人間牧場化計画を始動したボッカたちを止めるため、ボッカ討伐の下協力するショウマたちとランゴ。彼らの思惑は成功し、決死の想いの中新たな力を得たガヴたちがボッカを倒したと思われた。だがその刹那、ボッカは新たな力に覚醒し、ショウマたちの前に立ちはだかる。
「先々代から頂いた物をここで使うことになるとはね。確か、『ハード闇菓子』だったかな? これのお陰で、この状況を打破できた」
「ハード闇菓子だと?」
「当主だったのに知らないのかい、ランゴくん? 人間とグラニュートのハーフを丸ごと利用した禁断のお菓子さ。口にすれば強大な力を手に入れるが、器が無ければ暴走する代物。幸い、私の器は完璧だったらしい」
「そんなものを作ってたのか、爺さん...」
ボッカが使用したハード闇菓子。それは初代ストマック家当主、ゾンブ・ストマックが実験で生み出していた人工の人間とグラニュートのハーフをその肉体ごと使い、生み出したもの。味と依存性に注力した闇菓子と違い、味と依存性はそのままにこれを食したグラニュートに更なる力を与えるという禁断の菓子。だがその副作用に、力を抑えきれない者は自我を失い、暴走してしまう。
ゾンブはこれを利用し、グラニュート界を裏から牛耳り、支配者として君臨しようと考えていた。だがハード闇菓子が齎す力はゾンブが想定していた以上の物で、実力至上主義のグラニュート界で上位に君臨する者たちに与えても自身が操れるとは思えなかった。その結果、このハード闇菓子の製造を中止。製造方法も闇に葬ったのだった。
今回ボッカが使用したのは、生前ゾンブがボッカを訪問した際に贈呈したもの。その当時はまだハード闇菓子の力を知らず、ゾンブはボッカを傀儡として裏から操ろうと考えていた。だがハード闇菓子の本来の力を知ったゾンブはその計画を破棄し、闇菓子に注力することとなった。
そんな代物を食したボッカは、その力によって更なる力を得た。その力を以て、自身を追い詰めたガヴたち。そして自身を裏切り、背後から斬りつけたランゴをこの世から消すことで自身の覇道の一歩を飾ろうと決める。
「まずは小手調べだ」
ボッカはそう言うと、ガヴたちの前から姿を消す。突然消えたボッカにガヴたちは動揺するも、周囲を警戒する。
すると次の瞬間、ヴラムの側頭部にボッカの右足が炸裂。脳震盪を起こすような衝撃がヴラムを襲い、吹っ飛ばす。その余波で近くに居たガヴとヴァレンが吹き飛ばされる。
「ラキア!」
「まずは一匹」
また姿を消すボッカに、ヴァレンは急いでガヴの下に行き、氷の壁で自身とガヴを囲む。これでボッカが接近しても迎撃が可能だろうとヴァレンは考えたが、次の瞬間氷が全て溶ける。ガヴの熱が及ばないように生成したはずの氷が溶けたことに驚くヴァレンの背後にボッカが立つ。静かにエネルギーをチャージし、裏拳でヴァレンの脇腹を殴る。
「また一匹」
「絆斗!」
一人ひとりと倒れていく仲間たちにガヴは焦る。その様子を見ていたランゴもマズイと考え、ガヴと背中を合わせる。
「俺がシールドを出してやる。奴が攻撃してきた瞬間をお前がやれ」
「ランゴ兄さん...」
「今だけだ。お前がやられればボッカは倒せないからな」
「...わかった」
まさかの共闘にお互い思うところがあるも、自身のプライドを捨ててでもボッカに勝つ。その想いの下、二人は初めての共闘に出る。
しばらくしてボッカがランゴを攻撃する。そのタイミングに合わせて、ランゴは自身の能力であるシールドを展開。それによって一瞬動きが止まるボッカに、ガヴがエネルギーをチャージした右拳をぶつける。これでダメージが入ったと思った二人だが、ボッカの肉体は先ほどと違い無傷。ガヴの熱でも溶けることはなかった。
「同じ手を食らうとでも?」
よく見ると、ボッカは全身に薄くだが自身のエネルギーを纏っていた。それによってガヴの熱を防いだのだ。
動揺するもすぐに切り替え、二人で同時にボッカに攻撃する。だがそれは簡単に防がれ、回し蹴りで二人一緒に吹っ飛ばされる。
「ふむ...さすがに君たちは簡単にやられないね? なら壊れるまで付き合ってくれないかい?」
ボッカはそう言うと二人に急接近し、次々と攻撃を浴びせていく。ランゴがシールドを展開して防御しようとするが、ガヴとの戦いの後遺症で自動展開することができず、攻撃を全て防げないでいた。
また、ガヴのマスターモードを意識しているからかそれに準ずるほどの超高速で繰り出される攻撃は、ランゴの防御をすり抜けていく。徐々に蓄積されていくダメージに、ガヴとランゴの限界が近づいてくる。その様子にボッカは気分が高揚し、更に攻撃の勢いが増す。
「どうした! 貴様らの力はこの程度か! それで私を倒そうとよく思えたな!」
「ぐっ...! おい、赤ガヴ! 何かないのか!」
「兄さんの方こそ!」
「兄弟喧嘩をする余裕があるみたいだね!」
打開策を模索しようとするガヴたちに、ボッカが更に攻撃の手を増やしていく。超高速によって自身の分身を生成し、四方八方から攻撃を繰り出す。これにランゴは自分たちを覆うほどのシールドを生成し、防御しようと試みる。だがボッカの攻撃によりすぐにヒビが入り、数秒で壊れそうになる。
ランゴが生み出した僅かな時間で逆転の一手を考えるガヴ。徐々にヒビが大きくなり、シールドが割れ始める。このままやられるしかない。そう考え、せめてと迎撃の準備をするガヴに、それを見てランゴも大剣を構える。
シールドが割れ、二人に攻撃の手が届くその瞬間、打撃音と共にボッカとその分身が二人の前から消える。一体何事だと思う二人の視界に入るのは、拳を振り抜く拳二とグロッタの姿だった。
「拳二さん!」
「グロッタ...!」
「俺たち抜きでこんなことやるなんてズルいぞ、ショウマ!」
「家族水入らずのところを邪魔したかしら?」
強力な助っ人の登場に希望を見出すガヴと、碌な別れ方をしなかった妹にどう反応すればいいのかわからないランゴ。そんな二人を置いて、拳二とグロッタは自身が吹っ飛ばしたボッカを見る。
「また貴様らか...! 何度私の邪魔をすれば気が済むんだ!!!」
「何度でもに決まってんだろ。この世界はお前のおもちゃ箱じゃない。人間はお前のおもちゃじゃねえんだよ。抗って何が悪い?」
「この私に利用されることは貴様らにとって幸福なのだ! 大人しく闇菓子となるがいい!!!」
「なるかよ、バカ野郎!!!」
激情に飲まれ、超高速で拳二に拳を放つボッカ。それを迎え撃つように拳二も拳を放つ。二つの拳がぶつかり、衝撃波が起こる。
自身の攻撃を平然と受け止める拳二に、ボッカは更に怒りが積もり、ぶつけている拳からエネルギーを放出する。これで少しはダメージが入るだろうと思われたが、拳二の瞳が赤く光るとボッカのエネルギーが離散し、無防備になる。その隙に拳二は拳を振り抜き、その勢いを乗せて浴びせ蹴りを食らわせる。蹴りを食らったボッカは地面に叩きつけられ、砂の味を味わうこととなるボッカ。その屈辱に拳を地面に叩きつける。そんな姿を見ながら距離を開ける拳二。その拳二の下に、ガヴたちがやってくる。
「ありがとう、拳二さん!」
「まだ終わってねえ。こっから一気に行くぞ、ショウマ!」
「うん!」
「久しぶりに兄妹でやるわね、兄さん?」
「グロッタ...そうだな」
ボッカとの最終決戦に、ガヴと拳二。ランゴとグロッタでそれぞれペアを組む。そしてボッカが倒れている間に倒そうと、四人が駆けだす。それを認識したボッカは、自身の能力を最大出力で使用する。
「貴様ら全員、私の前にひれ伏すがいい!!!」
ボッカの声と共に周囲の大気が振動する。その力は先ほどよりも強く、ガヴも止まってしまう。同じくランゴとグロッタも止まってしまい、そのまま地面に膝を着いてしまう。
だがただ一人拳二には効かず、そのままボッカに向かってくる。それを見たボッカは立ち上がり、超高速で拳二に接近。お互いの拳が繰り出され、ぶつかる寸前にボッカは移動して拳二の背後から殴り掛かる。それを察知して裏拳を放つ拳二だが、それを見てまた移動し、ボディブローを叩き込んでくるボッカ。
初めて攻撃が入ったことでボッカは自身の作戦が通用すると確信し、更に速度を上げて攻撃を繰り出していく。人体の弱い部分を攻めてくるボッカの攻撃は、着実にダメージを蓄積していく。この状況を打破するために、拳二は自身の頬を思い切り殴る。突然の行為に周囲は驚き、ボッカは嘲笑う。
「血迷ったか!」
「その血が必要なんだよ!」
拳二はそう言うと、自身の口から流れる血を右手で拭い、その血濡れた拳でボッカの顔面を殴る。クリーンヒットしたボッカは吹っ飛ばされ、それと同時にガヴたちに掛かっていた大気の振動が止まり、自由に動けるようになる。その様子に吹っ飛ばされたボッカは、何故動けるのか理解できないでいる。
「何故だ!? 何故私の能力が効かない!?」
「俺の血でお前を殴ったことで能力を消したんだよ」
「貴様の力か...!」
「どうやってその力を手にしたか知らねえが、過ぎた力は身を滅ぼす。もう限界が来てるだろ?」
拳二の言うことは当たっており、ボッカの理性は徐々に薄れていた。怒りに身を任せ、その激情を拳二にぶつけていたが、それと同時に理性を失い始めている。それは闇菓子バーの副作用であり、いくら器が大きくてもその力を急に使えば、器が持たない。自身の限界が近いことをボッカは認めようとしなかった。
「そんなはずはない...私は選ばれシ者...この力ヲ制御できルはずダ...!」
自覚したことで急激に症状が進み、徐々に呂律が回らなくなっていくボッカ。それを認めようとせず、力任せにエネルギー弾を放出する。だがそれをグロッタとランゴが切り裂き、拳二とガヴが殴って消し去る様を見て、ボッカは絶望する。
その絶望がトリガーとなり、ボッカの視界が濁っていく。その色は闇菓子と同じで、彼は本能で自身の末路を自覚する。
「リ、ゼ...ル......」
最愛の娘の名を呟き、ボッカの瞳が黒く濁る。首を垂れ、彼の意識が消え去る。そんなボッカに、ガヴとランゴは倒したかと思うが、拳二とグロッタは警戒を解かない。むしろここからが本番である。
「...来るっ!」
「ガァ!!!」
突然拳二の目の前に現れ、切り裂こうとするボッカ。拳二はその腕を掴み防ぐが、その力は先ほどと比べ物にならないもの。理性というトリガーを失うと生物は100%の力を出すことができる。リミッターが外れたボッカの力は、拳二に冷や汗を流させるほどのもの。
しばらく抑えていた腕に力を入れるボッカ。もう持たないかと避ける準備をする拳二だが、次の瞬間自身に掛かっていた力が急になくなる。何が起きたのかと思う拳二とボッカ。その視線の先は、肘から先が無くなっているボッカの腕だった。
「案外柔らかいのね?」
「なるほど、切り刻めばいいのか」
「すごい、姉さん!」
ボッカの腕を切断したのはグロッタだった。
彼女は自身の鎌を思い切り振り、ボッカの腕を切断。その感触に、肉体の強度はそこまで増したわけではないと理解し、対抗策を思いつく。
「なら四肢を切って動けなくすればいいのね」
「そこにショウマと俺でトドメ。いいな、それ」
「しくじるなよ、赤ガヴ」
「そっちこそ、ランゴ兄さん」
ボッカの動きを封じ、その隙にショウマたちがトドメを刺す。作戦を立てた拳二たちは早速行動に移そうとする。だがボッカが起こした行動に、作戦の変更を強いられる。
ボッカは切断された前腕を持ち、断面を合わせる。すると音を立てながら傷が治っていき、1秒ほどで元の状態に戻った。グラニュートが持つ高い再生力も強化され、たとえ身体が欠損しても部位があれば治ってしまう。これに拳二はどうするべきかと考えるが、グロッタとランゴが前に立つ。
「やることは変わらないわよ。切るだけ」
「切った後は消せばいいだけだ。造作もない」
「久しぶりに合わせるわよ、兄さん!」
「ああ!」
二人はそう言うと、ボッカに向かって駆ける。二人を迎え撃つボッカは、エネルギー弾を四方八方に飛ばしながら分身を繰り出してくる。それを二人は息の合った連携で切り裂きながら進んでいく。
エネルギー弾をランゴのシールドを纏った右腕で態と受けたグロッタは、それによって吸収した衝撃を足から放出。勢いを乗せて分身を切り裂き、ボッカ本体に近づく。
ランゴは背中から翼を生やし、その翼からソニックブームを発生させてエネルギー弾を消滅させる。そしてエネルギーを纏わせた大剣で分身を両断し、本体へと接近する。
本体まで迫った二人は、同時に武器を振り下ろす。ボッカはそれを腕で受け止める。互いの力が拮抗するが、徐々にグロッタたちの刃が腕に食い込む。そして二人は武器にエネルギーを籠めると、思い切り振り下ろす。それによってボッカの両腕が切断され、宙に舞う。更に切断した腕を二人は切り刻み、再生を不可能にする。
腕を失ったことに怒るボッカは、獣の様な唸り声を上げながら足にエネルギーを纏い、二人に回し蹴りを放つ。それをランゴが大剣にシールドを纏わせて防ぐ。
「グロッタ!」
「ええ!」
ランゴが合図を出すとグロッタは空中に跳び、鎌を構える。刃にエネルギーが注がれ、巨大なエネルギー刃を形成する。そして衝撃を放出しながら振り下ろし、ボッカの両足を切断。ボッカは切断された足を再生しようとするが、ランゴのシールドが足を囲い阻まれる。シールドの範囲が徐々に狭まっていき、圧縮された両足はシールドと共に消滅した。
「今だ! 赤ガヴ!!!」
「今よ! 拳二!!!」
準備は整った。後はトドメを刺すだけ。
二人は拳二とガヴに合図を出し、ボッカの傍を離れる。その先にはそれぞれ拳を構え、力をチャージする拳二とガヴの姿があった。
「「これで終わらせる!!!」」
『アメイジングミバースト!』
チャージを終えた二人は、地面を蹴りボッカへ向かう。四肢を切断されたボッカはそれでも抵抗しようと胸部にエネルギーを溜め、極大のレーザーを放つ。レーザーが二人を飲み込もうとするが、ランゴのシールドが多重展開され防がれる。シールドはレーザーを割きながら展開されていき、その後を二人が駆け抜ける。
ボッカはレーザーの出力を上げ、シールドを壊そうとする。それによってヒビが入るが、シールドが破られる直前、ランゴとグロッタがボッカの胸部を切り裂き、直ぐに離れる。それによってレーザーが消え、胸部に大きな切り傷をつけられる。
抵抗する術を無くしたボッカの眼前に二人の拳が迫る。拳がボッカの顔面を捉え、地面に叩きつける。その衝撃で地面にクレーターができる。
「ガァ...グァアアアアアア!!!!!」
ダメージが遂に限界を迎え、ボッカの顔にヒビが入りそこからエネルギーが溢れていく。やがて全身にヒビが回ると、あふれ出すエネルギーがボッカの身体に収束し、爆発する。
遂にボッカを倒した拳二たち。それを実感したと同時にガヴの変身が解ける。そこに吹っ飛ばされた絆斗とラキアが爆発音に気づき、ショウマたちの下に駆けつける。そこにグロッタも合流し、五人で喜び合う。
そんな中、ランゴは一人笑い声をあげる。そんな彼に、拳二たちは視線を向ける。
「ストマック家が...ストマック社が俺の下に戻ってきた! アイツの計画も俺の物だ!」
「え...」
ランゴはそう言うと、リゼルを誘拐した際に強奪したベイクマグナムを取り出す。それを見たショウマは何が起こっているのかわからず、息が漏れる。ランゴはマグナムを口元に構えると、ある言葉を発する。
「人間共、出荷の時間だ」
To be continued……
実験体をミミックキーだけに使うのは勿体ない感があったので闇菓子にしてみました。
記録がなかったのは盗用されたくなかったから。自信作だったんだね。
名前はまあグラニュートって硬そうなのでハード系にしました。
どっかで同族を食べるという業をやってほしかったので大統領に率先してやってもらいました。流石民衆を率いるリーダー。
ボッカはガヴの父親ーズの中でも随一の娘想いだと思うの。
最後のガヴと拳二の必殺待機は皆さんの想像にお任せ。個人的にはオーバーモードのモーションを左右対称でやってもらってます。あのモーション好きすぎる。