もちろん抵抗するで、拳で   作:暇けんぴ

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番外編

 

 

 

 ―こぶし―

 

 

 いつも通り授業が終わり、放課後。拳二とグロッタはカラオケに来ていた。

 

「で? なんでカラオケに来たんだ?」

 

「ニエルブからいい歌い方を聞いたのよ。知ってる? 『()()()』って」

 

「『()』? 歌に殴り合いなんてないだろ?」

 

「その『()』じゃないわよ。『()()()』よ。一種の歌い方らしいわよ」

 

「ふーん...それで少しでも声出たらいいなって感じか」

 

「な!? なんでそれを!」

 

「練習の時、一人だけ声出てないからな。みんな知ってるぞ」

 

「べ、別に恥ずかしいとかじゃないんだから!」

 

「なんでゲロっちゃうんだ、それ? てか一年の頃からずっと変わらねえから学年全員知ってるぞ」

 

「どうして言わないのよ!?」

 

「いや会長に口止めされてたからさ...」

 

「ランゴ兄さんが...」

 

「まあ笑った奴は俺と会長で花壇に埋めたから、誰も気にしてないぞ」

 

「それの所為で言われなかったんじゃないかしら...」

 

 自分のためとはいえ物騒なことをしていた兄と友人に戦慄しながらも、どこか温かい気持ちになるグロッタ。そんな彼女の気持ちを知らず、拳二は結局こぶしが何なのか聞く。

 

「力を入れて歌うらしいのよ。試しに一曲歌ってみるわ」

 

「お、お手本はありがたいな!」

 

 グロッタはそう言うと、早速一曲歌いきる。サビではほとんどこぶしを使っていて、もはや何の曲かよくわからなくなっていたが、拳二は素直にすごいと感心していた。採点でもこぶしで加点されているため、この歌い方がベストだと考えた拳二。

 

「なら全部こぶしで歌えば満点狙えるんじゃね?」

 

「そうね! 早速やってみなさいよ!」

 

「よし! 一発目から百点出しますか!」

 

 拳二はそう言うと曲を流し、歌いだす。こぶしかデスボかもはや分からなくなった歌だったが、音程が合っているため最初から高得点をたたき出す。それに対抗して、グロッタもこぶしで歌い尽くす。

 

 それから数時間カラオケで歌い切った二人。成果に満足しその日は別れ、次の日の合唱コンの練習で二人は思い切り歌った。

 

 

「「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛~♪」」

 

 

「なにこれ...」

 

 

 カラオケでマスターしたこぶしを早速披露した二人。だがクラスメートからは微妙な反応が返ってくる。二人はその反応を自分たちが凄すぎて萎縮してしまったのだと勘違いし、率先して歌っていく。クラスメートも、グロッタが積極的に歌うようになったからまあいいかと思考を放棄し、練習に励む。

 

 そして迎えた本番当日...

 

 

「「ノ゛ト゛ツ゛フ゛シ゛タ゛...」」

 

 

「「「何やってんだ!?」」」

 

 

 喉を酷使して潰してしまった二人だった。

 

 

 

 


 

 

 ―映え―

 

 

 ある日の放課後。

 暇になった拳二は遊び相手を探していた。クラスメートは既に部活や下校していて、下級生の中でも仲がいい絆斗とラキアを誘おうとするも、彼らもそれぞれ用事があるようで断られる。ならショウマを誘おうと、一年生の教室がある階に来ていた。

 

 目的の教室を見つけ、ショウマが居ないか中を覗く。すると珍しいものを見て吹き出しそうになる拳二。

 拳二が見たものは、ショウマの課題を手伝おうとするグロッタだった。だが普段の彼女の姿ではなく、お下げに丸メガネと昭和感が漂う姿に思わず笑いそうになる拳二。

 

 すぐにスマホで彼女の姿を撮ると、しばらく中の様子を伺う。すると彼女が何かに怒って教室を出てくる。急いで隠れた拳二は、グロッタが出ていくのを確かめると彼女の跡をついて行く。

 

「何なのよ、あの問題! あんなの大人になったら解けなくなるんだからやる必要ないじゃない!」

 

「だからって一年の問題ができないのはマズイだろ」

 

「な、な、な...!」

 

 愚痴を溢すグロッタに思わずツッコんでしまう拳二。その声を聞いたグロッタは、今の自身の姿を拳二に見られたことで顔を真っ赤にしてしまう。そんな彼女の反応に面白いと感じた拳二は、ニヤニヤしながら先ほど撮った写真を見せる。

 

「弟の勉強を見てあげるなんて、優しいお姉さまだな?」

 

「っ...拳二!!!」

 

 恥ずかしさの限界が突破したグロッタは拳二に掴みかかり、大きく揺さぶる。目をぐるぐるさせながら怒る彼女に、からかい過ぎたと反省した拳二はグロッタの姿を見て思いついたことを提案する。

 

「悪かったって。それより、今から旧校舎に行かないか?」

 

「旧校舎? あそこ何にもないじゃない」

 

「いや、今のお前の姿ならあそこにピッタリだろ? それで映える写真撮れそうだと思ってな。ついでに俺がこうすれば...」

 

 そう言うと拳二はカバンの中からあるものを取り出し、それを見に着ける。それは一昔前の学生帽と黒縁の丸メガネ。その姿から昭和感が漂い、グロッタの隣に立つといい感じに似合っている。

 

「確かにいいわね...今すぐ行きましょう!」

 

「おう! ...ってお前、メガネ忘れてないか?」

 

「あ、そうだったわ」

 

「俺が取りに行くから、先行っててくれ」

 

「分かったわ」

 

 そう言って別れる二人。拳二はショウマたちの教室に戻る。ショウマは既に帰っているみたいで、中には誰もいない。拳二はメガネを見つけると、すぐに取って教室を出ようとする。だがそこで、このメガネも俺に似合うんじゃないかと考えた拳二は、メガネを付け替える。

 

 扉の窓の反射を使って確認していると、窓の向こう側に幸果が現れる。それに驚くと、幸果が教室に入ってくる。

 

「よっす、ケンちゃん! 何やってるの?」

 

「いや、メガネ似合うかな~って思ってな? どうだ? 似合う?」

 

「うーん...頑張ってる感あって、ないわ!」

 

「はっきり言うよな...てか、この後時間あるか?」

 

「ん~? 今日は特に遊びにいく用事とかないからあるけど?」

 

「実は...」

 

「マジ? 行く行く! めっちゃ楽しそうじゃん!」

 

「よし! じゃあレッツゴー!」

 

「ゴー!」

 

 幸果も一緒に旧校舎で写真を撮らないかと誘った拳二は、了承した幸果と一緒に旧校舎に向かう。

 

 旧校舎に着くと、拳二を待っていたグロッタが遅いと言いながらも出迎える。幸果も一緒にいることに疑問を浮かべる彼女に説明した拳二は、早速撮影の準備に入る。

 旧校舎に入って色々構図を考えた三人は、撮影していく。教室で座る拳二とグロッタや、黒板でポーズを撮るグロッタと幸果。何故かロボットダンスをする拳二に爆笑する二人と思い思いに楽しんだ三人は解散する。

 

 翌日、幸果が投稿した写真をたくさんの生徒が見て、グロッタの下に集まってくる。それに慌てる彼女を拳二は笑って見てるのだった。

 

 

 

 


 

 

 ―告白―

 

 

 ある日の放課後。

 

 授業が終わり退屈なグロッタは、拳二を遊びに誘おうと探していた。いつもは教室に残っているか職員室に呼び出されている拳二だが、どちらにもいなかった。

 

 どこをほっつき歩いているのだろうかと内心文句を言いながら探すグロッタ。校舎裏に行くと、拳二の後ろ姿が見える。やっと見つけたと思い拳二の下に向かおうとするが、もう一人いることに気づく。

 

 拳二と一緒にいるのは隣のクラスの女子だった。

 

 それに気づくと、何故か彼女は物陰に隠れる。特にやましいことはないはずだが、二人の会話が気になり、聞き耳を立てる。

 

「その……、……なんだ」

 

「へー、…………だろ?」

 

「うん」

 

 若干距離があるため上手く聞き取れないものの、普通の会話をしているように聞こえる。だが次の会話で緊張が走る。

 

「ねえ原口くん...私ね、…………なんだ」

 

「え? …………って...」

 

「…………()()なの」

 

「っ!? 好き!?」

 

『好き』という単語に思わず反応してしまうグロッタ。幸い距離が離れているため彼らに聞こえなかった。だが、彼女の心境はぐるぐると色んな感情が入り乱れていた。

 拳二もモテるのか。告白なんて初めて見た。なんか秘密知ったみたいでドキドキする。などといった感情が入り乱れる中、一際大きく浮かび上がってくるものがある。

 

 寂しい。

 

 その感情を理解した彼女は、この場所にいることが耐え切れなくなってしまい去って行く。その時に発生した物音に気付いた拳二は、駆け足で去って行くグロッタの後ろ姿に何があったのかと疑問を浮かべる。

 

 

「ねえ、原口くんも沼に浸からない? ()()×()()()沼に!」

 

 

「いや、俺そういうのあんまりわかんないからさ...」

 

 

「そっか、原口くんは()()()×()()()派だもんね!」

 

 

「いや、そっちもわかんねえよ!?」

 

 

 翌日。

 いつも通り登校してきたグロッタに拳二は挨拶するも、彼女から返事が返ってこない。それに疑問に思い、どうしたのか尋ねるも無視され、ますます悩む拳二。休み時間になっても自分を避けるように教室を出ていくグロッタに、どうするべきか悩んだ拳二の下に昨日の女子がやって来てまたもやラキ×ハン沼に沈めて来ようとする。それにたじろいでいると、そのタイミングでグロッタが帰ってくる。二人の様子を見て悲しげな表情をするグロッタを気にする拳二は、この後の授業に集中できなかった。

 

 その日の放課後。

 すぐに帰ろうとするグロッタを呼び止める拳二。彼女はそれを無視して帰ろうとするが、彼女の腕を取って人気のないところに連れていく拳二。

 

「何よ...早く帰りたいんだけど...」

 

「朝からつまらねえ顔してなんだよ? お前らしくないぞ?」

 

「っ...別にアンタには関係ないでしょ」

 

「隣で辛気臭い顔されたら気分が上がらないだろ」

 

「気にしなければいいじゃない。もうアンタの隣にはあの子がいるんだから」

 

「あの子? 一体何の話だ?」

 

「昨日告白されてたじゃない」

 

「告白? 俺が?」

 

「好きとか言われてまんざらでもない様子だったじゃない...別に私なんていらないんでしょ」

 

「いや別に告白されてないぞ?」

 

「そんな嘘吐かなくていいわよ。ちゃんと聞いたんだから...」

 

「それ勘違いしてるぞ? あの子が言ったのはラキアンとハンティーのカップリング? が好きだってことだぞ」

 

「え...?」

 

「ショウマたちと仲いいだろ? それで近くから見て、ハンティーとラキアンかハンティーとショウマか。どちらが合ってるかって聞いてきたんだよ」

 

「なに、それ...」

 

「何を勘違いしたのか知らねえけど、別に誰とも付き合ってないぞ?」

 

「...ほんと、なによそれ」

 

 誤解が解けたグロッタは、自分が思い詰めたことが馬鹿馬鹿しくなったことと拳二が付き合っていないことにホッとして思わず涙を零してしまう。そんな彼女に慌てる拳二は、自分のハンカチを差し出す。それを見てグロッタは、笑顔になりハンカチを受け取る。

 

 お互いのすれ違いが解消された二人はその後ゲームセンターに行き、ひとしきり遊んで一緒に帰る。両手に持つ大量の景品を掲げながら、次はもっと取ると宣言する拳二に同意するグロッタ。すっかり関係が元に戻った様子の二人だったが、ここでグロッタが一歩踏み込む。

 

「...寂しかった。アンタがあの子に告白されたと思った時は」

 

「...」

 

「いつも隣にいたアンタが離れる。そう考えると、耐えられなかった」

 

「...別に永遠の別れって訳じゃないだろ」

 

「でもいつかは別れることになる。私たちは三年生だからそのいつかはすぐ来る。そう思うと余計にね...重いわよね、私」

 

「はぁ...」

 

 グロッタの吐露に思うところがある拳二は、右手に持つバッグを左手に持ち直し、彼女の手をつなぐ。突然の行動にグロッタは拳二を見るが、それを気にする様子のない拳二は、自身の想いを吐き出す。

 

「ならずっと一緒に居ればいいだけだろ。な?」

 

「っ...そうね」

 

 拳二の言葉を受け、グロッタは笑顔を浮かべる。そして今度は彼女の方から繋いだ手を結ぶ。

 そして二人はまた他愛のない話をしながら帰るのだった。

 

 

 

 

 to be continued...?




ひとまずこれでいったん連載完結です。短い間ですがお付き合いいただきありがとうございました。
Vシネの配信始まったらまたひょっこり投稿するかもです。

またどこかで会いましょう~
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