とある山。
人の手が入っておらず自然豊かなその場所に、不自然な爆発音が鳴り響く。音に驚いた動物は逃げ、木々が大きく揺れる。音の発信源には、一人の男と一人の異形の姿があった。
「グロッタァァァァァァァ!!!!!」
「拳二ィィィィィィィ!!!!!」
二人は互いに全力で振りかぶった拳をぶつける。それによって衝撃波が発生し、周囲の木々がなぎ倒され、土煙が立ち込める。土煙の中から二人が距離を取りながら現れる。
「まだまだやれるよなァ!?」
「当たり前じゃない! アンタの方こそまだやれるんでしょうね!?」
「おうよォ!!!」
拳二と呼ばれた男はそう言いながらパンチを繰り出す。それを両腕をクロスして受けきったグロッタと呼ばれた異形は、お返しにとパンチを繰り出す。それを跳んで避けた拳二は、こめかみを狙って蹴りを繰り出す。それを左腕で防ごうとするも、想定していた衝撃が来なかったことにグロッタは疑問を浮かべる。拳二が何を狙っているのか考えようとするも、考える時間を与えないと本命の蹴り上げが顎にヒットする。ノーガードで受けてしまったグロッタは仰け反った状態で空中に放り出される。更に追い打ちをかけようとするが、接近してきた拳二に頭突きをかまして距離を取るグロッタ。
「まったく、首が飛ぶかと思ったじゃない...」
「こっちは頭割れると思ったんだが?」
「知らないわよ。頭が弱いアンタが悪いんじゃない」
「あ!? それどういう意味だ!?」
グロッタの無意識の煽りに食いつく拳二。相手との距離を詰め、腕を振りかぶる。それを見たグロッタは、今度はフェイントにかからないと腕をクロスさせつつ態勢を低くする。
パンチを放つかと思われた拳二だが、グロッタの両腕をガシリと掴み、強制的に開かせる。そして無防備になった頭部に向けて、意趣返しにと頭突きを放つ。想定外の攻撃に面食らったグロッタの様子に、拳二は額から血を流しながら笑みを浮かべる。
「...やったわね!!!」
「さっきのお返しだよ、脳筋が!」
「言ったわね...」
グロッタはそう言うと全身からマゼンタのオーラを放出し、それを右腕にまとめていく。それを見た拳二は構えを取り、腕に力を籠める。
両者準備が完了するも、動き出す気配はない。束の間の静寂が辺りを支配する中、二人は目線を下に向け、極限にまで集中する。
ふと一羽の鳥が飛び立った瞬間、二人が同時に顔を上げる。
「「歯ァ食いしばれ!!!」」
二人はそう言うと共に駆け、互いの顔にパンチを放つ...
始まりは数か月前だった。
いつも山で行っているトレーニングを終えた拳二は、洞窟を基に作られた住処に帰ると同居人からおつかいを頼まれた。自身のお気に入りのお菓子を買ってきてほしいというものだった。自分で買いに行けばいいと拳二は思ったが、街中で異形が現れたら何が起こるか想像した拳二は直に引き受ける。
無事街に降り、おつかいを済ませた拳二はついでに買ったかりんとうを食べながら帰路についていた。帰ったら何をしようか考えていた拳二の視界に、怪しげな黒いフードを被ったナニカが路地裏に入っていくのが目に入る。それを見て拳二は表情を堅くし、黒フードの後を追うことに。
一定の距離を開けながらしばらく進むと、少し開けた場所で黒フードが立ち止まる。とそこに、一人の男がやってくる。
「へへっ、旦那! 今日は良いのが入りましたぜ」
「見せろ」
「へい!」
男はそう言うと、懐から何かを取り出す。人のアクリルスタンドの様な物に、太いゴムの様な物が何重にも巻き付いている。そのような物を十個ほど出した男は、フードに差し出す。念入りに確認したフードはそれを受け取ると、持っているアタッシュケースを抱え、男に中身を見せるように開ける。中には、黒と金色の濁った立方体がいくつもあった。それを見た男は満面の笑みを浮かべる。
「こんなにいいんですかい!?」
「お前はバイトの中でも優秀な部類だ。それ相応の報酬を出せと、ランゴ様から承った」
「おお、社長様にそう言ってもらえるとは有り難い限りですぜい!」
男はそう言うと立方体を一つ手に取り、一口齧る。まるで極上のものを味わうかのように顔を綻ばせる男は、残りを一気に食べ尽くす。その様子に満足したのか、黒フードはケースを閉じ、男に渡す。受け取った男は満面の笑みで別れを告げると、その場から去って行った。
一連の様子を陰から見ていた拳二は、顔を顰めながら黒フードを見つめる。拳二の存在に気づいていない黒フードは、この場から去る。それを見た拳二も後を追う。
また狭い路地をしばらく歩くと、黒フードが立ち止まる。そして近くの建物のドアに手をかざすと、ドアに紋章が浮かび上がる。黒フードがドアを開け、中に入る様子を見た拳二は、ドアが閉まる前に急いで中に入る。
ドアの先に広がっていたのは、空中に色んな扉が存在する不思議な空間だった。扉の数は百を超えるほどであり、その扉の間に狭い一本道が繋がっている。下を見るとどこまでも落ちていきそうなほど高い場所にあることが分かる。
そんな摩訶不思議な空間に特に驚くことなく、拳二は引き続き黒フードを追跡する。
少し歩き、黒フードがある扉の前に止まり、今度は手をかざすことなく開ける。拳二もそれに続き、気づかれることなく扉の先に侵入する。そこには大型の機械があり、何かの製造を行っていた。
黒フードはそこに居た異形に先ほど男から受け取った物を渡す。それを受け取った異形は、ベルトコンベアに受け取った物を乗せ、機械を作動させようとする。それを見た拳二は立ち上がり、異形と黒フードに向かってドロップキックを放つ。
「何者だ!?」
「これは返してもらうぜ?」
拳二はそう言うとベルトコンベアの上にあった物を回収し、ついでにと機械を殴る。すると機械が煙を吐き、次の瞬間には爆発した。たった一発のパンチで!? と驚きつつも、黒フードと異形は拳二が回収したものを取り返そうとする。だが、どちらもパンチ一発で吹っ飛ばされてしまう。
目的を果たした拳二は、その場から立ち去ろうとする。だが次の瞬間...
「アンタが最近うちの工場を襲ってる奴ね」
そういう声と共に、一筋の斬撃が拳二を襲う。
慌てて避けた拳二は、斬撃が来た場所を見る。そこには鎌を肩に担ぐ女の姿が。黒フードや異形とは違う、強者が持つナニカを感じ取った拳二は、額に冷や汗を流しつつ冷静に退避する手段を考える。その間も女は拳二にゆっくり近づいてくる。いつでも鎌を振れるように肩から下し、切先を拳二に向けつつ。
「お前はここの責任者か?」
「アンタに教える義理があるとでも?」
「それはそうか...じゃあ俺はここで!」
拳二はそう言うと、辺りにあった機械を思い切り殴り爆破させる。小規模ながら爆発が起こったことで目線を逸らして拳二は、この場に入ってきた扉から不思議な空間へと出る。
爆発によって目くらましを食らった女は、直ぐに鎌を振るって視界を確保する。そこに拳二の姿は無く、閉まる途中の扉が目に入る。それを見た女は獰猛な笑みを浮かべながら拳二を追いかけるべく扉を思い切り蹴り開ける。視線の先には全力ダッシュで細い道を駆ける拳二の姿があった。
「大人しくそれを返しな...さい!!!」
女はそう言うと鎌を思い切り振って斬撃を放つ。斬撃に気づいた拳二は、地面を思い切り蹴ってなんとか回避する。だが一息吐く間もなく、追撃が次々と襲い掛かってくる。自身に襲い掛かる斬撃を屈んで、跳んで、時には蹴りで相殺して対処しつつ出口を目指す。
しばらくしてようやく出口に辿り着き、直ぐに扉を開け脱出する。そして路地裏から抜け出そうとするが、後ろから女の気配がする。
何か一瞬でも女の注意を逸らすことができればと走りながら考える拳二。ふと何かを思いついた拳二は、その場で立ち止まり後ろを振り返る。視線の先には女と複数の黒フードたちの姿が。
「やっと諦めたかしら!」
「なわけ!」
拳二はそう言うと、ずっと抱えていたお菓子が入った箱を思い切り女たちに向かって投げつける。ただの箱から出していいものじゃない音と衝撃波を出しながら迫ってくる箱に、黒フードたちが女の前に出て対処しようとするが耐えきれず塵と化す。
その様子に呆れた顔を見せながら、鎌で箱を両断してあっさり対処する女。だが一瞬でも気を逸らした所為で、視界から拳二が消えていた。速度を上げて路地裏から出るも、辺りに拳二の姿は見えない。そのことに舌打ちをしつつ、黒フードたちに捜索を言い渡すのだった。
一方その頃、無事逃げることができた拳二は住処のある山の麓まで来ていた。
「じいさんのお菓子どうすっかねぇ...まあ事情を話せばわかってくれるだろ」
拳二はそう呟くと、ちゃっかり持っていたかりんとうを食べながら山に入ろうとする。だが後ろから殺気を感じ、首を左に傾ける。すると背後から斬撃が飛び、拳二が持っていたかりんとうの先を斬りながら山へと飛んでいく。
「やっと見つけたわよ」
「それはご苦労さん。じゃあ、もう一回逃げても?」
「許すわけないでしょ!」
女はそう言いながら鎌を振り下ろす。斜めに一際大きい斬撃が拳二を襲う。衝撃で辺りに土煙が立ち込め、女は拳二を始末できたと思い、鎌を肩に担ぐ。
だが煙が晴れ、拳二の姿が見えると女は驚愕する。切り裂かれているはずの身体に傷は無く、本人は何かあったのかといった様子。そんな拳二に女は驚きながらも、内心喜びがこみ上げてくるのを感じていた。
「バケモンね、アンタ」
「バケモンを操ってる奴に言われたかねえよ」
「酷いわね? ...アンタ、名前は?」
「ん? 拳二。原口拳二だ。アンタはなんていうんだ?」
「拳二ね...私はグロッタ。グロッタ・ストマックよ」
グロッタと名乗った女がそう言うと、彼女の腰にベルトの様な物が現れる。ベルトにはクッキーに似たメモリの様な物が挿入されており、彼女はそれをベルトから外す。すると彼女の瞳がピンク色に妖しく光り、次の瞬間オーラを放ちながら姿を変える。
タコやイカに似た装甲を持ち、口元はステンドグラスの様なマスクで覆われている。両腕と両脚にそれぞれ吸盤の様な突起を備え、腹部にはカラストンビの様な器官を持ち、全体的に曲線を描く身体は艶めかしい。
本来の姿を現したグロッタ。その姿を見た拳二は、これから起こる戦いに笑みを浮かべる。
「本気で来るみたいだな...!」
「アンタ相手に出し惜しみはもったいないでしょ?」
「そう言ってもらえるとは、嬉しいねぇ」
拳二はそう言うと持っていたかりんとうを一気に口に入れ、全部食べ切る。準備万端と拳同士をかち合わせ、グロッタを見つめる。それを受けたグロッタも鎌をいつでも触れるように構え、準備を終える。
お互い息を整えた次の瞬間、同時に飛び出し、互いの拳と得物をぶつける。互いの力がぶつかり拮抗する中、拳二は一瞬力を弱める。その隙を突いたグロッタは一気に力を籠め、刃を突き立てる。だがそれは拳二の罠だった。
自身に突っ込んでくるグロッタの力を利用して身体を回転させると、両足で彼女の頭を挟み込む。そしてそのまま勢いに乗ってグロッタごと身体を回転させる。するとグロッタは逆さの状態で空中に放り出され、隙だらけになってしまう。それを見た拳二は地面に手を付けると、全身を丸めて力を溜める。そして次の瞬間、思い切り両腕を伸ばして勢いをつけ、隙だらけのグロッタにドロップキックを放つ。
モロに食らったグロッタは木々を何本もなぎ倒しながら吹っ飛ばされる。そこに追撃を入れようと、拳二が地面を蹴る。異常な脚力から開放された力によって、ソニックブームを発生させながらグロッタに向かう。すぐに追いつくと、空中に居るグロッタへ地面に向かって拳を叩き込む。
地面が陥没し、小規模のクレーターを形成しながら叩きつけられるグロッタ。叩きつけた本人は彼女から距離を取り、様子を伺う。
「もう終わりか...?」
拳二は若干がっかりした様子でそう呟く。
「舐めてんじゃないわよ...!!!」
だがそんな拳二の言葉を否定する声がクレーターの中心から聞こえてくる。その声に拳二は頬を吊り上げ、興奮する。
「だよなァ!!!」
「歯ァ食いしばれ!!!」
再び拳を握りしめ、グロッタに向かって跳ぶ拳二。一方のグロッタは右腕の突起を妖しく光らせながら構える。カウンターを狙っているのを悟りながらも正面から突っ込んでくる拳二に、グロッタは重心を低く保ちタイミングを計る。
拳二の拳がグロッタの顔を捉える寸前、数ミリ秒という単位の時間をグロッタが制する。
彼女の拳が拳二の左頬にヒットする。その瞬間、拳二が想定していた数百倍のインパクトが襲いかかる。受け身を取れず、諸に食らった拳二は先ほどのグロッタ以上のスピードで吹っ飛ばされる。その衝撃は半径数メートル内の木々を木っ端微塵にし、地面を大きく抉るほど。
大災害の跡を見つめるグロッタは、緊張が解けたのか肩で息をする。
「ハァ...ハァ...少しは効いたでしょ...」
グロッタはそう呟くと鎌を持ち上げる。よく見ると至るところにヒビが入り、あと一撃で壊れそうになっている鎌。そんな自身の得物を見た彼女は、驚きよりも嬉しさが勝っていた。
自身の感情の昂りに身を任せ、拳二が飛ばされた方向へ猛スピードで向かう。
一方、飛ばされた拳二は山にトンネルを形成しながら今も吹っ飛ばされている。全身を襲う痛みよりも口内の痛みに顔を顰める拳二。ふと口の中で何かが動いているのを感じ、口から吐き出す。出てきた自身の歯だった。それを見た拳二は絶望し、何かに怯える。
「またあそこに行くのか?! もうヤダ...イタイノ、コワイ...」
そう呟きながら抜けた歯をズボンのポケットに入れると、空中で態勢を変え、後ろに向かってパンチを繰り出す。パンチの衝撃波で勢いを相殺すると、クラウチングスタートの構えを取る。そして、地面を削りながら駆けた拳二は、自身を追ってきたグロッタの顔面を殴りつける。
「さっきのお返しだァ!!!」
そう言いながら彼女の持つ鎌を足で踏み抜き、破壊する。それに怒るグロッタの足を持ち、思い切り振り回す。
「ちょっと、何するのよ!?」
「悪い子には、お仕置きだ!」
「グッ!?」
拳二はそう言うと空中にグロッタを放り投げ、自身もジャンプする。そして空中で無防備な彼女の腹にかかと落としを浴びせる。これを受けたグロッタは鈍い声を上げながら地面に叩きつけられる。
今まではいくら強烈な攻撃を受けても立ち上がってきたが、今回は中々起き上がらないグロッタ。そんな様子を見て拳二は納得する。
「やっぱりグラニュートは腹の口を叩けばダメージが大きいみたいだな」
「アンタ...どこでそんなこと知ったのよ...!」
「うーん...
「
拳二が語る『じいさん』という存在。その正体を知るためにも、ここで負けるわけにはいかないと何とか立ち上がるグロッタは拳を握りしめる。それを見た拳二も拳を握りしめる。
お互い次が最後になると悟り、この一撃に全てを乗せる。
「おらああああああああああ!!!!!」
「ハアアアアアアアアアアア!!!!!」
全身全霊を懸けた一撃が放たれる。その威力は今までの攻防とは比にならないほどで、その勢いは空気を圧縮してしまうほどに至る。その結果、二人の拳がぶつかることなく拮抗する現象が起こる。目の前の信じられない現象に、両者ともに笑みを浮かべ、更に勢いを増す。
この衝撃によってグロッタの右腕が妖しく光り出し、点滅する。その様子を見た彼女は、自身の能力が通用しない相手にまた感情が昂り、勢いが増す。そんな彼女にまだギアを上げてくるのかと笑みを深めながら力を増していく拳二。
両者の力が増すことで二人の拳が接近し、その度に衝撃波が発生する。幾度か衝撃波が辺りを破壊し、遂に二人の拳が触れる。すると二人を中心に大爆発が生じ、辺り一面を飲み込む。
しばらくして爆発が収まる。二人が戦っていた場所には巨大なクレーターが形成され、隕石が降ってきたのではと思うほどの被害を生んでいた。そんな被害の原因である二人は、クレーターの中心で地面に横たわっていた。
拳二は衣服が戦いの余波であちこちが破け、身体中に擦り傷を作っている。一方のグロッタは怪人の姿から人間の姿に変わっていた。怪人態の時の傷が反映されているのか、拳二と同様身体中に擦り傷を作っていた。
二人は満足しているのか笑みを浮かべ、笑い合う。そんな二人だけの空間に、一人の異形が現れる。鯨の様な見た目で、口元はステンドグラスの様な皮膜で覆われている。
「拳二!!! 一体今度は何をやらかしたんじゃ!?」
「ん? どうしたんだ、じいさん?」
「どうしたじゃないぞ! また山を荒らして! ワシらの存在がバレてしまうかもしれないんじゃぞ!」
拳二を叱る異形。そんな異形をじいさんと呼ぶ拳二の声に、グロッタはそういえばと異形の方を見る。すると目を見開き、驚いた様子で立ち上がる。
「
「グロッタ!? なんでここに!」
「それはこっちのセリフよ! 数年前に家を出て行方をくらませて! どれだけ心配したと思ってるの!」
デンテと呼ばれた異形はグロッタの剣幕にたじろぐ。そんな様子を見て、拳二は何かを思いついたのか悪い笑みを浮かべる。
「そ、それはのう...」
「アタシたちの前からいなくって得た物がそのお腹ってねぇ?」
「叔父さん、もういい歳なんだから健康には気を付けなさいよ!」
「ぬぅ、これは人間界のお菓子にハマってつい食べ過ぎてしまってのう...」
「だからって食べ過ぎはよくないでしょ!」
「そんなんだから変装するときの服が入らなくなるのよ!」
「な!? そ、それは...って、何をしとるんじゃ拳二!」
「つい!」
「つい、で話をややこしくするんじゃない!」
「えーと...やりたくてやった?」
「余計タチが悪いぞ!?」
拳二の悪ふざけに乗せられたデンテは拳二を叱るも、本人は反省する様子を見せない。それにまた怒るデンテという二人の様子を見せられているグロッタは唖然とするも、しばらくして笑いだす。そんな彼女を騒いでいる二人は不思議そうに見る。
「ど、どうしたんじゃ?」
「殴り過ぎたか?」
「あはははは! おっかしい...色々考えてる私がバカバカしくなったわ」
「もう一回殴ったら賢くなるんじゃね?」
「やめんか!」
「あはは!」
二人のやり取りに毒気を抜かれたグロッタは色々考えるのを止め、この空気を楽しむのだった。そんな彼女に二人は一瞬戸惑うも、まあいいかと三人で笑い合う。
穏やかな空気の中、グロッタは仕事や家族への愚痴を。拳二は中々見つからないバイト先に対する不安を。デンテはそんな二人の話を聞き、それぞれに助言を与えるなどといった安らぎの時間が流れていく。
時間は流れ、辺りが赤く染まる頃。
ひとしきり話し終えたグロッタは、最初の頃よりいい顔で二人に別れを告げる。
「そろそろ帰るわ。今日はありがとうね、二人とも」
「またいつでも来るといい。お前さんの苦労はよくわかった」
「ストレス発散ならいつでも付き合うぜ?」
「その時は頼むわ。じゃあね。デンテ叔父さんのことは言わないでおくわ」
グロッタはそう言うと帰っていく。グロッタを見送った二人は、戦いの跡を修復するのだった...
時は現在に戻る。
お互いの拳が顔面に刺さり、その衝撃が顔を貫く。常人ではミンチになってもおかしくない威力のパンチを受けても笑みを浮かべる拳二に、グロッタは更に火が付く。
インファイトで多彩な攻撃を繰り出す拳二に、衝撃を吸収しつつカウンターで衝撃を乗せたパンチや蹴りを放つグロッタ。二人の攻防は辺りの木々を揺らし、土煙が立ち込めていく。
視界が悪くなる中でも二人は迷わず攻撃を繰り出していく。そうして数回、数十、数百を超える攻防が繰り広げられた後、グロッタの隙を突いた拳二のボディブローがダイレクトヒットする。威力を吸収できなかったグロッタはたじろぎ、そこに追い打ちのドロップキックが決まる。これが決め手となり、この勝負は拳二の勝利となった。
勝負を終えた拳二は地面に倒れるグロッタに手を差し出す。
「どうした? 全然集中できてなかったみたいだけど」
「...この後兄さんに呼ばれてるのよ」
「ふーん、また俺に工場が壊されたーってお叱りが来るのか?」
「知らないわよ。いつもより空気が重かったから気まずいわ」
「偏頭痛じゃね? 雨降ってたとか」
「あそこに人間界の様な天気は存在しないわよ。何か嫌な予感がするのよね...」
「そっか...まあなんかあったらまた相手するぞ?」
「...ありがとう」
「おう!」
拳二は笑顔で返事すると、じゃあなと言って帰っていく。その後ろ姿を見送ったグロッタは妙な胸騒ぎに不安を覚えつつも、自身の家へと帰る。そしてその後に起こるのは...
「人間はうちの家族じゃない。我がストマック社の、『
「ショウマ...逃げて...!」
「母さん!!!」
「やめろ!!! やめろおおおお!!!」
ある親子の悲劇。そして...
物語の始まり
To be continued…
書いてて思った。やっぱグロッタ姉さん好き。
タイトル思いつかないの許して。