物語が始まり数日後。
大叔父であるデンテと会ったことや改めて仮面ライダーとして生きていくと決めたこと。人間界に来て色々あったと思いながらも、ショウマは『はぴぱれ』に来ていた。
中からお世話になった社長とストマック家のエージェントから『ヒトプレス』を奪い返した時に遭遇した男の話し声が聞こえ、中に入ろうか迷うがすぐに男が出てくる。男は自身が仮面ライダーであると気づく様子はなくホッとするショウマ。そして意を決して中に入る。
黙って出ていったことに社長である甘根幸果からお叱りは受けたものの、ショウマの謝罪を受け、再びはぴぱれの社員としてショウマを雇うことを許す彼女にショウマの気持ちが晴れる。
住む場所がないショウマの為にとロフトを掃除する幸果を手伝うショウマ。二人でわいわいと楽しげに話しながら掃除していると、扉が開く。
「お疲れーっす」
「ん? お、
「
聞きなれない名前に首を傾げるショウマを他所に、幸果は入ってきた人物の下に行く。ショウマも挨拶をと二人の下へ向かう。
「はじめまして。井上ショウマっていいます! 今日からはぴぱれで働くことになりました!」
「うっす! 俺、原口拳二っす! 俺も先月からここでバイトし始めたんすよ。よろしくお願いしゃっす!」
なんと拳二だった。
バイト終わりにショウマと挨拶を交わした拳二は、住処に帰っていた。社長の伝手で購入した温水シャワーでさっぱりし、簡単なストレッチをしているとデンテから話が飛んでくる。
「そういや、今日ワシの甥っ子が来たのう」
「甥っ子? あのストマックの社長か?」
「いや、ショウマという人間とのハーフの子でな」
「ショウマ...ん? どっかで聞いたような...」
「どうやらこっちに逃げてきたようでな...ワシもデリカシーがなかったんじゃが怒らせてしまってのう...」
「あ! そいつ、うちのバイト先に今日来たぞ」
「なんじゃと!?」
「今日からバイトで入ったみたいだったぞ」
「そうか...こっちでの居場所を見つけれたのか...そうか...良かった...」
「そんなにひどい環境だったのか? まああのストマックなら考えれるけど」
「そうじゃのう...ワシが居た頃でも兄弟からは冷たくあしらわれ、父親からも保護という名の監禁生活を送っとったからのう...」
「...昔から変わらねえんだな」
「良くも悪くもそれが『グラニュート』じゃ。実力至上主義は今も昔も変わらぬ」
デンテから聞かされるショウマの境遇に思うところがあるのか、拳二はベッドに寝ころびながら考え込む。そんな拳二の様子にデンテはそっとしておこうと自身の研究を進めるのだった。
そこから月日が経ち、色々な出来事があった。
慣れない力加減に手間取るショウマのサポートをしたり、ちょっとしたトラブルを仲介したり、マチアプ詐欺犯をおびき出す為に女装したり。はたまた家族相談に乗ったりと本当に色々あった。その大半にグラニュートが関係していたが、そこはショウマとはぴぱれ常連の辛木田絆斗が対処していた。
拳二が注力していたのはグロッタ関連だった。
例えばある日、仕事先で幸果が相手とトラブルになりその対処をしていた時に着信が入る。拳二が出ると相手はグロッタで、内容は消化不良だから今すぐ来いとのこと。拳二は苦笑いしつつも、幸果に早上がりすることを伝えすぐに住処に帰る。
「ただいまー。おいグロッタ、仕事中に呼び出すのは勘弁してくr...っていきなり殴りかかるな!?」
「ちょっと聞きたいことがあってね? アンタ、グラニュートを知ってる人間に心当たりは?」
「んー...知らねえが? どうした?」
「私の仕事先でちょっとね。人間にしては中々やるようだけど、アンタより全然だったからスッキリしなかったのよ...ってことだから。ちょっと付き合いなさい」
「はぁ...お前、俺を基準に考えるのはやめとけよ? 一応グラニュートの血が混じってんだから」
「そう言えばそうだったわね? まあ関係ないわ」
「おい!」
二人はそう言いながらいつも通り戦闘を始めるのだった。
この日はまだいつもと変わらないから良かった。拳二が疲れたと感じたのは次だ。
数日後、バイト帰りにデンテへのお菓子を買っていたところまたもやグロッタから着信が入る。
「今日はどうした? またいつものか?」
『少し話せるかしら...』
「ん? 今日はバイト終わったからいいけど」
『じゃあ待ってるわ』
「うん...どうしたアイツ?」
いつもと様子が違うグロッタに首を傾げながら、お菓子を選ぶ。両手に持つかごがいっぱいになり、会計を済ます。
「いつもありがとうね。こんなにお菓子買ってくれて」
「ああ、一緒に住んでる叔父がお菓子大好きで」
「そっか。じゃあ、これも持って行ってあげて。新しく入荷したんだ」
「おお、ありがとうございます! 優さんのお菓子がお気に入りだってじいさんも喜びます!」
拳二はそう言って駄菓子屋の店長からお菓子を受け取り、住処へと帰る。そこにはいつものオラオラとした様子とは180度違ったグロッタが居た。これは何かあったと感じた拳二は、とりあえずデンテにお菓子を渡し、話を聞くことに。
「それで? いつもと違ってしおらしくなってるけど、どした?」
「...ランゴ兄さんがシータとジープをクビにしたの」
「...確かお前の妹と弟だったか?」
「ええ、双子で可愛い子たちよ。でも、最近の業績不振だったり赤ガヴに執心したりで成果を出せずにいて...」
「それが積もり積もってクビ、ってことか」
「...」
グロッタの言う業績不振。それは暗にヒトプレスの回収ができていないということ。それは拳二からしてみれば良いことなのだが、それをこの場で言うほどノンデリ男ではない。
「でも、その双子はクビになったけど家族なのは変わらないんだろ? じゃあ、他の仕事でも探して...」
「ランゴ兄さんはもう家族とは思ってないわ」
「...」
「二人を政略結婚させてストマック家の繁栄に少しでも役立てる...そう考えてる」
「...会社と家を存続させるため、それかもっと強固なものへとするためか」
「もう...どうしたらいいかわからないの。あの子たちと守ってあげたい。理解してあげたい。でもランゴ兄さんの言うことも分かる。それに...このまま闇菓子を作っていっていいのかわからなくなったの...」
グロッタの吐露に拳二と聞き耳を立てていたデンテは驚く。ここまで感情を露わにするのは戦闘中以外ではあまりない。そのことももちろんだが、一番の衝撃は闇菓子についてだった。
グロッタをはじめとするストマック家が代々経営するストマック社は、グラニュート界では大手菓子メーカーとして知られているが、その裏で違法薬物に近い物を販売している。それが闇菓子だ。
一度食べればその極上の味が身体中に衝撃が走り、次も、また次もと欲しくなるほどの逸品。その依存・中毒性は非常に高く、アルバイトの多くは闇菓子を食べたことのある者たちだ。
これだけを聞くと依存性が高い危険なお菓子という認識だが、真の闇はその材料にある。
闇菓子の品質の決め手となる材料。それは人間である。
グラニュートが持つ生体器官『ガヴ』から伸ばす舌によって人間が捕縛・圧縮された物、『ヒトプレス』から幸福の感情を抽出することで闇菓子に使用するスパイスが精製される。抽出された後のヒトプレスは残りカスとして処分されてしまう。
これらのことにより、ストマック社はアルバイトを雇い、人間界でヒトプレスを収集。それらを使い闇菓子を大量生産し、いずれはグラニュート界を掌握しようと考えている。だがそうなると大量の人間が犠牲となる。それを防ぐため、ショウマは仮面ライダーに変身して戦い、絆斗も改造手術を受け、仮面ライダーとなって戦っている。
拳二も以前から闇菓子の製造工場に侵入し、破壊活動を行ってきていた。それに対処するためにグロッタが拳二と戦い、いつからか歪な親交を築いていた。
そんな中、グロッタの口から出てきたこのまま闇菓子を作るべきかどうかということ。彼女が生まれたストマック家は正にその闇菓子を製造している諸悪の根源。拳二からすれば今すぐやめろと言いたいが、何故かその言葉が口から出せないでいる。
半年と短い期間ではあるものの彼女と接してきたことでいつの間にか絆されたと感じた拳二は、あることを伝える。
「...家に帰ったら今から教える場所に行け。誰にも見られないようにな」
「え...?」
「第四製造工場の入口から三つ目の機械。それに『006』と入力してレバーを引け。そうしたら第六製造工場に行って、管理室のパネルに『101』と入力する。すると隠し扉が開くからそこから中に入れ。そこに俺が見せたいものがある」
「何を、言ってるの...」
「誰にも知られるなよ。お前の兄弟にも、社員にも。眷属でさえも。絶対にだ」
「...ええ、分かったわ」
「...うし! じゃあ今日は閉店だ! 俺はもう寝る!」
「ちょっと、どういうこと!」
「バイトで色々あって疲れたんだよ! 今日はもうやらねえぞー」
「...そう」
いきなり投げやりになる拳二にグロッタは不機嫌になりながら、早速拳二に言われた場所に行こうとその場を去る。それを見た拳二は一息吐き、ベッドに寝転がる。そんな拳二を見て、デンテが声をかける。
「教えてよかったのか?」
「アイツなら約束を守るだろ。それに...あんな悩みを持ったアイツだからこそ知るべきだ。ストマックの『罪』を」
「...そうじゃのう」
拳二が言う『罪』。それを聞いたデンテもどこか暗くなりながら同意するのだった。
これらのことが今日までの間に起きたことだった。
そして拳二は今何をしているのかというと...
『ケーキング! アメイジング!』
「力が、湧いてくる!!!」
覚悟を決めたショウマと兄弟である双子との戦いを見ていた。
新たな力を得たショウマ、基仮面ライダーガヴは、その力で双子とその眷属たちを圧倒する。今まで変身に使う『ゴチゾウ』という形だけでしか眷属を生成できなかったが、新たな力を得たことにより、人型の眷属を生成することが可能に。それによって共に戦えるようになった。
そうして戦闘する中、ガヴはふとあることを思い出していた。
それはこの戦闘が始まる前。
双子に指定された場所に向かうショウマの前に現れる拳二。その表情は普段の陽気な感じとは違い、真剣なもの。それを見たショウマは思わず身構えてしまう。
「どうしたんですか、拳二さん」
「ショウマ、一つお前に聞きたいことがある。お前は...家族を殺す覚悟があるか?」
「え、どういうこと...」
拳二が問うものの意味が分からず、一瞬頭が真っ白になるショウマ。だがすぐにその言葉を飲み込み、真意を理解する。
人間を守る為にグラニュートと戦うショウマ。だがいつまでもアルバイトを倒すだけではキリがない。どこかで必ず自身の家族であるストマック家と戦う日がやってくる。それも、彼らを倒さなければならない日が。
彼らを倒すこと。それはつまり、自身の家族を殺すことと同義。自身と母を何年も監禁し、挙句の果てには母を殺した家族を恨むことはあった。怒りもあった。だがそれでも、もし手を取り合うことができたら。そう考えずにはいられなかった。憎み合うのを止め、手を取り合い、罪と向き合う。そうすることで闇菓子に頼らずとも暮らしていけるのではと考えていた。
だからこそ...
「あります...! もし兄さんたちが闇菓子を手放さないと言うのなら、その時は...殺すことになってでも止めてみせる!」
「たとえそれが一生背負い続ける罪になるとしてもか?」
「罪...周りの人の笑顔を守れるなら、いくらでも背負う!」
ショウマの覚悟を受け取った拳二はいつもの表情になり、後を去る。そんな拳二の後ろ姿に、なんでこんなことを聞いたのかと思うもすぐに双子が待つ場所へと向かうのだった。
そんなことを思い出していたガヴは、改めて覚悟を決める。ここで二人を殺す覚悟を。
そうして二人の眷属を倒し、二人を追い詰めたガヴは自身のガヴにセットしているゴチゾウを武器にセット。ホイップを模した部分を三回押し込み、エネルギーをチャージして穂先を二人に向ける。
そしてトリガーを引き、突きの動作と共にビームを照射する。ビームが二人を飲み込むかと思われたが、その直前の双子の一人、シータがもう一人のジープを突き飛ばす。そしてビームに飲み込まれ、爆発が起きる。煙が晴れると、そこには彼女が使用していた武器と人間に擬態する際に使う壊れたミミックキーがあった。
その光景に、手を下したガヴは堪えたのか俯く。一方、ジープはシータが居なくなったことに絶望しながら落ちているミミックキーと武器に手を伸ばす。
とそこに乱入者が現れる。
「っ! グロッタ...姉さん...!」
「ねえ、さん...」
鎌を肩に担ぐグロッタは、ガヴを一瞥した後ジープを抱えその場を去るのだった。
しばらくして緊張が解けたのか、ガヴの変身が解除しその場に倒れるショウマ。そこに陰から見ていた絆斗が慌てて駆け寄ると、その場に似合わない音が鳴り響く。
先ほどの力は消費が激しいのかお腹が空いたショウマ。そんなショウマに笑いながら肩を貸し、立ち上がらせる絆斗。ショウマはもう一度爆破跡を見て、改めて自分がやったことを心に刻み付けるのだった。
その様子を見ていた拳二は息を吐き、その場を後にするのだった。
一方、ジープを連れてその場を去ったグロッタは、自身が所有する人間界の拠点にジープを連れてきていた。今も壊れたミミックキーを大事そうに持ち、ひたすらシータの名を呟くジープに、グロッタは肩を掴む。
「ジープ! いい加減にしなさい! シータはもういない。その事実を受け入れなさい」
「なんで!? なんで私たちがこんな目に遭わないといけないの!? なんで!? なんで!?」
「私は忠告したはずよ。闇菓子に関わり続ける以上こうなると。赤ガヴに関わると碌な目に遭わないって。それを無視したのは貴方たちでしょ?」
「なんで赤ガヴだけが幸せになるのよ! 私たちはただストマック社の為に...!」
「...必然だったのよ。私たちがこうなることは」
「知らないわよ! シータを返して! 返してよ!!!」
グロッタの言葉に耳を貸さないジープに、少し時間を置く必要があると判断したグロッタは、しばらくここにいるようジープに伝える。必要な物は眷属を通して渡し、生活に困らないようにはする。その代わり今後のことを考えるよう言うと、ジープはまた壊れた玩具のようにシータの名を呼び続ける。その様子を一瞥し、グロッタはこの場を去るのだった...
To be continued……
ダイジェストむずい...