闇菓子事件が解決してからしばらくしたある日。
この日、拳二はグロッタに絆斗、ラキアと共に出かけていた。ショウマと幸果は急遽仕事が入ったためこの場にはいない。
そんな四人は遊園地で色んなアトラクションを楽しむ。
ジェットコースターで絆斗がグロッキー状態になり、それを介抱するラキア。拳二とグロッタは楽しみ、何回もループする。コーヒーカップでは拳二とグロッタが、どっちがより多く回せるかを競い、その勢いを遠くから眺める絆斗とラキア。メリーゴーランドでは何故か絆斗の背中にラキアが座るという事態になり、それを後ろから写真を撮りながら爆笑する拳二たち。
各々個性的な楽しみ方をした拳二たちは、昼時になったので何を食べるか話し合う。その最中、拳二と絆斗がアイコンタクトを取ると、二人で昼飯を買ってくると言って離れる。拳二は立ち上がる時にグロッタへ何か呟き、そのまま絆斗と共にフードコートへと消える。
残されたラキアとグロッタは、特に話すこともなく沈黙していた。その様子を柱の陰から見守る拳二と絆斗。
実は今回遊園地に来たのは、拳二と絆斗が仕込んだもの。戦いが終わってもラキアとぎこちなく接するグロッタに、拳二は絆斗にショウマ、幸果と協力してどうにかしようと考えた。その結果、過去の遺恨を取り除けば少しはマシになるだろうと考えた拳二たち。グロッタとラキアを一緒の場に連れ出すため、それぞれの保護者枠である拳二と絆斗が一緒に出掛ける。ショウマと幸果が居ると二人きりになるのは不自然になってしまうので、仕事があるとして二人は不参加。
綿密に練られた計画の下、行動した拳二たち。上手く流れに任せて二人きりにさせることに成功。その時、拳二はグロッタにラキアとの遺恨をどうにかするように助言して離れた。
あとはグロッタが切り出すだけ。その様子を二人は陰から見守る。そんなことを知らない二人は、話すことがないため沈黙が空間を支配している。グロッタは、拳二から言われたことに意識しすぎて一人百面相をする。その様子になんかダルそうだから関わらないでおこうと無視を決め込むラキア。
気まずい空気が流れる中、遂にグロッタが口を開く。
「そ、その...アンタに謝ることがあるの」
「...は?」
「アンタの弟...殺したの私よ」
「...」
「ごめんなさい...今更謝ってもどうにかなるものじゃないのは分かってるけど...謝っておかないとと思って...」
「...はぁ。知ってた」
「...え?」
「コメルの傷跡とお前の斬撃の跡が一緒だったからな。まあ、俺はもう気にしていないがな」
「なんで...!?」
「以前の俺ならすぐにでもお前を殺そうとしただろうな。だがあの戦いを経て、お前も闇菓子に狂わされたと知った。それからお前を憎んでも仕方ないと気づいた。俺もコメルもお前も...闇菓子に人生を狂わされた被害者だ。なら、恨み合っても仕方ないだろ?」
「...そう。強いのね」
「ショウマたちのおかげだ。いい弟を持ったな」
「...ええ、自慢の弟よ」
ラキアに許されたことで心の中にあった荷が少し下りたグロッタ。空気が和らぎ、二人は自慢の弟を語り合う。そんな二人に見守っていた拳二たちは、涙を流しながらお互い褒め合う。しばらくして昼食を持って帰ってきた拳二たち。そして四人で楽しく団らんした後、また遊園地を楽しんで解散した。
その帰り道、拳二とグロッタは両手に遊園地のお土産を持って歩いていた。
「よかったな。ラキアと和解できて」
「そうね。アイツが前に進んでいるのを知って、私も前を向こうと思ったわ」
「躓きそうになった俺が叩き起こしてやるよ」
「それはこっちのセリフよ」
「なんだと?」
「それよりこの写真良くないかしら? 中々映えてるでしょ?」
「ん? おお、いいな! こっちもいいんじゃないか?」
「そうね。今度行きましょうよ!」
「そうだな! その後にここに行くってのどうだ?」
「いいわね...じゃあその後にあそこに行って...」
「ついでにここもいいんじゃ...」
二人は次のお出かけの予定を話しながら帰るのだった。
ある日のこと。
この日は朝から拳二とグロッタは住処の掃除をしていた。
何度も念入りに掃除した家具は、本来の光沢以上に光り輝き、ミラーボールと見間違えるほどピカピカに磨かれている。他にも互いに服装は大丈夫かなど、片付け忘れた物はないかなどと慌ただしくしている。
何故二人はこんなに忙しないのか。それは、拳二の両親が来るからである。
闇菓子事件が終わった今、安全になったことで両親に連絡を取った拳二。色々電話越しで話をした際、デンテの墓参りにと急遽来ることが決まった。当時は特に何にも考えずに了承した拳二だが、ふと住処を見て青ざめる。
脱ぎ捨てたままの衣類に、机の上に広げられたお菓子の袋の山。部屋の隅に積まれているごみ袋の山。等々、色々見られてはマズイものが散見する。もしこれが両親の目に入れば...特に母の目に入ればどうなることか。と考えた拳二は、ぐっすり寝ていたグロッタを叩き起こし、一緒に掃除を始めた。一日かけて何とか片付け終えた二人だが、念には念を入れて隅々まで綺麗にする。
そうしていると、拳二の携帯に着信が入る。相手は両親からで、慌てて通話に出る拳二。
「どうした親父? もうすぐ着くところか?」
「うん、
「え?」
入口から聞こえた声に拳二とグロッタが振り返る。そこにはスマホを片手にいたずらが成功したようで喜んでいる二人の人物がいた。一人は優しそうな面持ちの男性。もう一人は男性と腕を組み、拳二を愛しそうに見つめている女性。
この二人が拳二の両親である。
「「拳二~!!!」」
「うわっ!?」
呆然とする拳二を見た二人は、同時に拳二に抱き着く。いきなりのことで拳二は動揺しながらもなんとか受け止め、それを眺めるグロッタは唖然としている。
しばらく拳二を堪能した二人は満足し、拳二から離れる。そして、ずっと傍で唖然としていたグロッタに挨拶する。
「初めましてかな? 拳二の父です」
「母よ。あなたがグロッタちゃんね?」
「は、はい。グロッタです...」
緊張しながら挨拶するグロッタを二人は温かく受け入れる。
そして四人は拳二の小さい頃の話や、拳二とグロッタの出会いなどの話で盛り上がる。途中、ゴミ出しを忘れたごみ袋が見つかり、拳二が母にジャーマンスープレックスを仕掛けられたり、グロッタと母の腕相撲対決が始まったりといったこともありながら時間が過ぎていく。
「拳二さーん! 今日もお菓子の味見してください!」
「やっほ~! グロりんいる~?」
「ちわーっす」
「なんで俺も...だる」
しばらくした時、ショウマたちが訪ねてくる。いつも通りの感じで遊びに来たショウマと幸果に、それに付き合う絆斗とラキア。四人は見慣れない拳二の両親の姿に疑問を浮かべるが、拳二が説明するとすぐに挨拶する。
それからショウマたちも加わって更に盛り上がる。
男性陣はショウマの試作菓子を片手に、お互いの苦労話で盛り上がる。それを眺める女性陣も男性陣に対する話で盛り上がるが、ある話が切っ掛けで壮絶な戦いが幕を開ける。
「あの中だと拳二が一番強いわね」
「えー? ウマショーも負けてないと思うけどな~」
「あら? うちの旦那も中々やるわよ?」
「あの馬鹿力には敵わないでしょ?」
「あの子の親は誰だと思ってるのかしら?」
「子は親を超えるものよ?」
「私が惚れた男が負けるわけないでしょ! ねえ、アナタ?」
「アンタも何か言ってやりなさいよ! 拳二!」
「いや俺たちに話を振られても...」
「ねえ...?」
「ウマショーも黙ってないで何か言わないと!」
「えぇ...なんで俺まで...」
「なあ、ラキア...」
「ああ...」
「なんで俺たちの名前が出てこないんだろな...」
「流石にキツイな、これは...」
「こうなったらアレで決めるわよ!」
「そうね! アレしかないわ!」
「アレで決めよう!」
「「「腕相撲で!!!」」」
「「「「「はぁ...」」」」」
そうして始まる男性陣の腕相撲大会。
巻き込まれた男性陣は文句を言おうとするも、女性陣の背後に薄っすらと見える般若を前に沈黙。大人しく腕相撲をすることに。
一番手に名乗り出たのは、先ほどの女性陣の会話で名前が挙がってこなかった絆斗。自身のプライドに懸けて、絶対に勝つと燃えている。対する相手は、拳二の父。妻から力を見せつけなさいと言われ、泣く泣く試合する。
腕を組む二人に、傍から見ているショウマたちは拳二に父親の実力がどうなんか尋ねる。
「拳二さんのお父さんって強いの?」
「ん? ああ、ショウマと同じハーフだからな。普通の人間より強いぞ」
「ってことは...」
「アイツは負けるな」
「ああ、負けるな」
「そっか、負けちゃうんだ」
「「「...ご愁傷様、絆斗」」」
自分の知らないところで憐れまれている絆斗は、腕に力を籠める。相手である拳二の父も力を籠めていく。
そして試合が始まり、絆斗が勢いよく腕を振るおうとする。だが全然ビクともしない。絆斗が必死に力を籠める中、拳二の父は笑顔を崩さない。その様子に動揺する絆斗の隙を突き、一瞬で決着を着ける父。結果、勝者は拳二の父となった。
瞬殺された絆斗は半泣きになりながらショウマたちの下に来る。そんな絆斗を温かく迎え入れるショウマたちを見て、父は自分が悪者の様に感じ少しいたたまれなくなった。
続く二回戦は、ショウマとラキア。共に戦ってきた仲間であるが、今は敵同士。二人は本気でぶつかり合い、勝負の結果ショウマの勝利となった。
次の三回戦は拳二対ショウマ。ショウマは連戦となるが、直前にお菓子を補給することでエネルギーはチャージされている。一方、拳二もアップを終えており、いつでも勝負ができる状態に。拳二が位置に着き腕を差し出すが、ショウマは位置に着く前に服のチャックを開ける。そしてゴチポッドを出し、自身のガヴに装填する。その光景に唖然とする絆斗たちだが、ショウマは気にせず変身する。
『オーバーエナジー!』
「これで拳二さんと戦える!」
「いやいやアリなのかよ!?」
「来い、ショウマ!」
「行くよ、拳二さん!」
「いや、なんでそのまま進めようとしてんだ!?」
「諦めろ、絆斗。拳二が関わった時のショウマは、少々頭のネジが吹っ飛んでる」
「ええ...」
ツッコむ絆斗にツッコみ疲れたラキアの二人を他所に、勝負が始まる。オーバーモードの超パワーで優勢に立つガヴだが、拳二が力を籠めると筋肉が隆起し、腕の位置が最初の位置に戻る。
このままでは負けると感じたガヴは、まさかの必殺技で対抗する。超エネルギーを籠めた右腕が勢いよく拳二の腕を倒そうとするが、手が机に着く直前で止まる。それに動揺するガヴに拳二が笑みを見せると、雄たけびと共にものすごい勢いで腕を上げていき、そのまま一気に逆転。追い込まれたガヴは何とか抵抗するが、拳二に敵わず手が机に着いてしまう。これにより、この勝負は拳二の勝利となった。
まさかの変身までしたショウマだったが、それでも拳二に敵わない。その事実に、畏怖する絆斗とラキア。幸果はショウマが負けたことにがっかりするが、健闘を称えお菓子をあげる。
最後は親子対決となった拳二たち。腕を組み、お互いを見据える。一方は父への挑戦への想いを。もう一方は成長した息子への期待を。両者の想いがぶつかり合う中、勝負が始まる。両者とも力を入れ、腕が拮抗する。片方に傾いたと思えばすぐにもう片方に傾く。そんな攻防が数分続き、観戦するショウマたちにも力が入る。
しばらく拮抗した後、勝負を仕掛けたのは拳二だった。拳二は腕の筋肉を隆起させると、一気に力を入れて押し進める。その勢いで一気に勝負が着くと思われたが、父の壁が立ち塞がる。もう少しというところで腕を止めると、父の方も腕の筋肉を隆起させて拳二を追い詰める。まさかあんな温厚そうな見た目にこんな力が眠っていたのかと、絆斗たちは驚く。だが拳二も腕に力を入れ、中間の位置に持ち直す。
お互い全力を出す中、二人が同時に雄たけびを上げる。それと同時に腕に力を入れ、一気に決着を着けに行く。腕が左右に激しく揺れる中、先にパワー切れを起こしたのは父の方だった。
長い間戦いの中に身を置いていた拳二と違い、戦いとは縁遠い所で暮らしていた父ではスタミナが桁違いだった。パワー切れを起こした相手の隙を突き、勝負を決めた拳二は腕を掲げる。それに喜ぶグロッタが拳二の下に行き、肩を組む。
「流石、拳二! やるじゃない!」
「伊達にお前といつも殴り合ってないからな」
「私のお陰ね」
「はいはい、そうでございます」
機嫌が良くなったグロッタの相手をする拳二の周りをショウマたちが囲む。そしてそのノリで拳二を胴上げするショウマたち。それを眺める拳二の両親は、息子の成長に喜ぶ。
「あの子に友達がたくさんできて嬉しいな」
「そうね。あんな笑顔見たの久々だわ」
「もう僕たちが心配しなくても大丈夫だね」
「それはそうとアナタ...一から鍛え直しましょうか?」
「え...それはちょっと...」
腕相撲に負けた父に、母が凄みながら笑顔でそう言う。それにたじろぐ父は、急いで拳二たちの下に行き、拳二の背後に隠れる。いきなり来た父に何があったと母を見た拳二は、急いで母の傍に着く。それに続いてグロッタも一緒に移動する。
息子に裏切られた父は、続いてショウマの後ろに隠れる。状況を理解しきれてないショウマは慌てるが、ゆっくり近づいてくる母に冷や汗を流しながら身構える。
「ショウマくん...そこ、どいて?」
「いや、おじさんが...」
「ドキナサイ...」
「はい!!!」
圧に負けたショウマは高速で拳二たちの下に行く。それを見て危険を察知した幸果も拳二たちの下に移動する。隠れる場所を無くした父は、最終手段として絆斗とラキアに泣きつく。
「絆斗くん! ラキアくん! 助けて!」
「えっ!? いや、そんな俺に言われても...」
「だる...」
「君たちしかいないんだ!」
「ええ...」
「ドキナサイ...」
「...腹を括れ、絆斗」
「...やるしかないか」
何故か覚悟を決める絆斗とラキアは、迫りくる母に向かって構える。両側から抑えれば父を逃がすことはできるだろうと、腰を低くしていつでも掴みかかれるようにする。だが次の瞬間、二人は気づく間もなく犬〇家状態となっていた。視界が急に真っ暗になった二人は、何が起こったのかわからずもがく。その様子を見ていたショウマと幸果は恐怖に震え、拳二たちの後ろに隠れる。だがよくよく見ると、拳二とグロッタは立った状態で白目を剥いて気絶していた。
遂に逃げ場を無くした父は地面に膝を着き、許しを請う。
「お願い! どうか許して!」
「...ダ・メ♡」
「いやあああああああ!?」
許されなかった父は母に引きずられながら山の奥へと連れ去られていく。その様子を見送ったショウマたちは、急いで絆斗とラキアを救出しに行く。その間、気絶していた拳二は意識を取り戻し、遠くから聞こえてくる悲鳴を無視して後片付けをするのだった。
それからしばらく経ち、ショウマたちが帰った後。拳二たちは無事帰ってきた両親と共に、デンテの墓前に来ていた。墓に手を合わせる両親は、心の中でデンテに今までの感謝と安らかな眠りを祈る。少しして、離れた丘に来た拳二たちは地面に座り、夜景を眺める。
「じいさんがここからの夜景が好きだったからな。ここに墓を建てたんだ」
「そっか...叔父さん、人間界が大好きだったからね」
「いつもお土産のお菓子を楽しそうに食べてたわね...」
「その結果あのお腹だったのよね...」
「昔から運動は嫌いだったからね」
「今頃あっちでお菓子食いまくってるんだろうな」
「まだ足りないとか言ってそうだけどね」
「...やっぱり叔父様にダイエットさせるべきだったわね」
「やめてあげて? 叔父さん泣いちゃうよ?」
「うん、やめた方がいい」
「流石にやめた方がいいと思うわ」
「えー、そうかしら?」
デンテを想いながら四人は話し合い、夜が更ける。三日月が真上に来る頃に、拳二たちは両親を山の麓まで送る。すっかり深夜となったが、二人はホテルを取ってあるため大丈夫だと言って帰る。
「じゃあ、拳二。次は年末かな?」
「また来るのか? しばらくはいいだろ」
「また散らかすんじゃないかしら?」
「それは私がちゃんと気を付けますから!」
「本当? この子を頼むわね、グロッタちゃん」
「はい」
「...いい子に会えてよかったね、拳二」
「...何のことかわからなねえよ」
「うん、次は
「「は!?」」
「ハハハ、じゃあね~」
「お幸せに~」
「ちょ、親父! お袋! 誤解解かせろ!」
「...」
「お前も黙ってないで何とか言えよ!」
「うるさい!」
二人に言われたことで照れたグロッタは、思わず拳二を殴って地面に埋め込ませてしまう。それで気を取り戻したグロッタは急いで拳二を起こす。その頃には両親はもう遠くに行ってしまって、言い訳できなくなった拳二たち。気まずい空気が流れるも、二人はお互いを見つめるとすぐに笑いだす。
「帰るか」
「そうね」
「とりま帰ったらちゃんと片付けないとだな」
「またごみ捨て忘れないでよ?」
「あの時は慌ててたから仕方ないだろ」
「次忘れたら、煎餅一週間禁止よ」
「それはないだろ!?」
「そうしないとアンタは反省しないでしょ」
「...反省するから」
「ダメよ」
「よし! 帰るの遅かった奴は明日のおやつ抜きな!」
「ちょっと!? それは無しでしょ!」
「知るか!」
そう言って駆けだす拳二を慌てて追いかけるグロッタ。
いつもの雰囲気に戻った二人は、いつも通りの日々に戻るのだった。
To be continued……