紫「あなたがそうしているんじゃない」
「……は?」
八雲紫から発せられたその言葉に耳を疑った。
それもそのはず、八雲紫という者は幻想郷を誰よりも愛し、守ろうとする存在。
しかし、目の前にいる者から発せられたのはその逆。
世界を、幻想郷を消し去ってほしいという頼み。
自身が知っている八雲紫ならば言わないであろう言葉。
それを目の前にいる八雲紫は言ったのだ、そんなあり得ない状況に言葉を失った。
「……?どうしたのかしら?何も難しいことは言っていないわ。私が言ったのは『この世界を消す』ただこれだけよ?」
「──違ぇよ、その言葉の意味がわからないんじゃない。何でそんなことを言うのかがわからないんだよ」
さながら、「何がわからないの?」と言うような雰囲気の八雲紫に反論を返す。
「なるほど、そう……つまり、理由を言えってことかしら?」
「ああ……」
「そうね……理由……うーん……
「は…?」
思わず声が漏れる。
「何を言っているんだって思っているのでしょう?」
心を読んだかのようにそう言った紫は
「大丈夫、ちゃんと説明するわ」と続けた。
「まず、この世界を消すという私の頼み、これに嘘偽りはないわ」
「文字通り、この世界を消し去ってほしいの」
「私としてもこの手段は取りたくなかったのだけどね…」
紫はボソッとその言葉を呟いた。
「説明した通りこの世界は複数の世界が一つになっている。だけど、世界の融合は終わったわけではないの。世界は今この瞬間にも他の世界を取り込もうとしている」
「どういうわけか、この世界は他の世界と結び付きやすい上に、磁石のように周りの世界を引き付けているの」
「問題はそこにある。引き付けられた世界はこの世界と融合しだし、やがて一つになる」
「──世界の融合で生じる問題は存在の消失だけではないの」
「世界が融合し続けると、やがて世界の膨張が限界に達し、
「…?ほっといても消えるんだったら俺に頼む必要は無いだろ」
その問いに紫は「そう思うよね」というような反応をした。
「
「この世界と融合してしまった世界がもろとも消えることはもちろんのことだけど、私が危惧しているのは世界が崩壊する瞬間のことであり、その後のことでもあるの」
「『世界の崩壊』、それが他の世界にどれほどの影響を与えるのかがわからない」
「何も無いのか、連鎖的に崩壊してしまうのか、それとも崩壊したこの世界の破片みたいなものが、他の世界に影響を与えてしまうのか……」
「下手をすると、他の多くの世界を巻き込みかねない」
「だから、自然に崩壊することを待つというのはかなり危険なの」
紫は「さて」、と手を軽く叩きながら言う。
「ここで、クエスチョン」
「自然崩壊させてはいけないならどうしたらいいかしら?」
「──人為的に消す……」
「そう。何が起こるかわからないなら、少しでも結果や影響がわかりそうな手段にしよう、ということ」
「これが、私があなたに消してほしいと頼んだ理由」
「──以上、質問ある?」と言い紫は話を終える。
「何で俺なんだ?」
「あなたが適任だからよ?」
紫は即答した。
「いや、そうじゃなくて……他に頼めそうな奴はいなかったのか?」
「あーそゆこと」
「それなら、そうと言え」というような感じが紫からするが、特に気にすることなく話を聞く。
「他にも候補はいたわ」
「私が想定しているラインを越えている人はあなた以外にもいるのだけど……」
「いかんせん、話が通じそうにないのよねぇ」
「私だって、関わりたくない人の一人や二人ぐらいいるわ」
「──と、言うわけで基準をクリアしてて、それでいてある程度話の通じそうなあなたを選んだの」
(他の奴らはどれだけヤバイやつだったんだ?)と、内心疑問に思ったが、聞かないことにした。
「……消すしか方法はないのか?」
ふと、そんなことを聞いた。
「……ええ」
「消すしか、方法はない」
「もう、これしか残っていないの」
「私だって、好きでこの手段をとりたいわけではないわ」
「消さなくていいなら、消したくない……」
「救えるのなら、救いたい……」
「何度も方法を考えたし、試したりもした」
「──結局、全部無駄だったけどね……」
「『手遅れ』……この言葉が本当によく似合っているわ……」
「私がなんとかしようとした時点で……いえ、こんな世界になっている時点でもうどうしようもなかったの……」
「最初からすでに手遅れだった……」
「どうやって救うかとか、融合を止めるとかの話じゃない」
「残されているのはどうやって消えるかという選択肢だけ……」
紫の声は物悲しそうだった。
「私の幻想郷はもう手遅れ……」
「だからせめて、まだ救える、未来のある世界を守ることにした……」
「この世界を消し去ることで、ほかの
「私は他の多くの世界を救うことにしたの」
紫はこちらを見る。
「……」
「今ここで無理に決断する必要はないわ……」
「あなたはただ巻き込まれただけ、あなたに強制することはできない。あなたに選ぶ権利がある」
「ごめんなさい、急にこんなお願いをしちゃって……」
「時間がまったくないわけじゃない。どうするかを考える時間くらいある」
「だから、決断を急ぐことはないわ」
紫は再び手を軽く叩いた。
「さ、しんみりとした空気はおしまい」
「そもそもとして、世界を消すかどうかの前にやらないといけないことがあるのよね」
紫の声のトーンが少し上がった。
「そこで──」
「異変解決を手伝ってくれないかしら?」
うへ~ここに書くことが思いつかないよ~
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