔法で対抗する?
いや、新しく魔法陣を展開する暇は無い。
左右か後ろに避ける?
私じゃ避けきることはできない。
何か、何か無いの?
何かする前に死ぬ。
ピキッ
嫌な音と共に、ヒビが更に大きくなる。
(もう、持たない──)
「──ッ⁉」
その時、突然防御魔法に掛かる力が軽くなった。
「ほう……まだ生きていたか」
ガラの視線はアリスを向いていなかった。
視線を横へ向け、その先にいる何かを見ている。
それにつられて、アリスも横を見た。
そこには血だらけで、息を切らしている白い羽の天使の姿があった。
その手には弓のようなものが握られており、再度ガラの方を見ると手には三本の矢が握られていた。
状況から考えるに、あの天使がガラに向けて矢を放ったのだろう。
何はともあれ、アリスは間一髪窮地を脱した。
だが、一息つくような暇は無い。
「そこのあんた達……何ボサッとしてるのよ……」
彼女は新たに手に矢を三本生成し、再びガラを狙う。
「動けるならさっさと動きなさい!!」
その言葉を聞いたアリスは、咄嗟に天使とは逆の方向へと走り出した。
アリスが斜線上から離れたところで、魔理沙の八卦炉からレーザーが放たれる。
それと共に、天使が放った矢がガラを襲う。
ガラは瞬時にレーザーを躱し、飛んできた矢を弾き飛ばす。
これで今行われた攻撃は全て避けたかのように思えたが、何故か攻撃は終わらなかった。
ガラに向けてどこからか複数の瓦礫が飛んでいき、続けて魔力でできた槍のようなものが何本もガラへと向かう。
魔理沙のレーザー、天使の矢、そのどちらでもない攻撃。
それはこの場に新たに何者かが現れたという証拠に他ならなかった。
魔理沙は周囲を見渡し、その何者かの存在を確認する。
(折れた柱の影に一人、死体の山の辺りに一人、気配からして恐らく後二、三人は居るな……)
魔理沙はガラから距離を取りつつ、それを確認すると、アリスの側へと寄る。
「ありがとな、助かった」
「い、いえ。それよりも、あの人たちは……」
「はっ、アイツ随分と恨みを買ってたみたいだな」
先程の天使のみならず、別の天使や悪魔と思われる者も、武器を持ちこの戦場へと加わった。
その光景からガラがどれだけ慕われていないかは明らかだった。
この場に現れた天使や悪魔は、ガラを囲うようにして立っている。
皆武器を構え、魔理沙も八卦炉に再度魔力を溜め始める。
そして、弓を持つ天使が矢を放つのを合図に、一斉攻撃が始まった。
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「ここまでして……何で……」
ガラを包囲して、四方八方から攻撃を繰り出した。
攻撃の種類も一種類じゃない。いくつもの魔法、いくつもの能力をガラに浴びせた。
(なのに……なのに……)
一撃も、当たらなかった。
「『
その言と共に現れた赤黒い剣を、ガラは振る。
すると、衝撃波と共にその先にある壁と悪魔が切り裂かれる。
また一人、やられた。
「うぅ……」
魔理沙の呻き声がアリスの耳に届く。
「魔理沙さん……!」
まだ傷が完全に治っていないためか、魔理沙は薄く目を開けてアリスを見る。
その顔からは、まだ戦うという意思と、思うように動かない身体の葛藤のようなものが感じ取れた。
コツ、コツとガラがこちらへと歩いてくる冷たい音が空間に響く。
「アリス……?」
アリスは魔理沙の前に出て、ガラから庇うように立ち塞がった。腕を精一杯横に伸ばし、震える足を気合いで抑えて立っている。
「……お前は、自分は殺されないと思っているのか?」
その様子を見たガラは数歩前で立ち止まり、そう聞いた。
「……私がいなければ、あなたの目的は達成されないんでしょう?」
アリスは勇気を振り絞って声を出した。
「そうだとして、お前が生きている必要はあるのか?」
「確かに、我の目的を成す為には現時点ではお前が必要だ。だが、必ずお前が生きている必要があるとは誰が言った?」
「……ッ」
アリスの足が無意識に後ろへ下がる。
「我が奴等に殺すなと言ったのは、無駄な手間を増やさない為だ。下手に殺させれば、取り返しのつかないような失態を犯すやもしれん」
「己の価値を過信したな」
ガラは腕を振り上げ、アリスに狙いを定める。
「……ッ」
誰かが声を上げるような暇も無く、その腕は振り下ろされた。
「ほう──」
しかし、その腕はアリスの頭上で止まった。
それはガラが寸前で止めたのではない、正確には、強力な防御魔法で防がれている。
それは先程とは違い、すぐにヒビが入ることなくガラの攻撃を受け止めている。
だがそれと共に、アリスの気配が、雰囲気が変わった。
それはまるで、別人のようだった。
そんなアリスと思われる者はガラに向けて一言放った。
「お久しぶりですね、ガラ」
おまけ
四天にインタビュー!!あの人のことどう思ってる?
カリエル編
エリシア「どう思うって言われても……」
ログ「……嫌い」
ツドラ「いまいち気に入らない」
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