幻想滅失録   作:メイア・カルテシア

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頭が痛くなりそうな話が続いてごめんね


賢者─弐─

「異変…解決…?」

「ええ、そうよ。あなたに異変の解決を手伝ってほしいの」

先程とは打って変わった雰囲気で言う八雲紫に少し戸惑う。

 

「幻想郷には、異変が付き物でしょ?」

皮肉のようなことを紫は言う。

「……博麗魔理沙がいるだろ」

博麗の巫女は異変の解決も行っている存在。

ならばと、この世界の博麗の巫女である彼女の名を出す。

「…ええ、確かに異変解決は彼女の仕事でもあるわ」

 

「──けど」と紫は続ける。

「彼女一人じゃ身が持たない」

 

 

「この世界で起こっている異変はとても一人だけでなんとかできるものじゃないの」

どういうことなのか?と紫に聞く。

「この世界で起こっている異変は一つだけではないの」

「複数あるのか…?」

 

「ええ、この世界ではいくつもの異変が起こっている」

「世界の融合の影響ね。融合したことにより、その世界で起こっていた異変もこの世界に流れ着いた」

「流れ着いた異変も様々。細々とした特に害のないものから早急に解決すべき重大なものまで……」

「厄介なものなのよね、異変の元凶がいるものから、異変の影響だけがあるものもある」

 

「影響だけ…?起こしてる犯人がいないと異変は起きないだろ」

そんなもっともと思われる疑問を投げ掛ける。

「そうもいかないのがこの世界なのよ。元凶の存在が消えてしまったせいで異変だけが残ったものに、異変だけがこの世界に来てしまったもの、無意識で異変を起こしちゃっている場合もある」

「無意識で…?」

「ええ、能力を使っていたら気づかぬうちにこの世界に影響を与えてたっていう場合に、この世界に来た時に自分の世界で起こっていた異変を持ち込んじゃったりする場合がまれにあるの」

 

 

「そんなこんなで、この世界では異変が大量に起こってるの」

「まあ、基本無視しても問題ないのがほとんどだけど」

少しのんきそうに言う紫の雰囲気が変わる。

「──そうはいかないものがいくつかある」

そう言う紫の声は少しばかりの怒気をはらんでいた。

 

紫は指を3本立てる。

「今問題視している異変は3つ」

「3つもあるのか……」

そう小言のように言った。

「あら、元々は5つぐらいあったわよ。それは、魔理沙たちが解決してくれたけど」

 

「起こりすぎじゃないか?よく、ここはまだ残っていられるな……」

そんな重大な異変が起こり続けているのになぜ幻想郷がまだ残っているのかと思い問う。

「それはまあ、運がよかったと言うべきか、なんというか……」

紫ははっきりとした答えは言わなかった。

 

 

「まあ、異変については誰かに聞いてちょうだい」

「お前が説明するんじゃないのか……?」

自分で言っておいて話を投げ出した紫に少し困惑する。

「それはまあ、話すと長くなりそうだし、こんな聞き取りにくい声を聞くのも疲れてきたでしょ?決して面倒くさいとかではないわ」

そう言って紫は説明を誰かへと丸投げした。

 

「私がするのは異変解決の手伝いのお願いまで、異変を解決するのはあなたたちの仕事(・・・・・・・・)だもの」

「……最初から手伝わせるつもりだったのか?」

 

紫は一瞬黙ったのち、喋りだした。

「まあ、そうね……候補を選ぶ時の基準にもしてたし……」

「ともかく、異変の解決を手伝ってくれるかしら?」

「なんで、俺が……」

待てよ……

いや、そうだ。そうじゃないか。

おとなしく話を聞いていたが、なんでこちらが手伝うような雰囲気になっているんだ?

「あなたはそれなりの実力を持っている。異変を起こせるほどの力を持つあなたならばきっと異変を解決することだってできる」

 

「異変の解決を手伝うとは言ってない。というより、わざわざこの世界のために何かする義理なんてない」

「そう言わずに頼めないかしら?」

断るも、紫は食い下がってくる。

「何度言われても手伝うつもりはない」

「冷たいわねぇ…」

 

そうだ。手伝う必要なんてない。自分はこの世界とは関係のない人間なんだ。ここがどうなろうとどうでもいいし、手伝ったところで自分に得があるわけでもない。

 

 

「異変の解決はお前らの仕事だろ……」

そう言って紫に背を向け歩き出す。

「帰ったところで、やることなんてないでしょう?」

「……適当にすることでも考えるさ」

そう言って紫をあしらう。

 

 

「この世界はいくつもの世界が混じっている」

「もしかしたら、あなたの欲しい物が見つかるかもよ?」

「……」

その言葉を気にすることなく彩乃は歩を進め続ける。

 

(どうしたものかしら、あの子には手伝ってほしいのだけど……)

(何か……欲しい物じゃない……食べたいもの?見たいもの?会いたい人?いやいや……)

八雲紫は必死に思考する。

(……いや、ここは──)

思考の末、紫は一つの答えにたどり着く。

 

 

「……あなたの知りたいことがわかるかもよ?」

その言葉に彩乃は歩を止めた。

紫はそのことに内心で静かに喜んだ。

 

 

「お前はどこまで知っているんだ?」

「あなたが起こした異変のことは知っているわ」

 

 

「私が知っているのはあの異変のことだけ……」

「……」

あの出来事が頭をよぎった。

あの戦いにその結末……

 

「──傷……」

その時、頭のなかで引っ掛かるものがあった。

 

「あの異変のことは知っているんだよな?」

「ええ」

「なら、その時に負った傷がどうなったか知っているのか?」

「……知ってるも何も、治したのは私よ」

紫は知らなかったの?、というような感じでそう言う。

 

「深い傷を負ったあなたの体を頑張って治してあげたのよ」

そう話す紫は褒めてほしい、というような感じが漂ってくる。

「それだけじゃなくて、あなたがピンチの時も私が助けてあげたのよ」

その言葉を少し考えると思い当たることが一つあった。

「あの時の弾幕……」

──それは、妖怪に囲まれた時に突如として現れた弾幕

 

「あの時は危なかったわね……」

「目覚めたものだから、傷も治ったのだと思ったのだけど……」

「……」

 

その時、あることが気になったため紫に聞く。

「……あの森に送ったのはお前か?」

紫に聞くと返答はすぐに返ってきた。

「?ええ、そうだけど……」

 

 

 

「──死にかけた原因はお前じゃないか?」

 

「……あっ」

 

 

 

次の瞬間、彩乃は無言で紫の方へ駆け出し

──殴りかかる

 

「──おっと」

紫はスキマのなかに潜るようにして、その攻撃を避ける。

 

「危ないわねぇ、そんなに動くと傷が開いちゃうわよ」

スキマから頭を出す紫はまるでもぐらのように、地面から頭を出しているようだった。

「知るか、一発殴らせろ」

紫を目掛け殴るも、次の瞬間には別の場所から頭を出している。

さながら、もぐらたたきのような攻防がしばらく続いた。

 

 

───────

 

 

「はぁ……はぁ……」

紫たたき(もぐらたたき)は彩乃の体力切れにより終わりを迎えた。

 

「ふざけやがって……くそ妖怪が……」

「はぁ……私も、こんなもぐらたたきの叩かれる側なんてやりたくないわよ……」

 

 

「──で、手伝ってくれるかしら?」

紫は唐突に切り出す。

 

「……考えといてやる」

少し考えた後、彩乃はそう返した。

 

「フフ、よほど知りたいことがあるのね……」

紫は満足そうに言った。

「お前には関係ないだろ……」

 

「それもそうね……」

 

 

紫はもといた部屋へとつながるスキマを開いた。

「あれで、部屋へと戻れるわ」

 

 

「……一つ聞いておきたいんだが」

「何かしら?」

「世界を消すなら、なぜわざわざ異変を解決する必要がある?」

「世界を消すにあたって邪魔になりそうな障害を排除するのと、もしもの時のためのリスクヘッジかしら」

「……そうか」

 

「それじゃあ、いい返事を待っているわ」

紫はグッと顔を近づけてそう言った。

「……」

「よろしくね」

 

彩乃は何も言わずスキマへと歩いていった。

 

 

ジッとこちらを見つめているであろう八雲紫からは不思議な感覚がした。

その場にいるのは自身と紫だけのはずなのに、布で隠された顔からはまるで何人もの人から見つめられているような視線を感じた。

 

 

スキマを通ると、布団が敷かれたもとの部屋へと戻ってきた。

 

 

魔理沙(あの子)と仲良くしてあげてね」

紫はそう言ってスキマを閉じた。

 

 

 

 

「はあ、この世界を消せだの、異変を解決しろだの、本当になんなんだよ……」

紫との会話を軽く思い出すも、そんな愚痴しかでてこない。

 

 

 

 

 

もう今日は寝ようと布団へ行くとそれ(・・)に気づいた。

 

 

「──掛け布団……」




彩乃はずっと聞き取りづらい(紫はなるべく聞き取れるように頑張ってるけど)言葉で話を聞いていました。

おまけ
スキマを閉じ、一仕事したと、一息つこうとした時だった。
「ん?」
遠くの方に何かが見える。
それに近づき、なんなのか確認する。

「掛け布団……?」

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