もちろん抵抗するで、拳で   作:暇けんぴ

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幕間

 シータがショウマによって倒される少し前。

 

 グロッタは拳二から教えられた秘密の場所に行くため、伝えられた手段を試していた。二つの工場を跨ぐこの方法は、一般社員が試すと不審がられてしまう。だがグロッタは社内で菓子製造を担当している。複数の工場を同日に訪れることはよくあるので、特に不審がられることなく、視察しつつ手順をこなしていく。

 

 そうして最後の行程、管理室のパネルに『101』と入力する。するとパネルが設置されている壁にストマック家の紋章が浮かび、扉が現れる。その光景に驚きつつも、取っ手に手をかけるグロッタ。意を決して扉を開けると、薄暗い通路に続いていた。

 通路に入ると扉を閉め、ゆっくり進む。なんの装飾もない石造りの通路。床に等間隔で設置されているライト以外光源は無く、その薄暗さはこの先に待つものの不気味さを表していた。

 

 しばらく進むとまた扉があった。ここまで秘匿するものとは一体。そう考えながら扉を開け、その先にあるものを見たグロッタは目を見開く。

 

「これって...!?」

 

 その先にあったのは、大量に並べられたカプセルに、液体に浮かぶ人間の姿。よく見るとその腹部にはグラニュートと同じガヴを持ち、普通の人間でないことが伺える。

 

 狂気を感じる光景にしばらく固まっていたグロッタだったが、正気を取り戻し何故こんなものがあるのか探ろうと部屋の中央に設置されている機器を操作する。すると空中にディスプレイが展開され、様々な実験ファイルが表示される。どれから見ていけばいいか分からないグロッタは、一番上に表示されているファイルを展開。ファイル内の最初のデータを選ぶ。するとディスプレイに彼女の祖父であるゾンブ・ストマックの姿が映し出される。

 

『これから行うのは人間の人工栽培実験である』

 

 その言葉に衝撃を受けるグロッタ。続きを見ていくと概要が分かってきた。

 

 ゾンブは闇菓子を作るにあたって必要となる人間のリソース不足を懸念していた。人間界から攫うのは簡単だが、人間一人でできるスパイスは微々たるもの。これだと、いつか人間を攫い尽くし闇菓子が作れなくなってしまうのではないか。そう考えたゾンブは、攫ってきた個体を母体として人間の人工増殖を思いついた。

 

 ゾンブは弟のデンテやほかの社員に黙って、自身の腹心の一部と共に実験を開始。攫ってきた人間の中から若い男女を選び、それぞれから生殖器官を摘出。その器官を半永久的に使えるよう、グラニュートの器官を使って改造。そうして産まれた子供は丈夫な身体を持っていた。

 

 これで材料が確保できたと思うも、どの子供も成年に達する前に生命活動を停止してしまう。これではスパイスが確保できないと考えたゾンブは、改造した器官を更に改造する。そうして産まれたのが、このカプセル内に存在するガヴを持った人間だった。

 

 純粋な人間ではない為、ヒトプレスにすることはできないものの他に利用できるのではとゾンブは考えた。それがある物の発明に繋がる。ミミックキーだ。

 

 人間に擬態する際に使用するアイテム。この擬態元のデータに人工人間を使用した。その結果、今となってはヒトプレス回収に貢献し、なくてはならいものとなった。

 

 だがミミックキーにはデータだけが必要で肉体は不要だった。その為、何か他にないかと考えるもゾンブの時代の技術では特に有用なものに利用することができず、結果この実験は凍結となった。

 生まれてきた人工人間は全員殺処分する前提だったが、たまたまこの実験を知ったデンテが後々の為に処分せずに保存することを提言。これに多くの実験関係者が賛同し、今目の前にある形で保存となった。

 

 これがこの部屋の全て。人間とグラニュートの尊厳を踏みにじった狂気の沙汰の末路だった。

 

 全てを見たグロッタは足の力が抜け、その場に座り込んでしまう。一体何を見たのか。何を見つけてしまったのか。まさか自分の祖父がこんなことをしていたとは。色々な感情・思考が頭の中を駆け巡り、それを処理しようとするが許容オーバーになり過呼吸を起こす。

 

 そんな中、最後に残ったデータが再生される。そこに映っていたのはデンテだった。

 

『これを見ているということはワシかあの子からここの存在を知ったのじゃろう。そんなお前さんに伝えたいことがある。どうか悔やまないでくれ。責めないでやってくれ』

 

 映像の中のデンテの言葉が聞こえ、グロッタは一瞬頭が真っ白になる。悔やまないでくれ? 責めないでやってくれ? それは一体どういう意味なのか...

 

『この子たちを生み出したのは紛れもない兄貴と止められなかったワシの罪じゃ。その罪はワシらが背負う。だからどうか、これから生まれてくる子たちを責めないでやってくれ。その子たちに罪はない。後の世代がこの負の歴史から学び、明るい未来を齎してくれることを信じている』

 

 デンテの言葉を聞き、涙を流すグロッタ。今の自分たちの行いに対してもどこか言われているように感じると同時に、それでも罪を自覚し償うと信じてくれているのではと感じたのだ。

 その様に感じたグロッタは、これまでの自身の行いを振り返る。数々に人間をヒトプレスにし、闇菓子の材料へと変えていった。また、その悪行から逃げようとしたアルバイトたちを粛清と言いながら殺してきた。そんな自分が救われて良いはずがない。そう思いながらも、心のどこかで誰かの手を求めている自分がいた。

 

 一人後悔する中、映像が最後を迎える。

 

『最後に...もしワシの願いを叶えてくれるなら、ここを消してくれ。生まれてきたこの子たちには悪いが、ここで生き地獄に囚われ続けるぐらいなら、解放してやってくれ。それが、ワシたちにできる贖罪じゃ』

 

 その言葉を最後に、映像が終了する。これで保存されていた全部のファイルの閲覧が完了した。

 

 しばらく崩れ落ちていたグロッタだが、デンテの言葉を聞き立ち上がる。そしてゆっくりと通路へと歩いていく。この光景を目に焼き付けるように。

 通路の手前に辿り着くと、自身の武器である鎌を展開する。そして両手で握りしめ、大きく振りかぶる。

 

 

「ごめんなさい...さようなら」

 

 

 そう言うとエネルギーを込めた刃を振るい、斬撃を放つ。横一文字に放たれた斬撃が、部屋にあるカプセルを切り裂く。すると爆発が起こり、それが連鎖的に次々と発生する。その惨状を見つめるグロッタは武器を持つ手に力が入る。負の連鎖を終わらせる。その為にも...

 ある決意を胸に、グロッタは部屋を後にする。そんな彼女の後ろ姿に祝福を祈るナニカが居た。

 

 

 

 


 

 

 

 それから数日。

 ストマック社をクビになり、家から居場所を失くした双子がショウマに宣戦布告した日。双子がショウマに指定した場所に来たのは、ショウマではなくグロッタだった。予想していなかった彼女の訪問に、双子は驚く。

 

「姉さん!? どうしてここに!」

 

「アンタたちに忠告に来たのよ。これ以上闇菓子と赤ガヴに関わるのは辞めなさい」

 

「なんで! アイツは私たちの居場所を奪ったのよ! 何もかも!」

 

「そうだ! アイツさえいなければ俺たちが離れ離れになることはなかったんだ!」

 

「アイツもあの父親の被害者なのよ...アンタたちもどこかで理解してるんでしょ?」

 

「っ! それは...でも!」

 

「だからって私たちが別れる理由になんてならない!」

 

「そうだ! だからアイツを倒してヒトプレスをもっと集めてランゴ兄さんを見返すんだ...!」

 

「そうすれば私たちはずっと一緒にいれる...!」

 

 グロッタの言葉に耳を貸さず、現実逃避する二人。そんな二人を見て悲しみが溢れるグロッタだが、それを抑え最後の忠告を下す。

 

「そう...アンタたちがその道を選ぶなら、相応の覚悟を持つことね。半端な覚悟じゃ、その先に待ってるのは地獄よ」

 

 グロッタはそう言うとこの場から去る。彼女の言葉を聞いていたかどうか。それはこの後の結末で示された。

 

 

 

『ケーキングブレイキング!』

 

 

 

「よかった...」

 

 

 

「シータ!!!」

 

 

 

 双子の末路を見届けたグロッタは、ジープを自身が持つ拠点に預けた後、数ある闇菓子製造工場の内の一つに来ていた。社員たちはいつも通りの視察か思い気に掛ける様子はなかったが、工場長がグロッタにすり寄る際に異変に気付く。

 

「グロッタ様? いかがなさいましたか?」

 

「...こんなもの、いらない」

 

「え?」

 

 グロッタの言葉に疑問を持つ工場長。だが次の瞬間、彼女が突然鎌をあちこちに向かって振り始める。一体どういうことなのか、何のつもりなのか分からない工場長は必死に止めようとするも、直ぐに吹っ飛ばされる。

 激情に呑まれているグロッタは、そのまま工場を破壊し尽くす。そこにランゴの眷属であるエージェントがやってきて彼女を止めようとする。更にそこに乱入者が現れる。

 

「拳二...」

 

 以前と同じ方法でエージェントの後をつけてきた拳二が、エージェントを殴り飛ばす。許容オーバーのダメージを受け消滅したエージェントの跡を見た拳二は、鎌を持つグロッタを見る。

 

「グロッタ...まさかお前が?」

 

「拳二...」

 

 拳二の問いかけに答えることなく、グロッタはこの場を去る。そんな彼女を心配に思いつつも、拳二は自身の目的の為に次の場所に向かう。

 

 この出来事が近い未来、二人の運命を変えるのだった...

 

 

 

 To be continued……

 




もうちょっと倫理観無視したものにしたかった...
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